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百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜  作者: 逢魔時 夕
Chapter 5. ブライトネス王国ラピスラズリ公爵領発フォルトナ王国着の弾丸ツアー〜他種族との国交樹立とフォルトナ王国諸問題の解決という名の無理難題を七年以内に達成せよ〜

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Act.5-23 第一回異界のバトルロイヤル 一日目 scene.5 上

<三人称全知視点>


 ところ変わって白雲世界。空の上でありながら起伏が富んだ白雲世界には珍しくどこまでも真っ平な雲が続いている平野のような地域で女性と少女が相対していた。


 一人はハーフエルフのミーフィリア、もう一人はエルフのプリムヴェールだ。


 かつては人間と駆け落ちしたナノーグ家の娘に否定的な印象を持っていたプリムヴェールだが、緑霊の森への使節団のメンバーとして参加した娘ミーフィリアと出会い、その認識を大きく改めた。人間だから、エルフだからと差別することがなくなったプリムヴェールにとってミーフィリアの父親と母親は「互いを種族を超えて愛し合い、共に生きたいとそれぞれの地位や立場を捨てた、共感できる部分はあるものの、その結果として娘が苦しむことを想像できなかった親としては失格の者達」という肯定的な面も否定的な面も持ち合わせた認識となっているが、「苦労したミーフィリアさんが許したのであれば、私が非難すべき問題ではないだろう」という答えに集約されている。

 ミーフィリアに対しては「生まれた時からエルフにも人間にもなれず、孤独に生きながらも自らの力で実力を示し、気心の知れる友人との出会いと宮廷魔法師という地位を自らの力で掴み取った尊敬できる人物」という認識を持っている……が、言ってしまえばそれだけだ。


 エイミーンのような義妹の忘形見という関係性も、マグノーリエのような親戚筋という関係もない、完全な赤の他人。

 両者の面識はあるものの、それはマグノーリエやエイミーンを介してであり、ミーフィリアとの直接的な関わりは無かった。


「まさか、こんな場所で出会うとはな……運命というべきか。何かしらの運命を感じはしないか?」


「……すみません。ミーフィリア様は、私にとって遠い存在でして……同じエルフの性質を持っているというだけで、私とミーフィリア様にはマグノーリエ様やエイミーン様とのような深い関わりはありませんから」


「……私はプリムヴェール殿を友人だと思っていたのだがな。……まあ、確かに血縁的なものはないだろう。だが、暫し一緒の時を過ごした仲間だと私は思っている。それに、繋がりならばこれから作っていけばいいだろう? 私にはエルフの友人は少ないからな……まあ、人間の友達もあまりいないが。改めていうべきことではないだろうが、プリムヴェール殿、私の友になってはくれないだろうか?」


「よろしいのですか? 私なんかで」


「何を言う。プリムヴェール殿のマグノーリエ殿に対する強い気持ち、高潔な騎士としての精神。私はそんなプリムヴェール殿に尊敬の念を持っている。……出会った当初は少し頭が硬いと思っていたが、今では柔軟さを手にして貪欲に強くなろうとしているのが私から見てもよく分かる。私なんかよりもずっと尊敬に足るよ……誰かのために強くなりたいという意志は、私にはとても眩しく見える。……さて、いつまでも話していては勝負にならない。私も全力を尽くそう――「落葉の魔女(フォール・リーフィー)」としての全力を」


「胸を借ります、ミーフィリア様ッ!」


 『銀光降星のエスパダ・ロペラ』を構えたプリムヴェールが地を蹴って加速した。

 対するミーフィリアは、少し申し訳そうな顔を表情を見せ――。


「すまないな。私の戦い方ではプリムヴェール殿の真っ向勝負に向き合うことはできないのだ。……蒼氷の女王の尖兵」


 ディーエルとモーランジュを追い詰めた戦術級白兵魔法を容赦なく発動した。

 『氷の尖兵を作り出す魔法』、『作り出した氷を分解する魔法』、『空気中の水分と氷像の水分を凝固させる魔法』の三つからなる不死身の氷の尖兵達が一斉にプリムヴェールへと牙を剥く。


「それで構いません。私には私の、ミーフィリア様にはミーフィリア様の戦い方がある……それを私に合わせろなどという傲慢なことを言いません。それに、今の私はバカの一つ覚えみたいに真剣勝負を仕掛けるだけではありません! 千羽鬼殺流・廉貞」


 その瞬間、ミーフィリアの視界からプリムヴェールの姿が消えた(・・・)


「……そうだったな。すまないことを言った……プリムヴェール殿は一人前の騎士だ。好き嫌いを選んで戦うような相手ではない……相性が悪いから敗北したなど、後でイチャモンをつけるのはそれこそ三流の者達だな。……しかし、厄介だな千羽鬼殺流。私の見気でも見えんとは」


 ミーフィリアの見気はお世辞にもレベルが高いとは言えない。

 だが、プリムヴェールがローザから「千羽鬼殺流」の手解きを受けたのはミーフィリアが見気を会得したのとそう大して違わない時期だ。当然、その技倆も拮抗している思っていたのだが……。

 ミーフィリアは、プリムヴェールの才能が「千羽鬼殺流」の性質と合致していたのだという結論に至り、「だからこそローザはプリムヴェールに千羽鬼殺流を教えたのだな」と一人で納得した。

 よくよく考えてみれば、あれほど思慮深いローザが何も考えずに「ただ剣の使い手だから千羽鬼殺流を教えよう」などという結論には至らないだろう。教えたとなれば何かしらの理由がある……ミーフィリアはあまりにも簡単なことを見落としていたことに恥ずかしさを感じた……が、戦闘中ということもあり気持ちを切り替えて戦場を俯瞰する。


 ミーフィリアの氷の尖兵はプリムヴェールにダメージを与えられていなかった。

 しかし、プリムヴェールも氷の尖兵の再生力に悩まされている。

 どちらも決定打に欠ける状況だ。これでは、一向に決着をつけられないままミーフィリアの魔力が切れるか、プリムヴェールの集中力が途切れるかという持久戦に持ち込まれてしまう。それは、どちらにとっても不利益でしかない。


「千羽鬼殺流・武曲」


 弧を描くようにして、対象に斬撃を浴びせる鬼斬の技が炸裂する……が、氷の尖兵はすぐに空気中の水分を吸収して再生した。これが砂漠であればまた違った結果になっただろうが、ここは雲の世界――水分は有り余るほどある。


「千羽鬼殺流・破軍、千羽鬼殺流・輔星、千羽鬼殺流・太白!」


 続けて一度目に刀の刃を抜かずに鞘に納めたまま斬撃を放って態勢を崩し、二度目に踏み込み、三度目に円を描くように抜刀して敵を斬るという三段技、鞘を使わずに右腕で剣を背中に構え、左手で刃を押さえ極限まで力を溜めてから斬撃を放ち、更にその場で回転して放つ二段構えの斬撃、武器に霊力を流し込むことで破壊力が増し、相手の体内に毒のような効果をもたらす鬼斬の技を使った斬撃を仕掛けるも、いずれも氷の尖兵を機能不全に陥らせることはなかった。


「ウッドレイン! 纏武装!」


 プリムヴェールが三重術者(トライアド)としての本領を発揮し、木製の雨を降らせた。

 一つ一つ雫型に調整された雨が氷の尖兵達の頭上から降り注ぐ。


「水魔法『ディープレイン』の応用だな。……だが、何を考えている。雨を木に変えたところで氷にダメージを与えることなど……」


「燃え盛れ、治癒闘気! そして成長せよ、大樹成長!!」


 火種のように燻っていた治癒闘気が氷を少し溶かし、狙い澄ましたように木の雨に内包されていた大量の治癒闘気が木の雨を成長させ、瞬く間に氷の中に突き刺さっていた木の雨の先端が大樹へと成長し、氷の尖兵を内部から破壊した。


「……なるほど、考えたな。確かに、普通(・・)の氷であればそれでなんとかなっただろう……普通(・・)の氷ならばな」


 砕かれた筈の氷の尖兵は大樹そのもの呑みこむように再凝固――歪な形となり、闇雲な攻撃を繰り返す。

 だが、それでもプリムヴェールを捉えることはできない。


「それでも結局は膠着状態か。……これでは埒が明かないな。プリムヴェール殿ッ! 多少強引だが私は戦い方を変えさせてもらう。これから、『作り出した氷を分解する魔法』、『空気中の水分と氷像の水分を凝固させる魔法』を解除する。そうなれば、氷の尖兵の無敵性は失われるだろう。剣士タイプのプリムヴェール殿には申し訳ないが、これが私なりの戦い方だ――行くぞ」


「――何か来るッ! ……ならば、私も殺られる前に殺るしかないッ! ファンタズマゴリアッ! ヒロイズムッ! メガロマニアッ!」


 プリムヴェールは三重術者(トライアド)としての全力を尽くし、隠していた奥の手を三つ(・・)解放した。


 一つ目のファンタズマゴリアは無数の幽霊を顕現する月属性(・・・)魔法。ローザとの修行の中で「面白い属性の魔法を使えるんだねぇ」と言われて初めてその力を理解し、その後密かに特訓して生み出したオリジナル術式である。

 追加効果として幽霊が対象を擦り抜けた際に悪寒を感じさせ、かつ防御力を低下させることができる。また、「ファンタズマゴリア」で顕現した幽霊は爆発させるこどできる。


 二つ目のヒロイズムは、自身の身体能力や治癒能力を前借りするという月属性の特殊な付与術式だ。発動している間は三ヶ月先までの身体能力や治癒能力を前借りできるが、術式を終了させると同時に前借りした分の身体能力や治癒能力が低下する。リスクがある魔法であるため使い勝手が悪い魔法ではあるが、この世界でのプリムヴェール達は別の物質で作った身体に憑依しているようなものなのでヒロイズムの代償を払わずに済む。


 三つ目のメガロマニアは、自身の刀身に月属性の魔力を宿す効果と自身の月属性魔法攻撃の威力を上昇させる効果を付与するという月属性の特殊な付与術式だ。しかし、一方で頭がクラクラして目が霞み、更に頭痛を引き起こすというデメリットが存在する。


 二つ目と三つ目の魔法は弱点の多い魔法だ……が、プリムヴェールはそれを理解した上で最善を尽くす方法を模索した。

 頭痛に耐え、視点の合わない、立っているのもやっとの状態でプリムヴェールは細剣の剣先をミーフィリアに向けた。


「三つの魔法を使い切ったか。だが、それでは私は攻撃できんぞ。――灼熱の女王の白……」


「――千羽鬼殺流・貪狼」


 爆発的な踏み込みにより一瞬でトップスピードに達し、相手の間合いに入る技を発動したプリムヴェールが一気にミーフィリアとの間合いを詰めた。


「――ヴォーパル・スラスト」


 そのまま超高速で剣を突き刺して攻撃を繰り出す細剣ウェポンスキルの一つを繰り出し、ミーフィリアの肋骨の間を抜けて心臓を貫いた。

 が、同時にミーフィリアの魔法が完成してしまい、一気に蒸発した元氷の尖兵が1.1倍から元に戻り、その後約1,700倍にまで膨張した。

 更に水蒸気の分子を一気に加速させたことでその威力が更に上昇――ミーフィリアの予想を遥かに上回る威力で灼熱の水蒸気がそのまま瀕死のミーフィリアごとプリムヴェールを呑み込んだ。


 『作り出した氷を分解する魔法』、『氷を熱して水蒸気に変える火魔法』、『水蒸気の分子を加速させる火魔法』からなる大規模術式――戦術級魔法「灼熱の女王の白霧」。

 ミーフィリアがローザに「何か新しい魔法の参考になりそうなものはないか?」と聞いた際に手渡された「科学知識メモ・簡易版」を参考にして作ったミーフィリア流の異世界もの御用達の水蒸気爆発魔法である。

 ただ、使用者は転生者でも転移者でもなかったようだが……。


 ミーフィリアとプリムヴェールは相討ちとなり、双方この試合での獲得ポイントがプラスマイナスゼロポイントという結果を残してポリゴンとなって消滅した。

 お読みくださり、ありがとうございます。

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 もし何かお読みになる中でふと感じたことがありましたら遠慮なく感想欄で呟いてください。私はできる限り返信させて頂きます。また、感想欄は覗くだけでも新たな発見があるかもしれない場所ですので、創作の種を探している方も是非一度お立ち寄りくださいませ。……本当は感想投稿者同士の絡みがあると面白いのですが、難しいですよね。


 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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