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百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜  作者: 逢魔時 夕
Chapter 4. 緑霊の森のエルフ至上主義者達と暗躍する神々

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Act.4-25 神祖のエルフvs妖精王の翠妖精 scene.1

<一人称視点・リーリエ>


 時に機械的に新たな世界を作り出し、時に新たな世界の形成の権限を与えてその経過を見守る謎の機構――形成の書[セーフェル・イェツィラー/סֵפֶר יְצִירָה]。

 ハーモナイアは、その形成の書[セーフェル・イェツィラー/סֵפֶר יְצִירָה]に選ばれて、この世界――ユーニファイド[Unified]を作り出した。


 彼女曰く、その目的はボクが一度は夢見て、しかし叶わなかった究極のプロジェクト――複数世界観統合計画[Multi-world view integration plan]を完成させるためだったらしい。そして、その世界にボクを招き、命を与えてもらえたことにお礼が言いたかったのだと……ボクはあの青に満たされた世界で彼女と邂逅してその気持ちを知ることになった。


 全く……身勝手な話だ。この世界の人々にとってはたまった話ではないだろうねぇ。

 彼女にとっては、この世界で必死に生きようとしている人間も風景の一部だった。彼女の心には慢心があったからこそ、ただの登場人物に一人に過ぎなかったシャマシュに、他の神々にその力を全て奪われ、消滅を恐れて姿を隠さなければならなくなった……そういう点では、所詮は彼女も神の視座からこの世界を見ていたに過ぎない訳だよねぇ。まあ、それも致し方ないんだろうけどさぁ。


 とはいえ、ボクもハーモナイアを非難したい訳じゃない。彼女には彼女なりの理由があって、気持ちがあって行動した。そして、それはボクのためだった訳だし、彼女の気持ちは正直に言えば嬉しい。

 画面越しでしか接することができなかった世界が目の前にある。自分達が作ったキャラクター達が普通の生活を送っている。その姿を見ることができるというのはやっぱりゲームデザイナー冥利に尽きるからねぇ。


 この世界は異世界であって異世界じゃない。丁度光が粒であると同時に波であるように、本来なら矛盾しそうな物質としての異世界としての性質と、情報によって構成されたゲームの世界としての性質をどちらも両立して成立させていた。


 ハーモナイアには、恐らくこの異世界が本当の意味で物質的な、それこそ虚像の地球と何も変わらない一つの世界であることを理解することができなかったのだろう。

 シナリオから解き放たれた、自由意志を持った神がどういった行動をとるのか分からなかった――その結果が、現状――管理者権限という名の残滓を残し、会話することすらできない今の姿。


 今回の件でハーモナイアもきっと納得した筈だ。……この世界はデータで構成された、ただシナリオに沿った世界ではないことを。

 彼女にやり直す機会があってもいいように思えるし、そして何より形成の書[セーフェル・イェツィラー/סֵפֶר יְצִירָה]に選ばれたハーモナイアに奇襲を仕掛け、数の暴力によってその力を簒奪し、そしてこの世界の覇権を狙っているであろう神々をボクは許すことができない。……まあ、ボクが著しくハーモナイア擁護の視点にあるのは確かだよ。素直に彼女の優しさは嬉しかったから……ただ、やり方を間違えていたとは思うけどねぇ。



 この仮面の男――ミスルトウは会談の場で会った姿から大きく変わっていた。あの時には見えなかった妖精王(オベロン)としてのステータスとGM専用武器『神殺しの焔(レーヴァテイン)』を保有するとなれば、『Ancient Faerys On-line』の『管理者権限』を持っていることは間違いないとは思うんだけど、正直このミスルトウが『Ancient Faerys On-line』の『管理者権限』をハーモナイアから奪ったとは考えにくいんだよねぇ。


 『Ancient Faerys On-line』の『管理者権限』を持つとなれば三女神ノルンか、ラスボスのミーミル=ギャッラルホルンか。

 状況から鑑みて、人間とエルフの対立を利用してボクを始末して最後(・・)の『管理者権限』を剥奪しようと企んだ『Ancient Faerys On-line』の『管理者権限』を持つ神のいずれか、或いは全員か……とにかく『Ancient Faerys On-line』の『管理者権限』を持つ者が小手調べとしてぶつけてきたというのが妥当だろうねぇ。となると、大して情報は持っていないか……所詮は切り捨てればそれで終わりの駒。『管理者権限』もデータである限りは複製が可能だろうし、制限を掛けた『管理者権限』を譲渡して既存に無かった翠妖精(エルフ)という種族へミスルトウを転生させ、更に妖精王(オベロン)へ過程をスキップさせて転生させたというところだろうねぇ。

 まあ、でも複製であっても『管理者権限』はハーモナイアのもの……取り返すつもりではいるんだけど。


「プリムヴェールさん、泣く必要なんてないよ。ミスルトウさんは重要参考人……事情を聞くつもりだから、殺すことは絶対に避けるからねぇ。それに、現状では人間とエルフの国交は成立していないし、今回の件は【生命の巨大樹(ガオケレナ)の大集落】で起こったもの。治外法権の関係上、残念ながら(・・・・・)ボクらにはミスルトウさんを罪に問えないからねぇ。いや、実に悔しいねぇ……ということで、彼の処遇はエイミーンが決めることになると思うよ」


「全く悔しそうじゃない顔なのですよぉ。……安心するのですよぉ〜。私にとってミスルトウさんは大切な秘書で、友人なのです……そんな簡単に手放したりはしないのですよぉ」


 僅かにエイミーンの表情に明るさが戻り、気丈に振る舞ったエイミーンの言葉でプリムヴェールの表情に光が戻った。


「…………頼む。父を……ミスルトウを助けてくれ」


「う〜ん、タダでは聞けないなぁ、命懸けだし。報酬が欲しいよねぇ……。そうだなぁ……そういう悲しそうな表情はやめてくれないかな? やっぱり可愛い女の子には笑顔が似合うと思うんだよ。偏見だけどさ」


「そうだな…………父を頼む、ローザ!!」


 うん、いい笑顔だ。報酬はもらった以上、絶対に任務は達成しないとねぇ。


「…………随分と余裕そうだな。もう私を倒した気でいるのか…………。それに、私の大切な娘を籠絡しよって……お前達を一皮剥けば邪悪しかないことは分かっている!! これ以上、大切なものを奪わせない――これは、そのための力だ!!」


 ありゃりゃ……『神殺しの焔(レーヴァテイン)』の凍結が溶けちゃったねぇ。やっぱり、GM用の武器(破壊不能オブジェクト)に対処するのは無理そうだねぇ……ゲーム世界のあらゆる常識が通じない訳だし。


「アカウントチェンジ・マリーゴールド」


 アカウントをリーリエからマリーゴールドに切り替える。

 武器による近距離からの攻撃は『神殺しの焔(レーヴァテイン)』で容易に防がれるし、ただでさえ破壊力の高い『神殺しの焔(レーヴァテイン)』を相手にすれば耐久力の問題で幻想級でも簡単に砕かれると思う。それに、至近距離で変幻自在の焔使い相手に殺り合うなんて正気の沙汰じゃないからねぇ。それなら、MPの高いマリーゴールドを使った方がいいかと思って……そもそもエルフは魔法に高い適性を持つ種族だし、相手が同じエルフの頂点なら神祖として妖精王(オベロン)とどっちが強いかはっきりさせたいじゃん。


「ボクの力では『神殺しの焔(レーヴァテイン)』を突破できない……GM武器はゲームバランスを崩壊させるような設定が為されているからねぇ。……あらゆる問題に対処できるように設定された公式チート……流石にボクの『漆黒魔剣ブラッドリリー』と『白光聖剣ベラドンナリリー』でも現状を打開できないからねぇ……ここで大切な武器を失う訳にはいかないし、別の手段をとらせてもらうよ」


 マリーゴールドにもアネモネの十二刀流に匹敵する攻撃手段がある。

 『浮遊十杖・ミーティアスタッフ』は隕石を中心に嵌め、彫刻を施したユグドラシルの太枝で杖部分を作った十本の杖からなる幻想級武器で、天輪のように周囲を回って全方位に魔法攻撃が可能っていうコンセプトなんだけど、こっちは『背繋飛剣ナインチェーサー』と違って細やかな操作が必要じゃなかったから(その代わりに杖の動きはオートで速度も一定だから見切られやすいんだけど)結構人気があったんだよねぇ。

 中でも魔法系四次元職の大魔導帝が習得する「魔法解放(リリーススペル)」を組み合わせて、予め特定の魔法を付与しておくシステムを使えばタイムラグなく攻撃できるって人気だったんだけど、込められる魔法は触媒となる武器のレアリティや強度、「魔法解放(リリーススペル)」そのもののスキルの段階も関係があるから、高威力の魔法を放とうとするとどうしても奥伝や秘伝クラスの「魔法解放(リリーススペル)」やレイドで入手できるくらいの武器が必要になる。……失敗すると武器が消滅するから結構リスキーなんだよ。おまけに、「魔法解放(リリーススペル)」を使う場合は込める魔法に加えて追加で相応の魔力を消費するし……まあ、それも踏まえた上で使い熟すのが熟練者なんだけどねぇ。実際、『浮遊十杖・ミーティアスタッフ』を上手く使った上位プレイヤーもいた訳だし。


 今回はあまり思考領域を割けないし、これくらいが丁度いいよねぇ。まあ、『浮遊十杖・ミーティアスタッフ』や『沙羅双樹の魔杖』はあくまでサブウェポン(・・・・・・)。そして、本命は――。


 統合アイテムストレージから取り出した直接脳波で操作できる眼鏡型の「E.DEVISE」を掛けて起動する。

 出現した青いタッチパネルに脳波で直接パスワードを入力して使用可能な状態にして、そこから「E.DEVISE」と『管理者権限』を強引に接続――『異世界ユーニファイドサーバー(・・・・)』にログインした。


「この世界は異世界であり、同時に電脳世界でもある。だから、生み出された人間の集合的無意識が電脳空間化し、現実世界と重ね合わせで存在するようになった電脳世界に「電界接続用眼鏡型端末」を用いてログインできたように、半分電脳の世界に「E.DEVISE」でログイン・干渉ができても別に不思議じゃない……そうだよねぇ。……それじゃあ、反撃開始と行きますか。……そのGM装備、「B(ブルー).ドメイン」の時と同じように初期化(フォーマット)してやるよ!」

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 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] > ハーモナイアに奇襲を仕掛けて多勢に無勢でその力を簒奪し  なんか奇襲を仕掛けた方が多勢に無勢っぽく見えるような? 数の暴力?
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