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ギタイマシ  作者: ヒロキヨ
エピソード3 Party Shaker
56/64

35

ぬうべえ「うぎゃ~~~、何こいつ! コワっ! 気持ちわるっ! バックアップって、この機械で間違いないよね?」


ぬうべえ「(バックアップユニットの写真)(ユニットにつながれた蟲の写真)」


ゲンさん「うぎゃ~~~! コワっ! 気持ちわるっ! こいつ絶対この世の存在(もん)じゃないだろっ!」


トイレの花ちゃん「ええ、そんなに気持ち悪いですか? 私、なんか、この子飼ってみたいかも……(๑ÖㅁÖ๑)♡」


ゲンさん「お、おう……」


ぬうべえ「えー……」


―――――


 メンバーによってチャット上に画像がアップされたのは美瑠にとっても好都合だった。さすが文明の利器というべきか、離れた者同士で一瞬にして情報共有が完了するのは、良くも悪くも時代の進化といえるだろう。

 移動中の礼に画像をチェックしてもらい、これがバックアップユニットであるとの確証を得て、美瑠はさっそく返事を入力する。


―――――


礼「ぬうべえさん、その機械です。芋虫には手を出さなくても大丈夫ですから、機械の部分だけ壊しちゃってください!」


オカルト好き「画像助かります! 礼さんのナビで、私も同じようなものを見つけましたよ!」


トイレの花ちゃん「うわあ、これが月光市のお祭りの秘密だったなんてヤバすぎるっ!!! 全部Reiさんの言ったとおりだったんですね☆+。:.゜(*゜O゜ *)゜.:。+゜☆」


礼「オカルト好きさん、ありがとうございます。芋虫には、気をつけて。機械が完全に動かなくなればそれでOKですから」


ぬうべえ「機械、ぶっ壊したよーーー!」


トイレの花ちゃん「ヤッタ━━━٩(๑>∀<๑)۶━━━━!!!」


ゲンさん「やったな! ぬうべえさんが第1号か!」


礼「ぬうべえさん、ありがとうございます!」


ぬうべえ「近くに鉄パイプとかいっぱい積んであったから、それ使った」


オカルト好き「私も破壊完了しました! 見た感じ、装置は完全に機能を停止したようです」


礼「ありがとうございます。ふたりとも、危ないことがあるかもしれないので、一応その場から離れてください」


長老「わしも”みっしょんこんぷりーと”じゃよ。礼ちゃん、ナビありがとの」


ゲンさん「おお! 発言ないと思ったらいつの間に。長老さんもやるねえ」


長老「ほっほっ、できるヤツは結果のみを伝える、これ豆じゃよ?」


―――――


 お気楽なオカルトコミュニティの面々が能天気に騒いでいる一方で、月光市の呪いの震源ともいえるビルの一角では、驚愕と混乱と緊張が渦を巻いていた。


「貴様ら……、一体、何をしたっ!?」


 ほんの少し時間をさかのぼれば、6つあるバックアップは1つを失ったのみで、敵の最大戦力である女退魔士は深手を負い、すべては森嶋の思惑のうちにあった、はずであった。それが今やバックアップは残り2つで、あの錫杖はなおも自分目がけて幾度も振り下ろされ続けている。

 いつから、いつの間に、追いつめられる側に立たされていたのか。

 だが月光市全体を取り込んだこの呪いはいつまでも続かねばならない。邪魔するものすべてを排除するのが自分の役目だ。この祭りが終わることは絶対に許されないのだ。最愛の娘のためにも。

 森嶋は改めて現在時刻を確認した。


(残り時間は5分を切っている。何名いるかは不明だが、あ奴らの仲間が市中を奔走しているというならば、こちらは……)


 森嶋にできることまだある。月光市の呪いに関与することはできないが、デーモンデバイスの復元時間を早めることは可能だ。バックアップユニット間のトラフィックに設定されたリミッターを取り払い、通信量を一気に数倍引き上げる。そんなことをすれば市民祭自体にも予測不能な不都合は起きるだろうが、こちらも非常事態だ。

 青い腕が姿を消したことで、千霧は死角からの襲撃を警戒した。しかしそれが裏目となり、青い腕が階下から調達してきたノートパソコンを悠々と森嶋に進呈することを許してしまった。

 ノートパソコンをひったくり一心に操作し始めた森嶋を見て、千霧の警戒度も跳ね上がる。

 神速で森嶋に迫り、青い剛拳を紙一重でかわしながら森嶋の自動障壁をたたき割る。即座に錫杖を回転させ、杖尻(つえじり)で2枚目の障壁を破壊するとついに無防備な森嶋があらわになった。


「うっ……!」


 流れるように3撃目の蹴りを叩きこもうとするも、大きく掌を広げた青い腕に払われ、吹っ飛ばされる。障壁を失った森嶋も、両者の動きに煽られてノートパソコンを抱えたまま倒れこんだ。


(そうか……、私は(たばか)られていた……。こいつの目的は、はじめから私の足止めだったのだ)


 美瑠から与えられた指示を、千霧はここまで完璧にやり遂げてきた。だが、今の3撃目が森嶋に届かなかったことは、正直にいって痛かった。すでに呼吸のため大きく上下する肩を隠せず、背中には流れ出た血痕が一面にべっとり広がっている。彼女の限界も、すぐそこまで近づいていた。

 森嶋は血走った目で千霧を睨みつけ、彼女に向かって、いや、彼の障害となるすべてのものに向かって叫んだ。


「私の邪魔をするなっ!」


 青い腕が、手負いの獲物を仕留めるべく襲い掛かったその時、デーモンデバイス復元のための魔力の供給が完了する15分が経過し、理夢の持つスマホから「ピー」というアラート音が聞こえた。

 礼の事務所では、瞳明寺刀真がなんなくバックアップユニットを(蟲も含めて)破壊したことを、美瑠とオカコミュのメンバーたちが確認していた。

 残るバックアップは、あと……



 そのほんの数刻前。

 市中の随所で利用可能なレンタサイクルに乗り、必死で立ちこぎしてきた礼がついに目的地の特設会場に到着した。この特設会場は、理夢と初めて出会った『お面ディスコパーティー』が開催されていた場所だ。自転車から飛び降りながら乗り捨て、急いで会場に向かった礼は、立ち昇る異様な雰囲気に思わず息をのんだ。


「え……、なんだこれ……?」


次回、3,4日後に投稿予定です。

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