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ギタイマシ  作者: ヒロキヨ
エピソード3 Party Shaker
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34

「まずはこの道をまっすぐ行ってください! 大きな橋を渡ったら、次の交差点を左へ!」


 (ほう)ったキーを刀真がキャッチするのを見届けると、少女はそう叫んでビルの中に姿を消した。

 

 これまでオンラインでしか接することがなかった礼(?)と、刀真は突然に出会い、その目を見、声を聞いた。彼女は必死で、真剣そのものだった。

 刀真は信じようと思った。この滅茶苦茶な依頼と彼女の言うことすべてを。何より、力になりたかった。鮮やかに脳裏に焼き付いた、あの美しい少女の力に。

 知らされていたスクーターの色と外見に合致する一台を見つけると、流れるような動作でひらりと飛び乗る。刀真を乗せたオンボロスクーターは、前輪を浮かせながらフルスロットルで街道へと飛び出していった。


―――――


オカルト好き「こちらドンキ前。なんかタクシー止まったんですけど!?」


礼「そのタクシー乗ってください。行先は伝えてます。イベントに間に合わないので急いでって運転手さんに!」


長老「無事に最終バスに乗れたんじゃよ。三つ先の停留所で降りればいいんかの?」


ぬうべえ「なんか怪しそうな建物あったからそばで待機しておくね」


オカルト好き「了解です。今タクシー出ましたー」


礼「長老さん、ありがとうございます。はい。月光市役所前でOKです」


トイレの花ちゃん「今日のReiさん、なんかスゴイ……。メチャメチャ仕切ってるし、めっちゃカッコいいっ!!!(ღ*ˇᴗˇ*)。o♡」


ゲンさん「ああ、すげえな! いつもとは別人みたいだぜっ!」


礼「ぬうべえさん、ありがとうございます。バックアップの場所がわかり次第それぞれに知らせるので、このまま移動をお願いします」


―――――


 入力が一区切りしたところで、美瑠は机上にあった飴玉を一つ口に放り込み、すぐさまバリバリとかみ砕いた。

 先ほどキーを渡した男の顔は、駐輪場のひさしの影がかかって見えなかった。彼が「寺生まれのDT」なのだとしたら、これまでに礼が霊符の購入でお世話になっている人物ということになる。ならばこういった怪異には比較的慣れていて、この依頼も無難に果たしてくれそうな気がする。もちろん、それ以外の3名のことも美瑠は信じているつもりだ。自らの意思でここに残り、司令塔として皆に指示を飛ばすことを選択した美瑠に必要なのは、仲間への信頼だけだった。

 

(今の私には、信じることしかできない……。みんな、お願いします……!)



『美瑠、残りの5カ所はやはりすべて特設会場だ。詳しい場所はユメに!』



 先ほど美瑠は、無茶振りといえばこれほど無茶なことはないような注文を千霧に課していた。それが、ほんの数分。最も過酷で難易度の高い指示を、彼女はほんの数分でやり遂げたのだ。美瑠が憧れ、全幅の信頼を寄せる女性は、今日もまた自分たち兄妹の期待を大きく超えてくれた。


(千霧さん、ありがとう……。本当にすごい……、すごい人だ……)


 先の見えない不安の中で、常に先頭に立ち光明へと導いてくれる力強い声に、美瑠の目が潤む。

 理夢の反応も素早かった。

 まず美瑠のスマホに地図の画像が送られ、続いて特設会場ごとのバックアップの位置がテキストでも送られてくる。

 

「千霧さん、理夢ちゃん、ありがとう! 残りのバックアップはお兄ちゃんと私で何とかする! だから、千霧さん……、本当に、本当に申し訳ないけど、もう少しだけ森嶋さんの注意を引いておいてください!」


 通話装置から聞こえ始めた激しい戦闘音を聞きながら、美瑠は再びオカコミュのメンバーたちに向き直った。

 

―――――


……


礼「今あげたのが皆さんのバックアップの位置です。寺生まれのDTさんは、特設会場に着いたら発言お願いします」


ぬうべえ「やば、全然違う方にいた……。さっそく行きます~。なんかパソコンみたいな機械を壊せばいいんだよね?」


長老「今、バスを降りたところじゃよ。目の前にあるのが特設会場のようじゃの。では、行ってきますじゃよ」


礼「ぬうべえさん、お願いします。パソコンにいろいろ変な装置を繋げた機械がバックアップユニットです。ただ、装置の一部になってる液体漬けの芋虫には注意してください! 近づかなければ大丈夫ですから!」


礼「長老さん、ありがとうございます。長老さんも気をつけて!」


オカルト好き「会場つきました! いやあ、街じゅうすごい熱気ですね! 呪いによって作り上げられた祭りを体感できるなんて、来てよかったです」


礼「オカルト好きさん、いきなりタクシー呼んですいませんでした。代金は払うので後でいくらだったか教えてください」


オカルト好き「では早速私も向かいます……。タクシー代は市民祭のクーポンもらってたので大丈夫ですよ!」


ゲンさん「みんな、頑張れよ~!」


トイレの花ちゃん「応援してます~~~!!!٩(๑•̀o•́๑)و FIGHT☆」


―――――


 寺生まれのDTからの返事がないのは、まだスクーターで移動中だからだろう。兄の礼からも到着の知らせはまだない。

 だが、順調にいけばこれでとりあえず3つのバックアップを破壊することができる。

 形勢は少しずつ、こちら側に傾き始めていた。



次回、3,4日後に投稿予定です。

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