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事務所で礼、千霧、理夢の3人を見送ったあと、美瑠は改めて先ほど目を留めたオカルトコミュニティのチャットを追い直した。
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ぬうべえ「萌えフェス広場到着! 今夜はオールナイトイベを楽しむ予定~」
オカルト好き「うえええええっ! ぬうべえさん、まさか今、月光市に!?」
ぬうべえ「うん、来ちゃった」
寺生まれのDT「へー、すごい偶然だね。僕も今、月光市に来てるところ。やっぱり自分の仮説が正しかったのか、この目で確認したくてね」
長老「ほっほっほっ、わしはワイフと隣町の温泉宿に来とったんじゃが、今日は二人で夜祭を楽しんでいるところじゃよ」
オカルト好き「なんてことだ……。オカコミュのメンバーが4人も集まっているなんて……」
ゲンさん「おおいっ!? ってことはまさか、オカルト好きさんも?」
オカルト好き「ええ! やはりこのグルチャのホストとしては、聖地巡礼せざるを得ないでしょう。まあ、私は霊感がないので、片っ端から写真や動画を撮影してるだけですけどね^^;」
トイレの花ちゃん「いいないいなー!!! 私も行きたいけど、北海道からじゃ遠すぎるや……_(:3 」∠)」
ゲンさん「俺も徹夜で付き合うから、みんな、レポよろしく頼むぜ!」
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呆れたというべきか、さすがというべきか、数名のメンバーがすでにこの街を訪れているとは……。美瑠は筋金入りのオカルトオタクたちの行動力に舌を巻いた。
時刻は深夜に近づき、高校生の美瑠からすればそろそろ就寝時間といったところだ(さすがに今夜はそうはいかないが)。だが彼らにとってはこれからがまさに本番、ということなのだろう。
◇
『お前たちはもう一つだけ聞くべきだったのだ。それで全部か、と』
退魔組織「摩利支」支給の双方向通話装置から聞こえてきたのは、今日という日のために理夢たちが積み上げてきた努力や希望を打ち砕く、非情な真実だった。
怜悧な千霧の言葉が一足飛びでシステムの全貌を暴いていくも、「市中に配置された6カ所の端末」という現実が、さらに目的の達成を遠ざける。
礼はさっそく別のバックアップへと移動を始めた。行き先は理夢が入院している総合病院の近くにある特設会場だ。そこについてはもう、兄を信じて任せるしかない。
美瑠もまた、いてもたってもいられず勢い良く立ち上がった。
(私も、やるしかない……っ!)
残りのバックアップは4カ所。今から大急ぎで動き始めて、止められるのは一つか? 二つか……?
いや……、いやいやいやっ! それじゃあ、間に合いっこない! あの呪いの装置の復活を止めるなんて絶対無理だよ!
(私が止めるのは……、そう)
美瑠が止めるのは、残りの、すべてのバックアップだ。
「千霧さん……、特設会場の中のバックアップの場所が知りたいの。それさえわかれば、あとは私が……、何とかする! 何とかしてみせる!」
なるべく千霧だけに聞こえるよう小声でささやきながら、ズンズンと気合を入れて美瑠が向かったのは、外へ出るための事務所のドアではなかった。
事務所に置かれた冷蔵庫のドアを勢い良く開け、中から4個ひとセットのプリンと、紙パックのいちごオレを取り出す。さらに冷蔵庫横の棚に移動し、菓子器に入っていたお茶請けの饅頭をすべて腕に抱え込むと、急いで礼のデスクに戻り、それらをすべて机上にぶちまけた。ついでに、礼が適当に置いていた飴玉やひと口チョコなどもかき集める。
(まだ全然足りない!)
傍らに置かれていた自分の通学カバンをひったくり、ガサゴソと中を漁って菓子パンを2つ取り出す。続けてカバンを逆さに持って振ると、派手な音を立てて教科書やノートがばらまかれた後にチョコバーが一本、ポトリと落ちてきた。
情報収集用に開いていた礼のノートパソコンを引き寄せ、インターネットでいくつものサイトを開きながら、美瑠は目の前に積まれた菓子類をすさまじい勢いでむさぼり始めた。
これは燃料だ。
4個ひとセットのプリンを、ワンショットの酒を飲み干すように次々と口の中に流し込んでいく。
千霧のような才能も、礼のようなバイタリティも、理夢のような強い意志もない自分がとんでもない無茶をやってのけるには、この甘い甘い、燃料が必要なのだ。
ハムスターの頬袋よろしく両頬をパンパンに膨らませながら、美瑠の指は目にもとまらぬ速さでオカコミュのチャットにテキストを入力し始めた。
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礼「皆さん、こんばんは。今どこにいますか?」
◇
今回のお話での伏線(Episode 3 - 22話)回収、
最近読み始めた方には割と早かったと感じられたと思いますが、
投稿日でみれば実に7年10か月ぶりの伏線回収となりました……。
約8年も待っててくれた人いるかなあ。
(いたら教えてください。最大級の謝辞を贈呈させていただきます……)
さすがに隔世の感は大きく、当初は「萌えフェス広場なう」というセリフを使う
予定でしたが、すっかり時代遅れになってしまいました;
◇
次回は明後日に投稿します。
◇
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