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ギタイマシ  作者: ヒロキヨ
エピソード3 Party Shaker
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20

 総合病院で理夢(の肉体)誘拐事件があった日、その数日前から、インターネット上に奇妙な情報が流れ始めていた。


*「月光市高森町2丁目で、オバケを見た!」


 ツイッターのそのつぶやきには夜の街角を撮影した画像が添付されていた。テキストがいう通り、そこに確かに白い霧状の『何か』を確認することができる。

 月光市にて不思議なものを見たとする同種の目撃情報はツイッター、個人ブログ、各SNSなどに次々と投稿された。画像の有無や情報量の違いこそあったが、一連の現象はこれが『たまたま起こった』ものではないことを物語っていた。

 怪異目撃の舞台が現在市民祭で話題の月光市ということもあり、ネットの一部ではこれらの情報をまとめるとともに『月光市で何かが起こっている!?』と異常な盛り上がりを見せ始めた。

 その一方で、目撃情報が出始めた当初から、これが祭りをさらに盛り上げるために、市民が組織的に行っている壮大な自作自演だと断ずるものも少なくなかった。


「ぼくの小学校で、夜にガイコツ標本が廊下を歩いていたといううわさです」

「西山霊園の墓地で人魂が輪になって踊っていました」(※添付画像あり)

「用水ため池で釣りをしていたところ、突如水面に河童のごとき人影が現れ、再び水中へと消えていった」(※添付画像あり)

「稲荷前商店街。脇道の暗がりから『殺させて~!!』という幼女の声が聞こえてきた! メッチャ怖かった!」

「国道をバイクで走っていたら、首のないライダーに追いかけられたぜ!」

「幽霊に会うために夜の月光市を歩いてみた(YouTube。動画は友人が幽霊に扮したフェイク作品だが、0:42から画面左側に半透明の人影が数秒のみ映る)」

「ダチが妖怪とタイマン!」

「塾帰りのバスで幽霊が隣りに座ってきた件について」

「私は飲み屋街で神を見た」

「死んだ夫が夢枕に……」

 ………

 ……


 数十枚はあろうかというプリントアウトの束にざっと目を通した天剛は、深刻な表情で顔を上げた。

 無論これらの情報は虚実入り乱れ、そのすべてを信用できるものではない。

 だが、かの地が彼の予測どおりに変貌しつつあるのは明らかだった。

 執務室の天剛のデスクの上には、この騒動の首謀者の資料もあわせて用意されていた。


(森嶋重四郎……)


 手に取った資料を見ても、男の正体に迫れそうな情報は何もない。

 そこにはただ、家族を襲った痛ましい事故の記録と、娘のために転々と各地を飛び回る、いじましい親心の記録があるだけだ。

 彼はいったい何者なのか。

 一介の研究者だったという彼がなぜこれだけの力と、知識を得ることができたのか?

 天剛の千霧への信頼は絶対である。それでも、依然として底が見えないこの森嶋という男への不安を、天剛は拭い去ることができなかった。




 時を同じくして――

 礼とその仲間たち、そして天剛以下『摩利支』の面々以外にも、月光市の異変に気付き、この狂乱の正体に迫る者たちがいた。


オカルト好き「皆さん、月光市の件、もう知ってます?」

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