閑話その3 決
「お、恐れながら一つだけ確認いたしたいことが」
「なんでしょうか?」
「せ、責任は全て負うと言われましたが、それには……」
「はい。もしもの時に縁に手をかけることもその内です」
「は、はい」
「他に何かある奴は居るか?」
「……」「……」
「いないようだね。なら縁を処分すべきだと思う者は立ちな」
「……」「……」
「忌子はしきたりに従い排除すべきだ!そうだろう‼︎』
「……」「……」
「おい⁉︎あんたたち何黙ってるんだい⁉︎」
「……さっきも言っただろう?あれだけの事をしたアンタに誰が賛同するんだい」
「そんな……」
「……そもそもだ、母親が忌子とは言え子供を失う事を良しとするわけがないだろう?それでも有花理は“当主の責務”として受け入れようとしていた。悔しくとも、な」
「この会合の始まりでアンタがしきたりの事を言い出した時に有花理が固く手を握りしめた事に気付かなかったのかい?」
「それにね、先の投票でしきたりに従い忌子を排除すると決まった時有花理はどうだった?誰より冷静に、静かに受け入れていただろ?下手な事をせず、待っていれば良かったんだよ」
「それをアンタが無理にでも確保しようとしたから桜花が結界を張り、今に至るんじゃ無いのかい?」
「それに忘れたかい?ナニカの存在を喰う力に抗うのは人に覚えてもらう事、すなわち人との“縁”だ。そういう意味では桜花の方がよっぽどできた曽名井の術者だよ」
「勝ち負けがある話じゃないけどね、それでもこの場はアンタの負けだよ。下がってな」
「しかししきたりを……」
「……アンタはまだいうのかい?ならあんたにゃこの先やる事がある」
「縁がいる事で結界がどうなるか。十年、十五年後桜花がどう育ち、縁をどう護っていくのか。それを見極めな」
「それでもまだ縁を排除すべきだと判断するのならその時にまた議にかけりゃいい。円が言ったろ『何か有れば責任は我が家がとる』と、論をするのもその内だ」
「その時には今立たなかった者の中にも、アンタの力になる者も出るだろうよ」
「そうなった時、アンタの言葉に理が有るなら私も賛同するさ」
「……」
「……はい」
「よし」
「さて、少々問題はあったがこれで締めだ。縁はしばらく見守るって事でいいね」
「それで有花理、アンタは本当に?」
「はい。言の葉を翻す者には誰もついてこないでしょう」
「作法に則り次の新月の夜に執り行います」
「……そうかい」
「皆様本日はお疲れ様でございます。そして異例を認めていただき感謝しております。その上で息子、縁を見守っていただければ幸いです」




