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ぎゃくさつ! ~JKのどきどき紛争傭兵ライフ~  作者: ルト
第五章 ラストミッション
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ラストミッション(4)

 行き止まりの丁字路だ。

 ベルナルドの挙動に気を取られていた沙希は、全速力で建物に突っ込んでいた。

 質量と衝撃で建物が爆発し壁を崩していく。


「あぁああ……くっそ……!」


 沙希もまた跳びかけた意識をつなぎ合わせて、全身を苛む痛みと気怠さに歯噛みする。

 機体の速度を突然に奪われた慣性が、沙希の五体と脳に牙を剥いた。脳が丸ごと頭蓋骨に張り付くような激痛に指先が震える。

 沙希は震える腕で操縦桿を引く。

 溺れるように動いた機体の手足が建物を崩す。グロリアは瓦礫に沈んでいた。

 セダンはバックで切り返し、沙希を置き去りに走り去る。

 いずれヴォーリャが来るだろう。脳震盪に朦朧とする沙希が強く笑った。


「……めるな」


 熱に浮かされたような腕で操縦桿を握りしめる。

 宙に浮くような足でペダルを踏みしめる。

 焦点を結ばない視界のまま、片目をつむって強引に景色を捉える。割れた壁から細く光が差している。


「舐めるな、クソ野郎がッ!」


 ブースト全開。

 脱出は諦めた。半壊した壁をなぎ倒すように前進して、グロリアは廃墟から脱出する。

 建物を突き飛ばし鐘楼を蹴飛ばして、大通りに狂奔していく。

 沙希は再びベルナルドに食らいついた。

 ベルナルドは沙希を無力化したと思い込んだらしい。明らかに挙動がひとつ遅い。

 沙希は笑声を吐き捨てて、乱雑に機体の腕を伸ばす。


「つーかーまーえーたーッ!!」


 沙希の見ている先で、グロリアの腕が勝手に逸れる。

 操作を誤ったわけではない。グロリアの視界ががくがくと震え、アラートがわななくように合唱し、ステイタスモニタでダメージコントロールの警告表示が赤く嘆く。


「ぅあ?」


 前方の十字路にヴォーリャが屹立している。

 装甲の厚い胸板にせせこましく両手を寄せて機銃を構え、お手本のような射撃姿勢でマズルフラッシュを閃かせていた。厳めしいフェイスシルエットと視線がかち合う。

 メインスクリーンが被弾の衝撃に揺れる。


「撃たれてるッ!」


 沙希は呆れるほど鈍い身体でグロリアのペダルを蹴りつけた。

 石畳を蹴って高く跳躍する。

 ヴォーリャ特有の鈍ったらしい仰角動作に、グロリアの機敏極まる機動性で畳みかけて辛うじて射界から脱出する。

 射撃を諦めてウェポンベイを開放。アフターシークミサイルの全自動に任せて解き放つ。

 首輪を離されたマイクロミサイルが歓呼の叫びとともに空を切ってヴォーリャに殺到、爆発の渦に飲み込んだ。


『おい沙希、無事か』

「今にも死にそう」


 ロザリー機が沙希のもとに急行している。

 沙希はアパートの屋根に着地して、ドカンと足を踏み抜いた。沙希は忌々しげに呪って這い出るように再度跳ぶ。

 警告表示。

 ヴォーリャを一機退けたと思いきや、いつの間にか一機増えている。

 ロザリーが沙希機に近寄るあいだに銃撃を加え爆破した。いつの間にか一機増えている。


『ゴキブリかこいつら!』

「ウォーキーボックスよりマシかなあ? あいつら体感で秒速五機ペースに増えていくから」

『お前さては元気だな!?』


 もちろん沙希は死に(てい)で、吐き気をこらえて唾を飲みながら機体を操る。

 ようやく視界が焦点を結ぶようになり、目を瞬かせて首を振る。へばりつくような頭痛に顔をゆがめた。


「ベルナルドは?」

『ヴォーリャの陰をスイスイだ。クソ、どこから湧いてきたんだこのヴォーリャ』

「増援っていうか、もともと街の近くに伏せていたんじゃないかな。それが一気にたどり着いた」

『クソ野郎、陰湿だぜ』


 ヴォーリャと並走しながら撃ち合い、撃破すると二機に挟まれ、一機落とすと二機増えて……、

 沙希とロザリーはぐるぐる飛びながらヴォーリャと戦っていく。


「まずい……ベルナルドから離れてる!」


 沙希は叫んだ直後に吹き上がった火線を避けてバック宙。ロータリーに着地する。

 沙希は舌打ちした。


「おのれ」


 ベルナルドを慌てて追ってきて、戦ううちにベルナルドから引き離されて、そして今やどうだ。


「ヴォーリャに包囲された」


 疑うべくもない。

 ベルナルドは自分自身の価値を囮に、沙希たちを分断してみせたのだ。


「データがどこかの誰かに渡らせるわけにはいかない。こっちの焦りを突いてきてきやがった」

『どうする、沙希』

「切り抜けるっきゃないでしょ、ロザリーちゃん」


 沙希とロザリーは笑いをかわす。

 沙希はショットガンとアサルトライフルの二挺持ち。ロザリーは両手にグローブをはめる。

 しゃっ、と鋭い呼気とともに二機は同時に飛び出した。

 圧殺されるような砲火へと、沙希とロザリーは牙を立てる。



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本作は金椎響様「さよなら栄光の讃歌」をもとに、本人の許可を得てスピンオフとして描いた作品です。

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