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ぎゃくさつ! ~JKのどきどき紛争傭兵ライフ~  作者: ルト
第五章 ラストミッション
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ラストミッション(2)

「――!?」


 グロリアの足元が爆発した。

 IED、粗製爆弾。

 傾いた機体のダメージを鋭く分散させながら沙希は周囲を見回す。


「待」

――逃げ出さない民間人。

「ち」

――やたら間口を大きく開けた民家。

「伏」

――護衛対象と併走しなかったヴォーリャ。

「せ」

――民家から飛び出すアッシュホワイト。

「ッ!!!」


 沙希の左右を無数の亡霊が駆けていく。


 ウォーキーボックスだ。五機、八機、十機……十二機もの、配されていたWBが一挙に現れた。

 機体が傾ぐまま、沙希はグロリアの銃を連射する。

 民家の壁を砕き、それでも十字路を駆けていくWBを捕えられない。銃の反動を加えられてバランサーが悲鳴を上げる。

 倒れ行く機体の中、沙希は絶句する。


 ベルナルドはWBを開発する悪魔的な商才の持ち主だ。

 迂闊が過ぎた。相手はこの十字路で追跡するジープを爆破し、WBで包囲殲滅する腹積もりだった――敵の作戦を頓挫させたせっかくの幸運を、むざむざ手放してしまった。

 強襲部隊は装甲化されたジープから降りている。


「逃げろぉ――ッ!!」


 道路の真ん中で立ち尽くす精鋭兵士に、十二基の無慈悲な火線が突き立てられた。

 バランサーの限界を超え、沙希の機体は十字路の真ん中に倒れ込む。

 石畳が割れ砕け、仮想照準が乱れた。早朝の空がスクリーンいっぱいに広がる。


「こなくそ!」


 シートに押しつけた腰を支えに、沙希は両手両足でグロリアを繰る。

 FHは機敏に応じ、ネックスプリングで起き上がる。左足首の損傷は大きいが、走り回るのはFHの主眼ではない。

 銃を向ける先で、アッシュホワイトの死霊たちは波が引くようにかけ去っていく。

 入れ替わりに、曲がってくるや否や急加速するワゴン車が来た。

 ぎこちなく運転しているのは子どもだ。停車したジープをまっすぐにらみつけている。


「車爆弾!」


 沙希は急いで銃撃を加える。

 ボンネット、フロントガラス、ルーフ、エンジンブロックに次々と大穴があき、ガソリンが火球に吹き上がった。車体がバウンドして、再度の爆発。


『バカ、後ろもだ!』


 ロザリーの怒号と、背後に迫る巨大な圧迫感に沙希が顔をあげる。後方映像を出した。

 背後に割り込むロザリー機。

 その向こうから軽トラックが駆け込んできていた。高所作業用の足場で気休めの装甲化を施したトラックは、背中に機銃を担いでいる。

 十代前半の子どもで構成された改造戦闘車だ。

 機銃が吼える――寸前に、ロザリーの銃撃がトラックの横腹に突き刺さった。ガソリンが爆発する。


『無事か、沙希!』

「もちろん。さんきゅ、ロザリー」


 背を合わせて立つロザリー機に沙希は笑う。

 メインスクリーンに、車両の爆発を縫って道路を横断するWBの姿がよぎる。回り込むつもりだ。

 と思わせて、別方向の角から銃口だけを出したWBが掃射してくる。


「く、矢継ぎ早に!」


 沙希の銃弾は身をひっこめるWBを捉えることができない。入れ代わり立ち代わりに、通りのどこかから一方的に撃たれている。

 道路の真ん中から撃ったところで石造りの建物に遮られる。見通しはいいが、射界が狭い。狙われ放題だ。


「これは、まずいねぇ……」


 沙希はFHをジープの前でしゃがませた。

 しかし機体を盾にしたところで、WBの銃弾は跳弾でも十分な殺傷力を保つ。


『逃げろ!』


 ジョシュアが命令を叫んだ。


『そこでベルナルドを確保してもダメだ、流れ弾で死んでしまう! 退避するんだ。そこにいても死ぬだけだ!』


 沙希はちらりと足元を見る。

 凶弾に倒れた仲間を、生死にかかわらずジープの近くに引きずり戻したところだ。

 ライザが気炎を飛ばし、ブレンデンが負傷した仲間を載せる。どうやら二人は無事らしい。

 運転席に着いたライザが沙希の乗るFHを見上げた。


「沙希! ここは頼む!」


 返事を待つ暇もない。

 ジープはタイヤを滑らせて駆け出し、十字路の横合いから撃ち込まれた銃火を潜り抜けていった。


「撃たせるかっ!」


 沙希は機体を翻し、十字路の角に滑り込む。

 二機のWBに報復射撃。一機は銃弾を受けてばらばらに吹き飛んでいったが、もう一機は素早く機体を引いて逃れてしまった。

 入り組んだ街並みが小型軽量なWBの味方をしている。


「かーっ! 街ごと絨毯爆撃で焼き尽くしてぇー!」


 両足を失ってもがくWBに止めの銃撃を加えながら沙希は呪う。


『沙希ッ!』


 張り詰めたロザリーの声。

 レーダーに感がある。振り向けばヴォーリャが二機編成で飛んできている。

 彼らからのロックオン照射を受けて、沙希は青ざめた。


「おま――まっじか!」


 市場の真ん中に停まるベルナルドと、空からのヴォーリャを沙希は交互に見る。

 日本車は運が悪ければ沙希機の爆発に巻き込まれる距離。――運がよければ無傷で済む距離。

 そして沙希はみすみす爆破されてやるほど献身的ではない。

 ほんの数歩の油断。

 この距離なら大丈夫だろうと敵を撃破しに動いた距離のせいで――ベルナルドを守るヴォーリャからの砲撃を許してしまった。


(ベルナルドに近づいて盾に――ダメだ。ベルナルドに死なれて困るのは私たちだ!)

「あああああああああああああああっ!!」


 沙希は咆哮をあげながら四肢を操って操縦装置を操作する。

 フレアを空にぶち上げ、フルブーストで後退。街角に飛び込んで機体を隠す。

 狭く切り取られた屋根の上を、フレアに誤誘導された対FHミサイルが飛んでいった。

 ロザリーも同じくミサイルに追い立てられて路地に逃げ込んできている。


(再び飛び込んで確保――無駄だ。ヴォーリャは今も狙いをつけているに決まっている。飛び出したところをドカンだ!)


 沙希は全身いきり立って肩を揺らしながらFHをホバー移動させ続けた。


「クソっ! くそっくそぉっ! すみませんジョシュアさん! ベルナルドから引き剥がされた!」

『見ていた。仕方ない。連携を怠った僕のミスだ。大丈夫、最後に逃がさなければ同じさ。取り返そう』


 ジョシュアが一語一語を短く言う。

 彼も焦っている。

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本作は金椎響様「さよなら栄光の讃歌」をもとに、本人の許可を得てスピンオフとして描いた作品です。

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