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ぎゃくさつ! ~JKのどきどき紛争傭兵ライフ~  作者: ルト
第三章 ファースト・ミッション
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ファースト・ミッション(2)

『ロザリー、退避して! 地上部隊は怪我人多数、戦闘は困難!』


 アメリアの悲鳴が通信を貫く。

 まるでそれを合図にしたかのように森林でアサルトライフルの高い銃声が届いた。歩兵がいた。複数個所からのサラウンド。完全に包囲されている。


「作戦が筒抜けじゃん……っ! SOPとか知ったことか!」


 沙希の視線入力とシフトアップに反応し、サポートAIがにわかに励起される。

 戦闘支援システムが自動で立ち上がり、HMDに情報が増えた。風向、相対距離、対流速度、気圧高度、グリッドオーバーレイ、残弾数。戦術アナウンスまで現れる。


『敵の有効射程外から火力制圧』

「交戦開始距離が相手の間合いだっつの! 基本に則ってられるかっ!!」


 沙希は吐き捨てて操縦桿のセレクターを回す。

 背部に増設されたコンテナが開き、巣から飛び立つ蜂のようにドローンが飛んでいく。

 ファイアフライ。自律制御の火力支援UAVだ。

 同時に鋭くスラスターを噴いて後退。RPGの噴煙が機体のそばを駆け抜けていく。


「ちぃ……! 対爆発装甲にRPGは効かないらしいけどっ!」


 記録に残らない戦闘をこなしながら、沙希はひしひしと感じていた。

 通常の作戦手順ならば、敵性施設などロケット弾や爆撃で粉砕してしまっただろう。

 だが、ここは人の住んでいた村だ。名目上は無人。火力でもって攻撃する理由がない。

 だから厳密な承認手続きを踏まずに作戦決行に踏み切ることができるし、FHを人道上の配慮なく作戦に配置することができる。その代わりに通常の作戦で得られるはずの支援が得られない。


 先手を取ってはならない。

 敵はそこにいないのだから。


 攻撃を釣り出し、応戦と称して叩き潰す。そのためのグロリア重装型(エンハンスド)だ。

 ユニット・エコーに課せられる仕事は、こんなものばかりになるだろう。


「まったく嫌んなるね……アメリア! どう応じればいい!?」

『えっと、とにかく地上部隊を守んないとっ!』


 焦った声が上ずっている。

 沙希は息を吐いた。


(ダメだな……アメリア、ちょっと錯乱してる)


 声を交わした彼らを守りたい、という優しさが先行して状況が読み取れていない。

 守りに入って逃げ切れる戦況ではすでにない。

 沙希たちは寡兵(かへい)で、囲まれており、地の利がなく、怪我人ばかりの地上部隊を執拗(しつよう)に狙う歩兵のみならず、武装したFHが続々と立ち上がっている。


「まずはFHを黙らせる」


 歩く戦闘機と呼ぶべきFHは、歩兵部隊で相手取れる兵科ではない。民兵を蹴散らすのはその後だ。

 聞きたかったのは、ヴォーリャをどういう分担で倒すか、という実行手順だ。

 聞けないことが分かった沙希は、指示を待たずにセレクターを回した。

 散弾銃を腕に構える。

 突撃銃と散弾銃の両手持ち。人間ならとても保持できない愚行も、機械の腕ならば実現できる。


「ジゼル」


 沙希は声を低くして相棒に尋ねる。


「ジゼルは、人が死ぬ様子って見ても平気?」


 沙希の質問を、正しく理解したのかどうか。

 年若い戦士は重々しく応じる。


『大丈夫』


 沙希は笑った。スロットルを開けてペダルを踏む。


「私が頭を押さえる。包囲を完成させないように! 優勢火力ドクトリン相手に主導権を渡しちゃいけない!」


 沙希は自分に言い聞かせるように気炎を吐く。同時に勢いよく飛び出した。

 優勢火力ドクトリン。より多くの砲火力で押し潰せば勝てる、という人海戦術だ。

 一機一機がオートクチュールな高級モデルのグロリアに対して、廉価で生産性の高いヴォーリャという対照性ゆえに際立つ戦術になる。

 PMSC地上部隊の逃げ道を塞ぐように二機のヴォーリャが待ち構える。手に手に突撃銃を構えた迷彩色の鎧騎士は、森の木々を縫って単独突っ込んでいく沙希機にうろたえた。

 サポートAIが澄ました電子音を響かせる。

 通信の送受信量と機体の動きから優先して倒すべき方にマーカーをつける。敵の持つ銃口を分析し、沙希のHMDに弾道を予測表示する。

 沙希は笑って操縦桿を傾けた。


「連携できなきゃ烏合の衆だ!」


 突き刺さってくる弾道予測線から機体姿勢を逃がす。虚空を走る火線をかわした直後。

 トリガー。

 沙希機の構える散弾銃がどぼっと重たい音を吐いた。

 タンデム弾頭の先鋒を成す散弾がヴォーリャの正面装甲を驟雨(しゅうう)のように削ぎ落し、続いて注射器のような弾頭が装甲に突き刺さる。刺し通した穿孔から熱風が吹き込まれ、機体内部で爆炎が荒れ狂っていく。

 内側から焼けただれてヴォーリャ隊長機は崩れ落ちた。

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本作は金椎響様「さよなら栄光の讃歌」をもとに、本人の許可を得てスピンオフとして描いた作品です。

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