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異能者は異世界に来て何をする  作者: 七刀 しろ
第五章 ザ・バッドエンド
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エルフ

夏も始まって暑い

「完食っと、美味しかっただろ?」

「うーうー」

「そうか。うまかったか」


 エルフの子にお粥を食べさせていてわかったことはこの子は喋れないようだ。口や喉の筋肉は拙い言葉で喋れる程度には発達しているのになぜだろうか?

 何を聞いてもうーとしか答えてくれないが、少し心を開いてくれたような気がするが、喋ってもらわないといろいろ困る。

 うーとしか言わないからこの子の名前はわからないままだし、身体情報がわかってそれ以外のことがわからないから話が進まない。どこから来てなんでここにいたのか。傷だらけの理由は奴隷だからだろうけど、この子のことがわからない。

 頭の中を覗けたらいいなって思ったけど頭を覗けたらこの子のプライバーもクソもなくなってしまう。


 お粥は全部食べてくれたのは嬉しいもう少し食べたそうにしていたが満腹感を感じている。これ以上食べたらお腹を壊して下すだろうからこの子の食事はこれで終わりだ。

 デザートのアイスも止めた方がいいだろう。


「タカシさん皆さんを呼んで来ましたよ!」

「来たか。みんな突然だが、さっきこの子を保護したんだ」


 エルフの子が食べたお粥のパッケージを片付けているとミリ達が来たので突然だけど顔合わせでエルフの子を紹介する。


「いつの間にその子を保護する時間があるのよ。この短時間で」

「短時間っていやな、車を車庫に入れていると時に偶然見つけたんだ。怪我をしているようでな。それで保護をして軽い傷の手当てはしたんだが欠損は俺には治せなかった」


 ジュンの突っ込みが入った。ジュンが施設の中へ入ってから今、数十分ぐらいしか経っていない。短時間と言われたら短時間だが、パスが偶然見つけてくれたとしか言えない。そしてみんなが食べる夕食の準備も終わっているけど俺みたいな能力を持っていればもっと早く終わっていると思うけど。ジュンにはそこら辺のこと理解していると思っていたのにな。それでもどこから拐ってきたのかって思われたのか?心外だな。


 この子との出会いを話して能力を使って手当てをしたと説明と同時にエルフの子の痛々しい耳をみんなに見せた。

 元々耳は同じエルフであるスフィアの耳と同じように長く尖っていたが、今は欠損して普通の人と同じように丸みを帯びた形になっている。出血は止まっているが断面図はとても痛々しい。

 世の中には酷いことをする人もいるようだ。

 痛々しい耳を幼いアルムの前で見せるのは間違いだった。アルムは悲しそうに欠損を見つめていた。

 本人のエルフの子は痛みはもう慣れたのかケロッとして首を傾げている。


「酷いですね。奴隷でもここまでの扱いはされませんよ。いや、変な趣向の人ならば耳を切り落とすのも厭わないかもですが、ほとんどの場合奴隷というものは人がやりたがらない雑用や危険な作業をさせられます」

「変な趣向ね。私もタカシが現れなかったらこうなっていたのかしらね」


 元奴隷だったスフィアはミリの話を聞いてしみじみ言う。ルルーンの街で魔物の群れが起こらなければ俺達と出会うこともなく奴隷として生きていたのかもしれない。魔物の群れがルルーンの街の人々にパニックを起こして損害を与えたのに対してスフィアとってはいい方向に転んだのは間違いない。

 魔物の群れが俺と空気のやろうが戦って起きたのが原因かもしれないっていうのは黙っていた方がいいだろう。

 それで怪我人も出ていたことだし、人には言わない方がいいよね。


「それじゃ、アズサこの子の耳を頼めるか?」

「大丈夫だよ。研究所にいたときの実験で片腕を切り落とされた上に断面を焼かれた子の腕を治したことがあるよ。それに比べればイージーだよ」

「それって傷口につけて治したの?」

「ううん。違うよ。その方が簡単だけど僕の実験の担当の人が別の職員の人に腕を渡してどっかに持ってちゃったんだよ。しょうがなく切り落とされた人には新しい腕を生やしたんだ。そういう実験だったみたいだし、ずる防止で腕を持って行ったと思うんだよね」


 腕を切り落として焼くとは研究所は本当に酷いことをするな。実験を担当した研究者は腕が治るかもわからないのに問答無用で切り落としたのだろう。相手は被験者なのか、職員なのかは知らないけど相手はどっちなのか聞かない方がいいだろう。トラウマになっているかもしれないからな。

 アズサの表情を見るに今話した実験は優しい方だと思うけど研究所の人は人間ではないと思うよ。

 しかし、切り落とした腕をどこに持っていったのだろうか?人間じゃない研究所の人は人の腕を保管するハズ無いから別の被験者の実験で使ったと思うけどな。


「じゃあ、始めるよ。大人しくしてね」


 アズサは早速、エルフの子の耳を当てて治療を始める。しばらく経つとアズサの手の隙間から尖った耳がひょっこりと出てきた。

 もう終わったと思ったけどアズサは耳から手を数分間は離さなかった。後で聞いたところアズサ曰く、「欠損の治療は治した部分の血管に血を満たす作業や神経を張り巡らせる必要があるんだよ。手を抜いて治したら治したら部分が腐って取れちゃうの」だそうだ。

 腐った部分は治せるらしいが一回で治せるなら時間をかけてゆっくり治すようだ。


「完治っと。5分ぐらいかな?もっと早くできたはずなんだけど鈍ったかな?」


 アズサの治療が終わり、エルフの子の耳は元々欠損がなかったようにエルフの子から長く鋭く尖っている。俺達は完治するまで二人を静かに見守っていた。


「アズサさんの治癒はいつ見てもすごいですね。欠損をあんなに簡単に治してしまうなんてやっぱり不老族ってすごいです」

「ジュンちゃんは病気を治しちゃうし、治癒魔法を極めても息を吸うみたいに早くできないわ。二人がいたら病気になったり、ケガしてもすぐに治してくれそうよね。魔力切れ起こすと使えなくなるしね」


 エルフの子の耳を完治するのを見て密かにアズサのことを称賛するミリとスフィア。魔法でも似たようなことはできるようだが、数分で早くできないようだ。しかも身体内に存在する魔力がなくなると使えないのも欠点らしい。

 アズサやジュンみたいな人に喜ばれるような能力はいいかもしれないが、俺が持つ念力みたいな人を傷つける能力やストーカーになれる視界は持たない方がいいのかもな。キサラギ達に簡単に与えたが、一歩間違えば犯罪者になりうる能力だ。


「よし、ご飯にするぞ。ってこの子の食事は今済ませたところなんだ。だから」

「タカシがお風呂に入れるのは禁止よ?傷が他に無いかお風呂で探すんでしょ?身体中虱潰しに」

「そんなことはしない。この子にはもう傷は無い。お風呂に入れて早く休ませたいんだ」


 能力でエルフの子の身体の状態が手に取るようにわかるのになんでお風呂で傷を探さなくちゃいけないんだ?俺ってジュンから見たらそんなに変態なのか?

 ミリやアルムとお風呂に入るのは黙認するのにこの子はダメなんだ?ミリやアルムは自分からお風呂に入ろうと俺に懇願するのに対してこの子は喋れないし、自分の意思表示が幼くてできないからダメだそうだ。


 仕方ないのでエルフの子には悪いが別の部屋で休んでもらうことにした。


 あらかじめ解凍しておいた冷凍食品をみんなで食べた。おいしそうに冷凍食品を食べてくれるが添加物たっぷりな食べさせている。成長期の子にとって二日連続で冷凍食品は体に悪そうだ。明日、エルフの森につけば普通の食事になるだろし、つかなければミリが野草や木の実を採取したり、王都で買った物で調理してくれるだろう。冷凍食品はいくつか持っていくが、こういう食事もたまになら悪くないだろう。


 タカシ達が食べている冷凍食品はオーガニックな素材を使用しており、調理は科学的ではあるが添加物は使用しないで特殊な方法で調理して冷凍している。そもそもタカシは添加物を体にとって有害な毒素として勘違いをして変な偏見を持っている。

 数日後、中身がドロドロに溶けた冷凍食品をこっそり道端に捨てるのであった。


「ちょっと俺、やることあるからみんなでゆっくりはいってきな」

「ちょっと私があんなことを言ったから拗ねちゃったの?」

「それは違うんじゃないかな?タカシはタカシで何かあるんじゃないの?」

「私達のお風呂を覗く以外にあるの?」

「なんでだよ!そこに風呂が出るんだよ」

「だってさっき視線を感じたわ」

「それはお互いのために言わない方がいいんじゃないのか?」


 ジュンはさっき自分がお風呂に入っていたところをタカシに覗かれたと言いたいのだろう。あれは故意に覗いたわけではなく偶然の事故だ。ジュンがお風呂に入るのを事前に知っていたから少し遠回りの廊下側を通り抜ければよかった話だが。

 ジュンはみんなになんでご飯前にお風呂入っていたのかを説明しなくちゃいけなくなる。俺はその理由を知っているぞと警告する。よほど漏らしたのがみんなに知られるのが恥ずかしいようで顔を真っ赤にしながら口をパクパクさせるだけでそれ以上喋ることはなかった。とにかく今は距離をとった方がいいだろう。今夜相談したいこともあるし。


「あの子は昨夜スフィアが寝ていた部屋にいるから忘れずにお風呂に入れてあげてね」


 同じエルフだし、その方がいいと思ってスフィアのベッドに寝かせたがエルフの子は今部屋の中をうろうろしている。心拍数や体温等の変化は無いから寂しいとかじゃないと思う。心までわかるわけじゃないから暗い部屋に一人にしたから寂しいのかもしれない。

 みんなと楽しくゆっくりお風呂に入って今夜はスフィアと寝るといい。同族だし、きっと落ち着くだろう。


 俺は施設の外に出て、エルフの子がここに迷い込んできたのか調べることにした。大した収穫は無いと思うが明日はエルフの森へ向かうことだし、無駄なことだと思うが周囲の探索した方がいいだろう。


 外は太陽が沈み暗くなりかけている以外は車を乗り回していた時と変わりない。近くに魔物のいた形跡はなく、俺以外に何もいない。

 岩に腰かけて持ってきたタブレット端末のマップアプリに目を落として俺達が向かうエルフの森へ向けて視界を飛ばす。


「そいえばあのクリーチャー達はどうなったのだろか?どっかに行って自由気ままにやっているだろうか?お?これは靴の跡か。向こうに向かっているな」


 異形なクリーチャー達について考えながら探索を進める中で馬車の車輪の痕と馬と人の足跡を見つけたので足跡が続く方へ視界を向ける。300メートル進んだ先に集団が野営をしていた。


「昨夜の化け物共はなんだったんですかね?」

「そうだな。魔物に出くわしたと思ったら俺らには目もくれずに去っていったな。気色悪るかったが、見世物として一体でも捕まえてもよかったな」

「そうですかね?気味悪くて見てらんなかったわ。捕まえなくて正解でしたとあっしはそう思いなすがね。そういや惜しいことをしやしたね」

「エルフのガキのことか?そうだな。囮として放したがもったいなかった。襲ってこないとわかっていたら逃がさなかったのにな」

「逃がした魚は大きいかった。被害が出して捕まえた奴隷なのに簡単にな。今頃そこら辺で死んでいるか、魔物に食われているかもな」


 冒険者風の人達が寝ていたり、何人かの人物が焚火を囲んで話している。近くには大きい馬車があった。商人と雇われた冒険者といったところだろう。

 話を盗み聞きしているとあくどい話をしているように聞こえる。どうやら奴隷商人達のようだ。

 昨夜魔物と出くわして囮を放ったようだが、その魔物は自分達には目もくれずにどこかに去っていったようだ。自分達目もくれない魔物?もしかしてあの異形のクリーチャーと出くわしたのか!?

 あのクリーチャー達はこっちの方に来たみたいだ。あいつらエルフの森へ向かっているのか?明日、俺達がエルフの森にむかったら出会うのだろうか?あのおぞましい姿をしたクリーチャー達に。

 まいい。これは俺の憶測だが、あのエルフの子はこいつらの奴隷で、移送中にあのクリーチャーと出くわしたこいつらは囮としてエルフの子を解き放って、エルフの子はそのまま俺達がいる施設へたどり着いたのではないだろうか。しかし、ここから施設までかなり距離があるから小さいエルフの子が丸一日かけてもたどり着くのは不可能に近い。俺でさえ、ここから施設まで不通に歩いてつくのに二日はかかると思う。真相は闇の中ということか。

 ただ、馬車には檻があり、その中にエルフの子みたいに傷を負ったエルフが合計8人いた。エルフ達は表情が暗くてどう見ても被害者にしか見えない。商人達は悪党なのだろう。

 エルフ達に声をかけたいが、視界はコミュニケーションが取れないのは難点だ。地球の言葉は通じないだろうし、どうしたものか。檻をこじ開けて逃がすか。全員大人のようだし。逃げ出して自力で故郷へ帰れるだろう。(願望)


 念力で檻をこじ開けて、悪徳商人達の剣やナイフをくすねてエルフ達の目の前に置いておいた。ついでとばかりの足かせを外しておく。

 エルフ達は突如、檻の中に剣やナイフが投げ入れられたり、檻が勝手に開いたことに戸惑いを見せたが、逃げ出せることがわかると商人達に気づかれないようにこっそり抜け出していく。俺はエルフ達が逃げやすいように商人達を中心に馬車の反対側を爆発させたり、土で3メートルほどの人型の像を2体作って人の頭2個分の石を投げたりして、商人達に魔物襲撃を思わせる。決して石は人に当てない。

 商人達は魔物襲撃だーと叫んで冒険者が魔法や弓矢で応戦するが相手は俺が作った動かない像だ。そこにあるだけで何もしない。


「おっと、また囮作戦か」


 商人の一人が馬車に向かって走りだしたので冒険者や商人達を囲む感じで氷の壁を生成する。これで俺が視界を閉じてもエルフ達が逃げる時間を稼げるだろう。あとはエルフ達の運しだいで生き残れるだろう。

 憶測程度だが、エルフの子がどこから来たのかわかったから休むとしよう。その前に火消しをしないとな。冒険者達が火の魔法を放つから木々が燃えたぞ。森が火事になるから消さないとな。

 でかい水の球を生成して落として火を消す。水の球を落としたら土の像が崩れちゃったな。まっいいだろう。


 後日、タカシが起こした騒ぎは森に住む精霊の悪戯として語られるのであった。


「みんなお風呂からあがったかな?それにみんなが寝静まったらアズサとジュンにあのことも話さないとな」


 施設の中へ入った。

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