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異能者は異世界に来て何をする  作者: 七刀 しろ
第五章 ザ・バッドエンド
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小さな子

楽しみに待っているよ。6/25

 日が暮れるまでジュンと共に空のドライブ練習をした。視界で車体全体を観察しながら。

 運転の練習はまずまずと言ったところだ。前進する方法を見つけた。まさか、ハンドルを押し込むと前進するとは思わなかった。押し込みすぎると速度を表すメーターが軽く160キロを越える速さで前進した時は死ぬかと思った。びびり過ぎて足の震えが止まらない。

 調子に乗りすぎた。

 ちなみにジュンはチビったようだ。俺は気づかなかったことにしよう。後の片付けは自分でやるだろうし、俺は何も気づきませんでした。


 ハンドルを押し込むと前進することはわかった。じゃあ、その反対でハンドルを引くとどうなるか。

 俺は軽くハンドルを引いてみた。


「タカシ。今日はこれぐらいにしてもう戻るわよ。ってまた何かするつもりじゃないでしょうね」

「ごめん、これだけ。これだけやったら戻ろう」

「ホントお願い戻って」


 粗相して早くお風呂と履いているズボンを洗濯したいジュンの懇願をBGMに車は後ろに傾き始めた。ジュンには悪いがもう少し付き合ってもらう。

 車が傾いたままハンドルを押し込むとそのまま前進した。

 雲と同じ高さまできた。このくらいの高さになると風が凄くて車体が揺れるな。冷えるし、雨雲に突っ込んだら雷で車が故障するかもしれないから高い位置を飛ぶのは止めとこう。

 ブレーキを踏み、前進を止めた。水平にするにはどうすればいいか考える。ハンドルを引き続けて、車を一回転させて水平にする方法も考えたが非効率的と思う。後ろに傾くなら、前に傾く方法もあるはずだ。

 セレクトレバーを試すのは止めといた方がいい気がする。いくら念力があるとはいえ明らかに落ちる気がするから先にペダルの方を試そう。アクセルを踏むのを止めてハンドルを引いても少し下降しながら後ろに傾くから変わらない。ブレーキを踏みながらハンドルを引くと前に傾き始めた。


 なるほど運転方法がわかってきた。さてと今日はここまでにしよう。ジュンが涙目で俺を睨んでいるし、もう夕暮れだ。

 宿泊施設に戻って休もう。

 ぎこちない運転で戻った。この調子だと運転のコツやテクニックを掴むのはまだまだ先になりそうだ。

 運転する方法がわかったからこれを乗り回してコツやテクニックを掴めるだろう。この車も気に入ったし、馬車ではなくこの車で旅することにしよう。他の子に運転を教えれば、その子が運転できるようになれば俺が他のことに集中できるようになる。


 まずは不時着しないようにセレクトレバーをFのままアクセルペダルから離して車庫に戻した。FからPに戻したら、ガコンと車に衝撃が走った。


「今度は何よ!」

「タイヤを収納したままPに戻すとこうなるのか。失敗したな。これ大丈夫かな」

「ちょっとこれ大丈夫なの?大丈夫だよね。アンタは能力で浮かせられるもんね」

「ああ、後は片付けるから中に戻ってくれ」

「わかったわ。タカシも早く中に戻って休みなさいよ。出発するときにアンタが寝不足事故でも起こされたら溜まったもんじゃないわ」


 ジュンを施設の中に戻らせた。本人は一秒でも早く中に戻りたいだろうし、ジュンがやれることはない。試したいことと確めたいことがあるから俺はそれらのことをやってから中に戻るとしよう。

 どうやらPにする前にタイヤを出さないと車体が落ちてしまうようだ。この状態でタイヤを出すと壊れそうだ。地面を走ると揺れが酷いし、気を付けなければいけないことが多い。この車だいぶ欠陥というか問題が多いぞ。俺が気を付ければいい話しだが、この車種が取り残されている理由がなんとなくわかった。

 こういう場合は普通の人ならレッカー車とか呼ぶのだろうか?俺なら念力で浮かせられるけどな。

 念力で浮かせてPからDにしてタイヤを出して、再びPに戻す。

 中に戻る前に車庫にあるすべての車に鍵を掛けるのを忘れない。ここに入るヤツはあんまりいないと思うけどちゃんと戸締まりをしておかなくちゃ。


『マスター、客人がきたようですよ。どうなさりますか?』

『客人?昨日に引き続き人が来るな。見てみるか』


 パスが宿泊施設に近づく何者かに気づいたみたいだ。俺は運転に夢中で気づかなかったが、見える範囲では気にしていたんだけどな。

 日が落ち始めて夕暮れ時になって薄暗くきたから車の青い光を見た旅人かなにかが気になって様子を見に来たのだろう。俺も正体不明の飛行物体が飛んでいて、自分の近くに落ちてきたら好奇心に負けて見にいくだろうし。

 何かの縁だ。悪い人じゃ無いなら中に入れて上げよう。

 視界を飛ばしてパスが気づいた何者かを探した。


『そいつはどこにいるんだ?』

『入り口から出て右前方向です。あっちもこちらの様子を伺っているようです』


 入り口から出て右前方向か。そっちの方向は施設の入り口を塞いでいた岩が置いてあるから岩影に隠れられるんだよな。パスもよく気づいたもんだよな。

 どれどれ。


 視界を飛ばしてパスが言う人物を探す。岩影に小さく潜める人影を発見した。


『これは小さくて可愛いお客さんだこと』

『いかがしましょう?』

『やることはひとつだよ。中に入れるだけさ。でも俺が近づいたら逃げそうだな』


 その人影の人物は旅人ではなかった。もうすぐ夜になるし、保護するべきだと判断した。

 その人影はどうも中に入るか迷っているように見えた。俺が近づいたら逃げそうだったので俺はその人影に気づかれないように近づく。

 念力で押さえつけて無理にでも保護をと考えたがいくらなんでもそれは可哀想だ。


「こんにちは小さなお客さん。一緒に中に入るかい?」

「えっ!?」


 小さな客人は驚きの声を上げるが逃げる気配はない。と言うより身体の至るところが擦り傷だけで疲れて逃げるだけの気力がないと言った方があっている。

 傷とかはアズサに治させるとして身体に異常があるかジュンに見てもらうとするか。

 いや、人に頼るのは止めとこう。アズサはグロッキー状態で、ジュンはお取り込み中でそれどころじゃないはずだ。俺だってアズサ達から能力を貰ったんだ。

 自分で深く切りつけた傷を簡単に治せたんだ。この子の擦り傷くらい治せるさ。


「ちょっとごめんね」


 返事を待たないまま小さな客人の手を取り、手の甲にできた傷から滲み出ている血を舐めて客人の身体の状態を見る。端から見たら手の甲にキスしているように見えるだろう。


 舌に鉄の味が広がると同時に脳内で客人の身体の情報が溢れ出る。貧血気味とか三日間もろくな物を食べてなくて胃や腸が弱っているとかいろいろな情報が知ることができた。種族や性別。それと耳の欠損も。

 耳の欠損は、耳がないと言うわけではない。耳は付いているし、ちゃんと聞こえている。両耳の一部が掛けているだけのこと。

 髪に隠れた耳を見ると痛々しい耳から血を垂れ流になっている。アズサの能力を使っていなかったら、耳から血が出ているから耳が聞こえないと思うほどだ。

 断面を見る限り刃物で切り落としたような切口だ。十分な食べ物を食べていないことや耳の欠損が語っているようにここに辿り着くまで劣悪な環境にいたに違いない。

 欠損治しは今の俺には高等技術だから耳はアズサが回復したらこの子を見せよう。きっと治してくれるはずだ。

 俺も練習しないとな。アズサの能力を得てから自分の傷を治した以外使っていないから掠り傷を治すのが関の山だ。

 大きな街に行った時に冒険者の傷を格安で治してあげたら、練習+小遣い稼ぎになるんじゃないか?今は金銭面で困っていないけど。

 今気づいたんだけど、俺達はピイール王国から出て別の国に行くのだが、今持っている金は使えるのかな?

 使えないならあっちで稼ぐか。


 おっと、金の心配しているよりこの子を中に入れて消化のいいご飯を出してあげないとな。ここに消化のいい食べ物があるのだろうか?冷凍食品ばかりでぴったりな食品は無いような気がする。でもスープとかなら食べられそうだな。


「中に案内するよ。別にとって食おうとしている訳じゃないからね」

「ヒッ!」


 小さな客人は相当疲労しているようで目が虚ろで掠り傷が治っているのに気づいてない。立っているのがやっとみたいで何故か心拍数も高くて尿意を感じている。心拍数が高いのは俺が驚かしたせいだと思うけど。

 ん?なんでこの子の今の情報がわかるんだ?とりあえず中に連れていくか。

 小さな客人の手を引いて連れていこうとしたが歩いてくれない。心拍数が段々高くなっているのに体温が0.2℃下がっている。変な病気を持っているわけではないのになぜだろう。

 抱えて連れていくか。


 小さな客人をお姫様抱っこで施設の中に運んだ。

 俺もアズサとジュンの能力は使い慣れてないから能力の不明な部分が多いから先輩方にいろいろ聞かなくちゃ。欠損の回復とかできない部分もやって貰わないと。


 施設の中へ入ったものの、グロッキー状態組は昨晩寝泊まりしたベッドで休んでる。ジュンはお風呂でシャワーを浴びていた。これは見たかったから覗いた訳じゃない。ジュンが脱衣場で着替えていると思って風呂場を通り抜けようとしたら風呂場でジュンがシャワーを浴びていたんだ。ただの偶然なんだ。俺はジュンが股を一生懸命に洗っているところなんて見ていないぞ。客人が着ている服を洗濯するのは後にしよう。今洗面所に入ったら怒られそうだ。

 みんな一応起きているようだし、もうそろそろ夕御飯の準備を始めますか。胃に優しそうな冷凍食品があればそれも解凍しよう。


「ここで休んでね。俺はご飯の用意をするから。なんかあったら声をかけてね」


 ソファーに寝かせた小さな客人はコクンと頷き、施設のダイニングキッチンを見回している。

 面白い物はあまりってこっちの人にとってはダイニングキッチン自体物珍しいか。ミリ達もいろいろ見ていたし、落ち着いてきたら自分で歩き始めて探検するだろう。

 喉が渇いているようだからコップに水を注ぎ、テーブルの上に置いて、声をかける。


「水だよ。飲んでね」


 客人の心拍数は下がって落ち着いている。俺が外敵じゃないって信じてもらえたかな?リラックスしているようだし、ここは珍しい場所だから後は眠ったり、歩き回ったりするだろう。


 俺は今夜の夕飯の冷凍食品を取りに冷凍庫に入った。たぶん今夜でこことおさらばだからだから豪華にしたいから高級料理のメニューに載っていそうなパッケージのスープぽいやつとかステーキお肉類の冷凍食品を持ってキッチンで解凍を始めたり、お粥のパッケージが張られたプラスチック製のお弁当箱みたいの冷凍食品を電子レンジでチンしたりして準備を始めた。


 胃に優しい料理を食べたことが無いからイメージわからないけどお粥って胃に優しい料理だよな。ドロドロしているから不味そうだけど。

 アイスは食べ放題にするか。腹壊したら自己責任で。


「タカシさん、夕食の準備をするなら言ってくれれば手伝いましたのに、ってこの子は誰でしょうか?」


 解凍をするために昨日解凍に使った鍋に水を入れているとミリが来た。安心してソファーに眠り始めた小さな客人に気づいた。


「寝ていると思っていたし、その内来ると声をかけなかったんだ。その子はさっき森の中で迷っているようだったから連れてきたんだ。名前はまだ聞いてないからわからないけど、ご飯を食べたらお風呂に入れてくれないか?」

「わかりました。着ている服を見るに奴隷のようですが、どこかから逃げ出してきたみたいです。近くに奴隷商人が通りかかったのでしょうか?」


 やっぱり、傷だらけでこういうボロボロの格好は奴隷って思うよね。耳の欠損以外の傷はついさっき治したばかりだからないけど、全身に擦りむいたような傷があった。なんで全身に傷があるのかわからなかったけどなんとなく劣悪なところにいたのだろうって思った。

 どこかから来たのかわからないし、車で飛んでいる時は人影が見えなかった。遠くの場所で逃げ出してここに辿りつきたに違いない。


「さぁね、もうすぐ出来上がるからとりあえずみんなを呼んできてくれ。ジュンはお風呂に入っているからね」

「わかりました。始めにスフィアちゃんに声をかけますね」


 鍋に入れた水が沸騰し始めたので冷凍食品をぶちこめ ば数分で解凍が終わるからミリにみんなを呼んでくるように頼んだ。みんなそれぞれの別の部屋にいるから5分ぐらいかかるだろう。

 ミリがスフィアをまず最初に呼んでくるのかと言ったのは小さな客人はアルムよりも幼く小さなエルフの女の子だからだ。血を舐めてDNAを見なかったら、髪の毛に隠れた耳の欠損に気づかなかったし、髪の毛が長い人の子って最初は思っていた。

 ミリはただ見ただけでこの子がエルフと見抜いた。スフィアの名前を出た時はドキッてしたぞ。同じ種族がいた方がいいだろうと思って短時間で判断したことも含めてスゲーとしか出てこない。


 酔いは治っていると思うけど人数分の水をテーブルに置いてみんなを待つ。その間に


「んー」

「どうした?お腹でも空いたか?胃や腸が空腹過ぎて弱っているから消化にいいものしか食べさせないぞ」


 ソファーに寝かせていた小さな客人改め、エルフの女の子は俺の裾を引っ張って何か伝えようとしている。ただ幼すぎるのか口や喉の筋肉があんまり発達していないから拙い言葉しか喋れなさそうだ。決して喋れないことはない。

 丁度良く電子レンジのチーンが聞こえた。この子用で解凍していたお粥ができあかったようだ。

 お腹が空いたと言っているもんだと思ってその子を椅子に座らせて、熱々のお粥が入ったプラスチックの器を電子レンジから取り出して食器棚から取り出したスプーンと一緒にその子の目の前のテーブルに置く。


「ご飯だよ。お腹空いてるよね?」

「うーうー」

「違うの?それともあれか?疑っているのか?」


 だが、エルフの子は首を横に振って違うと意思表示する。この子は何を伝えたいのかわからない。俺が人の心まで読めたらよかったのにってそんな能力まで手に入れたら俺の元へ誰も寄ってこなくなるな。

 お腹がペコペコなのは確かなのになんで食べないんだろう?ドロドロで不味そうだから食べ物だと思われてないのか?


「ほら、ちゃんとした食べ物だぞ。ウオ、意外といけるな」


 エルフの子の前で試しにお粥を食べてみる。アツアツでドロッとしていて食べやすく塩味が利いていた。見た目はあれだが以外とウマイものだな。見た目で決めつけるのは良くないな。


「ちゃんとした食べ物だぞ。お前も食べてみろ?」


 エルフの子が火傷しないように冷風をイメージしてお粥を少し冷まして丁度いい温度にしてエルフの子の口へ運ぶ。エルフの子は恐る恐る口を開いてお粥を食べてくれた。

 そしてエルフの子がお粥を噛んで飲み込むのも感じる。いや、エルフの子の身体の状態が何から何まで手に取るようにわかる。

 これはジュン達に相談した方が良さそうだ。

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