孤児の暮らし方5(お礼と付与)
もうすぐ雪が降りそうだ。
「あの子達このまま王都に住んでくれないかな?そうすれば不老族が所属するギルドとして有名になるんけどな」
「私は住んでくれないと思うわ。噂とか言い伝えを聞いた限りは煙のように消えるって言うじゃない?きっとあの子達もそううち王都から出ていくわ」
「冒険者なんだし、旅をしたいんじぁないの?私ならこんな何も取り柄の無い国に住むより名産品があったり、独特で面白い文化のある国に住みたいな」
はい。俺達はある組織で追われている身なので王都から立ち去ります。嫌なことがありましたが、特に嫌いとかではないのでこの国にまた戻ってきますので。たぶん。
犯罪組織を一つ潰したからこの国は良くなるでしょ?犯罪者の中で手を出すと危ないって認識を植え付けたと思うし、次にきても大丈夫だろう。
「住む住まないへ置いといて。不老族の子達がこのギルドにいい印象持ってくれたらいいな。不老族の子達が来てから新人に絡むバカ共が凄く大人しいからいいと思うのだよね」
「そう言えばそのバカ共の様子おかしくなかった?」
「何が?」
「ほら、昨日不老族の子達が初めてギルドに入ってきたとき、いつもなら真っ先にあの子達に絡みに行くのに誰一人その場から動こうとしなかったじゃん。あの子達のことはめちゃくちゃ見てたけど」
「あの時問題を起こすバカっていったけ?」
俺達が初めてギルドに来た時?うーん?あの時は誰かに絡まれたけど不快になることはなってないな。
思い出した少しだけ女の人の冒険者に絡まれたな。あれは俺達が未成年だからクエストに受けられないよって親切心での警告してくれたと思うんだよね。
その人以外に絡まれてないな。問題を起こすバカが大人しかった?なんでだろうな?
その時は凄く運がよかったのだろう。そのバカな人達が俺達に絡まなくて。
あの時のギルドも何も起きなくてよかっただろう。何も物が壊れなくて、それに怪我人もいない。俺達も不快な気分になってない。いいこと尽くめでよろしい。
タカシが知らないところでそのバカな人達はタカシに関わっていた。タカシ達を誘拐した犯罪組織にタカシ達の情報を渡して、その内の何人かは森でタカシ達に弓矢を引いたとして、逆に森の中で死んでしまった。残った人達は誘拐犯に混ざってボロ雑巾みたいな姿にされて今や牢屋の中にいたりする。
どちらにしろ洒落にならない末路を辿っていた。
それに比べてルルーンの街でタカシ達に絡んできた男達は一人腕があり得ない方向に曲がっただけで済んだ。それに不老族の武器(銃)を持っていたとして街の掃除やら格安の報酬の魔物討伐に強制的に駆り出されているのは別の問題だが。
それで不老族に素行が悪い人間が絡むと怪我をするっと言う認識がルルーンの街にできてしまった。ギルドに用がある子供は腕に白黒のシマシマ模様のアクセサリーを自作して付けて入るようになった。
こんなもんか。ギルド内で俺達が不老族ってことがバレバレなのがわかった。俺が確定で不老族は知っているとして、アズサやジュンが不老族ってことなのはわかっていないと思う。俺以外に不老族がいるってことわかってそうだけど、それが誰だがわからないぽい。
ちょくちょく様子を見に来るギルド職員いるわけだけどお菓子を届けてくれたりしてくれる。何かを監視していると言うか俺達の様子を伺っているようだ。たぶん誰が不老族で、そうでないのか見極めようとしていると思う。
ギルド的には住んで欲しそうだけど無理に引き止めることはしなさそう。
さてと、みんなが作業に飽きてきた頃だし、バレバレな不老族の力を見せてあげましょうか。
丁度、様子見要員の職員が来たことだし。
念力を使って魔物の素材を丁寧に洗うだけのこと。一気に何個も洗うから結構効率良く魔物の素材の山が徐々に減っていく。
入ってきた職員の一人は急に魔物の素材が浮いたことにビックリしていたけど、魔物素材が勝手に洗われているから俺達が何かをやっていると思ったようだ。特に追及してくることはなかった。
「タカシ!それ何個もできるなら最初からやりなさいよ。手元に集中するからできないのかなって思っていたから言わなかったけど念力ができるならやりなさい。最初からやっていたら今頃終わっていたわ」
「最初は手でやった方がいいのかなって思ってな。でもみんな飽きてきたから早く終わらせた方がいいなって思って念力を使い始めたんだ」
「何それ?タカシはギルドのを見て回ってきたんじゃないの?さっきまで虚ろを見ている感じだったから何かここで探し物でもあるんじゃないかなって思ったんだけど違った?」
「ちょっとタカシ、それはどういうことよ」
「なんでアズサはそんなことまで知ってるの?まだ誰にも話してないのに。それと俺も一緒に1個ずつ丁寧に作業してただろ。今から本気出すから怒らないで」
プリプリ怒るジュンを背に作業を進める。
しかしながらアズサは俺のことをどこまで知っているのかわからないな。
そんなに視界を飛ばしている間の俺は虚ろな目をしているのか?視界を飛ばしていたのは正解だけどわかるのか?
視界を飛ばしている時の俺を見てみたが別に変わらないと思う。横から見ても前から見てもおかしい点はない。視界にはただ魔物の素材を洗う自分が映るのみでアズサがどうやって視界を飛ばしたのかわからない。
この後にアズサに聞いたらやっぱり目がおかしくなるからわかりやすいって言われた。情報元はあの空気のヤロウだった。
俺でも気づかない視界を飛ばしている間の自分の違いに気づくとは正直凄いと思った。空気のヤロウから聞いた情報で違いがわかるアズサは良く俺を見ているのか?
本当に空気のヤロウは俺のことをどうやって知ってるのか?謎だ。資料を読んだことがあるにしろ。限度がある。アズサと空気のヤロウは不思議な奴らだな。
こんなの理解あるヤツに知られても別に気にしないから問題ない。これって他人のプライバシーを思う存分盗み見ることができるからいやがられる能力なんだよな。ある意味便利な能力だけど他人に嫌がられそうな能力だから人にはあまり話さない方がいいだろう。
「タカシさんどうかしましたか?ジュンさんが怒っているようですが何かありましたか?」
「大丈夫だよ。ジュンのヤツ、俺が手を抜いて作業してことについて怒っているだけだから」
「タカシさん手を抜いていたのですか?こんなに丁寧に洗っているのにですか?」
「おおにちゃんアルムよりきれいにあらってるよ?」
「説明が悪かった。1個だけ洗っていたから怒ってるんだ。こんな風に何個も洗えるのにって」
「タカシはなんで1個だけで洗っていたの?」
「特に意味は無いが、まーなんとなくで1個だけでやっていたんだ」
ジュンが怒っている経緯をミリ達に話した。視界を飛ばしていたことはミリ達にとって大した内容じゃなかったから話さない方がいいだろう。話したところで何も変わらない。
ギルドは俺達を不老族として見ていて、それなりにもてなしていること。
ギルドでも不老族は特別視されている。何かしらの思惑があるのか、王都に住んで強い魔物を倒してもらうか。どっちにしろ長いするつもりはない。
厚待遇を受けたからには次王都に来たとき強そうな魔物を倒すようにはしよう。
「終わったー」
何も喋らないユンやキサラギとタントが黙々としてくれたから早く終わったのかもしれない。三人はこういう雑用は馴れていたから集中して作業できていたかもしれないな。しかも三人は差し入れのお菓子を食べていない。
それに比べて俺達は差し入れのお菓子を食べたり、ギルドの内情が気になるから視界を飛ばして職員の雑談を盗み聞きしたりしていた。個人的には作業態度が悪かった。
幼いアルムはいいとしてもジュンは飽きただの言って手を休めていた。マシなのはミリやスフィアだ。二人はお菓子は食べていなかったものの喋りながら作業をしていた。
理想的な仕事のやり方はミリやスフィアのようにお喋りしながら楽しく作業をすることなのかもしれないな。でも漫画とか読んでそういうのはあんまりなかった気がする。
漫画ではほとんどの仕事シーンは多少のストレスを感じながら業務をこなしていた。理想は理想でリアルでは実現できないのかもな。
地球の社会は漫画でしか知らないけど。
鱗洗いが終わった。水洗いで落ちる程度の汚れしかついてなかったから量が多いだけで大人数であれば苦にはならなかった。お金も貰えるし、いい暇潰しになった。
「思ったよりも早く終わったね。助かったよ。これ報酬だよ」
様子を見に来ていた職員が受付の人を呼んでくれた。俺達が受付所に行ってもよかったのに。ギルドから出るにはそこを通らなくちゃいけないのに。
俺達のそれぞれの手に銀貨5枚が渡された。500ニヤドだ。
最初に言っていた金額と違う。銀貨3枚、300ニヤドのはずではないのか?
「多くないか?最初300ニヤドって」
「そう言ったかな?それにしても洗い終わるのが早いよ。鱗も凄く綺麗になってるから相場より高いのはギルドからのボーナスって思ってもらってかまわないよ」
ボーナスか。早く終わらせたからボーナスが発生したみたいだ。お菓子を食べながら作業していたのに?
お菓子は差し入れだけど業務態度悪かったと思うのだが、想定していた時間よりは早く終わっただけでボーナスくれるのか?
報酬が相場より高くてお菓子の差し入れがある。貰えるものは貰っておくが待遇良すぎないか?
それぞれ渡された銀貨をポケットに入れた。ポケットの無い服を着ているキサラギとタントは大切に銀貨を握っている。自分達で稼いだ金だから自分で管理してもらいたい。
アルムやスフィアはミリが背負っているリュックサックモドキに入っている皮袋(財布代わりに使っていて金貨とかも入っている)に入れていた。俺のも入れる予定である。
共有財産ってことにしているからな。
「空の魔剣師達はいつか王都からたつんでしょ?それはいつになりそう?」
「それは明日かもしれないし、10日後かもしれない。いつ旅たつかは決まっていない。角ウサギのクエストもまだ終わってないから、そのクエストが終わったら出発する」
「角ウサギ?あのクエストからそれなら別に終わらせなくても」
「チター、そいつが噂の空の魔剣師という不老族か!」
「ギルドマスター、いきなり入ってこないでくださいよ。ビックリするじゃないですか。そうですが何か?」
俺達が仕事を終わらせたことを聞き付けたギルドマスターが作業場に現れた。この人は直接ここに来たり、手が離せない仕事の場合部下にいかせたりしてきた男だ。
俺が空の魔剣師だということは知っているはず、確認する必要がない。
「そうか。私はここのギルドマスターをしているシルットだ。よろしくな」
「タカシです。回りから空の魔剣師っていつの間にか呼ばれる」
自己紹介されたから自己紹介で返しちゃったよ。名前だけだと味気無い感じだったから自分から空の魔剣師って名乗ちゃったよ。これ異名を自分で名乗るって俺にとって初めてじゃない?
「ルルーンの街や王都のギルドじゃお前の噂で持ちきり出ぞ?」
そんな噂消えればいいのに。俺はひっそりと静かに暮らしたいだけなんだ。
やることなすこと派手にしでかしているけれど、
「なんだ?そっけないな。何か利用されると思ったのか?俺が来たのはお礼を言うためだ。グランドドラゴンを倒してくれてありがとな。おかげで被害が出なくて済んだ。王都で困ったことがあれば俺に言ってくれ、できる限り対応しよう」
お礼を言われた。それはそれでいいのだが、ギルドマスターはお礼だけを言って出ていった。
なんだったんだ。ただお礼を言うだけだったのか。
何もないならいいのだが。
受付の人も少し驚いている。素直になれない人なのだろう。後は大人の事情で俺がグランドドラゴンを倒した証明材料が魔石だけじゃ少ないから報酬等の礼は無いのだろう。
「固いギルドマスターのことは気にしないでね。あれは素直にお礼が言えない人なんだ。これでも珍しく言えた方なんだよ」
「そうですか」
「もう帰るんでしょ?気をつけてお帰り。冒険者の中で君達に絡むヤツいないと思うけどさ、君達を子供だと思って絡むやからがいるかもしれないからね」
「忠告ありがとうございます。では」
俺達はギルドを後にした。
夕暮れ前ということでギルド近くの宿に泊まることができた。運良く客室が空いていたのは良かった。
小部屋と大部屋を取った。
小部屋にはベッドが三つあって俺とキサラギとタントが寝ることになった。残りのみんなは大部屋で寝ることにした。
ミリやアルムがこっちの部屋に来たがっていたけどなんとか説得して見せた。
それにしても俺達大人数になったよな。最初はミリと二人きりだったのが王都に来て9人になった。大所帯になれば動きにくくなる。王都の中を移動するだけで実感した。
馬車の乗れる人数が等に越えている。今夜口減らしを考えている。
口減らしと言っても誰かを殺したりしない。
何人か王都で暮らしてもらおう考えているだけ。事実上追放だけど手切れ賃を出すし、なんなら能力を与えてもいいと考えている。
ということで部屋を分けたわけだが、本人達は本能的に何かを感じとって俺をチラチラ見てくる。
宿の食堂で食事して部屋に戻ってきたところだ。
「キサラギ、タント。お前達に話がある」
「話って何かな?」
「……」
タントもそうだが、キサラギは何も言わないけど緊張したように目が泳いでいる。
面白いなコイツ。
これから自分達の人生に関わることだからそうなるか。
「俺達は数日後に王都から出ていくからお前達は別で暮らしてくれないか?」




