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異能者は異世界に来て何をする  作者: 七刀 しろ
第四章 不老族
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治療

 部屋の中は感染予防なのかソイドさん似ている少女しかいなかった。ソイドさんの顔を見ると悲しそうに少女見つめていた。

 彼女がソイドさんの娘なのだろう。


「この子がそうなのね。凄く苦しそうに寝てる」

「そうみたいだね。最初に言ったけど病気なら僕は必要ないね」

「無理なら無理って早めに言ってな」

「何よ。タカシ、さっきから弱腰じゃないの。せっかくの私の活躍する機会なんだから。私の自慢の能力を見ておくといいわ」


 相手は権力者の子供なんだから何かあってからじゃ遅い。『ソイドさんの子供を殺してしまいました。ごめんなさい』じゃすまないだよな。良くて刑務所暮らし、悪くて死刑。

 とても冗談でしたじゃすまされない。治療する本人はプレッシャーを感じるはずなんだが、ジュンは自信満々だ。先が思いやられる。

 俺は失敗しても知らないぞ。


「タカシ?娘は大丈夫何のか?」

「ええ。本人は凄く自信満々の様子で自分に任せてくれと言ってます」

「治るなら任せる」


 ソイドさんは俺達を信じて全て任せると言った。その言葉は俺の中で重くのし掛かる。

 ああ、どうにでもなれ。


「治せるなら任せるってさ」


 やけくそにソイドさんが言った言葉をジュンに伝えた。


「任せなさい。まずは患者の容態の把握するわ」


 ジュンは言うとベッドに上がりソイドさんの娘さんの頬っぺたを左右の手で固定して口と口をくっつけた。いわゆるキスだ。そうジュンはソイドさんの娘にキスをしたのだ。


「異常なところは右の肺の中が少し腫れているわね。見たことがないウィルスもいくつかいるし、脳と腸に寄生虫がいるわね」

「毎回キスだけでそんなにわかるなんて不思議ね」

「キスって言わないでよ。これは体液を取り込んで体の状態を読み込んでるのよ。そんなハレンチな行為じゃないわ」


 不思議そうにアズサが言った言葉を聞いてジュンは顔を赤く染めて口と口をくっつけた行為に対してキスと呼ぶのは否定している。

 あれをキスと呼ぶのはNGのようだ。


「キスしたのはあれは何なのだ?」

「体の容態を調べたようですね」

「治るのか?」

「それは彼女次第かと思います」

「ウム、そうか」


 ソイドさんもジュンがキスしたことに疑問を思ったようだ。あの行為に対して体を調べているって説明したが、端から見たら苦しそうに寝ている女の子に小さな女の子がキスをしているようにしか見えない。


「アズサの冗談に構っている暇じゃなかったわ。まずは脳に潜む虫を殺す抗体を作って基礎に入れてと。次は肺の腫れ治す薬に、ウィルスは体に害があるのかわからないから体の免疫力を高めて、虫下しの成分を加えて。完成したわ」


 ジュンはぶつぶつと一人で何を呟いている。

 俺の耳には全て聞こえている。

 ジュンは体の悪いところ全て無くすつもりでなおかつ免疫力を上げる薬を作っているようだが、とても薬を作っているようには見えない。何も知らなければ小さい女の子が険しい顔をして少女の顔を見つめるだけにしか見えないのは面白い。

 薬が完成したようでジュンは自分の人差し指を口にいれて少し痛そうな表情を浮かべた。

 どうやら自分の人差し指を噛みきったようだ。

 人差し指から流れ出た一滴の血をソイドさんの娘の口に垂らした。


「ふー。投薬完了。これで終わり」

「それで終わりなのか?早くないか?」

「何よ。終わったから終わったのよ。何か文句あんの?これが私の能力なの!」

「文句っていうか。思っていたより早いなって思って」


 ジュンの言う治療は本の1分ほどで終了した。1分間でやったことはキスと口の中に血を垂らしただけでどう見ても治療したとは思えない。

 ソイドさんの娘は特に変わった様子はないが、これがジュンの能力なのだろうか?これで治ったらジュンの血は薬と思われてもしょうがないぞ。


「おい、タカシ。どうしたのだ。娘はどうなったのだ?」

「本人曰く治療は終わったようです」

「本当なのか。我輩の娘の治療は終わったのか?王都の医者がみな匙を投げた病だぞ。それがあっさりと終わったと言うのか」


 ソイドさんも俺と同じく、治療がほんの1分で完了したことに驚いている。


「疑うなら自分で確認すればいいじゃない。もうすぐ起きるはずよ」

「うん?あれ苦しくない?」


 ジュンが言ったとおりソイドさんの娘は目を覚ました。


「リッカ!病は本当に治ったのか?」

「えっ?お父様?どういうこと?そこのあなたお父様を部屋から追い出して」

「良かった。本当に良かった」


 ソイドさんは娘に泣きついて、その娘は自分の父が泣き崩れる様に戸惑っている。

 号泣した父親がジリジリと近づいてくるものだから少し恐ろしく感じたのだろう。ソイドさんの娘はソイドさんが号泣する理由をわかっていないからかソイドさんを追い出してと懇願してきた。

 普段は娘に嫌がられているらしいソイドさんはそんなことを気にせず、まだ号泣している。


「俺達は出ていくか」

「そうね」

「今は二人にさせておいたそうが良さそうね」


 俺達は空気を読んで部屋から出て、廊下に待つミリ達と一緒にソイドさんが落ち着くまで廊下で待つことにした。


「タカシさん、貴族様のお願いはどうでしたか?」

「ジュンがやり遂げたから問題なかったよ。こっちは失敗するんじゃないかってヒヤヒヤしていたけど」

「何よ。あんなに私に任せてって言ったじゃないの。なのに信じてなったってこと?ヒドーいわ」

「んーしょうがないじゃないかな。今はお互いの能力が理解していない状態だし、疑うことはほぼないとしても知らなければ少し心配するんじゃないかな。ジュンだってもしタカシが能力を何百個持っているって言ったら信じないし、ここぞって時に全部自分に任せてくれって言われても本当に大丈夫なのか心配するでしょ?」

「確かにそうね。相手の能力がほぼ全部わかならない状態で全部任せなさいって言っても心配するわね」


 少しずれているが、俺が心配していた理由をジュンが理解してくれたようで良かった。友達が言うこと全て信じたいが、その全て飲み込むことはできない。

 嘘とは思わないけど自分の能力を大袈裟に話している可能性もあるし、研究所の奴らにそういう風に信じ込まされている可能性もある。


 俺だって記憶を弄られているわけだし、何もかも信じることはできない。


「貴族様の子供は重い病気って言っていたけど随分と早いんじゃない?軽い病気だったのかしら?」

「おにいちゃんたちはやかった」

「治療したジュンに聞かないとわからないけど娘さんは俺達が入った時は苦しそうに寝込んでいたぞ。ジュン娘さんの病気って何だった?」

「私にも病気の名前なんてわからないわよ。私はただ悪い部分を治しただけよ。分かりやすく言うなら悪いウィルスや寄生虫を殺す薬を飲ませたって思ってもらえば言いわ。私は医学について何も知らないもの。健康な人を基準に実験で同じような人達を治したことがあるだけだから私に医学のうんたらを聞かれても答えられないの」


 要するに実験で似た病気を治したことがあるのか。

 ジュンが受けた実験は健康な人を基準に病気の人の体と比べてどこが悪いのか見てそこを治すないようなのか。だから医学的な知識はなくても治すことができるがどうして悪くなったのかとかどこから感染したのかといったその病気に関しての知識がないことがわかった。


 ジュンの能力がわかって、何も問題がなく済んでよかった。そしてソイドさんの娘さんの病気が無事に治ってよかった。


 廊下に待つこと一時間ぐらい経った。俺達はソイドさん親子が出てくるのを待ち、ようやくソイドさんが出てきた。


「タカシ待たせてすまない」

「お気になさらず、娘さんと話したいことがあったでしょうし。娘さんの病気が治って良かったです」

「そう言ってくれると助かる。お礼なんだが、とりあえず我輩の書斎に来てくれ」


 俺達はぞろぞろとソイドさんの後に付いてソイドさんの書斎に案内された。向かう途中に執事の人やメイドさんにすれ違って、ソイドさんはその人達に紅茶を頼んでいた。

 廊下に待つ間も掃除をするメイドに会った。メイドさんは俺達が客人だと連絡が受けていたらしく、最初は俺達に何事かと話しかけてきたが、ソイドさんの指示で廊下で待っているからと伝えると何かを察したメイドさん達は俺達の前から姿を見せなくなった。


 書斎はいくつもの本があり、小さな図書館みたいな感じがした。あっちの世界の本当の図書館は行ったことがないけど研究所の漫画や小説が置いてある図書館モドキには入ったことがあるけど、それとは違う雰囲気で物静かで高級感が溢れている部屋に感じる。

 家具は本棚は当たり前にいくつも設置してあるが勉強机が置いてあり、ソイドさんがその椅子に座った。


「本当にありがとう。リッカ、娘の病気を治してくれてありがとう。我輩を王都まで護衛してきた分を含めそのお礼何がいいだろうか?我輩に用意できる物なら何でも用意しよう」


 ソイドさんは俺の顔を見て話す。俺は娘さんの病気を治した件に対して何もやっていないのに俺を見て話すのはやめてもらいたいな。俺より治した本人、ジュンを見て話してほしい。

 言葉が通じないから俺に通訳を含め、ソイドさんを王都まで連れてきた報酬を含まれているのだろう。


「わかりました。ジュンにそのように伝えます。俺は何もしていません。今回は全て彼女の功績なのですから彼女決めるのが一番です」

「ウム、そうか。それならそちらで話し合って決めても良かろうしかし、タカシは何もしてないと言っておきながら我輩を助けただろう?それにアネン男爵の街まで我輩を馬車に乗せてくれただろうに何を言う。それと我輩の騎士や冒険者の手当てしたもう一人の不老族の娘もそうだぞ」

「俺はそんなことでお礼をもらうことができません。騎士さんの怪我を治したのはアズサもですがこの子達、ミリ達も頑張りました」

「その子らもそうなのか?しかし、タカシよ何を謙遜するでない。皆でほしいもの考えるといい」


 俺がソイドさん達を助けたことはバレているのか?盗賊のアジトから助ける時にいろいろと気づかれることをしたのだろうか?

 いいか。ジュンにお礼が貰えることを教えてあげよう。騎士達の怪我を治したアズサも貰えることもね。


 ちなみにミリ達はユンの如くダンマリをかましている。ミリ達にとって貴族様、権力者はまるで別世界に暮らす存在のようなものだからそういう反応をするのはわかっていた。

 能天気な地球出身の俺達は彼女達を見習わないといけないな。この世界に住む一般人の彼女達の反応が一般的で堂々と話していると俺は不敬と思われるかもしれない。

 今更か?アシュティアのお父さんに対しても敬語だったが堂々と話していたな。


「ジュン、娘の病気を治してくれてありがとうだって。お礼がしたいようで何か欲しい物がないかって言われてるんだけど、欲しいある?それとアズサも騎士達の手当てもありがとうてさ」

「急にお礼がしたいって言われてもね。この世界のことなんて何もわかっていない状態で何が欲しいか聞かれても答えられないわよ。それに私は対したことはしてないわよ」

「だよね。いきなり何が欲しいか聞かれても答えられないよね」

「この世界の地図を貰うなんてどう?名案じゃない」

「それいいね。旅をするなら必需品じゃん」


 アズサ達にはまだ言っていなかった。地図はもう手に入れているんだけど。タブレットの中に正確過ぎる地図が。

 他にないか彼女達に話し合ってもらおう。


「言っていなかったが地図はもう持ってるんだ。後で見せるから他にないのか?」

「何よ。持っているなら最初から言いなさいよ」

「だから最短距離のルートを知っていたんだね。ならお金でいいんじゃない?元々僕達は雇われたわけだしお金なら使い道も広いし」

「えーお金?なんかお金を貰うなんて罪悪感を感じるわ」

「他にあるって言うの?思い浮かばないでしょ?僕達は雇われた身でお金を貰うのは不自然なことはないでしょ?」

「わかったわ」


 アズサとジュンの話し合いが終わり、お金を貰うことになった。そして最後に。


「話しを聞いていたからわかると思うけどアズサ達はお金を貰うことにしたみたいだけどミリ達は何か欲しい物あるか?」

「貴族様とタカシさんの話しは聞いていたのでわかりましたがアズサさんとジュンが話していたことはわかりませんでしたがアズサさんが決めた物で私はいいです」

「そうよ。まだ教わってもいないのに不老族の言葉がわかるわけないわよ。でも二人が決めたのなら私もミリちゃん同じく賛成よ」

「アルムもおなじくー」


 と言うことでお金を貰うことに決まりました。


「お礼はお金でお願いします」

「ほう、他に欲しい物はないのだな」

「ええ、アズサとジュンで話し合ってもらった結果になります。この子達も納得してますし、お金は多くても困ることは少ないですから」

「そうか、わかった。明日に今回の謝礼と護衛料合わせて準備しよう」


 お金は明日渡すらしい。

 家に帰ってきたばかりでドタドタしていたから当然すぐにはお金を準備できないのだろう。どのくらいの金額を出してくれるのかはわからないがアシュティアを助けた時、アシュティアのお父さんが出してくれた同じ額と予想して今は聞かないでおくとしよう。


 ソイドが予想外に準備したお礼に度肝抜かすとは今のタカシは何も思ってしなかったのは明日の話し。


「旅の疲れがあるだろうから料理ができるまで部屋に休むといい」

「わかりました。お言葉に甘えさせてもらいます」

「部屋にはメイド達に案内させる」


 ソイドさんは机に置いてあった呼び鈴をチリンと鳴らした。外に待機していたのかと思うくらい鳴らした途端メイドさんが書斎に入ってきた。


「旦那様お呼びでしょうか?」

「ウム、タカシ達を客室へ案内してくれ」

「はい、かしこまりました。タカシ様方此方へいらしてください」


 メイドに案内されて客室へ向かった。案内される中屋敷の中を細かく観察しているとアシュティアの屋敷より芸術品(花瓶や絵画)が飾られていた。

 これらの物はアシュティアの屋敷では見かけなかったものだ。

 趣味で集めている物だろうかと思いながらメイドの後ろを歩く。


「こちらからこちらまでの七部屋の客室をお使いください。夕食の準備ができ次第お呼びします」


 廊下に立ち止まり使っていい部屋の説明を受けた。全部で七部屋、一人一部屋ということなのだろうか?

 案内してくれたメイドは説明を終えるといなくなった。


「アズサとジュンその部屋から七つ隣の間まで一人一部屋使っていいようだ」

「そうなの。とりあえず荷物を置きましょう」

「僕とジュンは荷物持っていないから誰かと一緒にいるよ」


 俺は部屋の中に荷物を置きに入った。

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