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異能者は異世界に来て何をする  作者: 七刀 しろ
第四章 不老族
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王都までの道のり3

「タカシさんおはようございます」

「ミリ、おはよう」

「あ、誰か来たようです」

「わかった。みんなを起こしていつでも行けるように準備してくれ」

「はい」


 朝になり俺が目を醒ます10分前に起きていたミリと挨拶を交わした。それと同時に扉をノックする音が耳に届いた。

 一緒に寝ていたジュンにそっくりなの女の子をどかして起き上がる。


 来訪者が来たからパスに起こされたわけだが、パスの話しによるとその来訪者とは貴族の屋敷にいた人物らしい。

 よく顔を覚えてるなと言うと『マスターも意識してないだけで簡単にできますよ』と言っていたから俺もできるそうだ。


 扉を空けて確認すると来訪者はメイド服を着た女性だった。

 出発の時間が近づいたから俺達を呼びに越させたのだろう。


「不老族の方々、お迎えに上がりました。準備はよろしいでしょうか?」

「いえ、今起きたばかりなのでまだできていません。少し待ってください」


 敬語できたから敬語で返してしまった。

 今起きたばかりなのは本当の話しだし、他のみんなもまだ寝ているかもう少しかかる。


「では、何か私にできることがあれば仰ってください。旦那様からそのように命を受けてますので何なりと」

「いえ、間に合ってますので大丈夫です。すぐに準備するので」

「左様ですか。それと屋敷にて朝食の準備をされているので早めにお願いします。勿論、朝食はお連れ様もご一緒です。私はここで待ってますのでお声をかけてください」


 朝食に誘われた。

 だからこんなに早く来たのか理由は知らないが絶対貴族の命令で来たのだろうから断ることはおそらくできない。

 断れないが美味しい朝食を食べられるならしょうがない。ちゃんとミリ達も招待してくれたからいいとしよう。

 とりあえず寝ているアルム達を起こして行くか。


「朝ですよ。起きてください」

「ミリちゃんもう少し寝かせて」

「スースー」

「もう少しもダメですよ。朝ごはんができてますから起きてください。アルムちゃんも起きてください。これで顔を洗ってください」


 ミリはスフィアとアルムを起こすのに奮闘している。ジュン似の女の子は少し眠そうだがすんなり起きたようだ。

 スフィアとアルムは寝ぼけながらも起きてくれた。ミリは木の器に魔法で水を満たして3人に顔を洗わせている。

 俺もミリを見習って水を生成させてアズサとジュンの顔にピチャッと水の塊をあてる。水の塊は念力で固めているから寝具は濡れない。鼻のところに穴が空いているから呼吸の確保もできている。

 顔が濡れているからすぐに洗うこともできるし、ひんやりしているからすぐに目が覚めるだろう。一石二鳥の作戦だ。


「ごぼぼっ!」

「ごばば!」


 あれ?思っていたのと少し違う。二人とも起きたが溺れてるのだが踠いているのだが。


 すぐさま二人の顔に水をどかしてやる。


「はっ、はっー。今の何なのさ。死ぬかと思った」

「研究所にいた頃の夢を見たわ。しかも研究者達のお遊び程度の水攻めの耐久実験の」

「はは、ごめん。これて拭いて」


 いや、こんなことになるなんて思わなかった。

 リュックサックモドキからタオル用として買っといた布を二人に差し出した。


「タカシ私達に何したの!」

「ちょっとしたイタズラで鼻以外の顔に水を覆っただけ。ちゃんと鼻のところに息できることに穴を空けといた」

「あのさ、イタズラの粋を越えてるよ。二度とやらないでほしいな。これ約束だよ。次からは普通に起こして」

「わかった。二度とやらない」


 二人に凄く怒られた。


「で?私達を無理矢理に起こした理由は?」

「それは昨日、貴族が朝食をどうだって、使いのメイドが来てるんだ」

「へー貴族の朝食にご招待されたのね。私達も」

「当たり前、メイドが言うには今も準備中らしいから早く支度しなさいな。ここを出ていくときにはもうチェックアウトするから」

「わかったわよ。もう少し寝たかったけどしょうがないわね」

「そうだね。お呼ばれされているなら早く行かないとね」


 アズサとジュンはささっと支度を始めた。

 支度と言っても着ている服は昨日とそのままで寝ていたから着替える必要がない。ミリ達のブラシで髪の毛を解かすしかない。

 ミリ達の着替えがあるから着替えているが昨日、突然同行することになったアズサ達には当然着替えがない。ジュンにそっくりな女の子も着替えがないから黙ってスフィアに髪の毛を解かしてもらっていた。

 買いに行こうとしても朝だから当然お店はまだ開いていない。仕方ないからこのまま行くしかない。


「寝癖はないわよね?」

「ないよ。僕もない?ミリちゃんブラシありがとう」

「ないわよ。よし、タカシ私達の支度終わったわよ」

「やっとかよ」

「やっとって何よ」

「そうだよ。髪の毛を解かすのも時間がかかるんだから仕方ないじゃない」

「それが時間かかり過ぎだ」


 アズサとジュンの二人は鏡がないからお互いの髪を解かしあった。それが30分もかかり、俺達はアズサ達が終わるまで待っていた。

 アルムは元気よく「おにいちゃんおはよう」って言って抱き締めてくれた。本当にかわいい子だけで。

 ミリ達は5分で終わらせたのにこの二人はその6倍もかかるのか不思議だ。


「遅くなりました」

「いえ、朝早く来たのはこちらなので気にしてません。では行きましょう」

「はい」


 宿の廊下で待たせていたメイドの人はそそくさと宿の出口に向うのを見て俺は手早くチェックアウトを済ませた。

 宿の外に出てみると高級感溢れる馬車があった。馬車を引く馬も毛並みがさらさらで大人しい。


「絵本のお姫様みたいな乗り物だわ」


 それを見たジュンは目をキラキラしている。

 意味がわからないことを言っている。絵本のお姫様みたいな乗り物って何かな?


「ぞうぞ。お乗りください」

「自分の馬車はどうしましょうか?朝食を取ったらすぐに街を出るんですよね?」

「それは私にはわかりません。ソイド様に一度お伺いしないと」


 このメイドはただの使いで主人の命で俺達を呼びに行かせただけであまり情報を知らされていないって感じか。

 何も知らないのならこのメイドに聞いても無意味だ。


「そうですか。馬車を持ってきても大丈夫ですか?」

「はい、大丈夫ですよ。屋敷の馬番に預かってもらえます。誰が御者を?」

「御者なんて必要ないですよ。こうやって操れるのですから」


 宿の馬小屋から念力で操作して馬車をメイドの前に移動させた。

 メイドは一瞬ギョッとしたが何か納得したような表情をしていた。


「では参りましょう」


 俺達は高級馬車に乗り込み、メイドが全員乗り込んだのを見て自分が御者の席に座り馬車を走らせた。その後ろにピッタリと俺達の馬車を追尾させている。

 それと盗賊の馬車は宿に置いてきた。あそこに置いとけば誰かが有効に活用してくるだろう。


「また貴族様の家に呼ばれるなんて気に乗りません」

「でもおにいちゃんはおいしいあさごはんがたべられるっていっていたよ」

「でもアルムちゃん、私達はただの付き添いよ。それで昨日貴族様を助けたのもタカシ何でしょ?貴族様を助けたタカシが呼ばれるのは当然でしょ」

「バレた?」

「バレたって言ってもわかるわよね?ミリちゃん」

「はい、貴族様の話を聞いていてタカシさんだって思いました。タカシさんなら私達と一緒にいても遠くにいる貴族様を助けられると思います」

「おにいちゃんはすごいちからできぞくさまをたすけたの!」


 この子達の前で能力をあんなに見せたんだ。貴族の話を聞いてピーンってきたのか。


「タカシなんの話し?」

「昨日の話し。盗賊に捕まったジュン達を俺達がいるところまで誘導した話し」

「あれタカシだったの?」

「俺以外だったらなんだと思った?」

「男の人達が不自然な動きしているなって思って喜びのダンスだと思ったわ。それでソイドって貴族は私達を連れてタカシ達がいる広場に逃げてきたった感じ。今思えば不思議ね。ソイドって貴族を誘導したのがタカシだったのね」

「へーそうだったの?あの時のタカシはなぜか時間を稼いでいるみたいで様子がおかしかったから何かって思ったけどそういうわけだったのね」


 あの時、ミリ達に盗賊のアジトを見せたくなかったからジュン達を誘導して来てもらった。それであっちから来てもらうなら自分達はあの場所で待った方がよかった。怪我人も多数いてすぐに動けない状況だった。

 あそこでとどまっていても誰も責めないはず。


「そういえば、タカシ?」

「なんだ?」

「私と一緒に捕まっていたその子の名前何なの?」

「聞いてなかったのか?一緒にいたのに?」

「いやだって私さ、こっちの言葉わからないから通じないじゃん。でも一緒に捕まっていたから気になるんだよね」

「この子ほんとに静かだよね。一緒にいても何も喋らないし、ミリちゃん達と一緒にいてもあまり喋らないから引っ込み思案なのかなって思って僕からは何も触れていなかったけどやっぱり一緒にいると気になるよね」


 確かにこの子は静か過ぎて正直いるのか忘れてしまう。少し自己主張を出した方がいいと思うけど喋れないんじゃしょうがないよな。

 昨日、貴族と別れてからミリ達があれこれ聞いていたが首を振るだけでそれ以上がない。頷いたりするから耳は聞こえているからこちらが何を言っているのかわかっているようだが喋れないんじゃね。


「この子はさ、喋れないらしいんだ。だから俺もミリ達もこの子の名前は知ることができない」

「なら文字を書いてもらえばいいじゃん?」

「とミリ達もそう思っていたけど字が書けないみたいなんだよ」


 ミリやスフィアが何とかコミュニケーションを取ろうと字を書けると聞いたところ首を横に振った。


「それじゃコミュニケーションが取れないじゃない」

「頷くことができないからから俺も頭を悩ませてるんだよ」


 今だってその子は俺達の話を黙って聞いている。ミリ達が話しかけても頷くばかり。

 それにこの子をなんて呼べばいいのか。仮の名前を付けて呼べばいいのか?

 年もいくつだがわからない。見た目はジュンにそっくりだが、歳は13歳ぐらいに見えて俺と同じぐらいの背丈だ。


「タカシさん。名前がないと呼ぶのに不便ですよ」

「しかもどういう理由で盗賊に捕まっていたいたのかわからない。それにお父さんとお母さんがいるのかわからないから私達と一緒に連れていく訳にも行かないのよね?」

「いや、連れて行くのは構わないんだが、ご両親について聞くと悲しい顔をするからな。なんて呼べば困るな」


 女の子に両親について聞いても泣きそうな顔をするだけで頷くことをしない。もしかすると盗賊に殺されてしまったのかはたまた捨てられてしまったのか。喋れないんじゃわかない。

 悲しい顔をして肯定も否定しないとすると捨てられた線が濃厚だが、仮にご両親を見つけるものな。


 この子を連れて行くのは問題ない。金銭的に余裕があるが問題なのは彼女の素性がわからないことだ。

 いや、よく考えてみよう。ここにいるみんなは似たような境遇だ。しかも俺なんかは記憶を弄られて昔の記憶があやふやになっている。

 素性なんてどうでいいことを気にしているなんて恥ずかしい。

 この子の両親について触れるのは控えることにして名前がわからないならこの子の特徴で呼ぶしかない。

 そうあだ名だ。


「あだ名でも付けて呼ぶか?」

「「あだ名?」」


 アルムとこの子はコテンと首を傾げ、それ以外の声がハモった。


「ああ、名前がわからないだからあだ名で呼ぶしかないじゃないか」

「あだ名か。確かにあだ名で呼ぶしかないな。僕もアズサって名前も友達に付けてもらったんだ」

「私も漫画のキャラクターに見た目が似ているからってそう呼ばれるのが始まりだったわ。私がこの子にお似合いのあだ名を決めてあげるわ」


 不老族組の二人は乗り気だ。

 なんて呼ぶか。

 金髪だからキンはちょっと嫌だな。白い肌はシロも安直かな。

 この子でしっくり来るあだ名はなんだろう。


「あだ名ですか?それはなんですか?」

「ミリちゃんあだ名って言うのは例えば私の耳が尖っているわね?」

「はい、尖ってます」

「仲の良い友達が私のことを尖耳女って呼んだり、スーフィーって呼んだりすることがあだ名って言うのよ」

「尖耳女って悪口じゃないですか?ちゃんと名前があるのに何で名前で呼ばないのですか?」

「尖耳女は例えてよ。要するに名前が長かったり、言いにくい友達の名前を呼びやすい名前で呼ぶことをあだ名って言うのよ」


 スフィアがミリとアルムにあだ名について説明していた。


「ジュンにそっくりだからユンって呼ぼうよ」


 アズサがユンと提案し、俺とジュンが頷いた。

 そしてこの子はユンと呼ぶことになった。


「皆様、屋敷に到着しました」


 走行している間に貴族の屋敷に到着した。

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