思わぬ再開2
「まだ話している途中に行きやがったな。あいつは一体何を考えているんだ」
「クーに置いて行かれたー!この世界のこと全然知らないのにこれからどうすればいいんだ。こっちの世界の言葉がわかるタカシがいるんだった。むしろ変な場所に連れまわされるよりマシかも」
空気の野郎がどこかへ行き、俺と幼い少年が残されその場でポカンとしていた。アイツの狂気じみた空気感が消えて俺達がいる場所が真空状態から大気状態へ空気集まるかのように風が吹いた。
俺達の足元には数分前まで生きていたチンピラの肉片が転がっている。
それらの死体は俺が殺したのではない。俺の憶測でしかないが空気の野郎が放ったと思われる斬撃が彼らをバラバラに引き裂いた。
あの斬撃は絶対に空気の野郎の斬撃だった。何を言おうと俺は前に奴が放った斬撃で手足を切り落とされた。その時の斬撃とさっきの斬撃は同じだったからチンピラを殺したのは消えてどっかに行った空気の野郎だ。
空気の野郎に置いて行かれた幼い少年は置いてかれたことに気づいた最初は悔しそうにしていたが冷静に考えてこの世界の言葉がわかる俺と一緒に行動をした方が奴に意味不明な場所に連れまわされるよりマシと気づいたらしい。
意味不明な場所と言うのはどんな場所だったのか少し気になったがその話しは次の機会に取っておくとしよう。
話を戻すが、俺が気になったのはチンピラが空気の野郎に殺される前に命乞いとして言ったいた『根城に不老族』の続きがなんて言おうとしたのか聞こうとしたのにアイツは俺に対する嫌がらせなのか斬撃を放ってチンピラ全員の口をふさいだのだ。
ミリ達が手当てしている冒険者と関わるのなら冒険者から聞けばことは済むが、冒険者と別件だった場合はもうこの件について聞くことができない。
空気の野郎がどっかに行ったのは置いといて冒険者達から話を聞いてチンピラ達が何者だったのか確めてからチンピラの根城を探しだして調べる。
冷静に考えればチンピラ達は俺を不老族とわかって何を言おうとしたか。命欲しさに命乞いで嘘や適当なことを言って見逃してもらおうとしたのかもしれない。むしろ、適当なことを言って見逃してもらおうとした可能性が高い。
それらのことを確めることは難しくなったがちゃんと調べれば確めることができる。
「ミリ達の元に戻ろう。幼い少年も来て」
「タカシ?どこに行くのさ待ってよ。幼い少年って僕のことなの?タカシも変な呼び方するな。僕にもちゃんとした名前があるんだけど聞いてる?」
「聞いてるが?そう言えば名前を聞いていなかった。前は俺が一方的に名乗っただけだったな」
念力で操作してチンピラ達の死体を処理(地面を掘って埋めるだけの作業)を終えてミリ達の元へ戻る途中に幼い少年の呼び方を指摘された。
研究所の中は急いでてお互い名乗れなかった。わかる際は幼い少年は空気の野郎に首を切り落とされて俺は一方的に名乗ったが幼い少年の名前は聞いていない。
「そうだよ。幼い少年呼びって僕に取ってものすごく不名誉だよ。クーはクーで治癒って呼ぶしさ。君達は何なのさ」
「あんなのと一緒にしないでほしい。俺は名前を知らないでそのままの容姿を呼んでいるに過ぎない」
「それが不名誉って言ってるの。名乗らなかった僕も悪いけど、僕にはアズサって名前があるんだからそっちで呼んでよ」
「アズサって言うのか。可愛い名前だな」
「フフン。タカシもそう思うでしょ。可愛い名前でしょ?」
幼い少年の名前を初めて聞いて可愛い名前と感想を言うとアズサは嬉しそうにした。
確かに見た目も可愛いが名前も可愛いと思ったけど本人は男なのに可愛いと言われて嬉しいのか?誉められているから可愛いと言われても嬉しいのだろう。
視界で見ていたミリ達の冒険者の手当ても今丁度よく終わったようだ。一通り終わったから俺を探しに行こうとミリとスフィアが相談しているところだ。
死体を処理したが俺達の回りには血が飛び散っているのでミリ達はこちらに来ないでほしいから急いで戻る。
この場の惨状は血ミドロ過ぎて小さい子達には見せられないが、アズサは血ミドロな光景は見慣れているらしくこんな物を見ても何も感じないそうだ。
もしかしたら俺達は研究所の内の現実に慣れすぎて血ミドロ死体を見ても何も感じなくなったもしくは目の前に死体があってもどうでもよくなった。
アズサと空気の野郎は目の前にあった死体は特に何も言うこと無くやり取りしてた。俺も含めてだいぶそういう感性が狂っている。
「あっ!タカシさん。周囲に何かありましたか?」
「いや、岩ばかりで何もなかった。そっちは怪我人の手当ては終わったのか?」
「えぇ、なんとかなったわ。けど何人かは腕や足を切り落とされているから冒険者業を諦めてもらうことになりそうね」
「手足がなくなった奴は命が助かってよかったって思うしかないな」
眠りについている冒険者を見ると確かに手足が無い人がいる。その人にとって残念だが手足がある人生を諦めてもらうことになりそうだ。
それでも冒険者達は大人しく眠りについている。これなら死ぬことはないだろう。
「それよりタカシさんそっちの人ってもしかして」
「あのときのおねえちゃんだ!」
「アズサのことを知っているのか?」
「知ってるも何もタカシさんが知り合いの不老族とケンカして死にかけた時、助けてもらった方ですよ」
「やっぱりあの時、助けてくれたのはアズサだったのか」
「うん?ああ、あの時のことね。ボロボロになったクーが珍しく頼みこんできて「治癒の力をふるってほしい」って言われてクーについて行ったらタカシが倒れていたから治してあげたんだ」
あの時に見た夢は夢ではなかった。夢で見た通りアズサは空気の野郎と共に一緒に行動してたわけだ。
それで俺と空気の野郎の怪我を治療してくれたと言うわけか。
『マスター。大丈夫なのですか?』
『何がだ?』
『マスターが毛嫌いしていた相手と共に行動していた者ですよ?一緒に行動して不快にならないのですか?』
『そういう意味か。別に問題ない。空気の野郎を嫌がっていたのはアズサが空気の野郎に殺されたからで今はそのアズサが目の前にいるから不快ではない。逆に一緒に逃げてきた仲間と出会えて嬉しく思う』
『マスターがそう仰るならいいのですが、あの男とも和解したと思えばいいのですか?』
『空気の野郎は意味不明なことを言うから距離を置きたいがな』
『マスターはヒロと言う方と同じく警戒した方が私はいいと思います。それに空気と言う方は少しばかりマスターを尊敬しているように見えます』
パスはアズサのことを少し警戒しているようだ。ヒロと同じくらいに警戒しろと忠告された。ヒロも元被験者だがアイツは何を考えているのかわからないが、ヒロ達の組織は地球からきた被験者を保護するのが目的と聞かされたがヒロ個人は俺を自由にしてくれるがヒロ組織に逆らっている。何か目的があって俺を自由にしているようだ。
ミリ達が安全に暮らせる環境を整えるまではヒロ達の国には行かない。それまでは旅をしながら異世界生活を楽しんでやる。
「タカシ?そこで倒れてる人はどうしたの?」
「怪我をしたままここに倒れていたんだ。ミリ達に頼んで治療してもらっていた。ここにある薬では簡単な手当て程度しかできないがスフィアの治癒の魔法でだいぶ回復しているようだ」
「これくらいできて当然よ。でも深い傷は治せても欠損は治せないわ」
スフィアは冒険者の先の無い手足を見て悔しそうにしていた。自分にもっと力があればこんな怪我を簡単に治せると思っているのだろうか?
「スフィアちゃんは自分ができることをベストを尽くしました。スフィアちゃんは言ってましたよね?これ以上の力を求めるならもっと自分の魔法を高めればいいのです。そしていつかはできるようになると」
「そうね。ミリちゃんの言う通りね。魔法は強欲に求めていくもの、今が無いと嘆くなら修業して力を手に入れろって何回も父に叱られたわ」
「そうですよ。でもスフィアちゃんが頑張ったお陰で助かった命があるのですよ!」
「スフィアおねえちゃんは頑張ったよ」
「そうだ。スフィアは頑張った。さっきまで死にかけていた冒険者がこんなに落ち着いて寝ているんだ。スフィアの魔法は凄いと思うぞ」
ミリが冒険者を指してスフィアを誉めたてて、スフィアから魔法の練習の時に言われたことをスフィアにぶつける。それを聞いたスフィアは自分の魔法を嘆くことじゃなくてプラス思考で修業すればいいと漫画見たいなやり取りが繰り広げられている。
このやり取りって遺跡で見たアニメの影響だよな。もっと変な方向に行かないように見守ってあげないとそのうち中二という名の病気を患ってしまう。
俺は便乗問いほどではないが誉めるところを誉めた。素直にさっきまで苦しげな表情だった冒険者が今すやすやと眠りについている。スフィアの魔法のお陰で騎士と冒険者の一命を取り留めた。
「ねぇ?タカシこの子達は何を言っているの?説明してくれない?」
ミリ達のやり取りに疑問を抱いたアズサは俺に説明を求めてきた。アズサはこの世界の言葉がわからないからミリとスフィアのやり取りで何を話しているのかわからない。
俺はアズサに簡単な説明をすると。
「あの倒れてる人の欠損を治せばいいの?」
「大丈夫なのか?」
「最近いろいろ食べ過ぎちゃって少し太ってきたから丁度いいわ。それに今回使う材料は私の脂肪がほとんどだから心配しなくてもいいよ」
アズサが倒れている人に触れ能力を使う。切り落とされた部分からにょきにょきと手足が生えてくるのが見えた。
興味本意で見るものではなかった。切り落とされた部分から生えてくる手足がこんなにも気持ち悪い物だったとは思わなかった。
「タカシあの子はなにやってるの?」
「切り落とされた部分を治療してくれてる。見ない方がいいぞ」
「えっ?手が生えてくるわ。魔力の流れは何も感じないけど。そうね。彼女は不老族なのね」
俺の忠告を無視してスフィアはアズサの治療を観察し始めて驚愕後、アズサの手首のバーコードの腕輪を見て納得した。
彼女も不老族とわかったとたん目の前で起きている現象に前のめりになり、ミリとアルムと一緒に観察し始めた。
凄く気持ち悪いくてじっくり見ていられない。俺は再生する手足を見て少し吐きそうになったのは黙っておくとしよう。
俺の手足もあんな風に生えてきたんだなと思うと少しだけ気分がよくなった。
「ふー。終わったー!」
全員の治療を終えて一息ついたアズサはフラフラと尻餅をついた。数前と比べて見た感じ少し痩せた風に見える。
フラフラなのは能力を使う代償で使った脂肪の他に血液も使ったと思うわれる。その影響で貧血を引き起こしてフラフラしているようだ。
「あの水を飲んでください」
「飲みのかな?ありがとう」
ミリが座り込んだアズサに荷物から水筒を差し出した。アズサはミリに渡された水筒を首を傾げながらも受け取り中身を飲み干す。
「タカシあの子達ってあの時の子達よね?」
「あの時っていつだよ?もしかして空気の野郎とやりあった後のことか?」
「そうそう。タカシとクーがボロボロだったとき」
「そういえば、ミリとアルムが不老族が来て俺を治してくれたって言っていたな」
今ミリとアルムが「あの時の」って反応していただろ?いや、アズサはミリとアルムの言葉がわからないだった。
アズサがこっちの言葉をわかるまで俺が通訳役になるしかないのか?このままだとミリ達とコミュニケーションがとれないしが、俺が通訳としていればアズサはそのうち言葉を覚えるのだろうか?
しょうがないから通訳をしてやる。
「あっでも耳が尖った子は初めて見たよ」
「スフィアは空気の野郎とやりあった後に訪れたルルーの街で出会ったんだ。ちなみにスフィアはエルフって言う民族だ」
「これがエルフか?こっちの子は猫耳だけど、小さい子は僕と同じ人間だ」
「スフィアよ。よろしく。それで今のどうやったの?」
「スフィアがよろしくだってさ。それと能力のことが聞きたいってさ」
「うん?よろしくって言ったの?こちらこそよろしくね」
アズサはすぐにミリ達と打ち解けて俺の通訳を通して雑談を冒険者達が起きるまで続いた。
「うはっ!盗賊!子供?」
最初に起きたのは1番若い騎士の青年だ。
俺の記憶が正しければ一番怪我少なかったはずだ。
青年は起き上がり辺りを見渡して俺達を視界にとらえて首を傾げた。青年の置かれた状況を考えれば目の前に子供がいれば疑問に思うのは不思議じゃない。さっきほどまでチンピラにやられていたから警戒するのは仕方がない。
騎士と冒険者が手ぶらのチンピラにやられるわけがないと思うが、あのチンピラが口を滑らせた通り盗賊の仲間であのチンピラ達は盗賊の下っぱだったんだろう。騎士と冒険者を倒した盗賊達は一足先に隠れ家に戻って下っぱのチンピラ達は残りの作業を任されただろう。
「君達は一体?それよりも盗賊は?」
「えっ?私達が来たときは皆さんが倒れていましたが回りには誰もいませんでしたよ。タカシさんも回りには誰もいませんでし」
ミリがアズサに気づいて固まった。
俺が見回りしたときにアズサと合流したところを話すか迷っている。
ミリは嘘を言っていない。俺達がついた時には誰もいなかった。アズサと再開したのは見回り中だ。
「後は俺が説明するからミリは大丈夫。ミリはアズサと再開したのを気にしていると思うけど見回りから戻る時アズサが空から降ってきたんだ」
「人が空から降ってくるのか!?」
青年が驚愕する。
そりゃ、人が空から降ってくるのだから冗談でもびっくりする。魔法があるこの世界だと魔法を使って飛べる人がいそうだけど。
おい、空から女の子が降ってきたぞ!ってね。
「はい、俺とアズサはこれだですから。アズサ、バーコードを見せて」
「なんで見せなちゃいけないのさ?僕達が被験者だって言っているものだよ。この世界で見せても意味ないと思うけど」
「いいから」
「白黒の腕!不老族なのか?」
「ええ」
俺とアズサは青年にバーコードの腕輪を見せた。
アズサはバーコードを見せるのを躊躇っていた。バーコードは俺達被験者にとって外したくてたまらない代物だし、自分が被験者と言っている証拠だから他人に見せたくない気持ちは理解できる。
この世界では俺達被験者が身分を証明できるのはこれしかない。不老族云々の話はアズサにはしていない。
空気の野郎は何度も地球とこっちの世界を行き来しているが言葉が通じないからこの世界での不老族の身分と被験者=不老族の話は知らなそうだ。
「そっちの子達も」
「いえ、ミリ達は違います。そこは手元を見ればわかると思います」
「その子達はちがうのか?それにしても不老族が二人も出会えるなんて俺達はなんて幸運なんだ」
「ここで何があったんですか?」
「それは」
青年の反応は置いといてここで起きた出来事はなんとなく予想できそうだ。
チンピラ達と騎士や冒険者達の言動を合わせて見ると盗賊に襲われた。残った下っぱのチンピラ達が騎士と冒険者の身ぐるみ剥いでいた。
そこまで予想できるが俺が知りたいのはチンピラが言っていた不老族の部分が気になっている。
焦らずに青年の話を聞いてみよう。




