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異能者は異世界に来て何をする  作者: 七刀 しろ
第四章 不老族
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 マップで周囲を調べてみた。

 森の回りには草原が広がっており、ルルーンの街以外の街はないが、そこに点々と小さな村が存在することがわかった。さらに調べて森から南西方向に見える山の麓に行けばここより二回り大きい森がある。

 この森は普通の馬車で横断するのならば一日以上かかる広さがある。リンはこの森に住む生き物を全て食べたことになる。どのくらいの期間で食べ尽くしたのかリン本人に聞いてみたがわからない。

 紹介する森はどのくらいで食べ尽くすのかリン次第だ。

 本人は生き物食べ尽くしたことで加減と我慢を覚えたようだ。生き物がいなくなるまで食べ尽くすことはないだろう。


 俺にとってはリンがそこの森の生き物がいなくなろうと他人事である。自然破壊は心配するがリンが食べ尽くしたことで生き物が簡単に絶滅するのはそこの生き物が弱く淘汰されたに過ぎないと俺は考えている。

 リンを含めて一つの自然だからリンが紹介する森に向かうのは餌場を無くした動植物の移動だ。自然破壊ではない。

 ただ森へ向かう先に幾つかの村があるみたいだがリンが村を襲うかが問題だ。リンの気分と村人の運次第で村が消えるかもしれない。


『リン?あの山が見えるだろう?あそこの麓にここよりも広い森があるみたいだ』


 木々の隙間から見える山を指した。


『そうか。タカシが言う場所に向かうとしようか』

『地図を見る限り森が広がっているらしい。そこなら生き物いるはずだ』

『タカシ感謝する。ありがとう』

『これは警告ですがこの森と同じように食べ尽くすのはオススメしません』

『わかっている。こんなひもじい思いをしたんだ。次は気を付ける』

『約束ですよ。苦しい思いをするのは自分ですから』


 リンに強く警告するパス。

 パスは何を思って警告するのかわからない。友好的な生命体を俺の友人と認識したのかそれとも自然破壊を危惧しているのかパスの人格を詳しく知らない。

 何にせよ。警告を受けたリンは森を食べ尽くそうとは思わなくなるだろう。

 パスとリンのやり取りを見て俺はいい提案を思い付いた。


『自分で食糧を育てればいいんじゃないか?』

『マスターナイス提案です。生き物を飼育すればいいのです』

『飼育とはなんだ?』

『簡単に言えば気に入った食糧を育てることだな。例えば、美味しいと思った生き物を複数捕まえて育てて増やしてそして食べるみたいな感じかな?』


 リンに合わせて曖昧に説明した。


『なるほど、トンムを食べるために繁殖させると言うことだな。昔、親にそんなことを教えてもらったことがあったな』

『飼育は大変だと思う。生き物の餌を確保する必要がある』

『それと飼育している生き物を全部食べちゃダメですよ』


 パスはしつこいぐらいに念を押している。

 ここを見て信じられないのはわかるがそこまで言うとリンにしつこいと思うぞ。


『リン、俺達は行くぞ。次の森は平和に暮らせよ』

『わかっている。お前達も元気でな』

『森を出るなら夜がオススメですから気を付けてください』


 器用に触手を降ってくるリンに俺達は別れをつげて馬車に乗り込んだ。リンは見たことがない生き物(?)だったが意外といいやつで面白いかった。

 世の中には俺が知らない生き物もいるが知能を持ち人間以外で言語をコミュニケーションがとれる知的生命体を初めて見た。

 さすがは異世界。世の中はまだまだ知らないことが溢れている。俺が見ていない世界は巨大だ。


「タカシあれはなんだったのよ。いきなり不老族の石板を操作したと思えば、山を指していったいあのトレントと何を話したのよ」

「そうですよ。気になるじゃないですか。私あんな魔物初めて見ましたよ」

「リンは魔物じゃないと思う。言語でコミュニケーションがとれていたところを見ると」

「おにいちゃんどうしたの?」


 いきなり黙った俺を心配そうに見つめるアルムが俺の頬を撫でた。


 リンはもしかしたら俺と同じ穴の狢なのかも知らない。リンが言う親と言うのは研究者のことを指すしているのではないのか?

 リンは地球で何らかの研究の結果やDNA操作によって生まれて被験者の脱走に巻き込まれてこの世界にやってきたのかもしれない。


 結構な知識を持っていたところを見ると何者かによって知識を与えられていたのは間違いない。リンも『親が言っていた』とか言っていたからその親が研究者の可能性がある。

 いや、決めつけるのはやめよう。異世界が存在していると言うことは地球以外の世界が存在している証拠だ。それを踏まえてリンの故郷が地球じゃないのかもしれない。別世界で発展した知的生命体かもしれない。


 考察するのは楽しいがリンも詮索されて欲しくないこともあるだろう。

 人間以外の知的生命体だ。どんな文化があるのか数分言葉を交わしたことでわからないモノはわからない。

 俺はリンを殺しても何も思わない、リン側も俺達を食べたことでなんとも思わないだろう。

 別々の生き物がお互いに殺しあうのに感情が芽生えるのか人間を殺しすぎた俺にはそう言った感覚が麻痺し過ぎて理解できない。

 形が全く違う者同士でただ言葉を交わしたことで友と呼ばれる仲になれるものなのか。友となれれば素敵なのだろうか?


 後ろを振り返ったらリンはもういなかった。彼は何を思って俺とパスと言葉を交わしたのだろうか?

 既に去った知的生命体のことを考えた。


「リンって誰ですか?」

「この流れからしてあのトレントの名前じゃないの?」

「自分はウドターンって言っていたから種族名はウドターンじゃないのか。相手の文化は知らないけど親もウドターン、自分もウドターンと名乗っていたぞ」

「なんだかドラゴンみたいですね」

「ドラゴン?」


 異世界だからいるのかドラゴン。旅をしていたらあえるのか。

 胴体がヘビの形状でそこに手足があるのか、それとも西洋のようなグンムリでゴツいドラゴンなのだろうか?見ていたい。


「はい、言葉を話せるドラゴンの中には親から子へ受け継ぐ名前があるみたいですよ」

「そうね。ドラゴンの受け継ぐ名前は例えるなら人間の貴族の名字みたいなものよね。エルフの名字は生まれた村や街のなるのよね」


 ドラゴンも名字のような物があるようだ。

 俺は思い出せないというか元々無いのだろう。タカシって名前も漫画を見て自分で付けたからたぶん名字はないはずだ。エルフにも名字があるのか。生まれた場所に由来するような名字が。

 ルルーンの街で生まれたなら名字がルルーンになるのか。


「スフィアは名字があるのか?」

「エルフだものあるわよ。私はグヌグ村で生まれたからスフィア-グヌグって言うのよ。ほとんど名乗らないから無いような名字だけど」


 スフィアはグヌグって名字があるけどほぼ名乗らないのか。それはそうか。生まれた場所が名字にあるから回り全て同じ名字だもんな。名字を名乗っても意味がないか。他所で名乗ってそこの村出身かってなるだけだからエルフの文化では名字はほぼ使わないそうだ。


 エルフの独自の文化は以外と面白いな。


 リンから出会った場所からずっと離れた道とは呼べそうもない道を馬車を地面ギリギリで浮かせて森の中を進んでいた。

 速度はそれほど早くはなくミリ達も楽しげに会話を楽しんでいる。

 俺達の位置はマップで確認するに森を抜けようとしているところだった。


「キャァァー!誰か助けて」

「今人の叫び声が聞こえました。タカシさん」

「ああ、俺も聞こえた。もしかして」

「ひゃっ!」

「ちょっとタカシ!」


 森の中で女性の悲鳴が聞こえた。

 俺はまさかリンが人を襲ったと思い馬車を急転回させて悲鳴の元へ向かった。

 急転回させたせいで悲鳴を聞き逃したアルムとスフィアがバランスを崩したがパスが念力で二人を支えてくれた。

 視界を送ったが俺の予感は勘違いだったようだ。


「ぐへへ、この森には魔物がいないから格好の餌場だ。アニキ一発だけいいかい」

「ダメに決まっているだろ!ボケが!久々の獲物だ。綺麗なままで売りてぇんだよ。三日後までに売り家に渡してぇからお前も手を動かせ」

「へーい」


 視界の先には二人組の男がぐったりとした冒険者の女性を袋に積めるところだった。

 あまりにもショッキングな光景をミリ達には見せる訳には行かないのでちょっとしたお掃除をすることにした。


「ヌワァァァァァァァァーー!」

「アニキィィー」


 女性が入った袋を念力でぶん取って男達を同じ方向に向けて飛ばしてやった。

 森の中だし、多少の怪我をすると思うが生き残れるだろう。男達の運次第で価値観を変えたかもしれないリンに助けてもらえるかもしれないな。それか食べられてしまうかも。

 何にしても二人で助けてあえば生きて森から抜け出せるだろう。リン以外の生き物は魔物すらいないのだからきっと大丈夫だ。たぶん。


 ぶんどった女性を袋から出して寝かせる。

 俺達が悲鳴がした場所に着いた時点で森の中に倒れた女性と麻袋が置いてあるだけの光景があるだけ。


「人が倒れてる。タカシ、馬車に乗せて森を出ましょう」

「あれ?男の人の叫び声もしませんでしたか?」

「男の人の声?気のせいじゃないのか?女性の悲鳴しか聞こえなかったけど」

「そうですか?気のせいでしたか」

「おにいちゃんはやく」

「わかった」


 男達の声を聞いていたミリを何とか誤魔化して念力で女性を場所に乗せて馬車を走らせる。


「スフィアおねえちゃん、そのひとだいじょうぶ?」

「大丈夫みたいよ。ただ単に寝ているみたい」

「この人から微かに眠り薬の匂いがします。薬で寝ているようです。時間が経てば起きるかと思います」

「寝ているだけか。安心した」

「寝ていることは置いといて不思議ね。なんでこの人一人で森の中にいたのかしら。もしかしたら魔物に襲われていたかもしれないのに」

「この人に聞かないとわからないですよ。起きるまで待ちましょうよ」


 森を抜けたところで馬車を止めて彼女が目覚めるのを待ったが3時間程経過しても彼女が目覚めることがなかった。

 日が徐々に傾き始めた時には痺れを切らしていた。


「このひとまだおきないの?」

「まだ起きませんね。薬の効果が無くなれば起きると思いますがなかなか起きてくれません」

「日が落ちたそうよ。このまま待っていても日が暮れて夜になるわ。ここで野宿するつもりはないでしょ?」


 ミリ達も彼女が目覚めないことに痺れを切らしていたらしくスフィアに移動を促された。

 この旅で野宿するつもりは半分くらいあったからちゃんと準備はしてある。

 ここで野宿するなら問題ない。森の近くだが、魔物が出ることはないから気にすることは盗賊だ。俺が無眠で見張れば安全性も保証はできる。

 だけどここで野宿する必要がない。さっきリンに新たな住みかを紹介した時にこの辺りの地理に付いて調べたことによってここの近くに村らしき物があることがわかっている。


 廃村の可能性があるが野宿するよりはマシだ。雨風しのげる屋根と壁があるんだみんなここで馬車の上で狭苦しく眠りたくはないだろう。

 だから村に向かうことになった。


「ん?ふわぁ」

「タカシさん目覚めそうですよ」

「ん!ギャア、やめて!」



 肉眼でも村が見えてきたところでようやく彼女が目覚めたが自分が襲われていたことを思い出したのか馬車の上で暴れだした。

 このままだと危険なので荷物を無理に退かした馬車の角に念力を使って大人しくしてもらった。


「あれ?体が動かない?」

「うまく体が動かせないところを見るとまだ薬が効いているようね」

「えっ?スフィアちゃんそうなのですか?」

「俺が押さえているだけだから」

「だいじょうぶ?」

「えっ?子供ばかり。くっ売られて私も奴隷なるのか」

「「えっ?」」


 彼女は何か勘違いしているようだ。一歩間違えば捕まっていたかもしれなかったからある意味その勘違いはあっているのかもしれない。

 彼女の反応を見てミリ達も困惑している。

 少し落ちついたところでその勘違いを直すために彼女を自由にしてあげた。


「体が動く?それに馬車の上?」

「気が付いたか。大丈夫か?」

「取り乱してすまない。気を失う前にいろいろあってな。君達も私と同じ状況だろうが!」


 ミリ達に気を使って「男二人に乱暴された」とは言わなかった。彼女は自分がいる状況を必死に飲み込もうと理解していようと試みている。

 この馬車には子供しかいないこととか、馬がいないのに馬車が走っていることとか。

 後者についてすごく驚いているようだが。


「馬がいないのに走っている?!」

「はい、馬はいないですがそれがどうしました?馬の代わりにタカシさんの力引いているのです」

「タカシは不老族だから不思議な力で馬車を走らせてるのよ」

「おにいちゃんすごい!!」


 現在走っている馬車を信じられない物を見ている彼女にミリとスフィアが説明した。

 少しずつ状況の整理をしているようだが二回にわたり落ち着いては普通ではあり得ない物を見てびっくりしているから本人が落ち着けない。


「不老族の力で馬車を走らせているのか」


 それで納得できるんだ。言い訳や理由に不老族をつければ何とかなる説が浮上してきたな。それでほとんどの人は納得する。


「不老族と会ったのはこれで二人目だ」

「お姉さんは以前に不老族の人と会ったことがあるのですか?」

「会ったことがあるぞ。今朝、森へ向かう途中の村にいたぞ。君とは違い言葉が通じなかったがな。名前を言うのを忘れてた私はマヤと言う」

「ミリが言ったと思うが俺はタカシだ」

「私はミリです」

「スフィアよ」

「アルムなの」


 彼女改めてマヤと自己紹介を交わして、マヤが言う不老族の話を聞いた。

 小さな女の子ようでその子とは言葉が通じないが村にその子とそっくりな娘がいるようだ。

 マヤが村人から聞いた話しだと村出身の商人が旅の途中に生き倒れているところを保護され村に連れてこられたらしい。

 見た目は肌がこんがり焼いた色で美しい金髪の女の子だそうだ。

 褐色の肌に金髪の女の子で思い当たる人物が出てくる。約一週間前に脱走をした中に同じ人物がいた。


 マヤさんから聞いた話しだと丁度その子がいる村に俺達が向かっている。


「アイツなのかもな」

「タカシさんはマヤさんが言う不老族に心当たりがあるのですか?」

「まーね。知り合いに同じような特徴の女子がいるがそいつだったら嬉しいと思う」

「タカシの知り合いの不老族ね。どんな子かしらね。会うのが楽しみだわ」

「おにいちゃんのおともだち?アルムもそのことおともだちになりたい」


 俺は久しぶりに会う仲間との再会に胸を踊らせて馬車の速度を本の少しだけあげた。


 一時間経たない内に例の村に到着した。村の大通りを馬を引かない馬車が通るだけで奇異の目で見られるがそんなのお構い無しだ。

 目的の人物に会うためならそんなの気にならない。


 マヤさんは村長に伝えることがあると言って村の中では一番大きい家に向かっていった。

 マヤさんは森にいた理由は森の調査だったそうだ。何でも森の中に住む魔物や獣がこの一年で急激に数を減らしてこの最近では痕跡すら見つけられなくなったと言う。そして村の男達が森へ入ると何人かは戻って来なかったそうだ。

 その調査にマヤさんがすることになって森へやって来たと言うわけだ。


 俺は今の森の現状を知っているが話さなかった。マヤさんが村長の元へ行ったのは調査報告に違いない。

 調査結果は男達がいなくなったのは人攫いで魔物や獣が消えたのは不明になるだろう。今後、大人数を揃えてちゃんとした調査が行われるだろう。

 調査開始するころには原因は森の中にはいなくなっているはずだ。


 村の中を見て回ったがバーコード型の腕輪をしている奴が見つからなかった。

 空がオレンジ色に染まり、夜に変わろうとする空を見て人探しはひとまず置いといて寝泊まりできる宿を探そうと思う。

次回は、休憩としてショートストーリーを何本か書こうと思います。


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