出会い2
でかい木がとうとう俺達の前に現れた。
近づく前に排除できたが、言葉を発したことに気をとられ接近を許してしまった。見た目は魔物ような異形な生き物に見えるけどさっきからいくつもの言葉を発している。
こいつは魔物の中でも知能が高い方の魔物なのではないのだろうか?長く生きて人間達から聞いた言葉を真似しているだけと。
そうにちがいない。
『ゴハン、久しぶりの生きたゴハンがきた。何ヵ月ぶりだ。住みか近くの生ける物は全て食べてしまったから最近は自分の行動範囲抑え水と光で飢えを乗りきった。さて、今回の獲物は4体、久々にしては大量だ。どれを食べようか』
でかい木は上部の幹にある緑色の丸い物体をジョロジョロ動かして俺らを品定めをしているように見える。
「こいつしゃべっているだと。魔物の中には言葉を発せるヤツはいるのか」
「タカシさん何を言っているのですか?言葉を発しているとは何ですか?!私には何も聞こえません」
「私も何も聞こえなかった」
「アルムも」
「そもそも魔物は言語を使わないわ。魔物から声のような物が聞こえてもそれは真似ているか、気のせいよ」
ミリ達にはこいつの声が聞こえないのか?こんなにペラペラとしゃべっているのにわからないのか。
そんなことは置いといてこの植物にコンタクト取れるか試しに話しかけてみよう。
この植物の声は音ではなく、テレパシーのような物で脳に直接響いている。見た限り耳と口は見られないからそういう音を発する器官が発達もしくはないのだろう。テレパシーにて言語を発していると判断した。
パスと話すと同じように脳内で語りかけてみれば言葉が通じるのかもしれない。
『おい、俺の言葉わかるか?』
『マスターやめてください。このような化け物はすぐに排除しましょう。マスター達を見る目は明らかに食べ物見る目でした。危険なので排除を』
『そんなの話してみないとわからないだろう?』
『なにやら話し声が聞こえるな。お前達が話しているのか?お前達に似た物を食べたことがあるが他のトンムように言葉を解しなかったがお前達は違うのか?』
『良かった、言葉がわかるのか。魔物と思って殺すところだった。パス通じただろ?』
『はい、マスター。ところでマスターは言葉交わしたところで何をなさるつもりでしょうか』
『そんなもの決まっている。この森のことやこの植物のことを聞くんだよ』
植物が動いていることだけでも驚きなのに言語を発している。これをチャンスに敵対心がないのなら話し合って情報を出せるに決まっている。
どういう存在なのかとか、この森には生き物がいないのかとかね。
『なんだ?俺を置いて何を話し合っている?俺の質問に答えてくれ。なんで俺の言葉をわかるんだ?』
『おっ、悪い。話が通じるのは正直な話し俺もわからない。とりあえず、俺がお前と話せる力を持っていると理解してくれ。それとトンムとはなんだ?そっちの人間の呼びなか?』
『トンムは形あって動く生きる物全体の名称だ。それ以外に何がある?』
『ああ、生き物って意味か』
トンムとはこの木、もしくはこの木が属する種族の言い回しだろう。日本語では花を花と言うように外国語だとフラワー言うような感じなのだろう。
『それより俺はゴハンが食いたい。お前達を食いに住み処から出てきたのだが、言葉を解すトンムに出会うとは奇妙なことにあるとはな。お前達四体は言葉を解せるのか?』
『俺以外はお前と話せない。俺達は別の方法、えーと、喉から音を発してコミュニケーション取り合っているから無理だ』
『そうか。でももう一人の声が聞こえたぞ?』
パスの声も聞こえるのか。テレパシーのような力でやり取りしているからこの木に聞き取れても不思議ではない。
パスの声を聞かれたが、気のせいと言ってパスを出すべきか出さないべきか。
『マスター、聞かれていたんですから隠してもしょうがないと思います』
迷っていたらパスに指摘された。
『声は聞こえたが、もう一人はどこにいるんだ。お前の後ろに隠れているトンムは俺と言葉を解せないのだろう?』
『私はマスターに着いている腕輪です。ただの装飾品です』
パスよ。超能力を持った腕輪はただ装飾品ではないと思うのだが、しかも自我を持っている。普通の物ではない、パスは人と言ってもいい。
パスは自分を装飾品と言えば自分でもしっくりするだろうが、コミュニケーションを取っている俺はパスを物として扱えたとしても生き物として見ている。
この世界が奴隷を使うような感覚と似ているな。パスは奴隷ではない。パスが望めば俺ができる限り答えるつもりでいる。
『ソウショクヒンって何なんだ?トンムとどこが違うんだ?』
『私は生きているわけではないです。道具が自我を持っているだけです』
『パスはこれなんだ』
俺は腕に着いているパスを撫でる。
俺もパスのことをヒロに言われるまで研究所に被験者を管理するために付けられたただのバーコードと思っていたがまさかの自我を持っているとは驚いた。
この木がパスがいないと言ってパスを探すのは無理はない。普通、コミュニケーションを取れる相手が俺の腕に着いているとは思うまい。
『もう一人は寄生しているのだな』
『私は決してマスターに寄生しているわけではないのですが』
『逆に俺がパスを頼ってばかりである意味寄生しているのは俺の方と言われると思うがな』
『マスターがいたからこそマスターから生まれたのです』
『ソウショクヒンは生きていないが自我があるのか?トンムの生態は理解に苦しむな』
木はパスのことを生き物としてどう捉えるか悩んでいる。どうしても腕輪に自我が宿っているだけなのを理解できないようだ。
理解できないことは時間の無駄だからこの際置いといてお互いの自己紹介をしていなかったからすることにした。
でかい木と呼んでいたが呼びにくい。名前があるならそっちで呼んだ方がいい。向こうもトンムと俺達を呼んでいるがちゃんと名前で呼んでもらいたい。
「タカシさんどうしたのですか?目の前に魔物が現れたのですよ。倒さないとこちらが襲われますよ」
「おにいちゃんがやらないのならアルムがたおしす」
「待ってアルム。攻撃しちゃいけない」
「タカシどうしちゃったのよ。魔物も私達を襲わずにこちらを観察しているようだし、トレントとは違うし、様子がおかしいのよ」
トレントとは人を惑わす植物の魔物らしい。
三人娘は俺と木の様子がおかしいと不信に思い、逃げるか木に攻撃するか迷ったようだ。
この木が新種のトレントで俺を惑わされたのでわないのかと思ったが俺を置いて逃げることができず、アルムが痺れを切らして攻撃しようとしたところ俺が止めたのことだ。
「この木は話ができるから攻撃しちゃダメだ」
「なんで?アルムにはこえがきこえないよ」
「目の前にいるのは魔物なのよ。攻撃ができないのなら逃げるべきよ」
「そうです。タカシさんはあのトレントに騙されてますよ。タカシさんは正気に戻ってスフィアの言う通りにトレントから逃げましょう」
「別にあの木から何もされてないよ。騙されているなら既に襲われているとは思わない?それにあの木も困惑しているように見えない?」
木は木で自分とコミュニケーションを取れる俺とパスがいるからミリ達三人を襲うか襲わないか迷っている。
ここに向かったのは食糧の確保が目的だった。もしもミリ達を食べようと思うのなら容赦しない。向こうもそれは理解できているはずだ。
相手は植物だ。深刻そうには見えないから光合成をすれば生きるだけの十分な栄養素は確保できるはずだと思うのだが。
俺は本人ではないから憶測でしかない。物を食べると言うことは動く分や繁殖に必要なのかもしれない。
奇妙な相手だが肉食の異形な存在だ。友好的な関係を築いて離れよう。
まずは自己紹介する。
『そういえばお互いの名前を言ってなかったな』
『名前か。ウドターンと言われていたが俺の核を生んだ親もウドターンだった。そういう意味では俺という個体の名称を持っていない。そっちは触手に付いているソウショクヒンはパスでお前はマスターと名称を持っているのだな?』
名前が無いのはわかった。ウドターン、それは種族名なのか。親族親類での名称なのか判断が付かない。
植物の文化には詳しくない。こいつと話せるのは俺しかいないから人間で植物の文化を理解するのは時間を掛けないと難しい。
わかったのはこいつにも親がいるのがわかった。
何も無い場所から生まれるわけではない。ちゃんと生殖活動をして次の世代が生まれるのは植物も動物も変わらない。
生殖活動は何をすれば命が生まれるのか知らない殺すことしか脳がない俺が語るのはおかしな話しだが、誰しも何かから生まれるってことだ。
『マスターか。パスにはマスターと呼ばれているだけで俺の本当の名前ではない。俺はタカシって言うんだ』
『ン?お前は二つも名称を持っているのか。トンムの生態は面白いな』
あや、人間は名前が二つ持っているって勘違いしたのか。それとも人間全体がマスターで俺の個体名がタカシと認識したのか?
頭がこんがらがってややこしくなったな。この際めんどくさいから勘違いしたままでいいや。普通は名字と名前があるから名前が二つあるみたいなもんだから。
ということは俺のフルネームはマスタータカシってことにならないか?マスタータカシは語録が悪いからタカシマスターになるな。
うん。タカシマスターって何のマスターだ。自分で考えておきながら意味不明過ぎる。
『マスタータカシ、一つだけ俺に名称を付けてくれないか?』
ウドターンは自分に名前がないことに気づいたのか。俺に名前を付けて欲しいと頼んできた。
『お前の名前か』
『そうだ。親やそのまた親と同じ名称はさすがにわかりにくいから俺の為の名称が欲しいんだ』
『自信満々に言っておくが俺はセンスがないぞ。パスはどうなんだ』
『私は長い間外部との接続が繋がっていなかったので名前を決めるなんて私にはできません。マスターが決めればいいと思います』
『パスまで俺がいいのかよ。今すぐ思い浮かんだのしかないぞ』
『それでいい。久々の話し相手のお前達に名称を付けて欲しい』
俺は木に名前を付けることになった。
名前か。前に俺はパスに名前を付けた覚えていない。どういう心境で付けてパスの名前の中にどういう意味が含まれているか全く思い出せない。それなのに木に友好的な関係を築いくために付けなければいけない。
名前というの物は体を表すというが目の前にいる木に名前を付けるのは異常な程、俺の頭を悩ます。
木、木、森、森林、ウッド。それだとウッド-ウドターンになってしまう。そのまんまでつまらない。シンプル過ぎてダメだ。
でくのぼうは悪口だ。リンなんてどうだろうか?林って書いてリンだ。この木は俺の価値観で言うと可愛らしさは全く無い。うん、リンだ。あっている気がする。
『マスター』
パスが俺の思考を呼んで何か言いたげだが、言葉を飲み込んだようだ。
パス許せ、これしかいいのが思い浮かばなかったんだ。
『リン。リンなんてどうだ?リン-ウドターン』
『リンか。なかなかいい名称だな。それとパスが何か言いたげだったがどうかしたのか?』
『いいえ、何でもありません』
『そうか。俺のために考えてありがとう。それで何で名称をつなげたのだ?』
『なんとなくというか。俺達の中では名前ともう一つの名字って言う名前を付けるだ。名字は前でも後ろでもいいが、語録がいいのはリン-ウドターンだ』
『そうなのか。お前達の中では繋げるのか』
木、改めリンは嬉しそうに枝を動かしている。リンの目と思われる緑色の物体から黄色い液を出している。
『お前、変な液体が出ているぞ?』
『悪い。つい嬉しくてな。涙が出てしまった』
リンは触手で黄色い涙を拭った。
その黄色い液体はリン達の種族に取っての涙なのね。植物でも涙を流すなんて初めて知った。
あいにく俺はリンに貸すハンカチを持ち合わせていない。
するとアルムがポケットからハンカチを取り出してリンから流れ落ちた涙を拭った。
リンと会話ができないアルム達から見たらリンは植物のモンスターで流れ落ちた黄色い液体も樹液と変わらないのに無言でハンカチを取り出して拭いた。
心優しいアルムは異形の相手でも泣いているのならハンカチを取り出して涙を拭いてあげたことに俺は見習らないとダメだ。
アルムとリンはお互いに無言を貫いて見つめあっている。二人に何か繋がる物があったのだろう。
リンには口が無いからアルムにとっては常に無言状態だ。
『ありがとう。小さなトンム。優しいのだな』
「アルム、ありがとうだってさ」
リンがお礼を言ったのをアルムに伝えた。
それを聞いたアルムは驚いた様子の後少し嬉しそうにベスを抱き締めた。
「えっ!タカシさんこのモンスターとお話できるのですか!」
「まーね。今まで黙っていたのはコミュニケーションをとっていたからなんだ。久しぶりの会話ができる相手が来たとすごく喜んでいるぞ」
「だから攻撃をするなってタカシは言ったのね。どうやって声を出さずに話したの?」
「説明は難しいけどテレパシーって心で語り合う力を使って話した」
「また、不老族の不思議な力ね」
ミリ達に黙っていたのは俺がリンと話をしていたことを打ち明けた。リンと会話ができる現象はテレパシーではないと思うがそこは解明していない俺の能力、テレパシーと言って説明した。
また、スフィアは俺が摩訶不思議な能力を見せると全部不老族の不思議な力って片付ける。だいたいその通りなのだが、この数日の本の一部はパスに頼っている。
使いなれていない能力とかがあればパスのサポートが入る。俺一人で能力を使っていない。
パスは俺の能力で生まれたから俺の能力と言っても過言ではないが、パスには自我があるから俺の認識では別々と思っている。
『タカシ、俺はここから離れて別の場所に行こうと思う』
リンからいきなり過ぎる話題を切り出された。
移動する理由はこの森にいた生き物を全て食べてしまったらしい。
肉食系植物の食欲はすごいがだからこの森には生き物がいなかったのか。
それで生き物がいないから別の場所に移動しようと考えたそうでいい場所はないかと尋ねられた。
俺にはそんな場所思い付くはずもなく、おもむろにタブレット取り出してマップを開いた。




