孤児
廃墟の前で騒ぎ立てる7人の少年少女がいた。少年少女達は見るからにボロボロの服を着て痩せていた。
この街の浮浪児と言った所だろう。
タカシ達はその浮浪児達の前に出た。
「昼間からギャンギャン騒いで近所迷惑だと思わないんの?大人達に怒られますよ」
「うるさい。俺達は金が欲しいんだ。ここで住みたいなら金払え。銀貨の枚数によっては仲間に入れてやってもいい」
「そうか、またな。ギルドに行くよ」
リーダー格の少年の声をBGMに俺達は少年少女達を置いてギルドに向かおうと歩き出し、少年少女達の横を通り過ぎようとした。
アルムは不安そうに俺の服を握る。ミリやスフィアは相手が子供だからかホッとしていた。
「待てよ。ハンリーの話を聞いてなかったのかよ。いいから金を出せよ。そんないい服着てるんだから金はあるだろう」
「キャッ。やめてください」
もう一人の少年がミリの腕を掴み、腕を引っ張った。
「おい、そんな汚い手で触るなよ。離せよ」
「触ったからってなんだっていんだよ」
少年少女達のゴロツキみたいなマネには少しイラついていた。イライラしていたが廃墟の前で騒ぎ立てのは回りの大人達が叱りつけるのを期待して放置するつもりでいたからそこまで許せた。
ミリ達に対して嫌がらせは見過ごせない。
しつけがなっていない少年少女達には少々お灸が必要みたいだ。
『マスター、私の能力をお使いください』
『そういえば、コードにも能力があるって言っていたな』
『はい、加速の能力です。自由に物質の速度を操れます』
『いったいお前が持つ能力ってどのくらいあるんだ?』
『私はマスターの本の一部しか持っていないですよ』
『俺の本の一部?』
コードの言葉に疑問に思いながら目に映る光景がスローモーションのようにゆっくりと動きになった。
今は考えるより行動だ。
持ち歩いていた剣を抜いてミリを掴んだ少年の首に刃を当てる。
だんだんと回りの動きが元に戻る。
「こうするんだ。汚い手を離せ」
「ヒィィ」
少年少女達には速すぎて見えなかったはずだがらこけおどしには十分だ。
「離したから剣をしまってくれよ」
ミリを掴んでいた少年が驚いて尻餅をついた。
「はえぇ、見えなかった」
「街の騎士様よりも速い」
「速すぎ」
「ハンリー、逃げよう」
「ここで逃げたら今日の食いはどうするんだよ。今日のお恵みが無かったんだ。諦めたら明後日まで何もないんだぞ」
「「「それはやだー」」」
リーダー格の声に少年少女達は駄々をこねる。
この子達は食べ物を買える金が無くて困っているようだ。この世界は浮浪児に厳しいようだ。
一つ気になる点があった。今日の恵みはなんだろう?
「今日の恵みとは何か教えろ?」
「はんっ、なんだよ。お恵みぐらい知らないのかよ。これだから村から出てきたよそ者は」
リーダーがこちらを小馬鹿にしたように言う。
少しカチンときてこのままギルドに向かってもいいと思ったがスフィアは悲しそうに彼らを見ていた。
スフィアはエルフで種僕が違う人間に文化的な違和感と言うか自分との価値観の違いに戸惑っているに違いない。
スフィアが悲しむのなら彼らに少し金を渡してもいい。今の懐の中身が暖かいからな。
「そうだ。俺達は少し遠い村から来た村人になるな。それがどうした?今はお前達と同じ家無しだ」
「オイラ達と同じ家無しか。ふん、教えてやるよ」
リーダー格は俺の言葉に自分達とタカシ達に共通する点を感じてタカシの質問に答える気になったようだ。
「お恵みって言うのは貴族様や金持ちの商人がオイラ達みたいな孤児にくれるゴハンのことだよ」
「でも今日は領主様の日なのに広場に来なかったよね」
「次のお恵みまで食べられる物がないよね」
なるほどお恵みは地球で言うところの配給みたいなシステムか。子供が餓死しないための。
「ほら、礼だ」
念力で浮かした金貨一枚をリーダー格の少年に渡す。
「金貨が浮いている?」
「そうだが、お前には何に見えたか知らないが正真正銘の金貨だ。それは情報料と同情だ。じゃあな。俺達は仕事探しにギルドに行くから」
固まる少年少女達を置いて俺達はギルドに向かった。
「タカシさんどうして金貨を渡したのですか?」
「どうしてって言われてもな。可哀想だったと言うか同情と言うか。アイツ等が餓死したら夢見が悪くなるからな。たいした額じゃない」
しどろもどろになりながらミリの質問に答えた。
「おにいちゃんやさしー」
「タカシは優しいね。でも金貨一枚ってあの子達とって大金すぎじゃないの」
俺は別に優しくはない。ただの同情で上げたのだ。
アルムとスフィアに優しいと言われると照れくさいがあまりにも見てられなくて上げてしまったのだ。
「そうかな。別にいいんじゃないのか。多い方がアイツ等も助かるんじゃないのか」
「金貨なので街の大人達に取り上げられてしまうと思います。銀貨10枚で良かったと思います」
「私は1000ニヤドは上げすぎだと思うけど」
スフィアの言う通り金貨一枚、1000ニヤドは上げすぎだったと思うが渡してしまった物はしょうがない。
今思ったがあの少年少女達は金貨でどうやって買い物するのだろう。
疑問に思ったが自分の問題は自分達で解決するだろうから気にしないでギルドに向かおう。
ギルドに着き中に入ると、前回の一件のせいか俺達に絡んでくる大人達はいない。じっと見つめる視線を感じるが振り向くと目を反らされるのであまり気にしないようにする。
仕事を探しに来たはいいがどうやって探すのだろうか?とりあえず受け付けのお姉さんに聞いてみよう。
「すみません。ちょっと聞きたいことがありまして大丈夫でしょうか?」
「はい、って子供か。御使いで依頼状を出しに来たの?」
「いいえ、依頼を受けに来たのですが受け方を知らなくて聞きに来たのです」
「君、どうみても成人前の子供に見えますけど、いつもの雑用を受けに来た子達かな。見覚え無いけど」
自分の見た目が成人前の子供なのは知っているが、この受け付けの女性は何か勘違いをしている気がする。
仕事を貰えるならいいけど。
「それより雑用を受ける時間には遅すぎないですか?他の孤児は朝早く来て旨みのある仕事を全部取っていったから掃き溜めの掃除しか残ってないですよ」
「そうですか。朝方伯爵様の所にいたので遅れてしまったので」
「領主様の所で仕事をしていて遅れたのなら仕方ないのですが」ベシン
「すみません、空の魔剣師さんですよね?」
受け付けの女性の後ろから別の女性が受け付けの女性の頭を思いきり叩いて俺に問いかけた。
「はい、そうですが何か問題でもありましたか?」
「いいえ、問題なのはギルド側なので少々お待ちください」
女性は受け付け女性を引きずってギルドの置くにつれていった。引きずられた女性は「えっ?何?ちょっと待ってよ。説明してよ」と言いながら置くに消えてた。
数分後は別の受け付け女性が来てくれた。
「空の魔剣師さん、先程の受け付けから何か言われませんでしたか?」
「特に何も嫌なことは言われてませんでしたが、仕事を探しに来て雑用の仕事しか残ってないと言われただけなので、今のことで問題でもありましたか?」
「そうですか。いいえ。揉め事が発生の確認だけなので気にしないでください」
問題がなかったのならいいか。何か隠された気がするけど今は仕事を探しに来ただけで自分から揉め事に首を突っ込むことはしない。
そして雑用しか仕事がないならミリ達の狩りの練習させるか、森で薬草や木の実を集めるとするか。
「わかりました。仕事が無いのなら今日は森で何か無いか探してみます」
「森に獲物を探しに出るんですね。お気をつけてください。魔物や獣の素材、薬草であればギルドで買い取りますので持って来てください」
「わかりました」
受付の人の助言を聞き流し、ギルドから出る。
「ギルドの人変でしたね」
「最初の人が思いっきり勘違いというよりタカシのことを空の魔剣師ってわからなくてただの子供だと思っていたみたいで子供用の雑用を進めようとしたみたいね」
「そうなのか。俺は他の子みたいに思われていたのか。せっかくギルドカードがあるのに意味無いじゃないか」
最初に見せていたら最初の受付の人のリアクションが違っていたのかもしれない。冒険者になって日が浅いからそんなところまで気が回らなかった。
そもそも回りの大人達の視線で気づかなかったのかな 。いつもと雰囲気が違かったと思った。
初日にやり過ぎたのか。だがしかし、昨日来たときは特に異常がなかった。
「そうかもしれませんね。最初に見せた方がスムーズに進めていたと思います。せっかく作ったギルドカードを作ってもらったのですから活用しないと勿体無いと思います」
「おにいちゃんはあのおとなのひとにおこってるの?」
「いいや、怒ってないよ。なんでぐだくだになったのかなって思っただけだからアルムは気にしなくていいよ」
「そうなの?この後はどうするの?」
「アルムちゃん、今日は森に行くんだよ。何するのかは私にもわからないけど」
「タカシさんは薬草を取るって言っていたのでそのままだと思いますよ。薬草の採集ってことは私の出番ですね」
「アルムもやくそうあつめる!ベスもてつだってね」
アルムに抱かれたベスは変事をするようにプルンと揺れた。
ギルドから出て、街の門へ向かう途中に先程の浮浪児達が待ち構えてた。
「タカシさんさっきの孤児達ですよ」
「でもさっきと様子が違うわよ?」
「何があろうと変わりはない。このまま横を通り過ぎようか」
「おにいちゃん、はやくいこー」
ミリとスフィアは少年少女達が気になるらしい。アルムは早く森に行きたいらしく俺の裾を掴んで引っ張る。
気になっているミリとスフィアには悪いが浮浪児達にはもうこちらから関わる気はない。あっちが先程渡した金貨だけでは満足できず、もっと貰えると思って俺達からたかろうと思っているならば、その時はゴロツキ達と同じ対応、飛ばすのは可哀想なので少し脅かすだけにして、今後近づくものなら念力で近づけないようにすればいい。
アルムに急かせられながら浮浪児達の横をとおり抜けようとしたが。
「待ってくれ」
リーダー格の少年に呼び止められてしまった。
「なんだ。まだ俺達に用があるのか? お前たちにはもう金をくれてえやる気はないぞ」
「そんなことじゃない。お前達はギルドで孤児用の仕事をもらえなかったんだろ?」
「確かに仕事はなかったがそんなことはどうでもいい、でお前は何が言いたいんだ?」
「オイラ達が孤児達の中でとっておきの薬草の採取場所を教えてやるってことさ。そこで頑張って集めれば銅貨2枚の稼ぎになるんだ。へへへいい話だろ?さっきの金貨にはくれべられないけどオイラ達にできる限りのお礼だ」
こいつらは俺達が仕事にありつけないと予想をしてここに待っていたようだ。さっきの金貨のお礼らしいのだが、銅貨2枚ほどの稼ぎの薬草の採取なんて俺にとっていい稼ぎじゃない。こいつらの稼ぎ口を奪う感じがしてくる。
お礼として受け取っても最後には罪悪感が残りそうなので断っておく。
「お前らの稼ぎを奪うようなことは俺にはできない。その気持ちは嬉しいがそれに俺達には必要ない」
「よかった」
後ろでスフィアがホッとしているのがわかる。恵まれない子供から稼ぎ口を奪うのではないかと思われていたようだ。ミリ達の手前でかっこわるい真似はできない。
「じゃあ、お前達はどこに行くこうとしているんだ?朝が終わっているから街の仕事はほかの孤児達に取られてもうないぞ」
「なくたっていい。森の中に入るから大丈夫だ」
「森の中には魔物や獣が出るんだぞ。騎士様が数人いても倒せない魔物がいるんだぞ」
「そんな魔物が出るといいな。いい稼ぎになる」
リーダー格の少年は何を心配しているのか俺にはわからない。もう面倒くさいからもう行っていいかな。
「そんなのん気なことを言って魔物の怖さを知らないだろう?オイラは知っているぞ。この間の魔物群れが出た夜、冒険者が倒した魔物の死がいを横取りしようと街の外に出たんだけどいきなり出た魔物の怖さをなんて言えばいいのかわからないぐらい怖かったぞ」
この少年なんて危ないことをするんだ。そこまでして食べ物に困っていたのか。はたまた、生きていける金が欲しかったのか。
その日俺が魔物を掃討しといてよかった。子供があんな場所に出ているなんてわからなかったが、街の周りには魔物の死骸しか無かったから被害にあった子供はいなかったのだろう。
「そんなんだよ。おにいちゃんがいればまものがいっぱいいてもぜんぶたおしちゃうんだから」
「そうよ。タカシは何を隠そうあの不老族なんだから、魔物が何体いたって大丈夫よ」
「タカシさんはギルドでも空の魔剣師って呼ばれていますし、その魔物の群れを全部倒したのはタカシさんですから心配しなくて大丈夫ですよ」
「不老族?飲んだくれ達の噂に出るあれなのか?」
「そうなんですよ。タカシさんは物を触れずに動かせることができるんですよ」
ミリの自慢話に答えるのに地面に落ちていた小石を念力で浮かせて見せる。
「おお、ほんとに浮いた」
「さっき金貨が浮いたのはコイツが浮かせたのか?」
「不老族の話は大人達の嘘だと思っていたけど本当にいたんだ」
「これはただの風魔法で浮かせているだけじゃないの?」
少年少女達はそれぞれのリアクションされたが今見せた現象を魔法だと疑っている子が一人はいた。
金貨も念力を使って渡したのだった。別に見せても減る物でも特にデメリットがないから問題ない。
「待ってくれ、森に行くなら俺達も連れてってくれ。人数が多い方が持ち運べる量も薬草を集めるのも早くなるから。俺達にお礼させてくれ」
「タカシ、連れていきましょう」
俺達はリーダー格の少年の真意な心に触れたこととスフィアの一言で浮浪児達と共に森に行くことになった。
「スフィアわかったよ。森に連れていく。そして薬草を探すのはお前達に任せる」
「ヨッシャー、山ほどの薬草を集めてやるから期待してくれよな」
タカシは浮浪児達のお守りをするのは別にかまわないが大勢で行動するのは苦手なのだ。過去に大勢で行動したことでいい思い出が無く嫌な思い出しかないのだが、タカシは浮浪児達に同情して浮浪児達が集めた薬草を売った金を全て渡すと心に誓う。
「おにいちゃん、はやくいこーよ」
「わかったから引っ張らないでジャージが延びちゃうよ」
ぞろぞろと街の門に向かった。
「ガキども、こんなに大勢でどこに行く気だ?」
大勢で歩いたせいで柄の悪い男に呼びかけられた。
「あっ!おじちゃん。オイラ達森に薬草を取りに行くの」
「おう、そうか。魔物が出るかもしれねーから森の奥には行くなよ。気をつけな」
「「「うん!」」」
どうやら柄の悪い男は浮浪児達の知り合いだったらしく特に変に絡まれることなく去っていった。
街の門を潜り抜け俺達は森に向かった。




