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異能者は異世界に来て何をする  作者: 七刀 しろ
第三章 ルルーンの街
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殺人

 ヒロ達が去った後、タカシはテーブルに置かれたジュースを見て蓋を開けて一口飲んでみた。


「普通にうまいな」


 ジュースには毒物が含まれていないことを確認すると石の器を生成し、生成した氷を入れてジュースを冷やすことにした。

 ベッドで寝られないタカシは念力でイスを三つベッドの隣に並べて、そこに横になり寝た。


「タカシさん、タカシさん起きてください。タカシさん」

「んあ?ミリか、おはよう」


 目を開けるとミリが俺を起こそうと身体を揺すっていた。イスの上で寝ていた俺は何事かと思ったが近くにアルムとスフィアの安らかな寝息が聞こえるから危険なことは無いだろう。

 そして心配そうなミリを見るにイスの上で寝ていたことに対して何かしらなことを言われるのだろう。ミリは優しいから俺だけイスの上で寝ていたことが許せないのだろう。


「タカシさん、おはようございます。ではなく、なんでそんなところに寝ているのですか。言ってくれれば場所を空けたんですよ」

「逆に聞くがどうやって空けようとしたんだ?」

「私が退いてそこにタカシさんに寝てもらうのです」

「そしてミリはどこに寝るんだ?」


 ミリに聞くと深く考え始めた。


「私は床下でも寝れますのでそこら辺に寝ますから大丈夫です」

「それを俺が許すとでも?女の子を床下に寝させる訳ないだろう?そんなのはダメだよ」


 ミリを床下に寝させるなんてさせない。ベッドが無いから床下で寝るなら許容するけどちゃんとした寝れる場所があるのに俺に気づかってそこで寝るのは認めない。スフィアとアルムも同様に同じである。

 伯爵家に泊まるのは1泊だけだから今夜は廃墟に帰れるから大きいベッドで4人仲良く眠れる。


「ダメなのですか?タカシさんにはちゃんとしたところで寝てもらいたいのですがダメなのですね」

「俺もミリにはちゃんとした場所で寝てもいたい。そして自分を犠牲にして俺をベッドで寝させようと思わないで欲しい。ミリ達と一緒に寝たいって気持ちはミリ達と同じだから」


 ミリにこう言っておけば今後ミリがベッドがない場所以外で床下で寝ることは無いだろう。


「タカシさん、そう言えば部屋の外がやけに騒がしいのですが何かあったのでしょうか?」

「そうだね。バタバタしているが何かを準備しているようにも思えないし、何かしらの作業をして忙しいって訳でもなさそうだ」


 目を開けてから部屋の前を何度も走りぬけてている足音が聞こえる。


「ちょっと様子を見にいってくるよ」


 部屋の外が気になったタカシはミリ達を部屋に残し、廊下に出て見ると数人のメイドが慌ただしく行き来する光景を目にした。

 使用人の朝は早いと聞いたことがあるが、目の前を行き来するメイドには廊下の掃除や朝食の準備で忙しい風には見えない。


「お客様いかがされましたか?」


 メイドの一人がタカシに気づいて話しかけてきた。


「特にはないのですが、廊下が慌ただしいと思いまして何かありましたか?」


 現在着ているジャージが多少汚れているがメイドはタカシのことを邪険な態度を取ること無かった。ちゃんと教育が行き通っている。もしくはタカシが領主を助けたことや街の英雄の噂を聞いたかもしれない。

 邪険な態度を取られなかったことにホッとしているタカシは慌ただしい理由を聞いてみた。


「それはですね。ここだけの話しなのですが、昨晩騎士が一人と仕官二人が廊下で殺されました。私達メイドがその対応を終われているのです」


 私は昨日からあまり眠れなくていい迷惑です。と最後にブツブツと独り言を呟きながら自分の仕事に戻っていった。


「人が殺された。まさか、ヒロ達がやったのか」


 昨晩、来た人物達を思い浮かべた。

 あの三人が人を殺すかはよくわからない。もし殺した理由は姿を見られたから情報漏洩防止で殺した線が妥当かな。だけどヒロ達はパァと光の如く現れ、帰りは煙の様に消えた。姿を見られていないヒロ達が屋敷の人達を殺すメリットが無い。動機がわからないからヒロ達とは限らない。


 人が殺された情報しか聞いていないので今の時点で決めつけるのは良くない。まず、情報を得るのが大切だ。誰がどこでどんな状況で殺されたのか知らないとわからない。もしかしたら、身分を証明できない俺達が疑われるかもしれない。

 ミリ達三人も身分を証明できる物が無い。一人奴隷だったわけだし、疑われたら潔白を証明するのが難しくなる。


「あら、タカシ様ではありませんか。どうかしましたか?」

「あなた確か、アシュティア様の」


 アシュティア本人から呼び捨てでいいとは言われているが第三者の前では敬称付けるのを忘れない。


「はい、アシュティア様の護衛しています。ルーカです。あの時は自己紹介を私だけしていなかったですね」


 廊下でたまたま出会ったのは森の中でアシュティアと一緒に助けたルーカだった。


「タカシ様がお客様だったのですね」

「昨日、伯爵様と偶然に助けたものでアシュティア様とのお礼としてお屋敷に泊まれと伯爵様がもうされたので」


 ルーカの前ではご厚意に甘えている体でいるが堅苦しい気遣いを要するので屋敷から早めに出たいタカシだった。


「ところで何かあったのですか?先程メイドさんが人が殺されたと聞きましたが。詳しく知りたいので教えてもらってもいいですか?」

「領主様から口止めされているのにタカシ様に言ったのはメイドは後で処罰が必要ですね。そこまで知っているなら私が全部言っても構わないでしょう。まず深夜にメイドが騎士のリヒトが廊下で首をはねられて死んでいるのを発見されまして、メイドがすぐさまメイド長に報告に向かった所、リヒトのを仕官のメデアとマスロがリヒトと同じ手口で死んでいました。屋敷内では犯人探しと死んだ仕官の後釜を誰にするか揉めているのです」


 ギルドで見た青年が殺されたのか。仕官の二人は知らないけどリヒトは話したことは無いが顔は見たことはある。パッと見て気の弱そうな青年で悪い人間ではなかった。


「ルーカさんは犯人探しですか?」

「いいえ、私は屋敷内の見回りです」


 ルーカさんの様な新米の騎士は屋敷内を見回りをしておかしな所を無いのか探しているらしい。犯人探しは位の高い騎士、騎士団長や副長、警備長が担当しているそうだ。


「タカシ様も後で事情聴取をされると思われますので今はあまり出歩かない方がよろしいかと思います。私はこれで」


 タカシに忠告してルーカは見回りに戻って行った。

 今の時点で三人も殺されているが壊れきった俺の心境は特に何も抱くことはなく。死んだのか、としか感想が思い浮かばなかった。


 やはり俺は人を殺し過ぎたかも知れない。普通の人の感性を真似しようとも壊れた心は壊れたまま何も感じること無く、のうのうと生きている屍と同じ。

 だが、心と思考は別々な物で心では人の生死はどうでもいいと感じるものの頭では悪るそうなヤツではなかった。優しそうな人だったと思っている自分がいた。

 脳裏に思い浮かぶのはミリ達の顔が思い浮かんだ。


「ルーカさんやメイドがあの様子だと不審者が屋敷の中にいる可能性があるってことか」


 今はミリ達の身の安全と自分の立ち位置を確保しておく必要がある。殺していないが疑われるのは俺達かもしれない。

 夜はヒロ達の説得を受けていた件は伏せておこう。伯爵様達に伏せておいた方が変な誤解を持たれるよりマシだから、俺は夜寝ていたことにして何も知らないし、何も見ていない。

 そして殺人事件があったことはミリ達の教育面や精神面を考えて黙っておいた方がいいだろう。


 俺は部屋に戻った。


「タカシさん、なんで騒がしいのかわかったんですか?」

「廊下にいた人に聞いてみたが不審者が出たらしい。それで不審者を捕まえる為にドタバタしているそうだ。危ないから部屋に戻るようにと言われてしまった」


 不審者が出たことは間違いないし、捕まえる為にドタバタしているのも嘘ではない。少し的外れな説明だが嘘を言っていない。何も教えないのは不安を煽るようなことでかわいそうだから最低限の情報を教えた。


「そうですか。不審者が出たからこんなに慌ただしいのですね。外で魔物の群れが出たばかりなのに街の中も中で物騒ですね」


 ミリが言いたいことはわかる。最近、魔物の群れが大量に発生したばかりなのにまた街を納める領主の屋敷で不審者が現れた。不審者は殺人を犯して行方を眩ました。

 屋敷の人達と街の住民は不安だろう。

 魔物の群れは全部俺が片付けたんだけどね。今やその噂で溢れ反っている。ちょっとした英雄扱いで居心地が悪い。

 話を脱線したが不審者は殺人を犯した経緯は俺が知るよしもないが、冤罪で犯人に仕立てさせられるのはごめんだ。


「私達はここで待っていればいいのですね」

「そういうことだ。余計なことをしないで大人しくしていればいいだろう。退屈だろうけど」

「あのタカシさん?たぶれっとを貸してもらってもいいですか?フォスティア様が遊んでいたげーむをやりたいので」

「ん?いいよ。でも誰か来たら隠すから」


 リュックサックモドキからタブレットを取り出してミリに渡す。ゲームでもして退屈な時間を潰したいのだろう。はたまた、フォスティアが遊んでいたからじっくりとやりたいのかもしれない。


「タカシさん、すみません。フォスティア様がやっていたげーむってのはどれでしょうか?」

「フォスティアがやっていたゲームか。UNOをやっていたんだけか?」


 タブレットの中に入っているカードゲームだけでも10種類以上あり、どれも画面に表示されるロゴは似たも様な物ばかりでミリにはどれがどれだかわからなかったみたいだ。


 UNOを選んで起動させる。


 ミリはルールを知らないだろうからモード選択画面からチュートリアルモードにしてミリに渡す。


「はい、初めてだと思うからゲームがルールを説明するようにしといたから」

「それは嬉しいのですが私、たぶれっとに書かれている文字を読むことができないのですが」


 うっかりしていたことに俺はタブレットに表示される言語を読むことができるがミリにとっては別世界の言語だから読むことができない。チュートリアルの説明を読むことができないから理解できない。


「あ、ごめん。じゃあ一緒にやろうか」


 ザックリとしたタカシによるUNOチュートリアルが始まった。


「このゲームは最初に配われた四色と数字のカードを順番に場に捨てて行くんだけど手札を全部無くした人が勝者になるんだ。スキップやドローカードを使って次の人が勝たせないように妨害することができるの」

「あ、待ってください。フォスティア様はカードを多く持っている人が有利になっていると言ってましたよ」


 確かにカードを多く持っていると何でも出すことができるが有利ではない。

 フォスティアは何を思って言ったのかは知らないがルールを知らない子に適当なことを言わないで欲しい。


「有利じゃないけど、多く持った方が前の人が何を出しても出すことができるだけで勝つことはできないからね」

「そうなのですか?やり方としてはできるだけ自分の手札を減らして自分の以外の人の手札を増やしていく感じなのですね」

「そうだね。妨害カードもいろいろあってスキップにドローそれに順番を帰るチェンジってのもあるんだよ。カードを捨てるのにもルールがあって場に出ているカードと同じ数字と同じ色じゃないと出せないし、手札から出せるカードが無かったら山札から出せるカードが出るまで引かなければならないんだ」

「ありがとうございます。ルールは把握したのでやってみます」


 UNOのチュートリアルを適当に終わらせて、通常プレイを始めようとしているミリが初心者ということでNPCの設定も初心者にしてあるからミリとって程よいだろう。

 隣でプレイを見ていたが中々いい感じでNPCに勝っている。ゲームの設定上出せるカードの枠が光るのが助けになっていて徐々に手札を減らしてきている。時々NPCからドローのカードが回ってきて引く時もあればドローを出して次のNPCにカード引かせている。

 ミリが楽しそうで何より、隣で見ている俺も楽しい。


「あのタカシさん、これを売り出せばお金を稼げると思うのですがどうでしょうか?」

「タブレットをか?」

「いいえ、違いますよ。このげーむのことですよ。これを売り出せばお金が一杯になると思います」


 UNOを売り出す?ミリには悪いが誰も買わない。

 作っただけで売れ残ったらそれだけで悲しい。


「材料費とかで儲からないと俺は思うけどね」

「そうですか?私はこんなに面白い遊びはみんなやると思いますけど」


 俺はUNOよりもトランプを作った方が広まると思う。トランプだといろんな遊びができる。トランプを売り出した方が儲かると思う。

 この世界の住人はトランプを知らないと思うがありきたりなカードゲームだし、似たような物が探せばありそうだ。その前にヒロ達が住んでいる場所にトランプがあるのかもしれない。


 コンコン。


「誰か来たみたいだ」


 タブレットで遊んでいたミリには悪いけどこの世界にとってオーバーテクノロジーの塊、タブレットを一旦リュックサックモドキにしまう。


「すまないが昨晩何をしていたのか話しを聞きたい。部屋に入らせてもらう」


 ルーカさんが言っていた犯人探しを担当している騎士が事情聴取を聞きに来たようだ。

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