伯爵家3
「スフィアちゃんは分かりますか」
「昔、おばあちゃんから聞いたおとぎ話の中に出てきたけど正直私もセカイだのイセカイだのって言われてもあんまりね。おばあちゃんも詳しく話さなかったけど大地、山、空を全部ひっくるめて世界だって聞いたわ」
「大地、山、空を全部まとめて世界ですか」
世界の概念が分からないと。スフィアは少しだけ祖母から聞いたらしいから世界という名の概念がないという訳ではないようだ。親などの親類からおとぎ話や物語を聞いてるかないかの違いだろうか。いや、ミリは不老族の噂話や関する本を好んで読んでいたそうだから偶然が重なって世界の言葉に触れてこなかったのだろう。
スフィアは祖母から聞いた話をミリに説明がミリはピンとこないのようだ。大地、山、空を全部まとめて世界か、シンプルな説明は合っているがそれだと俺の価値観でいうと宇宙も空の範囲内ではなかろうか。スフィアの認識がスフィアの故郷、もしくはこの世界の一般的な認識なのかもしれない。
「スフィアちゃんの説明でセカイっていう物が何を指すのかは分かりましたが、タカシさん、もっと詳しく知りたいので教えてください」
ミリ為に簡単に説明するのはいいが俺の頭脳で概念を詳しく説明するのは難しい。スフィアの説明で満足してほしかった。
「もっと詳しくか、スフィアが合っているんだけど、それに詳しい説明は難しいからじゃあ、星ってあるじゃん」
「はい、雲がない夜の空に見れる物ですよね。それが世界と関係があるのですか?」
「うん。俺達がこの世界で生きて暮らしている様に星の中には生き物が住んでいるかもしれないんだ。それでその生き物の暮らし方や考えがあるんだけど今はたとえ話だからそこは置いといて、星の光を異世界って分かっていてもらえばいいかな。それで夜空に散りばめられた星の光の数ほど世界があるんだ。簡単に言えば星の光=世界ってことだよ。ごめん、もっと簡単で分かりやすいように説明したかったのに逆に難しくなちゃった」
「いいえ。タカシさんが説明で大体のことは分かりました。星の光が異世界で、タカシさんはあの中の一つの光から来たと言うんですね」
星=世界って微妙にずれた説明だと思うし、星に生命体が存在する云々は確証はない。それに別次元の宇宙をすれば更にややこしくなりそうだ。
「そうだね。どこの光から来たのかは分からないけど」
「そうでしょうね。地球があの中に本当にあるかはさだかじゃないし、仮にあったとしても行く方法が今のところないわ」
地球に行く以前に中世の時代の技術では宇宙に行けない。だがこの世界には地球にはない魔法がある。
魔法が存在する中世の街並みにメカメカしい宇宙船があるのは異常だ。不老族の国にあるのかもしれないが、不老族の遺跡を見る限りいろんな場所に遺跡のような施設や建築物があり、国のスパイ的なことしている。もしかしたらこの星の軌道上に人口衛星が浮いていて遺跡のような施設の管理を含めて情報をやり取りしている。
それらの点を含めてこの世界とってオーバーテクノロジー過ぎだ。俺の一人よがりの妄想だが不老族の遺跡は異常だった。現在的な家電製品がそろっており快適な生活が送れそうな場所だった。俺にとっては遺跡と呼ぶには程遠く、行ったことがないホテルと言われた方がしっくりくる。そんな場所が遺跡と呼ばれるなんて違和感が過ごくて吐き気がする。
何故に吐き気がするのはなぜだろうか。研究所の中でしか知らないはずの俺が違和感を感じるだけでこんなにも苦しんでいるのが不思議でしょうがない。そもそもフィクッションが混じった本でしか外の世界を知るすべしかなかった俺が違和感を感じるのがおかしい。
頭がクラッときて気を抜くと倒れそうになる。立ちくらみを気合で誤魔化す。
「地球はどんな場所だったんですか?あれ?タカシさん」
「タカシ大丈夫?」
「ああ、大丈夫だ。気にしないでくれ。自分の中で気がかりがあっただけさ。だから俺に気にせず話を進めてくれ」
ミリとスフィアは心配そうに見つめ、フォスティアは手を伸ばし俺のオデコに触れる。
「フォスティア様、タカシさんのオデコを触って何がわかるんですか」
「ん?これは熱がないか確認しただけ。熱はないから風邪じゃなさそうね。疲れが出ているだけかしら」
「そうかもね。遺跡の探索に、サイボーグ少女と鬼ごっこをして、街に戻って家に帰ろうとしたところギルドに連れてこられたから疲れが溜まっているかもね」
ギルドからここに来る間の出来事のことは言わない。もしかしたらフォスティアが気にしているかもしれないから。
タカシは知らないフォスティアは貧民街の出来事で更に興味を持たれて、自分がタカシに取ってヒロイン位置を居座ろうとしていることを知るはずもなかった。
「疲れているならあの子の隣で寝たらどう?」
「わかった。言葉に甘えて少し休ませてもらおうか」
フォスティアの提案を受けてフカフカのベッドで眠るアルムの隣に添い寝する形で眠る。
本当に疲れていたのか先程の違和感を忘れ、落ちるように眠りについた。
俺は夢を見た。
俺は白い部屋の中にいた。その部屋は研究所の中の一部屋に彷彿とさせる部屋だった。
タカシはこれから起こることを予想しながら拷問や実験をその部屋で待っていた。いつまで経っても誰も来ないのを不思議に思いながら研究者達が部屋に入って来るのを待つ。
「タカシくん、本当にごめんね。私、痛いのは嫌なの」
白い部屋の隅っこに一人の女の子が泣きじゃくっている。
初対面のはずなのに女の子がうつ向いているから顔が良く見えないがとても懐かしい気持ちが溢れてくる。幼い時、どこかであったかもしれない。どこで会ったかは流石に覚えていない。
「君は誰?何で泣いているの?」
「私はこんなことタカシくんにしたくないの。でも大人達が私を処分するって言うの」
「研究者達はどういう命令をしたの?」
俺は女の子の頭を優しく撫でながら女の子がこれから俺にやろうとしていることを聞いてみる。
「大人達がタカシくんの今から五年分の記憶を消せって言うの。でも私はまたタカシくんに忘れられたくないの。でも拷問を受けるのは嫌なの。私はどうすればいいの?」
「また君を忘れる?俺は君を知っているのか?」
「うん」
俺は彼女を知っているようだ。だから懐かしく思うのはそれが原因だろう。そして彼女の能力は記憶を操れる、もしくは記憶の削除なのだろう。
彼女は俺のことを知っているようなので俺は何度か彼女に記憶消されたことがあるらしい。
やはり、あの事を知った俺は研究者達にとって邪魔なのだろう。そう簡単に俺を処分するとデメリットが多いことから記憶を消したほうが都合がいいのだろう。記憶を操れる彼女達のような存在は研究者達にとって使い勝手のいい道具なような物で被験者の実験内の記憶や被験者の確保する為に活用しているのだろう。
今の俺の記憶を消されてもいい。その為にもう手を打っておいたかいがあった。
俺に取れる行動が一つ。
「君のことはわからないけど俺のことで苦しんでいるなら君になら記憶を消されてもいいよ。俺のせいで苦しんでいる女の子がいるなんて嫌だから消してくれないか。 それでどうすれば君の能力が効くのかな?」
「どうして毎回そうなの?タカシくんは記憶が無くなるのが怖くないの?私は寂しく嫌、誰かに忘れてしまうのも、誰かを忘れられてしまうのはもっと寂しい」
「毎回?君はわがままだね。だったら君が僕の事を一生忘れなければいいじゃんか」
「それは無理だよ!私と同じ能力を持っている子を何人も知っている。大人達が判断ですぐにタカシくんことを忘れてしまうの」
「じゃあ、俺を忘れられないようにおまじないしてあげるよ」
俺は女の子に言うと女の子の手を繋いで能力を使う。
これで女の子は記憶を消されても数分後には消された記憶が元に戻るになった。
これで早く女の子がすんなり俺の記憶を消せば彼女の実験が終わり、実験結果が記憶が消えない能力者の出来上がりだ。
「タカシくんは今何かしたの?」
「ただ俺を忘れられないようにおまじないをしただけだよ。どう?おまじないの感想は?」
「おまじないをかけたの?そんな子供騙し見たいなことをしても消される時は消されるよ」
「じゃあ何で涙が止まったの?」
「えっ?」
先程まで泣きじゃくっていた彼女の涙が止まっており、彼女は不思議そうに目元を触れた。
「俺はね。女の子は笑っていたほうがいいと思うんだ。君にだって可愛いんだから笑顔の方がいいんだよ。だから俺のことは気にせず、研究者達の命令通り俺の記憶を消して笑顔になってほしいよ」
だから早く俺の記憶を消してくれよ。研究者に気づかれる前に消して、早く。
「おにいちゃん、だいじょうぶ?すごいあせだよ」
目を開けるとアルムが今にも泣きそうな顔で俺を見ていた。
気がつけば俺は汗でびっしょり濡れていた。寝汗でかいたとは思えないほどベッドは濡れていて、服も洒落にならないほど濡れていた。
「タカシ魘されていたけど恐い夢でも見ていたの?」
「そうですよ。寝言も言っていました。おまじないとか記憶とか言っていましたがどんな夢を見ていたんですか?」
「夢?なんの夢だったんだ。見ていた夢を忘れちゃったよ」
「何よそれ。タカシさんにとって今見ていた夢は思い出とかの断片的な記憶だったんじゃない?夢って寝ている間、脳が記憶の整理していることによって観られる現象だって聞いたことがあるよ」
記憶の整理か。確かに研究所の部屋が出てきたような気がするが夢に何が出てきたか思い出せない。
とても大切なことのはずなのにどうしても思い出せない。
たかが夢に執着するのもバカらしい。寝る前に感じていた違和感がなくなっているし、頭がスッキリした気分だから気にせずにしとこう。
「それとだんだん夕食の時間だから執事のリヒトさんが呼びに来るよ。服は私の家族しかいないから大丈夫だと思うけど、最低でも寝癖を直してね」
フォスティアはそう言うと部屋から出ていった。
俺は部屋に備え附けられた鏡を見て寝癖を手櫛で直し、アルムの髪はミリとスフィアが解かしていたから大丈夫だ。服装はフォスティアの言うとおりこのままでも良さそうだ。多少俺が着ている白いジャージは汚れているがフォスティアのお父さんには咎められることがなかったので問題無いと思う。
「タカシさん、貴族様のお屋敷に呼ばれることになるなんて思いませんでしたね」
「俺は家に帰って休みたいよ」
「さっきまでアルムと寝ていたじゃないの。タカシはそればかりか言って、どんだけあの廃墟を気に入っているのよ」
「おにいちゃんまだねむいの?」
「いや、眠くはないけど疲れているんだよ。いろんなことがありすぎてさ。あの廃墟に戻ってゆっくりしたいんだ」
さっき寝たから疲れは大分なくなったけど権力者の家に招かれるのはなんと言うか変に取り入れられてしまう不安がある。俺の偏見だけど利用されて都合のいい駒見たいな扱いを受けそうだから嫌だな。
研究所にいた頃に呼んでいたラノベにも載っていたな。英雄クラスのキャラクターが悪役の貴族に騙され悪役貴族のいい駒として主人公の前に現れてバトルになる展開があった。
俺はあのキャラクターのようにはなりたくはない。だからフォスティアのお父さんとはあまり接点を持ちたくなかった。
相手が娘を助けてくれた礼をしたいと言うのに俺がこのまま勝手に帰ってしまうと相手に侮辱としてとらえられてしまう。
そして貧民街での出来事でフォスティアのお父さんを助けたことによって興味を持たれたと思う。俺の能力は直接見せてはいないが遺跡の一件の話を聞いた俺を不老族と思っているだろう。
ただお礼をするのは、それはそれでいいだろう。問題なのはそのあとのことだ。俺が読んだラノベでは良心的な貴族でも強いキャラクターを欲しがる者だ。
フォスティアのお父さんがどうするかによって俺達の行動が決まる。
時間がきてドアをノック音が部屋に響き渡る。
「タカシ様とお嬢様方、御初にお目にかかります。執事のギアルと申します。お食事の準備ができましたので私が食堂にご案内します」
部屋に入ってきたのはギルドで見かけたリヒトではない執事だった。フォスティアが言っていたリヒトではなかったのはリヒトはギルドやらかしたのでお叱りを受けているのではないかと自分の中で解決した。
俺達はギアルの後に着いて行き食堂へ向かった。
「おお、タカシ。来たのか。お主の為に今夜の料理は料理人が腕を振るってもらった物だ」
「は、はい」
「存分に味わってほしい」
テーブルにはスープに肉、魚、パンなどの食べきれない程の豪華な料理が並べられていた。これ程の光景はラノベや漫画でしか見たことが無いのだが、俺はこの光景になんと言えばいいのか言葉失った。
「えっ!タカシ様!何でここに?!」
テーブルに並べられた料理に魅了されてたたずむ中、そこにフォスティアと共にアシュティアが食堂に入ってきた。
「アシュティアよ。今日私もお前の恩人に助けられてな。夕食に招待したんだ」
「タカシ様がいらしゃるなら事前に教えられてくださらないと心の準備というものが」
「アシュティア、何を言っているんだ。フォスティアも早く座りなさい。ささ、タカシ達も座りなさい」




