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異能者は異世界に来て何をする  作者: 七刀 しろ
第三章 ルルーンの街
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馬車の中2

 馬車から出てきた俺を迎えたのは十人くらいの覆面姿の男達だ。ご丁寧に馬車を囲んで馬車から逃げ出す者を逃がさいようにしている。


 俺が出てきたことにより男達はザワザワと困惑するようすが見える。

 ミリ達や伯爵の安全確保としてこのチンピラ共が馬車に近づかないように馬車を中心にして半径2メートルの位置に地面と氷を混ぜた壁を生成する。


「ミリ達を守る丈夫な壁ができたと、後はあの人達だけか」


 壁を見てチンピラ共が逃げだしてくれると俺の手数が減るのだが、生憎チンピラ共は逃げ出さないところを見ると諦めてくれなさそうだ。まだこちら側に被害が無いから今回だけは見逃そう。できるだけ殺したくは無い。男達を念力で浮かせて、男達が出てきた路地に押し込んで氷の壁で前と後を塞ぐ。これで少しの間は出てこれないだろう。

 被害が一つもなくて、チンピラ共が一言も発する間もなく無力化ができた。その掛かった時間は6秒だ。氷の壁の向こうから泣き叫ぶ男達の声が響いているが無視して馬車を守る為に生成した壁を綺麗に消し去る。


 ザッ、イリュージョン!


 おふざけはこのくらいにして御者の席を見たが誰もいない。御者がいないどころか馬でさえいない。逃げたのかあの男達の中紛れていたのかは知らない。

 馬は男達が逃がしたのだろうと思い、ミリ達の安全確認の為に馬車の中に戻る前にずっと見ていた小さな男の子が三人が見ていたのでポケットから三枚の金貨を取り出して念力でその男の子達に渡す。人差し指を口元に立てて[話すな]とジェスチャーしてから馬車の中に入った。


「いきなり、氷の壁が出てきた。すぐに消えて向こうにいた男達も消えた」

「お父様いい加減離してください。タカシさん、外の男の人達はどうしたんですか?」


 最初に話しかけてきたのはフォスティアだ。先程までいた男達の姿が数秒でいなくなっているのだから気になるのは当たり前、どこからか男達の叫び声が聞こえるが本人達の姿がどこを探しても見えない。ただ、不自然に路地を塞ぐ氷の壁があるだけである。

 伯爵は今起きた現状についてけていないらしくフォスティアを抱いて固まっている。それをフォスティアは窮屈そうにもがいて伯爵から離れようとしているんだが力が弱くて伯爵から離れないでいる。

 固まっている伯爵は使えなさそうだ。


「俺の力を見せた途端男の人達は逃げていったよ。それと叫び声が聞こえると思うけど馬車を囲んでいた男達とは一切関係無いから気にしないでね」


 男達は逃げたのではなく閉じ込めて無力化したのだがミリ達に説明するつもりはない。権力者の前でタネを明かして道具になるつもりはない。アシュティアやフォスティアを守るだけならいいけどね。


「おにいちゃんけがない?」

「あぁ、無いよ。すぐに戻って来ただろう?あんな短い間に怪我をするのは難しいよ。アルム心配してくれてありがとう」

「うん。おにいちゃんがいたいおもいするのはアルムかなしいからあんまりあぶないことしないで」


 アルムに叱られた俺は愛らしい幼女の頭を優しく撫でた。アルムは撫でられて嬉しそうな表情をしたが、俺が危ないことをしてきたことが気に入らなかったのか頬っぺたを膨らまして[アルムは怒っているよ]とアピールをしているんだが、反って可愛さが増しているのは本人には内緒だ。

 厄介事をすぐに片付けて戻ってきたからそこは許して欲しいところだ。


「タカシ?さっき出した氷の壁ただの氷の壁には見えなかったけどなんなの?」

「さっきのは氷の壁の中に地面を混ぜただけだよ(イメージは)」

「そうなんだ。タカシが壁の向こうでやっていたことは何も見えなかったのは気になる」


 スフィアは氷の壁は絶対私の魔法じゃできないと漏らしていた。そして男達をどういう風に片付けたのか気になっているみたいだ。


「気になるの?さっきもいったけど本当に驚かせただけなんだけどな。あの氷の壁の向こうに逃げていったよ」

「本当かな?」


 疑わしい目でスフィアは言う。スフィアは俺が嘘をついていると気づいているがしつこく聞いて来ないところを見ると俺の気持ちを尊重している。

 そんな気づかいは無用だが、空気になりつつある伯爵とフォスティアを早く貧民街から連れ出さないと俺が伯爵達を誘拐したと思われそうだ。

 一旦外に出て御者の席に向かおうとしたが今まで黙っていたミリに裾を掴まれてしまった。


「タカシさん今度はどこに行くんですか?」

「そういえばいい忘れていたが、今御者と馬がいないんだ。御者はあの男達の仲間だったのか逃げたのかは知らん。馬は御者が逃がしたみたいで現在馬車を引く馬がいない。いても馬を操る御者がいなければ動かせないがな。ということで俺が馬車を引くことにした」

「タカシさんが馬車を引くなら私も手伝います。タカシさん一人で馬車を引くのは心がいたいです」

「アルムもおにいちゃんたちがひくならアルムもひくー!」


 ミリが力強く言う。どうも俺が馬車を縄かなんかで引くことを思ったらしく自分も手伝うと言ってくれた。アルムもミリに便乗する。

「言い方が悪かった。御者の席で座って馬車を引くんだよ」


 みんなの頭の上に?が浮かぶ。


「たぶん危険はないと思うけどミリ達も一緒に御者の席に座る?」


 男達は氷の壁に挟まれて泣き叫ぶ声が中、自ら俺達に関わろうとする者いない。通り行く人達は自分には関係無いと見て見ぬふりしては通り過ぎていくので現在はここで立ち止まっている方が危険だがミリ達を御者に座られるのは大丈夫だろう。

 御者の席は大人二人は座れるスペースがあったので子供三人くらいは座れるだろう。


「えぇ、私も御者の席に座りたい」

「タカシさんが良ければ私も座りたいです」

「アルムも」


 一番最初に言うのはスフィアで次にミリとアルムが順番に手をあげる。

 当初の予定は心配症のミリだけたったがスフィアとアルムも名乗りをあげるとは思っていなかった。接点が無い人と馬車の中でいるのは嫌だったのかもしれない。


 アルムは俺の膝の上に座るとして俺の両隣にミリとスフィアが座ることとなった。

 フォスティアも座りたいと言っていたが伯爵がフォスティアを抱くのをやめなかったのでフォスティアには悪いけど諦めてもらった。


 馬車の後を念力で押してしゅっぱーつ。


 俺の独断でギルドまで戻ることにした。伯爵の屋敷は場所は知っているが道のりがわからない。ミリ達もいきなり伯爵の屋敷に連れられても戸惑うと思うからギルドに戻ることとなり、伯爵の口から先程の命を狙われた男達について話してもらう。

 氷の壁に閉じ込めた男達は数時間位はあの場から抜け出せないから伯爵にはある程度のことを話して伯爵の命を狙った男達は伯爵の好きな通りにさせよう。

 俺は男達を見逃すが伯爵はどうするかは伯爵次第。


 人が歩くよりも少し速いペースで馬車が進む。タカシが馬車を動かしていることはミリ達に話したが、ミリ達は特に反応する事無く馬車が進んで行く街並みを眺めている。

 いつもより視点が高い位置で見る街はどこか違うように見えていることが珍しいようだ。

 俺もミリ達と一緒に街並みを楽しもう。


「ねぇ。タカシって一体何者なの?遺跡では不老族と敵対しているようたったけど。タカシも不老族よね?」

「そうですよ。タカシさんって謎が多いですよね。一人で危ないことをしますし、遺跡の隠し部屋を見つけましたね」


 街並みを眺めていたらスフィアとミリが話しかけてきた。


「さっきまで不老族がなんなのかわからなかったけどだいだいは検討ついたよ。それで俺が不老族って話は合っていると思う。危ないことをしているのは認めるしけど遺跡の隠し部屋を見つけたのは単なる偶然だよ。ミリ達には色々と隠していることがまだあるけど俺が話すまで待って欲しいな」


 ミリの頭を撫でた。


「はい、私はタカシさんが言いたくないことは聞きません。誰だって言いたくないことはあると思いますからタカシさんが話してくれるなら聞きます。それに私はタカシさんの、ふふふ」


 ミリは話している途中に嬉しそうに笑う。


「なによそれ。ミリちゃんはタカシのなんなの?気になるじゃないの」

「えーどうしようかな?」

「タカシも教えてよ」


 スフィアがすがるように懇願するが正直俺もわからない。ミリは俺の友達と言うとミリは悲しそうにしそうな気がする。


「ミリおねえちゃんとおにいちゃんはこいびとどおしなの」


 タカシがどう答えるべきか悩んでいるとタカシの膝に座っているアルムがさらと答えてしまった。アルムに答えを言われてしまったミリは小さな体をくねらせる。

 俺とミリが恋人同士?あれいつからミリとそんな関係になったんだ?


「何でアルムちゃん言っちゃうの?」

「だっておむねのおくがなんかチクチクするんだもん」

「小さくたって女の子ね。アルムちゃんそれは嫉妬って言うのよ」

「しっと?」

「そう。タカシが知らない人といたり、私とミリちゃんがずっとタカシにべったりすると胸の奥がムカムカするでしょ?それを嫉妬って言うのよ」

「アルムわかんないよ。おにいちゃんがしらない人といるとどこかにいっちゃうきがするけどおねえちゃん達がおにいちゃんとべったり?はわからないよ」


 スフィアがアルムに嫉妬について説明しているがアルムは自覚がないのか首を傾げている。

 小さい子に自分の気持ちやその理由を説明するのは難しい。そういうのはのは歳を重ていくことでだんだん理解していくのだから今から理解させなくてもいい。

 本当に俺とミリが恋人同士なのはどういうこと?誰か俺に説明プリーズ。


「それでミリちゃん、いつからタカシと恋人になったの?」

「それは私とタカシさんが初めて出会った次の日になります。タカシさんが一緒に街まで来てくれと言われまして、それで私とタカシさんが恋人同士になったのです」


 ミリがタカシを挟んで自慢げにスフィアに言う。

 あの時は初めて出た外の世界で右も左も分からない中ルルーンの街までの行き方が知らなくてどうしても大きな街に行ってみたかったから一人で廃村にいたミリにお願いして一緒に街まで行くことになったのだが、どういった受け取り方で恋人関係になるんだ。

 洞窟の宝箱から宝石を取り出して確かに渡したがこの世界では女の人に宝石を渡すと好きですと言った意味合いなのか。いや、その前に廃村でミリの薬指に宝石が付いた指輪を着けたがあれもミリが勘違いする原因だったりして。俺の記憶の中で女性の研究者も「私の薬指に宝石を着けさせえてくれる男が欲しい」と言っていた。薬指に指輪をはめるのは好きですとか結婚してくださいと言う意味が含まれているではないだろうか。

 あれはそう言った意味で渡したんじゃないのだが、撤回するも嬉しそうに自慢するミリの顔を見ては俺は黙ってしまう。


 スフィアとの恋バナが続く中二人の様子を見て、ミリが大きくなって本当に好きな人ができることを祈ろう。


「素敵!それでそれで」

「私とタカシさんの旅が始まりました。辛い旅でしたがタカシさんが私に宝石をプレゼントしてもらいました。その宝石はタカシさんを助けてくれた人にあげてしまいましたが」


 すまなそうにしょぼんとしたミリの頭を「俺は気にしてないよ」と意味を込めて撫でる。


 俺を助けてくれた人の話は空気の野郎に返り討ちにあった俺の手足を治してくれた人だろう。その時見ていた夢では幼い少年が治してくれたが本当は誰に治してくれたかわからない。ミリとアルムに聞いてもその相手は名乗らずに去っていったようだから探しようがない。

 どこの誰だかは知らないが会えるのなら一度お礼を言いたい。こうしてミリ達と楽しく話ができるし、あの時に助けてもらったおかげでスフィアにであえた。

 その人にはいくらお礼を言っても言い切れないくらいの恩がある。


 ギルドまでの道のりの中で御者席の上で楽し気なおしゃべりは続いている間、すれ違う馬車や歩く人達はタカシ達が乗る馬車を奇妙な目で見ていた。それは馬車が引くはずの馬がいないのに道を進む馬車を見て人々は恐怖した。

 念力を知らない人達がタカシ達が乗る馬車は普通ではありえない現象で、運動エネルギーの法則を完全に無視しているが馬車にはこの街を納める貴族様の紋章があるのを見て何らかの方法で動かしているのは間違いないがその方法が分からない。ただ見たことがない服装の子供達が御者席に座り楽し気に話している。不老族ついて噂でしか知らない者達の間であの子供達は不老族ではないのか、ルルーン街には不老族の子供が住んでいるといった噂がすぐに流れて、数日後には王都に住む貴族や他国にもその噂が耳に入った。

 事件が起こるのはもう少し後の話だ。


 少しだけ道に迷ったり、よそ見してすれ違った馬車と衝突しそうになったがなんとかトラブル無しにギルドについた。ギルドの前には頬を痛々しく腫らした青年と伯爵のメイドが揉めていた。


「あのーメイドさんどうかしたのですか?」

「どうしたこうしたじゃあありません。この人のせいで伯爵様が行方不明になってしまいました」


 メイドは青年をギッと睨みつけて責め立てる。


「だから僕のせいじゃあ無いって、文句なら僕に絡んできた冒険者に言ってよ」

「じゃあその冒険者を呼んで来てくださいよ。っえぇ?この馬車は」


 メイドは俺達が乗る馬車に気づいて見上げる。青年もメイドの視線を追って馬車を見る。


「伯爵様の馬車だ!何で馬がいないんだ」

「馬なんてどうでもいいでしょ。あなたは空の魔剣師、伯爵様は無事でしょうか」

「へ、へい」


 凄い目付きで睨まれて声にならない声で返事を聞いたメイドは馬車の扉を勢い良く開いた。


「伯爵様、ご無事ですか!」

「おお、メアか。無事だが、私は今はどこにいるんだ?」

「ギルドの前になります。お加減がよろしくないようですか。もしや、空の魔剣師に何かされましたか?」

「タカシにか。いや、タカシには助けてもらったんだ。凄いものを見てしまった」

「伯爵様!いったいどこにいらしてました?」


 メイドに続い青年も馬車の中に入った。


「リヒトか。随分と酷い顔だな。貧民街だが、逆に聞くがお前こそどこにいたんだ?」

「私は冒険者にギルドの裏に連れてかれまして、今までその冒険者に殴られ続けられました」

「それは酷い目にあったな。言い訳なら後で聞くから早く屋敷に向かってくれ」


 伯爵が疲れたように青年、リヒトに命じる。


「ですが伯爵様、馬がいませんので今の状態では屋敷に行くことができません」

「なんと。私はどうやってギルドについたのだ?」

「空の魔剣師がここまで馬がいない馬車を操って来たようです」

「タカシが...」


 馬車の天井を見上げる伯爵はそっと息を吐いた。

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