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異能者は異世界に来て何をする  作者: 七刀 しろ
第三章 ルルーンの街
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馬車の中

「もうすぐ私の用事が終わるから部屋に入りなさい」


 伯爵に言われ部屋に入るとそこにはギルド長がいた。

 そういえば、伯爵様が来たからとギルド職員に呼ばれ出てったな。こっちが予定していたギルド長の仕事でオジさん達の方は急に押し掛けた知り合いの仕事先での報告聞いていたと言ったことだろう。


「伯爵様、どうかされましたか?その子らは」


 ギルド長は俺達が入ると驚いた様子で伯爵に訪ねている。

 ギルド長の中では俺達はオジさんが見つけた才能ある子供だが、いくら才能があろうがまだまだ幼いからオジさんの方で面倒を見ているとでも思っていそうだ。


「娘が恩人を連れてきたからこの後、屋敷に招待と思ってな」

「御令嬢の恩人ですか?」

「そうだ。娘が言うには噂の空の魔剣師らしい」

「空の魔剣師ですと!先日の魔物の群れの一件で魔物共を一人で一掃したというあの」

「娘の話ではそうらしいが。それが本当ならその件もアシュティアを無傷で連れ帰ったことも含めてお礼しなくてはな」

「だからガルダが目を付ける訳か」

「ほう。有名な冒険者、ガルダが認めるのか」


 伯爵が俺の方を見て言う。

 こんな子供がと言いたげだ。しかし、伯爵の目線は俺の手元に移った。


 ほう、珍しいと呟くだけでその先は何も言われなかった。

 手首に着いているバーコードを見て呟いたのか、はたまた手に持ったタブレットを見たのかは俺にはわからない。


「それはそうと魔物の群れの原因の話ですが全く分かっておりません。街の兵士が持ち帰った情報だけでは足りません。大がかりの調査班を編制して原因追及に乗り出す必要がありますな」

「そうか。魔物の群れの原因が森の奥にあると思ってグリフォン乗りを向かわせたが、森の半分の消失や山一つ二つが半壊したと聞いた時は耳を疑ったぞ」

「はい、一部の冒険者の間ではドラゴンの仕業ではないかと噂がありますがドラゴンでは森の半分を消失させることができても山を半壊させることができませんから」

「いや、しかし。私の娘達が無事で良かった」


 伯爵とギルド長が見に覚えのある話を始めた。何故、魔物の群れが発生したのかの原因調査の話だったのだが、街の兵士を魔物が来た方向に向かわせたところ森の半分がなくなっており、現場の状態は激しい戦闘の跡があった。

 すぐさま兵士は街へ戻り報告したそうだ。


 凄く見に覚えがある話だった。幼い少年の仇、空気のヤロウに挑んだ結果、返り討ちにあい、魔物の群れの引き金となった。

 魔物の群れの原因は俺に有り、それを自分自ら片付けたことは端から見れば自作自演だ。結果的には街の人はパニックを起こしてしまった負い目を感じる。


 たまたまフォスティアと目が合い、フォスティアは口元に人差し指を立てた。

 フォスティアは俺が原因と理解していて俺に話すなとアイコンタクトで訴えている。自分のやったことが原因で話すか迷っていると伯爵達の話を聞くに魔物の群れの被害はあんまり出ていないことがわかり少しだけほっとした。


「現場の状況による私の意見はドラゴンよりも協力な力を持った何かだと睨んでいますが冒険者の噂やそのような人物、魔物は見ていないそうです」

「冒険者達の情報は特になしか。原因の正体がわからないとまた起こる可能性が出てくる。最近、目立った噂はないのか?」

「目立った噂ですか。強いて言うならそこの空の魔剣師ですかね。千を越える魔物共を一掃した彼ですがさすがに森と山を半壊させる力は持っていないと思います。可能性が高いなら不老族と思いますが不老族の目撃情報は上がってせん」

「不老族か」


 そう言った伯爵と目があったが、俺はくずさま目を反らした。


 フォスティアからこの世界が異世界と教えられて気付いたから言えることだけど不老族って俺達被験者を指す呼びなのことだ。どういう経緯で呼ばれることになったことは特に興味はないが不老族の話を聞いた時、不老族は500年くらい前から存在していた。不老族が来てから500年経過したのにもかかわらず、プラスとマイナス、両方の意味でこの世界に何かしらの影響があったのか、色々なことを知る為に不老族がいる旧帝国領に一度行ってみるのもいいのかもしれない。


 この世界に詳しくない俺は知らないことがほとんどだ。現在、フォスティアのお陰で伯爵家に招待されている。いい機会でフォスティアの家で歴史書でもよませてもらおう。


「お父様。お話はもう終わってください。飽きてしまいまして早くタカシさんを屋敷に招待したくてたまりません」


 フォスティアが気を効かせて俺を見ていた伯爵に話を振って俺が目を反らしたことを誤魔化してくれた。


「そうかそうか。飽きたのか。悪いがギルド長私達はこれで失礼する」

「また何かしらの情報をつかみ次第、報告させていただきます」


 話はもう纏まったようで伯爵はギルド長と握手し、部屋から出ていった。その後にフォスティアが俺の手を引いて伯爵の後についていくので俺の後ろにミリ達もついていく。

 一度ミリ達だけでも帰らせようと思ってみたが、ミリ達だけで家に帰られるかどうかの問題なので何も言っていない。「帰ってくれ」と言っても不安だろうからついていくと思うが。


「旦那様、お嬢様を探しにいったリヒトはいかがいたしましょうか?」

「リヒトか。真面目な性格のヤツのことだ。まだフォスティアを探していると思うからフォスティアが戻って来たから馬車に戻れと伝えてくれ。リヒトがいないと馬車を動かせないからな。私達は先に馬車に戻っている」

「畏まりました」


 メイドは伯爵との話を終え、リヒトという人物を探しに行った。リヒトという人物は馬車の運転手らしい。突然いなくなったフォスティアが戻っているのも知らずに今だに探しているらしい。

 伯爵はギルドの入り口付近に止めていた馬車に乗り込んだ。俺達もこれにならい伯爵に続いて馬車に入って伯爵の向かいに座り、俺の両隣にミリとスフィアが陣取る。そして俺の膝の上にアルムが座る。


「御者が来るまで少しだけ待ってくれ。はてと、空の魔剣師。いや、タカシと言うのだったかね?」

「えぇ、まぁ。空の魔剣師の二つ名は大人達が勝手に呼び始めただけなので僕は一度も名乗ったことはありません。僕のことを指すのはわかっているので変事はしてましたが」


 伯爵の雰囲気を感じ取って、御者のリヒトが来るまで俺に質問をするつもりのようだ。伯爵の隣に座るフォスティアは伯爵がどんな質問をするのか気になるようでチラチラ伯爵の顔を見ている。


「これから君に質問をするが答えたくなければ答えなくてもいいが、もし答えるのなら正直に答えてほしい。別に他者に君のことは神に誓って話さない」


 伯爵が言う。そしてフォスティアは自分を指して首を振る。

 それを見たミリ達は首を傾げたが、俺にはわかる。自分のことは話さないでほしいと。自分のことは時間が経てばフォスティアから家族に話すつもりなのだろう。


「私が一番、違うな。直感的にタカシ、君は不老族なのだろう?その腕輪は噂で聞く不老族の腕輪と特徴が似ているが、子供の君が千を越える魔物の群れを相手に無傷で一掃し生還。そんなあり得ない話は誰が聞いても信じないことを成し遂げた君はどう考えても不老族としか思えない。そうなのだろう?」


 伯爵から直球な質問を受け一瞬固まる。

 それを聞いたミリとアルムは俺を見る目がキラキラ輝いている。スフィアはなんとなく俺が不老族であろうと予想を立ててたらしくリアクションが薄い。

 確信と自信で満ちた伯爵の顔を見ながら言うのを戸惑う。

 本当のことを言ってしまうとメリットとデメリットが発生する。メリットは権力者の後ろ楯を得て、生活面の援助してもらえるが、デメリットで伯爵の囲われていいように使われるかもしれない。嘘をつけばいつかボロが出るだろう。

 言わない選択肢は現状維持といったところか。

 というか、自分が不老族なのかは怪しい、だけど自分はこの世界にとっては異世界人だ。


「僕は正直に言いますと不老族と呼ばれる種族族だと言われるとハイそうですとは自信を持って言えません。不老族がどんな者達なのかは知りませんが僕が不思議な力があります」


 試しに伯爵の前に剣を差し出し、念力で浮かせて見せる。次に財布から金貨を数枚取り出し剣と一緒に浮かせる。

 伯爵とフォスティアは親子揃って「お!」と驚きの声を上げる。


「この剣はそこら辺に落ちていた剣です。種も仕掛けも無いです」


 念力で浮かせていた剣を手に戻し伯爵に確かめてもらう。伯爵が確かめている間浮かせている金貨はなんとなく操って、息を吹き掛けるとクルクル回る遊びしている。

 俺の真似をしてアルムが金貨に息を吹き掛けている。モチロン、アルムが息を吹き掛けた金貨を操って回す。ミリとスフィアはやりたそうにしていたが権力者の前なのか遠慮しているし、フォスティアも息を吹き掛ける素振りを見せない。金貨を全員分出した意味がない。


 今思ったが、種も仕掛けも無いなんてまるで奇術師やマジシャンみたいな台詞だ。種と仕掛けがないのは本当のことだから仕方ない。

 見せ物としてこれで稼げないかなぁ?大道芸人風な格好をしていかにも芸人みたいな感じで観客の投げ金で暮らす生活は以外にも楽しそうだ。


「タカシ、私にはこの剣が業物なのかはわからないがこの浮いている金貨は君がやっていることでいいのだな」

「そうです。僕は何でも浮かせられますよ。例えば外を見てください」


 馬車の窓を開けてもらい、街路を歩く人達の中を通り抜けるように走っていく子供を指す。その子供達全員を念力で浮かせるイタズラ をする。驚きの声を上げる子供達の中には泣く子はいなかったがパニックを起こす子がいた。

 その光景を見た人々は子供達から離れるのを見計らい子供達を下ろしていく。下ろした子供達は訳が分からず辺りを見回してまた人混みの中に紛れていく。


 なんともガッツが溢れている子達だ。悪いことをしてしまったな。

 伯爵は子供達が浮かぶ光景を見て開いた口が塞がらないのかポカーンとしている。


「まっ。信じる信じないのは人それぞれですけど」


 伯爵が俺の能力を信じる信じないは別として子供達を浮かせたのがやらせだと言われて投獄されてしまったら困るので先手を打たせてもらった。権力者相手に通じる手なのかは不明だけど。

 そもそもこれが嘘だったら今見せた光景はどうしても説明できない現象だ。そしたら浮かんでいた子供達が能力を持っていることになる。

 ポカーンとしている伯爵を見ているとコンコンと扉をノックする音が馬車の中に響いた。


「リヒトです。役に立てず申し訳ありません」

「お?おお、リヒトか。よい、早く馬車を出してくれ」

「はい、畏まりました」


 馬車の外から青年の声が聞こえた。声の主はフォスティアを探し回っていた御者をしている男だろう。

 あれ?メイドさんはどうしたんだろうか?御者の席にでも座るのだろうから大丈夫なのだろう。

 伯爵やフォスティアの表情は一つも怪しむような顔をしていないのできっと大丈夫だ。


「おっと私のしたことが自己紹介を忘れていた。私はアシュティアやフォスティアの父、デメット フローレイティーだ」

「タカシさん、改めましてフォスティア フローレイティーです。今後ともよろしくお願いいたします」


 伯爵が自己紹介して続いてフォスティアも伯爵に習って自己紹介をした。


「タカシです。よろしくお願いします。こちらが」

「ミリです。この子がアルムと言います」

「私がスフィアです」


 今度はこちら側の自己紹介を始めた。俺の名前は既に知っていると思うが空気を読んで一応名乗った。そしてミリ達は最低限の自己紹介をしてもらった。アルムは敬語とか無理なのでミリが代わりにしてもらった。

 アルムは自分で名乗りたかったようだが、相手は権力者なのでここは我慢してもらいたい。

 後でナデナデしてあげるから不機嫌な顔をしないで。


「ほんの少しは礼儀を弁えているようだな。馬車の中だ。固い挨拶は省こう。タカシ君には娘達を助けてもらった礼がしたい。欲しい物を言ってみろ。但し、娘を嫁に欲しいのは無しだ」


 伯爵の言葉を聞いていたフォスティアはコクコクと頷いていたが、娘を嫁にやらんと聞いた瞬間、実の父に睨んだ。伯爵はそのことに気づかなかったが、俺もミリ達もフォスティアの行動にビックリした。箱入り娘として大切に思っているのか、どこぞの馬の骨に大切な娘はやれんの意味なのか。真意は伯爵の中に。

 しかし、ストレートに欲しい物を言ってみろと言われてもすぐには思い浮かばない。お金は自分の力でミリ達を養ってあげたい。欲しい物かぁー。

 家をもらったっていつかはこの街から出ていくから欲しくはない。現在寝泊まりしている家は廃墟だが、お金を持っているから宿に泊まれる。通常の値段は知らない。正直に欲しい物は無いです。権力者からのお礼をいらないと切り捨てたら相手の顔に泥を塗るのは気が引ける。ここはシンプルにお金を貰うべきか。

 お金はいくらあったて困らないからお金を貰うとしよう。


「お父様?外が薄暗くなってきましたよ」


 フォスティアが外の変化に気づき指摘した。

 まだ日が落ちる時間まで結構あるのだが、外の様子を見るとどこか薄暗くて汚く、人々の人相が悪い印象がする。

 建物の配置が見覚えがあると思ったら家として使っている廃墟の近くだった。二個先の十字路を右にまっすぐ進むと廃墟に付くのだが、ギルドから向かっていると思っていた伯爵邸の方向違う。伯爵邸は街の中心に向かうはずだ。


「ここは貧民街だ。リヒトどういうことだ?!」


 ドンドンと馬車の壁を激しく叩く伯爵。壁の向こうに御者の席なのだろう。

 御者の者から返事は無く、馬がパカパカと歩く音が聞こえる。やはり俺達が住む場所はそう呼ばれているのか。確かにお金がなさそうな人達が沢山いるし、悪いことをしていそうな人達ばかりで強く否定できない。

 馬車が十字路を一つ進み、二つ目の十字路を右に曲がった。俺達の住む廃墟の二つ手前で馬車が止まった。ついでとばかり馬が走り出す音のおまけ付きだ。

 建物の影から覆面を被った男達がゾロゾロと姿を現した。


「貴族様、悪く思わないでくざせー。ここで貴方様を始末すれば大金が手に入るでさぁ」


 前に出た一人の男が言う。この男がコイツらのリーダーなのだろう。

 伯爵は「王都の貴族連中の差し金か」呟き男達を睨み隣に座るフォスティアを守るように抱き抱える。


「護衛はいないことはわかってでさぁ。大人しく出てきたら一緒にいる子供共はお見逃してもやらんこと考えでさぁ」


 リーダーの男が言う。

 伯爵が俺をじっと見つめる。何か迷いがある眼をしていた。


「タカシ、甚だしいとは思うが君に頼みがある。私と娘を守ってくれ」


 伯爵は俺をじっと見つめ続けてそう言った。

 伯爵の言葉を無視し、馬車の扉を開けようとしたがジャージの裾を掴まれた。


「タカシさん、行かないでください」

「おにいちゃんいっちゃいや」


 ジャージの裾を掴んだのはミリとアルムだった。裾を掴んだ手に取り二人の心配そうな眼を見つめた。


「またちゃんと戻るからここで待ってて」


 二人の手を離した。


「「怪我しないで戻って」ください」


 馬車から出ていくと同時にスフィアとフォスティアがハモった。

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