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異能者は異世界に来て何をする  作者: 七刀 しろ
第二章 遺跡
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間話 サイボーグ少女

主人公を襲ったサイボーグ少女の話です

 私は久しぶりにスリープモードから起動を開始した。

 まだ全身を動かすための最適化には時間がかかりそうだ。なので脳に取り付けてあるメモリーから起動して記憶を掘り起こして状況を把握する。

 メモリーを確認して私は死んだ少女と鉄屑によって作られた存在で同志と共に生れた場所から逃げたした。最後の記憶は迫り来る宝石の男。そして...


 くっ。私は捕まったのか。


「うん。君は捕まったよ」


 どこからか声が聞こえた。


 起動プロセスを確認。


 まだ聴覚の最適化はまだのはずなのだが確かに声が聞こえた。


「ここで私達と幸せになろうよ。ここは君にとって楽しい場所だよ」


 あなたは誰?


「私?私はシーナだよ。よろしくね」


 はあ、そういう意味で聞いたわけじゃないけど。まあいいや、こちらこそよろしく。


「自己紹介も終わったし、まずは何か聞きたいことはない?何でも話すよ」


 シーナと名乗った声は透き通った声で説明してくれるようだ。


 ところで私は処分されるの?


「えっ?そんなことしないよ?何で君が処分されるの?何か悪いことをしたの?」


 いや、別に悪いことはしていないけど逃げたしたから。


「逃げたしただけで殺されるなんてそんなの理不尽だよ」


 シーナは不思議そうに言う。

 確かに理不尽だと思うとが私達、被験者に対してあそこは常に理不尽を強いてくる。必要ではなくなれば処分され、鬼畜な実験で危険とわかれば処分される。

 逃げたして捕まれば当然処分される。当然、逃げた私も処分される。

 それでもいいや、夢だった燃料が無くなるまで空を飛ぶことが叶ったのだから悔いはないつもりだ。


「ここはね。君みたいな子がたくさんいるから友達もいっぱい作れるよ。だけど普通の人も暮らしているからちゃんとルールは守ってね」


 普通の人って?


「普通の人は普通の人だよ。それ以外に何があるの?」


 そうですか。普通の人ですか。


「うん。普通の人」


 それから10分くらい私はシーナと他愛ない話をした。


「君はもう起きれると思うよ」


 シーナに言われ起動シーケンスを確認する。体全体の最適化が丁度よく終わったところだ。

 左目の瞼をあけるがボヤけて見れなかったから右のレンズで見る。逃げ出した場所から似ている天井が映った。

 やっぱり私は捕まってしまってあの場所に逆戻りしたようだ。


「だから君は捕まったけどここは君が思っている場所じゃないよ」


 また声が聞こえた。それはちゃんと耳で聞き取って、声が方へ顔を向ける。

 そこには自分と同じくらいの少女がいた。

 彼女はダボダボの白衣を着て大きな丸メガネの奥の瞳で私を不思議そうに見つめていた。


「おはよー。シーナだよ」


 これがシーナとの出会いだった。


 おはようございます。ここは私が思っている場所ではないと言いましたがじゃあここはどこですか?


「どこって病院に決まっているよ。あれ?声でないの?」


 はい。元々喋れるように作られていないので。


「喋れないならはい、これ使って。古いワイヤレスタイプだけど君になら使えると思うよ」


 彼女からスピーカーを渡された。

 そのスピーカーの電源を入れ安全か確かめる。

 充電が満タン以外におかしい点は見つからない。変な機能が組み込まれている様子は無くただのスピーカーだ。

 私の脳内に接続されているワイヤレス無線にリンクをして繋げる。そして音声データをスピーカーへ送る。


『あーあー』


 スピーカーは音声データに添って綺麗な声を発した。

 それは無機質な機械の声ではなく本当に生きた人の声に聞こえた。


「今、それで我慢してね。ここに置いてある在庫がそれしか無くてね。本当は君に喉をプレゼントしたかったけど最新の声帯部品が高くてね。僕のお給料では買えなかったよ。安いドローン用の声帯部品じゃっ嫌でしょ」

『いえ、これで十分嬉しいです。ここは本当に病院だったらあなたは何者ですか?』

「僕かい?ここで働く職員だよ。職員と言ってもナースとか医者ではないけど、私の仕事は喋れない人や違う言語の通訳と患者の精神的なケアかな。こう見えてもここに勤めて長い古株なんだよ」


 彼女は自慢げに話す。


「ちなみに言うと僕ね。君と同じ場所の出身なんだよ。まっ、あそこから逃げだしたのはかなり昔だけどね」


 彼女は驚きのことを呟いた。それは私と同じくあの場所から逃げだした被験者ということになる。

 ということはここは私と同じ者達が集まっている隠れ家のような場所なのだろう。

 私は安心したのか体中の力が抜けてベッドに倒れた。


「君!大丈夫かい!」


 いきなり倒れたのがビックリしたのか心配そうに私を見る。


『すみません。ここがあそこではなくて安心しただけなので大丈夫です』

「そうなら早く言ってくれよ。僕、いきなり倒れたもんだからビックリしたよ」


 彼女はフーと安心そうに息を吐いた。


「おや?もう起きたの?」


 部屋に小さな男の子が入ってきた。金色の髪を靡かせシーナと同じ白衣を着ている。

 彼はシーナの知り合いのようだ。


「おー。やっときた。君いつも遅いな。この子は一時間前から起きているのに君は今まで寝てたの?」

「まーね。最近は忙しくてしょうがないんだ。そのぐらい多目に見てよ。君もそう思うでしょ?」


 シーナと親しげに話す男の子が急に話を降ってきた。


『わからない。けど仕事は自分のペースで頑張ればいいと思う』

「君はいいこと言うね。シーナも見習って気がきいたことを言ってみたらモテると思うよ」

「僕はいいんだ。仕事が恋人のようなもんだから今は募集していないんだよ。君は彼女に自己紹介したらどうだい?」


 シーナは拗ねたように男の子に自己紹介を催促した。


「ごめん、忘れた。僕はキリヒト、よろしくね。シーナとは長い付き合いでね。僕もここの職員なんだよ。」

『はい。どーも』

「君の名前はなにかな?」

「あっ、僕も名前を聞いてなかったよ。教えてくれると嬉しいな」


 そういえばシーナにも自分の呼び名を言ってなかった。シーナが自己紹介した時も一方的に名乗って自分の名前を聞かれなかったから名乗らなかったが自分には名前がない。あっちでは呼ばれていた識別番号があり、この体、死んだ少女の肉体の名前も知らない。


『626-G7』


 だからあっちで呼ばれていた識別番号を言ってみた。


「そっか」


 二人は何か察した表情をして悲しそうに頷いた。


「君の名前は今日からガーナだよ。ちなみにG7から取ってガーナ」

「ガーナよろしくね」


 男の子、キリヒトは私の機械じみた右手をとって両手で握手をした。私もそれに答えるように彼の手を握り返した。


「じゃあ、私は次があるから行くよ。ガーナをよろしくね」

『シーナどこに行くんですか?』

「どこって次の子に決まっているよ。君のことはキリヒトに任せて君みたいな子が何人もいるからその子達を見なくちゃいけないから大変だよ~。もっと君とお話していたいのに仕事は大変だ~」


 そんなことを言い残してシーナは部屋から出ていった。

 たぶん、今の話を聞く限り目覚めた私のケアをキリヒトに任せて次の仕事に向かったのだろう。


「さてと僕も仕事を始めるか。ガーナはもしも体の機械の部分が人の肌で隠せた方がいい?」


 キリヒトの質問を聞いて固まった。

 体の機械の部分が隠せるのならしてもらいたい。

 ただ。


『してもらえるなら隠してもらいたいです。ただこの右手はこのままでお願いします。この右手は初めて貰ったプレゼントなので、これまで隠してしまうとあの人のことが忘れてしまいそうなのでこの右手はこのままでお願いします』

「ふーん。君は少し変わっているね。いいけどそれ以外に要望はあるかな?叶えられることは努力するよ」


 要望?

 何のことだがわからない。私の望みを言えばいいのか。それともこの体についての要望なのか彼の顔を見てもどちらかなのは見えない。


『可愛い猫が飼いたい。柄は真っ白な猫』

「そう言う要望じゃないけど、一応支援組合に話しておくよ。君の体についての要望だよ。例えば、こういうパーツが欲しいとかここのパーツを取り外して人と同じ臓器にしてもらいたいとかね」


 やはり後者の方だった。

 この体には追加のパーツをつけたくない。これ以上人からかけ離れた体になりたくない。この体からパーツを交換も嫌だ。

 私は以外とこの体を気に入っていて今のままでいいが言葉を話せないのは不便だ。

 それと肉体の部分が腐っていくのは嫌だ。生きた人と同じように血を流して生きている感覚を味わいたい。


『私の要望は肉体部分の蘇生と人と同じ声が欲しい。それとこの体で子供を作りたい』

「こっ、子供!?」


 キリヒトは子供を作りたいと聞くと顔を赤くした。

 そんなキリヒトに少し可愛いと思う自分がいた。

 数分後、落ち着いたキリヒトは残念そうに説明してくれた。

 私達、被験者は逃げだして次世代に能力が拡散させないように管理するために生殖機能を失っていると言われた。ただ肉体の蘇生と人と同じ声帯を手にいれることは可能だそうだ。


『それでお願いします』

「わかった。少しじっとしてね」


 キリヒトが私のおでこに触れると急に眠気が襲ってきた。だんだんと意識が保てなくなって私は眠りについた。サイボーグの私にとってそのときの眠りは長いような短いような感覚がつかめない眠りが印象深かった。

 私が目覚めたのは二日後だった。


「うっ。いつの間にかスリープモードにはいっていたみたい。あっ」


 私は右目のレンズをサーモグラフィーモードに切り替え自身の体を見た。私の体は眠りにつく前とは違いちゃんと体温があるのを確認して肉体が生きているのを実感した。

 体温があるということは血が血管を流れているということになる。私は正真正銘生きている。


「嘘、声もある!」


 鼓膜に響いた可愛げな声に涙が止まらなくなる。スピーカーから流れる無機質な機械の声ではなく、自分の喉震わせた声帯から出る可愛らしい少女の声に驚きを隠せないでいる。それから左目から流れる涙も眠りにつく前は出なかった。

 涙はどんなに拭いても溢れるほど流れ落ちる。以前では出来なかった生理現象だ。


「うう、私は、私はうう」

「おや?目覚めたのかい?それに何を泣いている?」


 額に一本の角がある優しそうな初老の男性が私のいる部屋に入ってきた。


「初めて涙が流れたので嬉しくて」

「そうかい、それは良かった。理由はさておき男は女の子の涙に弱いから早く泣き止んで欲しい。はい」


 察した男性はハンカチを差し出してきた。

 ハンカチを受け取ったものの男性の顔見たが、男性は静かに頷くだけでその先のことは言わず黙っている。

 男性はハンカチで涙を吹いて欲しくて渡したようだ。私はそのハンカチを涙が止まらない左目にあてた。


「いやはや、独特な涙の拭き方だね」

「ところであなたは?」

「あー、申し遅れた。私はモスギス。ここで働く職員なんだよ。私が名乗ったから君の名前を聞いてもいいかな?」

「ガーナ。シーナから貰った名前」


 とモスギスに答えた。モスギスは嬉しそうに頷いて私の頭を撫でた。


「シーナさんにつけて貰ったのか。それで君の担当者はキリヒトさん辺りかな?」

「はい」

「そっか、じゃあ。私と一緒にキリヒトさんを起こしに行ってい見るかい?」

「へ?」


 モスギスは私をキリヒトがいる部屋へと案内する提案を出した。詳しく聞くとモスギスは暇潰しがてら私をここの施設の案内するつもりだろう。

 私にとってとても嬉しい提案だが、今の私にはある問題を抱えている。

 それは体に掛けてある薄い毛布を剥がすと私の体が露になる。ストレートに言えば裸なのだ。

 そんな姿を見られたらサイボーグの私でも考えただけで死ぬほど恥ずかしい。


「ん?もしかしてまだ歩けないのかな?ではちょいと失礼するよ」


 モスギスは毛布ごと私をお姫様抱っこした。当の私はモスギスに裸だと悟られないように腕を使い毛布がずり落ちないように工作した。


「これでいいかな。そうだ!」


 私に微笑みかけた後に何かを思い出し、部屋の隅に設置してあるパソコンの元へ向かった。

 私は彼の腰から伸びるそれに驚愕した。

 彼の腰から伸びるそれは肌色で先端部が三又に別れていた。


「私の尻尾がそんなに珍しいかい?」


 彼はそう言いながら尻尾を巧みに使いパソコンを起動してディスプレイに『ガーナをキリヒトさんの部屋まで連れていきます。モスギス』打ち込み、私を抱いて部屋の外に向かった。


「今日はどこで昼寝をしているのかな?いつものところから回るとしよう」


 彼は迷いなく廊下を進む。

 私達がいる廊下には楽しげな会話や誰かたてる健やかな寝息が響いており、目に映る光景があの場所とそっくりのはずなのに私を安心させる。

 そのせいか廊下に漂う薬臭さが気にならない。

 時々、すれ違うシーナ達と同じ白衣を着た人やナース服を着た女性達が手を振ってきたり、微笑んでくれたりした。彼女達がモスギスに挨拶する姿を見るとモスギスは結構偉いのではないかと思う。そんなモスギスはほっこりした笑顔で挨拶を返していく。


「うーん。今日やけに冷えるな。そこの自販機で何か買うけど、ガーナも何か欲しいかい?」

「自販機?」


 聞き返してしまったが、自販機と言うと飲み物などを売っている大きな箱と言うのはさすがに知っているがそもそも私はお金を持っていない。いや、何を欲しいか聞いているんだから奢ってくれると思う。

 今の私は飲み物より着られる服が欲しい。


「そうだよ。何が飲みたい?って聞いても仕方ないか。あの辺りの部屋はここに来て日が浅いって聞いているから聞いてもわからないよね。私が美味しいって思う物を買ってあげよう。ちょっとごめんね」


 モスギスは尻尾を使って私の足を支える。自由になった左腕で自販機のジュースの画像が貼ってあるパネルを二回タッチした後に自販機の右端に丸いマークがあり、モスギスは左手首に着けているバーコードの腕輪を翳した。

 自販機がピッと電子音を発てた後に二本の缶が自販機の口に落ちた。

 缶を取り出し、私の手に一本渡した。

 缶はとても暖かくて気持ち良かった。


「それはね。この自販機の会社が出している缶スープで最近の私のオススメだよ。そこのソファーで一緒に飲もうか」


 近くにあったソファーに私を座られてもらった。そして隣にモスギスが腰を下ろす。

 もらった缶を開けて口をつける。

 クリーミーな風味が口の中に広がる。幸せになる味だ。


「おいしい」

「でしょ!この缶スープを何本か大量に買って晩御飯と一緒に食べるほど好きなんだ」

 モスギスは私が缶スープを気に入ったのが嬉しいのかとても嬉しそうに自分の缶スープを飲み干す。

「おー?モスギスじゃないか。おはよう」

「キリヒトさん!おはようございます。って呑気におはようじゃないですよ」


 トテトテと眠たそうに歩いて来たのはキリヒトだった。


「ガーナも一緒なのかい?モスギス、ガーナの服はどうしたんだい?」

「えっ?服ですか。何にを言っているんですか?」

「知らないでここまで連れてきたのか」


 私が今まで頑張ってモスギスに隠していたことがキリヒトによって暴露された。

 その後はモスギスは数日程女性職員に白い目で見られていたことはモスギスが亡くなるまで知らなかった。

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