街への帰り
「あー。美味しかった」
今食べ終えた皿が何皿目か二時間前に数えるのを止めてやっと彼女達の暴食が終了したようだ。
彼女達が食べ終えた皿がシンクに山のように入れられている。
「いくらなんでもよぉ。全部甘いもんにすることはないだろぉ?それとぉいくら食べるんだよぉ」
「だって普段食べられない物があれば食べたいじゃないですか?街ではあのような食べ物は種類があまり無いのに結構お金がかかりますよ。ねぇ?」
「そうです。ガルダさん。街ではこういうのは高くて食べられないのですからここでお腹いっぱいに食べたいですよ」
「それでもよぉ。限度ってもんがあるだろぉ?ってかまだ食う気なのか?」
「いえ、これ以上食べてしまうと動きに支障が出てきますので止めときます。それにこれ以上ガルダさんと空の魔剣師を働かせるにはいきませんから」
と申し訳なさそうにロゼットは自分達が食べ終えた皿を片付けている。
俺とオジサンは彼女達が食べている間、彼女達がタブレットで頼のんだ食べ物が送られてくる装置に皿を入れ、食べ物が皿にあるのを確認するとその皿を彼女達の前に置いて、次の皿を装置に入れる作業を繰り返していた。
始めはオジサンも食べる予定だったが全て甘い物だとわかると一皿程食べて終わって作業に専念してくれた。
「だよねぇ。これ以上食べられないくらい食べたいよね」
「あ~あ。無我夢中で食べちゃったわ。これ間違いなく太るわ。ほら、エリーもテーブルに伏せてないで皿洗いを手伝いなさいよ」
エリーとトトは満足したようでロゼットの皿洗いに参戦した。
「この青いドロッとした甘い物また少し食べたいです。クッキーと一緒に食べるのが美味しい過ぎますよ。タカシさんも食べます?」
「ミリちゃん。こっちのプルプルしたヤツ果実の味がして美味しいわよ。でもこの赤いのも美味しい」
「アルムはこのつめたいのがだいすき。ミルクのあじしておいしいよ。おにいちゃんあーんして」
ミリ達も大人達に感化され、次々と甘い物を頼むようになった。喜んでくれて嬉しいが俺はまだ作業を続行し続けている。三人娘はこのように自分が気に入った食べ物を一口差し出してくれる。どれも甘くて美味しいがだんだんと食べていくうちに甘さに飽きてきた。
差し出してくれるその笑顔に俺は負けて彼女達が差し出してくる物に口をあけるしかできなかった。
「おにいちゃん、おいしい?」
「うん、美味しいよ」
アルムから差し出されたスプーンを咥えた。乗っていた物は一口のアイスクリーム。
とてもクリーミーな甘さとふんわりとした冷たさが口の中に広がって美味しい。
アルムはアイスクリームをお気に入り、さっきからこれしか食べていない。二時間前にちゃんとご飯を食べたのでこれくらいのデザートは許容範囲ないなので文句はない。
ミリは黄色いジャムを気に入り、パンやビスケットなどにジャムを付けて食べている。スフィアはゼリーが好きなようだ。
数十分後デザートタイムが終わり、ロゼット達も皿洗いが終わった。ロゼット達にはミリ達が使っていた皿まで洗ってもらった。
「ほんと、不思議な箱ね。こんなに食べ物が出てくるなんてね。さすがは不老族ね」
「本当に不老族はすごいです。お風呂は気持ち良かったですし、ご飯はものすごく美味しかったです」
「ねぇ?君たちはお風呂に入ったよね?どこの部屋なの?」
「お風呂の部屋ですか?それなら転移した場所から見て一番左手前の部屋ですけど?それがどうしたのですか?」
「ここを一通り見たら私達も入ろうと思ってね。それでどうだった?」
「あったかくてきもちよかったよ!」
戸惑うミリの代わりにアルムが答えた。
アルム達が風呂場から出てくるのが思ったより早かった。もしかしたらシャンプーなどの石鹸が無かったからお湯で軽く濯ぐ感じで洗っただけかもしれない。
ゆっくりと入って欲しかったけど小さい子にとってただ入るだけなのは退屈だったと思う。
他の部屋を探したらシャンプーとかボディーソープならありそうだ。
「次の部屋にいぐぞぉ!」
オジサンが向かいの扉を開けた。扉の先は向こうは水洗式のトイレだった。
「変な形の椅子ですね」
「変にいい臭いがするし。扉には内側から鍵を掛けられるようになっているから一人で何かをする小部屋なのは確かだ」
「それにしても小さい部屋だ。壁に柔らかい紙が掛けてあるのが気になる。空の魔剣師?この部屋は何の部屋?」
大人達がトイレの前で首を傾げるのを見てトイレも違うのかと思った。
「ここはトイレです」
「なるほど!この蓋を開けてこれに座って用をたせばいいのか」
「トイレなのはわかったけど出した物はどうするの?」
「このレバーを引けば水と一緒に流れるますよ」
トイレの説明を簡単に済ませた。
やはりここまで自分の常識と違うと異世界に迷いこんだんだと思ってしまうが、俺がいるのは結構文明が遅れた発展途上の国なんだろう。
いろいろと矛盾したところが多いがそういうことで納得しておこう。
残りの部屋は全て個人部屋のような風で机とベッド、棚に本やフィギュアがあっただけでオジサン達にとって珍しい物は無かったようだが本だけをかき集めて持ち帰る素振り見せたので聞いていたら。
「えっ?本を持っていく理由?それは不老族の文化や言語を調べる為だよ。不老族は謎が多い種族だからこれらの文献を持ち帰ると凄いお金になるんだから持ち帰らない理由はない」
「そうですか」
「空の魔剣師は不老族の文字がわかるようだけどこれらの本の表紙に何がかかれているのか教えてくれない?」
「別にいいですけど」
「ありがとう!じゃあこれからお願い」
「えーと、夕暮れの思い、夏空の一時、淡い恋模様、公爵と幼き思い、春よ恋...」
俺は言われた通り次々と本の表紙を読み上げていく。
読み終えて思ったのは全部恋愛風の小説だった。念の為、パラパラと中身も確認したが間違いなく全部小説だった。
がっかりなことに俺好みのマンガなんて一つも無かったのは残念だ。
「全て恋愛小説ですね」
「ウワァー、これ全部恋愛小説とかロゼットが好きそうな本ばかりだ」
「恋愛小説のどこが悪いんだ。叶わぬ恋程面白いんだって何を言わせるエリー!」
エリーとロゼットの漫才をスルーし、恋愛小説に興味がない俺は棚にある様々なフィギュアに目を向ける。
棚の上は綺麗な状態でフィギュアを飾っており、全てが奇妙な物ばかりだ。
それは見たことがない生き物のフィギュアや車と飛行機を混ぜ合わせたような個性的な形の乗り物が交互に飾ってある特徴的な棚だ。
「おにいちゃん、このへんなのなに?」
アルムは食い付くように個性的な乗り物に興味津々だ。俺は逆に見たことがない奇妙な生き物のフィギュアが気になるが外の世界には魔物がいるからこの子にとってはそれほど珍しい物でもないのだろう。
「これは人形じゃなくてフィギュアと言ってだな。簡単に言うなら部屋に飾る置物だ」
「ふーん。そうなんだ」
俺が答えたら彼女の興味が削がれたようだ。天真爛漫な彼女はただ単に物珍しいから興味を持って俺に聞いてみるとこれがただの置物と言われたので興味を失ったようだ。
「もうここにぃは用はねぇ。今回はここまでにして街に帰るぞぉ!」
「ガルダさん何でですか?もう少し居ましょうよ」
「そうですよ。私達はまだお風呂に入ってませんよ」
オジサンが急に街へ戻るといい始め、その声にロゼットやトトが批難の声をあげる。
「なんか嫌な予感がするんだぁ。とりあえず、坊主が言っていた不老族の武器の弾丸を袋に詰めて帰るぅから早く準備しろ」
「ガルダさんがそう言うなら従うしかないか」
三人はしぶしぶオジサンの言う通りに街へ帰る準備を始めた。帰る準備と言ってもやることは本を荷物に入れたりすることしかない。
ただあんな大量の本をどうやって持っていくのか気になって聞いたみたら、注入した魔力量に応じていくらでも入る魔法の道具があり、それに入れて持ち帰るそうだ。
「坊主達はまだ仕掛けがないか探してもらいてぃ」
と言われて俺はオジサン達いる部屋の隣の一室のベッドの上で横になっている。ついでに言うとミリ達も同じ部屋の中にいる。
「タカシ?オジサンには仕掛けがないか探せって言われたのにいいの?」
「ん?あれは俺達が気が散って邪魔だからそう言ったんじゃないの?もう仕掛けらしいのはないからそう思ったけど?」
「そうなんですか?私はもっと不老族らしい物があれば嬉しいんですけどね。無いのは残念です」
ミリがしんみりと肩を落とす。
俺が言った通りここに入った時みたいな転移する仕掛けは見たところもうない。ミリが言う不老族らしい物の意味がよくわからないけどこの部屋だって見た目通りの物しか置いてない。
ミリ達が珍しがりそうな物がある。
例えば、机の正面にいるアルムがじっと見ているモニターだ。アルムはヘンテコな真っ黒な絵と思って見つめているかもしれないけど。
俺の手には枕の下に隠されていたモニターの物と思われるリモコンがある。洗濯機や冷蔵庫などの電化製品が知らなかったから、もしかしたらテレビも知らないかもしれないからオジサン達が呼びに来るまで聞いてみよう。
「なぁ、ミリ。今、アルムが見ている物あるじゃん」
「はい。あの奇妙な絵がどうかしましたか?」
「あれは絵じゃないよ。テレビって言うんだ」
「ふにゃっ?テレビですか?スフィアちゃんわかります?」
「テレビね。聞いたこともないわ。不老族の遺跡にあるものなんだからきっとびっくりする物に違いないわ。タカシあれがなんなのか教えてよ」
パァーと嬉しそうな表情をしたスフィアが教えるようにと迫ってくるなんてきた。
「テレビは映像を見る物なんだ。例えばこんな風に」
俺はリモコンの電源ボタンを押した。
モニターに映し出されたのは裸の男女が愛の儀式をしているアニメだった。
俺はとっさにボタンを押して別のチャンネルに変えた。
さっきのは小さい子にはまだ早すぎる物だった。正直に言うとびっくりしてよくわからないボタンを押してしまったが今、映し出されているのは宇宙を題材したドラマのようだ。
うちの子達に目を向けるとアルムはよくわかっていないようで平然としていたが他の二人は今流れた映像がどういった行為なのかわかっているようで顔を赤くして俯いている。
なんだか二人を見ているとなんか申し訳なくて土下座したい気分になったのは言うまでもない。
「ねぇねぇ、おにいちゃん。これなんなの?えがうごいてるよ?でも人」
「アルム、これは絵じゃなくてテレビだよ。今映し出されているのはドラマと言うやつで、簡単に説明するなら物語かな?」
テレビはあまり見ていなかったからよくわからないけどドラマもストーリーがあるので物語と言い切れる。
このドラマをよく見たら、宇宙船がさっきの部屋にあったフィギュアに似てる。あの部屋にあったフィギュアは全部このドラマのフィギュアなのかもしれないな。
「テレビって言うのね。端から見たら絵の中に人が閉じ込められたように見えるけどさっきのエッチな物からこの物語に変わったところが絵とは違うところね」
「さっきの絵が動くと言うのも十分凄いですけどこれはそれよりも凄いですよ。本当に中に人が入っているみたいです」
顔が赤いが二人は喜んでくれて何よりだ。
「これはなんなの?ドラマって言うんだっけ?暗闇の中で乗り物が進んでいるようだけど?」
スフィアは現在やっているSFドラマが気になる様子でいろいろと聞いてくる。
このSFドラマについてのストーリー性や人物の説明は見始めたばかりだから皆無だが宇宙や宇宙船について簡単に説明した。
「空の上って真っ暗なのですね。そして星は丸くて生き物がいるかも知れないのですね」
「私達がいるここ地球と呼ばれていて他の星と同じく星で丸いんだ。そして太陽の周りを回っているのね」
聞かれたことは俺の言葉に置き換えて上手く説明したけどこんな常識的なことを知らないのだろうと疑問に思ってしまうがここはそれほど進んでいない国なんだろうと自己的に解釈した。
しかし、ここまで進んでいない国に多数の電化製品があるのは不自然でしかない。不老族の遺跡と言うのは研究所の拠点のような物かもしれないからオジサンの言う通りにここから早く離れた方がいいのかもしれない。
いったい不老族と呼ばれている者は何者だろう。




