不老族の遺跡
「本当に何もないな。ここは遺跡なのか。無駄に散らかっている小部屋にしか見えないのだが」
「ここに置いてあった物は前に来た誰かが持っていったけど私が噂で聞いていた不老族の遺跡に間違いないわ」
「私も絵本に描かれていた不老族の部屋と雰囲気が似ています」
「見たことがない材質の棚に床に散らかっている小さな筒状の物体。明らかに見たことがない物よ」
見たことがない材質の棚?これは見るからに材質はプラスチックだ。床に散らかっている弾丸は形や大きさは違うが見れば弾丸と分かる。壁や床は黒ずんで汚れているが多少光沢があるからたぶんプラスチックでできている。
漫画に載ってたような近代的な小部屋にしか見えないのだが、これのどこが遺跡だと言えるのかわからない。
何台かの棚の足の一部が赤く光っている部分が気になるけどそれ以外に目ぼしいものがない。
「うわー。本当に空っぽだ。キャッ!」
「空の魔剣師!あれほど危ないから先に行くなと言っただろ。ふぁわ!」
「ギャッ!」
エリーとロゼットが俺達の後を追って遺跡(?)の中に入って来た。二人は勢いよく入ったせいで床に散らばる弾丸を踏んずけて滑った。
偶然、入り口付近にいた俺は二人に押し倒され、俺の顔に二人の柔らかな胸を当てられ呼吸困難に陥った。
「いたた。何なの?」
「おい!エリー。お前の足を退かせ。これじゃ私が立てないだろ」
「ロゼットだって私の腕を離してよ」
「私は何も掴んでない。ワー!空の魔剣師!」
ようやく下敷となった俺に気づいた二人は素早く退いてくれた。
「空の魔剣師大丈夫だった?ロゼットは重くなく無かった?」
「待てエリー!いつも鍛練している私がどうして重いのだ?私はエリーより軽いぞ?」
「はいはい。ロゼットは私よりも軽いよね。本当に大丈夫?」
「はい。大丈夫です」
倒れる際に念力をクッションがわりに体を浮かせたから痛みはない。二人の柔らかな胸のせいで一瞬しか念力を出せなかった。
女性の胸は兇器だ。
「おにいちゃん大丈夫?ベス見てあげて」
心配そうに見つめるアルムがベスを放つとベスが俺の体全体を這ってくすぐったい。傷が無いことが分かるとアルムの元へ戻って行った。
「ちょっと見てよタカシ!」
「タカシさん!壁が扉に変わりましたよ!すごいです!」
声を上げる二人の視線の先には奇妙な扉があった。
「壁が扉に変わった?そんなはずがないだろ。何かの見間違いに決まってる」
「そんな頭ごなしに否定するのは可哀想だよ。だからロゼットは彼氏ができないんだよ」
「今とそれは関係ないだろ。エリーだって彼氏がいないじゃないか」
「私は不思議に男が寄って来ないからできないだけだからいいの」
「じゃあ私は男が私の前から突然去っていくだけだ」
それは同じことなのでは?と頭で思いながら言い争う二人をスルーして出現した扉を調べたが特に仕掛けや鍵が掛かっている訳でも無さそうだ。
「このさきになにあるの?」
「アルムちゃん、そんなの決まってますよ。隠し扉の先にあるのは不老族のお宝に決まってます」
「決めつけるのはまだ早いわ。何かしらの書物かもしれないよ。銃みたいな魔法の道具かも」
銃って魔法の道具類に入っているなのか。剣や槍と同じ武器の類に属している思っていたのとだが、俺もどうやって弾丸を吐き出しているのかいまいち説明はできない。引き金を引くことで生まれる火薬が弾ける力を使って...やっぱり上手く説明できないや。
オジサン達が持っていた『夜の時』のような魔法の道具があるんだし中には魔法の力で弾丸を吐き出している銃があるかもしれない。
「タカシさん!中に入れる見たいですよ。入りましょう」
「おい!無暗に扉を開けるな!」
「えっ?キャァ!」
「くろいモヤモヤがぁ!」
「なにこれ気持ち悪い」
扉から黒いモヤのような物が溢れて出てきた。黒いモヤは俺達を優しく包み込むように部屋全体を覆った。
気づくと周囲に歪みを感じ黒いモヤが無くなった。晴れた視界には無機質な廊下が続いていた。
「一瞬で別の場所に。転移陣か」
「違うよロゼット!魔力的な力は感じられなかったからそれはあり得ない。とりあえずマジックボックスに入っている『永遠の声』を使って外にいるトト達と連絡を取らないと」
「すごーい。へやがかわったよ」
「これが不老族の遺跡の真の姿か。幾つも扉があるわよ」
「扉の先には何があるんでしょうか。扉の奥にあるものが楽しみですね」
いた部屋から無機質な廊下にテレポートさせられたみんなはそれぞれの反応を見せた。
エリーとロゼットはこれが非常事態なのか慌てていてエリーの腰に巻いていたカバンから青色の石みたいな物を取り出して話し掛けてる。
家の子達はキラキラした目で遺跡の廊下を見ている。
廊下には一定の間隔に扉があった。右左前後合わせて数えてみたが10枚はあるから扉の先は10部屋と考えるべきかはたまた階段や廊下が続いているのか扉を開けないとわからない。
「トト達と繋がらないよ!」
「何!なんとかトト達と連絡が取れる手段はないのか」
後ろにいる二人がとてもうるさいので後ろにあった扉を開く。
「また勝手に扉を開くな!」
「「キャッ!」」
また開いた扉から黒いモヤが溢れ出て俺達を包み込むと弾丸が散乱した部屋へと戻った。
やはり俺達の後ろにあった扉はここに繋がっている。
「ここは?元の場所に戻ったのか?」
「トト達とやっと繋がったよ!あれ?ここはさっきの遺跡の部屋?いつの間にか私達戻れたの?」
元の部屋に戻れて二人は胸を撫で下ろしている。
今まで青色の石に話しかけていたエリーはチョトンと周囲を見渡している。
黒いモヤに包まれたのを気付かなかったのだろうか?
「タカシさんなんでですか!元の場所に戻ってきてしまったではないですか!」
「そうよ、タカシ。まだ何も調べていないのに。どうしてこんなことするのよ。タカシのせいで扉が消えちゃったじゃない」
「アルムたちはもどちゃったの?」
スフィアが指した壁は先ほど突如扉が現れた壁だ。今は扉が消え特に何もない壁の一部だ。
扉は一度廊下から出ると消えてしまうようだ。
スフィアが扉があった壁を叩いたり触れたりしているが何も変わらない。きっと扉が出るスイッチは棚の足元が光っている部分が関係しているはずだ。
散らばっている弾丸を掻き分けながら押し倒された付近を調べる。
「エリーは外で見張りをしているトトとガルダさんを呼んで来てくれ」
「ロゼットは?」
「私は空の魔剣師達がまた何かしでかさないように見張るから早く呼んで来てくれ」
エリーは外にいるトト達を呼びに遺跡から出て行って残ったロゼットは静かに俺達を見張っている。
「タカシさんは何をしているのですか?床に何か気になることがありました?」
「ちょっとこの赤い光が気になって調べてるんだ」
「赤い光って何のことですか?アルムちゃん床に何か見えますか」
「ジャラジャラがあって歩きにくいの。だからベスにおねがいしておかたづけしてもらったの」
二人にはこの赤い光が見えないのか。こんなにくっきりと光っているのに。それと床に散らかっていた弾丸が何ヵ所かに纏まっているなと思っていたらベスが片付けていたのか。
あっ!本当だ。一生懸命に弾丸を取り込んで五ヶ所に集めてる。赤い光に気をとられて気が付かなかった。
「どうしたの?」
「スフィアちゃん!タカシさんが床が赤く光っているって言うんです」
そこに壁を調べ飽きたスフィアにミリが床が光って見える俺の説明をする。正確には棚の足が光っているのだが。
「タカシは赤い光が見えると言うのね」
「スフィアは見えるのか?」
「いいえ。私には光なんて見えないわ。さっきの扉と何か関係しているんじゃない?ねぇ?貴方は床に何か見える?」
「どうした?エルフの子。床に何か見えるかって?小さな筒しか見えないがそれがどうかしたのか?そう言えばさっきから空の魔剣師は床ばかり調べているが床に何かあるのか」
「棚の足に赤い光が見えます」
「赤い光か。私には何も見えないな」
「タカシさんしか見えていないのですか」
ロゼットの問に直ぐ様答える。不思議なことにみんな足元を照している赤い光が見えないらしい。
みんなはこの部屋がどんな風に見えているのだろう。
「あれ?タカシさん扉が出てます!」
「えっ?本当だ。やっぱりこの光が扉が現れる仕掛けとなんかしらの関係があるんだ」
棚の足を調べているうちにいつの間にか扉が現れていた。調べていた赤い光には何も変化は無かった気がするけど。
「待て!扉を開くのはガルダさん達が来てからだ。それまで大人しくしてくれよ」
「えー。つまんないよー」
「アルムちゃん。少しだけ我慢してね。オジサン達が来たら入れるから」
スフィアとアルムが扉を開こうとドアノブに手を掛けるとロゼットに止められた。
文句を言うアルムをミリが宥める姿を見て癒されていると三人の足音が遺跡の中に入って来た。
「ロゼットお待たせ」
「エリーの話していた通り何もないわね」
「なんだ?見張りをしていた俺達を呼ぶなんて只事じゃないと思ったが何か起きたのか?」
「ガルダさん。すごい物を発見しまして」
エリーが見張りの二人を引き連れ来たようだ。来る途中にこの部屋を少なからず話していたみたいでスムーズにロゼットの説明が終わった。
「消えていた扉が現れてる!」
「この扉が隠し扉と。こんな堂々とした隠し扉なんて聞いたことがないが本当に無かったのか」
「はい。私達が入った時は無かったです。何かの拍子で扉が現れて扉を開くと扉から黒いモヤモヤしたものが突然出てきて私達を覆うと別の場所に移動していました。そして私達の後ろにあった物をまた開くとモヤモヤが出てきて戻ってこれました。エリーがガルダさん達を呼びに行かせている間、空の魔剣師がスイッチを調べていました」
「空の魔剣師はなんで床にスイッチがあると思ったの?」
「本人が言うには赤い光が見えるらしい」
「ほー。坊主!赤い光とやらはどこら辺に見えているんだ?」
「赤い光はこことここ、ここに見えます」
「んー。見えないな。光が本当にあるの?」
「見えんな。しかし、坊主が嘘を言っているようには見えないのも確かだ」
「でもガルダさん。空の魔剣師が指した場所には何もありませんよ。赤い光も見えませんし、おかしいところがないです」
やっぱり二人も見えないか。俺にしか見えないのか。
急かすようにチラチラ見ているミリとスフィアが気になる。どんだけ奥には行きたいんだ。
「タカシさんもう終わりました?早く行きたくてうずうずしますよ」
「待ってくれ、まだ扉を調べていない。先に調べされてくれよ」
「これがエリーが言っていた転移ができる扉なの?」
「あぁ、そうだ。さっきも言ったがこれを開くとモヤモヤが出てきて転移するがエリーが言うには魔力的な力は感じないらしいんだ」
「ぱっと見、普通の扉ね。魔力に敏感なエリーが感じないほど付与魔法を隠蔽しているのか。私達が知らない力なのか。ガルダさんはどう思います」
「おいおいトト。学がない俺に聞くなんて酷いやつだな。もうこれぐらいでいいだろ。後は進むぞ」
「そうですね。えーと扉を開くだけで転移するんだよね?危なく無かったの?」
「さっきは何も知らないまま転移して慌ててしまったが特に危険な物は無かったな」
「ロゼットたら黒いモヤモヤが出てた瞬間の顔がすごかったよだよ」
「すごい顔って言ったらエリーもだろ?トト達と繋がらないって言って焦っていたからお互い様だろ」
オジサン達が扉をぺたぺた触って要約調べるのが終わったようだ。家の子達が待ちくたびれていたところ終り扉の先に行けるとわかると目をキラキラと輝かせて 待っている。
だからどんだけ奥に行きたいんだよ。
「開けるぞ」
オジサンが扉を開くと当然の如く黒いモヤが俺達を覆うと先ほどと同じ場所にいた。
ミリとスフィアが我慢出来ずに俺とアルムを置いて左手前の扉を開けて入ってしまったが特に危険は無いだろう。
「本当に転移した」
「扉が幾つもあるな。どれから入るか迷うな」
さっきいなかったオジサン達二人は転移したことに驚きはしたが戸惑うことは無かった。
オジサン達とは別行動して問題ないだろう。
オジサン達から丸見えだから問題があれば注意されることだろうからミリとスフィアが何も言われていないから俺はアルムを連れミリ達が入った扉を入った。
「扉を開くとモヤモヤが出てきてまた知らない場所に転移したいは無さそうですね」
「それもあり得るのか。とりあえず一づつ開けるしかないな」
最初に左側の一番手前の扉を開けたが黒いモヤが出てこなかった。
出てきても特に危険は無かったから特に気にしてない。
「おにいちゃん。アルムとおにいちゃんがもうひとりいるよ」
アルムが指した壁には2メートルほどの鏡でついていた。
「これは大きな鏡だよ」
「かがみってなーに?」
アルムは鏡を知らないのか。確かアルムが育った村は小さくて田舎だったから偶然見たことが無かったかもしれない。そして幼いアルムが知らないのはしょうがないのかもしれないな。
「鏡は簡単に言うと自分の体を見る為に使う物だよ」
「タカシさんすごいですよ。早く来てください」
「おにいちゃん。ミリおねえちゃんがよんでるよ。いこう」
「わかった」
しかし、この部屋は大きな鏡に蛇口がある。まるで洗面所みたいだ。この先はもしかして風呂場だったりして。
俺の予想が的中した。
「すごいですよ。温かいお湯がいくらでも出てきますよ」
「ここを捻ると水とお湯が出るのね」
「わはー。雨みたいなのにあったかいよ」
俺の予想していた通りこの部屋は風呂場だった。
シャワーと湯船が張れる風呂。紛れもなくこれは風呂場だ。
ここで遊んだお陰で三人ともびしょびしょに濡れている。
「おい。ここは体を洗う場所で決して水遊びすr」
「おにいちゃん、エイ!」
アルムが持ったシャワーから勢い良く生ぬるいお湯が噴射して俺もずぶ濡れになってしまった。
「ウワァーずぶ濡れね」
「エヘヘ、楽しいです」
「みんなびしょびしょ」
「早く着替えたい。もう出るぞ」
荷物まで濡れてるな。タブレットは濡れていても大丈夫かな?電源が付かない分けないよね。後で見てみよう。
この部屋についてはわかったからずぶ濡れの三人を引き連れて着替えられる物はないか探すか。とりあえずオジサン達がいる廊下に戻った方がよさそうだ。
「あれ?黒いの出てこないよ」
「出てこないなら出てこないでいい。入るぞ。ん?そう言えばガキ共はどこへ行ったんだ?」
「そう言えばそうですね。あっ、空の魔剣師達は私達の反対側の扉を開けて入ってますよ」
扉腰にオジサン達の声が聞こえる。どうやら俺達が開けた扉と反対側の扉を開けたみたいだ。
今やっと俺達がいないことに気づいたのか。




