森
「よーし、決めたぞ。空の魔剣師に冒険者についてのノウハウを教えてやろう。ついでに修業も見てやるぞ」
このオジサン。今なんて言ったんだ?
俺に冒険者のノウハウを教える?ついでに修業も?
俺達の意見を聞かずに一人で決められても困るのだが。
「ガルダさん、空の魔剣師は私達と仕事の約束してるんだから勝手に決めないでよ」
「そうだよ。私達が先に目をつけたんだからあとにしてよね」
「ガルダさんの修業は1,2年ぐらいかかりますから私達のクエストの後にしてもらいたいですね」
彼女達は自分達が先に声をかけたのだから割り込まないでと不満ガルダに言う。
いつの間にか話が進んでるよ。あれ、オジサンの修行は決定事項なのかな?
俺の事情を考えて勝手に決めないで欲しい。
「タカシさん私達を置いて勝手に話が進んじゃってますよ。このままだとあのお姉さん達の仕事のお手伝いさせられた後、おじいさんの元で修業させられますよ」
「うげっ、なにそれめんどくさいじゃない。タカシこのまま逃げちゃわない?あの人達が話している間に」
「アルムもサンセー。にげよー」
「別に仕事程度付き合ってもいいと思うけどみんなが嫌がるなら逃げるか」
目指していたルルーンの街に着いたので今後の予定がなく、女の人達の仕事を手伝うことは全く構わない。研究所から大分離れたと思うからそんなに研究所から追手を心配する必要がないと思う。
研究所のことについて聞き回ってみたが殆どの人が大国の魔道具かなんかの研究所と聞き返すだけだったから不安が残るがこんなに移動すれば大丈夫なはず。
魔道具というのは魔法の道具とそのまんまの意味で魔法が使えない一般の人でも使える魔法の道具らしい。実際には見ていないが道具から水が出たり、火を噴いたりするものがあるらしい。
エネルギーである魔力が無くなったら注ぎ師という職業の人に格安で魔力を注いで貰うみたいだ。
それと魔道具の研究所は黒い噂が無くシンプルに魔道具の開発と発展をやっているだけらしく俺がいた研究所のような人体実験やっていないそうなのでホッとした。
ルルーンの街着いた俺達には何も目的がない。俺は研究所に見つかんないようにひっそりと暮らしていれば満足。
稼ぎ口はこの力を使って魔物を狩ればいいし、この街もいろいろあるようだから暮らして行くには問題ない。
「よし!それで決まりだな。俺も行くぞ」
「本当だよ。ガルダさんは見るだけだからね。ガルダさんの分の分け前はないからね」
「俺はそれで構わねぇ。お前達の実力を確認してぇからな」
「なんとかガルダさんを説得できましたね。空の魔剣師の教育は私達が見ることになりましたがそれはそれでいいでしょう」
「私達も遂に弟子ができたよ。待ってよ、空の魔剣師逃がさないよ」
俺達が逃げようと出入り口に向かおうと足進めると直ぐ様に腕を捕まれ逃亡計画が一瞬で潰れてしまった。
逃亡計画を企ている間にどうやら話はまとまったようだ。
「なんで逃げるのさ。私達が面倒う見てあげるって言うのに酷くない?」
「待ってくれエリー。いつの間に私達の弟子になったんだ?面倒を見るって今回の件じゃなくてそういうことなのか?そもそも私達にはその子達を養う金なんて物ないぞ」
「はぁ、またロゼットのちゃんと話を聞かないくせが出てるよ。だからエリーの嘘にいつも騙される癖に学習しないんだから」
三人からまとまった話を聞いてみたところ俺達の面倒云々は決まっておらず、これから行こうとしていた場所にオジサンもついて行くことになり、最終的に俺達も行くことになった。
なったのはいいが俺達に聞いて欲しかった。
俺達は彼女達に捕まって彼女達が準備した馬車に押し込められたが、彼女達の仕事の手伝いを嫌がっていたスフィアととことんオジサンを嫌っているアルムは最後まで抵抗した。
「そんなに嫌なら残っていいよ。あの人達は俺だけが必要みたいだし家で待ってなよ。ミリはどうする?」
「私はタカシさんに付いて行きますよ」
「おにいちゃんとミリおねえちゃんいちゃうの?おにいちゃんたちがいくならアルムがまんしていっしょにいくぅ!」
「しょうがないわね。私だけが残っても寂しいだけだから。タカシと一緒なら楽しそうだし」
アルムとスフィアは俺の一言で行くことになった。
俺的には付いてこようがなかろうが構わないのだがどちらかというと安全な街の中で待って欲しかった。
問題が起きないように家の中で大人しくね。
魔物の群の件である程度はいないから危険はないと思うけど魔物が現れたら即効で倒さないとな。
家というのは俺達が住み始めた廃墟と化した教会のことだ。数日ぐらいしか住んでないけど意外と住みには問題が余り少ない。
問題はトイレがないから外でするしかないけど部屋の中にツボがあったのは大きい。ツボに水を入れて飲み水にしたり、顔を洗ったりはできる。
いろいろ考えて生活のはけっこう楽しい。
外の世界は楽しいことで溢れていて飽きないな。
こうして俺達は彼女達に連れられ彼女達の目的地まで馬車に揺られるまま彼女達の目的地の森に向かうこととなった。
馬車は馬が2頭が引き、中の隅には最低限の準備が用意してあった。用意周到である。
進んでいく道には俺が倒した魔物の死骸が食い散らかしてある。他の魔物の仕業だろう。
「ったく、誰だよ。倒した魔物をそのままにしやがって。街で変な疫病が蔓延したらどうすんだよ。しかもよ死骸からは売れる部分だけを剥ぎ取るだけで残りはそのままだ」
ガルダは食い散らかれた魔物の死骸を見てブツブツと文句言っている。ただ文句言っているだけで自分で片付けないようだ。
「まだ新しいようだよ。たぶん盗賊かゴロツキが狩った魔物みたいだね。見るからに剥ぎ取り方が荒すぎるから間違いないと思うよ」
「魔物が死骸を食べてる痕跡があるんだし、残りも魔物が綺麗に食べてくれますよ」
走る馬車の上からよく見えるものだな。それよりも手綱を握って馬車を運転してるんだから余所見をしないで欲しい。
俺なんて散乱してるだけにしか見えないぞ。ミリだってそんなに詳しくわからないって言われた。ミリは幼いから聞くのも酷かもしれないけど女の人達はベテランだからこれも経験の差なのか。
「正面に魔物を発見!人が襲われてるぞ!」
街から大分離れた森の中で虫の魔物が二人の女の人が襲われてるのを目撃したロゼットは大声で叫んだ。
虫の魔物は昆虫図鑑に載っていそうなハサミのツノをした虫だ。それも人の大きさ位はありそうな巨体だ。そんな化け物相手に女の人達の手元には一本のナイフが握られており、虫の魔物追撃を必死に食い止めている。
このままじゃ虫の魔物にやられてしまう。
「アルムがいくよー!えい!」
「アルムちゃん待って」
とアルムが覚えたての火の魔法を放った。
何故かアルムが魔法を使うのをスフィアが止めようとした。
ボウン!
虫の魔物にアルムの魔法が当り、虫の魔物を包みこむように燃えてあがって一瞬で虫の魔物の丸焼きが完成した。
馬車に乗っていた大人達は状況が飲み込めずあんぐりしていておもしろい表情をしていた。
襲われていた女の人達もナイフを構えたまま固まっている。
そしてスフィアはやってしまったっていう顔をしている。小声で「人がいるところで魔法を使うなって言ったばかりなのに」と呟いていた。
スフィアはアルムの高威力の魔法を人に見せたくなかったようだ。
外の世界では魔法は溢れているものだから隠さなくてもいいのではないだろうか。外の世界がわからない俺はスフィアが懸念してる問題がわからない。
「えっ?今のなんなの?あの常識外れの魔法。こんな小さな子が使ったよね?」
「確かに今の魔法は凄まじさはみたことがないな」
「この子すごいよ!しかも無永昌だよ。凄すぎるよ」
どうやら彼女達はアルムの魔法に大絶賛して興奮しているようだ。
彼女達の反応を見る限りスフィアがアルムの魔法を隠したかったのが理解できる。
アルムの魔法の威力は異常だったと。
オジサンはアルムの魔法を見て今だに固まっており「ありてねぇ、これは夢だ」と念仏を唱えるように目の前の光景を否定していた。
「ベス、ゴハンだよ。いっていいよ」
今までどこに隠れていたベスが勢いよく馬車から飛び出して虫の丸焼きに粘りついた。
そういえばまだベスにご飯をあげていなかった。というかベスに食べさせる魔石は昨日、すべて売ってしまったのでない。
何も食べていなかったベスはアルムが倒した虫の魔物の丸焼きに飛び付くように粘りついたのだ。
「えっ?」
そしてベスは虫の魔物の体を覆うように包み込んで溶かし始めた。シュウウと溶ける音をたてながらみるみる虫の魔物がベスの中へ消えた。
「ベスって魔石以外も食べるの?」
「タカシさん知らなかったですか?スライムは何でも食べますよ。そんなこと小さい子でも知ってることですよ。ねっ、アルムちゃん」
「ベスはそうじやさんなの」
「スフィアも知っていたのか?」
「当然、スライムは掃除屋とも呼ばれ魔物の死骸から鉱石まで何でも吸収しちゃうのよ。こんなの常識よ。逆に知らないのが驚きよ」
そうなのか。ベスは何でも食べれるんだ。それなら俺達の食べ残しや余り物を与えても良さそうだ。
「タカシは知らないようだから説明するけどスライムは魔石に群がる習性があるから餌を与えても近くに魔石があればそっちにいちゃうのよ。それと毒物が含んだ物を与えちゃダメよ」
「どうして?」
「毒を吸収するとほとんどの場合は死んじゃうけどたまに生き残るスライムがいるのよ。生き残った場合スライムの体が吸収した毒そのものになっちゃって危険だからベスに毒を与えないようにしてね」
そうなのか。余り物を与える分には大丈夫だけど魔物の死骸を与えるのは考える必要があるようだ。
もし与えた魔物の死骸に毒が含んでいるかもしれない。なんでもかんでも与えるのはいけないなんて勉強になったな。
戻ってきたベスがアルムの胸へ飛び込む。
「ベスー。エへへ」
ベスを愛でるアルムは実に愛らしい。
助けた女の人達はルルーンの街の冒険者で薬草採取のクエスト受けてこの森に来たらしく、丁度お目当ての薬草を取ってルルーンの街に帰ろうとしたところ教われたそうだ。
彼女達の装備が軽装なのは先日、魔物が一掃されたと聞いて今なら魔物の数が例年より少ないから安全だと判断して最低限の防具と護身用のナイフ一本で森に来たという。
それを聞いたガルダに森に来るなら気を抜かずきちんとした装備で来るようにと凄い形相で怒られていた。
その後の二人はトボトボとルルーンの街へ帰っていった。
ここから森の入り口近いから魔物に襲われず無事に帰れることだろう。
「それより娘!今の魔法はなんだ!」
「それ私も気になるよ」
「おにいちゃん、たすけて」
ガルダとエリーに詰め寄られたアルムが俺の後ろに隠れた。ガルダに腕を引かれたことがトラウマになっているのか震えている。
「コラ。二人ともそんなに詰められたら怖がるに決まっているでしょ。離れなさい。ごめんなさいね。あなたの魔法が今までにないほどの規格外だったからみんなびっくりしちゃったのよ」
二人の頭に軽くチョップをしたトトはアルムに目線を合わしてアルムがこれ以上に怖がらないように謝って詰め寄った理由を説明した。
俺も泣き出しそうなアルムを安心させようとアルムの頭を撫でて俺の膝の上に座らせる。
アルムを膝の上に座らせるとミリとスフィアは羨ましそうに視線を向けている。アルムが落ち着いたら二人も膝の上に座らせよう。
「おにいちゃん」
「アルムちゃん大丈夫ですよ。オジサン達はアルムちゃんことをどうする気はないですから安心してください」
「ミリおねえちゃん、ありがとう」
俺達は森の更に奥へ進んだ。特に問題は無く馬車は進んでいく。
「ねぇ。私達どこまで行くの?タカシ知ってる?」
「そういえば目的地は森ってしか聞いてないな。ミリはどう?」
「私もわかりません」
スフィアに言われるまで何も思わなかった。自分が疑問に思わなければならないことを小さな子に言われるまで気付かないなんて俺はバカだ。
研究所から逃げ出して、今まで研究所の息がかかった人間に会わなかったので安心しすぎて疑問に思うことを疎かにしてしまった。
外の世界は知らないことが多すぎるから危険な物が多い。気を引き締めないとまたミリ達を危険な目に合わせてしまう。
「あれ?私達言ってなかったけ?私達が今向かっている先は森の中にある不老族の遺跡だよ」
「不老族の遺跡ですか?」
「そうそう。最近見つかったらしくて。その調査のクエストを私達受けたわけよ」
「発見されたその遺跡は誰も手をつけていない話なのでいろいろな財宝が残っていると期待しているんだ」
「不老族の武器を貴族様に献上すると10年間遊んで暮らせるほどの謝礼金が出るって話だよね」
「あぁ。やっと欲しかった剣が買えるんだ。楽しみで仕方ない」
ということで俺達はその遺跡に向かっているらしい。
そんな中予想外の反応をした二名がいた。
「本当に不老族の遺跡に向かっているのですね。本当に付いて良かったね」
「えぇ、そうね。私もうれしいわ。絵本でしか読んだ不老。その遺跡に入れるなんて今日は素敵な日だね」
「そうです。絵本で読んだあの憧れの不老族の遺跡に入れるなんて今日は最高の日に間違いないですよ」
二人は不老族の遺跡に向かっていると聞いてテンションマックスに。
「ふん。あんな飛び道具を造り上げた種族のどこがいいんだよ。冒険者なら自分の力と経験でピンチを乗り越える物だろうが」
ガルダは相変わらずブツブツと呟いている。不老族の武器を認めたくはないようだ。
「もうすぐ川から今日はそこで野宿だよ。みんな手伝ってね」
「それはあなたのことでしょ。今回もサボらせないから」
「それは横暴だよ。今日は乗者やっているのだから大目に見てよ」
軽口を言うエリーにトトが突っ込み、エリーは乗者をやっているから野宿の準備を免除するようにトトに交渉している。
「川に着いたら空の魔剣師達は焚き火ように落ち枝を集めてくれ。できれば湿っていない物を頼む」
「わかった」
ということで俺達は彼女達の指示に従って森の中で大人しく枝を集めた。
「はい、タカシさん」
「はい、おにいちゃん」
「はい、タカシ。ってもう枝集め終わっていいんじゃない?もう集めすぎだと思うけど」
「もうおわりなの。たのしいからもっとあつめようよスフィアおねえちゃん」
「アルムちゃんの言うとおりです。これは以外と楽しいですよ。タカシさんもそう思いませんか?」
ミリ達に枝を貰い、俺は自ら集めた枝含めてミリ達が集めた枝を念力で浮かべている。
集め始めてかや数分位経過したがもう必要ない程集まった枝が俺達の頭上に浮かんでいる。
スフィアの言うとおり俺もこんなに必要ないと思うけどミリとアルムが楽しそうに集めている姿を見てると止められない。
「ミリ達が楽しいなら俺も楽しいよ」
「タカシまで。私はもう無理。あの子達が飽きるまで少し休むわ。タカシも休まない」
「そうさせてもらうか」
念力で枝を浮かべているから重さは感じないけど精神的に疲れるがミリとアルムの姿を見てるとなんだか癒されてもう少し頑張れる気がする。
スフィアは近くにあった切り株に腰を下ろして一休みしたのを見て俺も一緒に腰を下ろした。
ミリとアルムは俺の目の届く範囲で枝を集めている。




