ダイヤの冒険者
「こちらが冒険者の証になります。掲示板にある依頼状と冒険者の証をギルドに提示すれば正式にクエストを受けられます」
受付の人から渡された冒険者の証とやらは薄い木の板に奇妙な模様が印刷されていた。まるでカードのような形状だった。
その奇妙な模様は機械にスキャンする為のものだろう。もしかしたら冒険者の個人情報がどっさり入っていて、隠し撮りされた顔写真や名前が機械に通した時、モニターでポップアップされて本人かどうか確認機能が入っているかもしれない。そうしないとギルドも信頼してクエストを紹介できない。
もしも、殺人鬼がクエストを受けて、その依頼者を凄惨に殺してしまいましたなんて事件が起きていたら、ギルドの信頼ががた落ちで誰もギルドに仕事の依頼を出したがらないだろう。
こういうシステムなら指名手配されている人物が冒険者だったらり、冒険者登録に来たり、したらすぐに担当の機関に連絡が行くはずだ。
そうだった場合、受付の人の行動に怪しさが出る様子は今のところないから研究所とは関係無いと言える。この考えも俺の考え過ぎなのかもしれないや。
案外、シンプルなシステムで犯罪歴や名前に二つ名、クエストの回数と評価、所属のパーティ、がただの記録で、ギルドの間のデータベースに保存されているだけでそんなに気にしないくてもいいかも。
ギルドの偉い人はそのデータベースを覗けるかもしれないが。
「正式に、と言うのは?」
「正式というのはギルドを通した依頼状は安心安全で信頼できますが依頼主と個人で承認したクエストはギルドでは保証しかねません。個人でのクエストでの揉め事は無関心とさせていただきますのでそこは御理解してください。ただし、ギルドに火の粉が降り掛かる話は別です。その場合は相応の対応します」
ギルドを通していない依頼は手を出さず無関心でいくのか。その依頼で問題起きてギルド側に火の粉が降った場合は罰金とかのペナルティーが被るかもしれないな。
「冒険者の証を紛失されてしまいましたら悪用される前に申告をしてください。今回は無料ですが紛失、破損の場合は金貨2枚で再発行しますので気をつけてくださいね」
無くしても新しく作ってもらえるようだ。有料だけど。
「何か気になる点や質問はありませんか?ないなら説明はこれにて終了とさせていただきます」
「終わりで大丈夫です」
「すみませんが1つだけアドバイスです。クエストに受けるなら前もって準備されるといいですよ。クエストでは何が起こるかわかりませんから念には念を傷薬のポーションなり、非常食なり、必要な物を準備してクエストを受けてください。ポーション、非常食等は商会やギルド内の商店で買えますので、まずそこで荷物の整理してみてはどうでしょう?」
「はい。そうさせてもらいます」
「タカシさん!冒険者の証を見せてください」
受付の人の忠告を適当に聞き流して、ミリができたてホヤホヤの冒険者の証を見たがっているのでミリに渡した。
「うわー。これが冒険者の証なんですね。これでタカシさんも冒険者の一員になれたのですよ。早く私も冒険者登録ができる年齢にならないですかね。あ~あ、私も冒険者になりたいですぅ!」
変なスイッチが入ったミリは冒険者の証をあたかも伝説の秘宝の如く掲げ眺めている。
それを見た受付の人も引き気味の様子だ。
「ミリおねえちゃんミリおねえちゃん、アルムにもみせて」
「アルムちゃん、ちょっと待ってください。まだ私じっくり見ていないのですから後少しだけお願いします」
「ひとりじめ、ずるいー。ミリおねえちゃんばっかりみてずるいよ」
これはじっくり見るものではなく、誰かの宝物ではない。紛失、または破損したらたったの金貨2枚で再発行してもらえる代物だ。俺にとってこれは身分を証明する物に過ぎないので作ったからと言ってテンションが上がりはしない。
ミリが憧れている気持ちはわからなくもないが眼を光らせ冒険者の証に穴があくほど眺めたら誰でも引く。
そんなミリの姿を見てアルムも興味を出し始めてしまったが、アルムの場合は冒険者の証自体に興味が沸いたのではなく、ミリがこんなになる物に興味が出てきたことだから冒険者の証を数秒だけ見せたらすぐに興味を無くすのが見える。
「はい、アルムちゃん」
「そもそも、このうすいのってなにー?」
「アルムちゃん、聞いていなかったのね。そこからの説明をしなきゃいけないのね」
「それよりもアルムには冒険者になることを説明する前に簡単に冒険者に説明した方がよかったんじゃないのか?」
「そこは大丈夫ですよ。昨夜、アルムちゃんに冒険者についてある程度説明しましたから」
それはただ単に一方的に語っただけじゃ。ある程度の部分はディープなところまで語ったに違いない。
アルムに冒険者について熱く語るミリが眼に浮かぶ。
「え~とですね。簡単に言いますとこれがあることで冒険者になったって言う証なんですよ」
「ぼうけんしゃになったらなにができるんだっけ?」
可愛く首を傾げるアルム。
これは余り理解していない感じだ。
「冒険者になったらできることですか?そこを聞かれてしまうと困りますね。アルムちゃんにもわかるように説明しますと...」
「例を挙げるなら護衛依頼が受けられることと盗賊退治で賞金の他に褒賞金がギルドから貰えるらしいよ」
「さすがスフィアちゃんです!」
「今、言ったことはあそこの掲示板に書いてあったわよ。冒険者登録のメリットってね」
スフィアが指した掲示板を呼んで見ると冒険者について詳しい説明が書いてある。だから受付の人の説明が簡易的だったのはこれを読んでくれと言うことだろう。
前もって(詳しい説明は掲示板に書いてありますよ)って言ってくれればいいのにあの受付の人知っていると思って省いたな。
「んっ?子供が冒険者登録にきたのか。ギルドもこんな子供に冒険者登録させるとは随分落ちぶれたものだな...」
厚手のローブを深く被った大きな人物が独り言ぶつぶつと呟いているが俺達に絡む様子が無いので無視しておこう。
「アルムのこと?」
「ちょっ、アルムちゃん知らない人に話しかけちゃダメですよ。昨日、みたいな大人の人がいるみたいだから」
「いきなり絡んどいてあれは酷いよね。それでタカシに殴りかかってきて」
「でもタカシさんはその人達を倒しましたよね」
「おにいちゃんかっこよかった!!」
「そうね。あの時のタカシはすごくかっこよかった。不老族の武器を魔法で止めて」
もうそれ以上誉めないでほしい。人が見ているじゃないか。
スフィアの目には俺の能力が魔法に見えるのか。何も知らなければ魔法に見えるかもしれないが魔法の方が遥かにすごいと思う。だって今まで魔法を使っていないアルムが大迫力の魔法を使えるなんてすごい。アルムが仮に天才なのは置いといても小さな女の子が何の訓練もしないで使える力は素直に素晴しさしか見えない。
創造力と最低の適性と魔力だけが必要に比べたら、俺の能力は拷問に近い実験的なテストと多くの被験者の命で使っていると言える。
この考えがあるから魔法と言う力は俺にとって素晴しく純粋な力と思えてしまう。だからって多くの命を奪ってしまった念力を邪悪な力と言って使うのを止めてしまったら今まで奪っていった命達に申し訳ない。それで俺が力を使うのは最低の償いの気持ちで誰かを守り、救う為に使いたいと思っている。
「おい、そこの子供。何の理由で冒険者登録できたかは知らぬがこのままだと他の冒険者の囮として命を落とすぞ。一人前にするからこい!」
「いや、はなして。アルムいきたくないよ。たすけておにいちゃん」
先程の大きな人物がアルムの手をつかんでどこかへつれて行こうとしている。最初はアルムの両親と思ったが雰囲気が全然にていないので違う。
大勢の前で誘拐とは大胆な行動だ。
ッダン!
「だっは!」
大きな人物をアルムから剥がして天井に叩き付けてそのまま張り付けにする。
昨日の帰り際に少し考えてみて武器を抜かれると関係無い人達に迷惑がかかったり、もしかしたらミリ達が怪我をするかもしれないので危険が無いように念を入れて相手が行動できないようにしておいた。
張り付けた人物は抜け出そうともがく素振りを見せるが動かないことがわかると諦めて大人しく天井に貼り付く。
「フムッ。身動き1つできぬ。これは何かの魔法か何かなのか?しかし、誰も呪文を唱えている者はいなかったな。これが無詠唱だとしたら術者は有名な魔法使いに違いない」
一人でぶつぶつと独り言喋って何やら考え込んでいるようだ。念力で張り付けている以上何もできないからひとまず安心だ。
「あれって、この国唯一のダイヤの冒険者だよな?」
「お前も気付いたのか。最高クラスの冒険者相手に流石に期待のルーキーでもやっていいこととダメなことがあるよな」
「てか、話ししてる前に誰か空の魔剣師に教えてやれよ」
「そう言うならお前が教えてやれって。あのダイヤの冒険者は噂ではすごい変人で怒らすと何をやらかすか予想できないって話しだし。俺は嫌だぞ」
回りの冒険者が今の現況を見てコソコソ話している。
雲行きが怪しくなり始め、天井に貼り付いているこの人物って何かしらの偉い人なのではないだろうかと言う考えが俺の頭によぎった。
「おにいちゃんごわかったよー。ぞのひといきなりアルムのうでをつかんでどこかへつれていこうとするの」
アルムが泣きながら抱きついてどんなに怖かった説明をしてくれた。
「タカシさん、その人どうしますか。回りのみなさんがコソコソと話ししているのを聞こえましたがどうやらその人は冒険者の中で有名な方のようですよ」
「どうするもアルムを連れて行こうとしたことは事実だけど有名だからってこのまま離すのは危ないと思う」
「相手が悪気がなくてもこちらから天井に叩き付けたからその仕返しが怖いってわけね」
「ここまでしておいて謝って許してくれるといいが、とりあえず離して話し合ってみようかな?」
「おにいちゃん、そのひとはなしちゃダメー!」
天井から下ろそうとするとアルムが俺の手を力いっぱいにつかんで大きな人物をそのまま天井に貼り付いたままでとお願いされた。大きな人物はアルムに随分嫌われたようだ。
「そこの少年。この力はお前のか?」
図太い声が耳に響いた。
大きな人物の問に頷いた。
「フムッ。そうか。その若さで無詠唱で魔法を使えるとは驚いたぞ。今日は冒険者登録に来たのか?」
俺の力は何も知らなければ魔法と思われるので念力は魔法と言うことにして、大きな人物は何を思っているのか今いちわからない。それにアルムを連れて行こうとする動機も不明だ。
いや、確証がないけどアルムが認識が無いだけでアルムの両親の友人かもしれない。
「そうですね。目的として今日みんなで冒険者になる為に来ましたが、俺しか冒険者になれませんでした」
「そうか。冒険者登録の年齢制限があるからな。だがお前は見るからに成人しているようには見えないが」
「それは...」
そんな中、姦しい乱入者が現れた。
「あっ!いたいた。おーい、空の魔剣士!いつになっても来ないからバックレられたと思ったよ。ってガルダさんだ!」
「えっ?本当にガルダさんだ。国境に近いこの街にいるなんて珍しい」
「お久しぶりです、ガルダさん。お元気でしたか?」
「ロゼット達か。久しいな。お前達も元気だったようで何よりだ」
武器屋にいた女の人達と大きな人物は知合いのようだ。
大きな人物はガルダと言う名前らしい。格好いい名前だ。
「ガルダさんも魔物の群れの噂を聞いて来たんだね」
「そうだな。街の近くにいてこの街に魔物の群れが向かっている話を聞いて急いで駆けつけて来たんだが着いた頃には魔物の群れはもう倒されていてな、損したぞ」
「それで少年に絡んでいるんだね」
「おい、ロゼット。私達がガルダさんと親しいからって言葉に気をつけろ」
「そうだよ。私達に冒険者のいろは教えてくれた人だよ。もっと敬意を示さないと」
「人をルーキーイビリみたいに言うのは止めて貰いたい。俺は坊主と話ししているだけだ。なぁ」
俺に話しを振られても困る。
天井に貼り付いたままで窮屈ではないだろうか?
「ハハハッ、その坊主に張り付けられているおっさんが言うと説得力がないよ」
「また、修行してやるからついてこいとか言って無理矢理連れて行こうとしたんでしょ」
「トトの言う通り。ガルダさんの悪い癖で無理矢理にギルドの期待の若者の面倒を見ようとするからな。それで少年に返り討ちにあったと」
「ははは。私達も新人だった時もギルドでクエストを選んでいたらいきなり森の中に三人まとめて連れてこられたもんね。あれにはビックリしたよ」
女の人達はガルダについて詳しく喋ってくれた。
アルムを無理矢理連れて行こうとした動機は修行をさせる為だと言う。この女の人達も被害者らしい。
そしてガルダが天井に貼り付いていることが見事にスルーされて思い出話しが始まってしまった。本人も貼り付いていることを忘れて女達の思い出話しを聞いて懐かしんで眼を細めている。
大きな人が天井に貼り付いている奇景を見るに耐えられなかった俺はガルダを下ろした。それと念力を維持するのも意外と神経使うからそれなりに疲れてきた理由も含まれている。
「おっ!下ろしてくれるのか?ワリィな坊主」
「いえ気にせずぞうぞ」
床へ着地したガルダは割りと元気そうで肩の節を鳴らしている。まるで何も起きていない態度だ。
天井へ強めに叩きつけたはずだが、彼にとってはマッサージでも受けたのと衝撃が変わらないようでピンピンしてる。
「それでさぁ、ガルダさんのお陰でこうして生きていけるからいいんだけどね」
「修行は辛かったけど意外と楽しかったよね」
「確かにな。あの時のガルダさんとの日々は格別なものだった。私達も少しは有名になってもまだまだなところがあるが冒険者として頑張れるのはガルダさんのお陰だな」
「小娘共が言うようになったじゃあないか。お前達の噂や活躍は俺の耳に届いているぞ」
「ありがとう。それでガルダさんは見込みのある空の魔剣士の面倒を見るの?」
「空の魔剣士?誰だそれは?別の国から有名な冒険者でもやって来たのか?」
「えー、知らないの?空の魔剣士って言うのはね。この少年の二つ名だよ」
トトと呼ばれた女の人が俺を指した。
「ガルダさん。私達も噂でしか聞かなかったけどそこの少年は今回発生した魔物の群れを一人で蹂躙した張本人ですよ。噂を聞いてないですか?」
「はぁ?どういった理由で冒険者登録ができたのか気になっていたが魔物の群れを一人でだとぅ!こんな子供が」
ガルダが狂った眼で俺を睨む。
「やっぱり信じられないよね。私達も最初は信じてなかったよでも討伐に向かった冒険者全員が口を揃えて言うの。空を飛ぶ子供が宙に浮く魔剣を操って魔物を倒したって」
「それと昨日、ギルド内で不老族の武器が使われたそうです」
「フムッ。不老族の武器?貴族と王族達が独占している武器か。この街だと貴族がギルドに来たのか?」
「ううん。それを持っていたのはルーキーイビリで有名な冒険者で、不老族の武器を少年に向けて攻撃したんだ」
「騎士の鎧を貫くと言う武器をこんな小さな子供に向けるどころか攻撃したのか?」
「話ではそうみたいだけど」
「私達も不老族の武器は噂でしか聞いたことがないけど他の冒険者の話だと大量の火薬を思い切り叩いたような爆発音そうだったらしいよ。すごいのはここからで不老族の武器の穴から出る金属の弾を魔法で止めたらしいの」
「魔法ならあり得なくもないがそれは本当のことなのか?」
「そうみたいだよ。私達が昨日いた冒険者に聞いたもん」
「私が受付孃も認めてるから本当みたいでその冒険者は牢屋行きになったみたい」
「ふーんそうか。フムッ」
ガルダは女の人達の話を聞いて考え込んだ。
「タカシさん、これからどうしましょうか?何だか面倒なことになりましたね」
「私達も特にやることが決まって無いからあの女の人達の仕事を手伝うのもいいと思うわ。決めるのはタカシに任せるわ」
「このままだとあのオジサンに誘拐、ごほん。修行に連れて行かれそうだな。別に食べる物に困っているわけではないが面倒見てもらえるなら」
「アルム、オジサンキライ」
先程の一件でアルムは相当ガルダを嫌ったみたいで俺の後ろに隠れている。
「よーし、決めたぞ」




