ギルド
8本で銅貨8枚は高いのか安いのかまったくわからないが、味は美味しく感じた。
アルムとスフィアはあまり美味しそうでは無かったが例の木の実よりはましだったららしくて多少の腹の足しになるので何も言わずに食べていた。
ミリは「美味しいです」と言いながらペロッと食べた。
これで少しはお腹が膨れたからもう少し我慢してくれるだろう。
「タカシさん、これから向かうギルドの場所ってわかるんですか?」
そういえばギルドの場所なんてどこにあるのか知らない。何回か空から街全体を見下ろしたがどの建物がギルドなのかわからないので屋台の人に聞いてみた。
「すみません。ギルドの場所ってどこですか?」
「ん?お前らこの街の孤児じゃねーのか?それにしても銀貨一枚の大金よく出せたな。坊主。ギルドはこの通りを真っ直ぐ行くと公園がある。公園の入口から右側に剣と楯のマークが見えてくる。そこがギルドだ」
「ありがとう。屋台のおじさん。また買いに来ますよ」
「あぁ、またこいよ」
屋台の人に礼を言って別れる。
親切に分かりやすくギルドの場所を教えてもらった。屋台の人はいい人だったのでまたここで串を買いに来てもいいと思う。
はい、そこ。「またかうの?あんまりおいしくないからいやだよ」とか言わない。屋台の人に聞こえちゃうでしょ。
それに失礼だよ。アルム。
「そこそこ良かったですね。値段も1本銅貨1枚なんてちょっと安いですし、味も良かったです。使ったお肉はたぶんストレートボアだと思います。前に両親と食べた時と歯ごたえが同じでした」
アルムに比べ、ミリはあの屋台がとても気に入ったらしくずいぶんと誉めていた。
値段の価値観はまだわからないけど銀貨一枚に対して銅貨10枚と理解したが高い安い判断はミリに任せた方が良さそうだ。
使っている食材はストレートボアの肉か。昨夜のストレートボアかもな。
昨夜、大人達に倒されたストレートボアを思い浮かべる。
あの時は10人以上の大人達に何も出来ずに死んでいったストレートボアは可愛そうと思ったが大人達はこうして街へ持ち帰り食材として利用する。これが自然の摂理というものなのか。
それに比べ、倒した魔物から魔石だけを抜き取るだけで残りは捨てた俺は最低だ。命を粗末にして自然の摂理から、いやこう考えるのはやめよう。
嫌な気持ちになるだけで何も変わらない。
あの大人達が魔石だけを抜き取った魔物の死骸を回収していることを願おう。
それと考え方を変えて、捨てた魔物の死骸は微生物が分解して植物の栄養になるんだし、俺は決して命を無駄になんかしていない。
屋台の人に従い、通りを真っ直ぐに進むと柵に囲まれた彩り緑な植物と小さな池がある広場に行き着いた。
「キレーなおはなだ」
「何十種類の花が咲いているわね。それも全部珍しい花だわ」
「ここが屋台のおじさん言っていた公園でしょうか?しかし、公園にしてみれば花と池しかないですね」
「確かにな、俺がイメージして公園よりも少しショボい。あっ、あそこに看板あるぞ」
公園(?)の手前に看板があり、看板には『ここの花壇は貴族様が大切にしていますのでこの柵を越えないでください』と書かれていた。
要するにこのショボい公園は貴族様が管理していて見る分にはいいが花を踏んで荒らすと捕まるのだろう。
簡単に説明すると貴族様が管理している鑑賞用の公園だ。だから回りには散歩していると思われるご老人しかいないのか。
それにしても花を眺めるのもなかなかいいものだ。なんだか心がふんわりするというか癒されるというか、上手く説明できないが軽くなった気がする。
ミリ達も華々し花達を見てうっとりしていた。
「心が癒されますね」
「そうだな。疲れが消えていくとは言えないが重たい感じが消えていくな」
「あれ?この感覚前にも、あ!」
「スフィアおねえちゃんどうしたの?」
「どうした?何か気づいたら言っていいぞ」
この感覚に疑問を抱いていたスフィアが何か気づいたらしく声をあげた。
「あそこにある花なんだけど、どこかでみたことがあるなーって思ってたんだ」
とスフィアが花壇の中で一番綺麗な花を指した。
「私もあの花どこかでみたことがあります」
「あの花ってセフレク草って言う催眠作用がある薬草なんだ。っであの花は強い香りを吸いすぎると幻覚を見たりするよ」
「危ない植物じゃん」
「なんでそんな植物がこんなところにあるんですか?!」
「見た目が美しいからじゃないかな。私ね。昔あの花を採ってきておもいきり香りを吸い込んじゃったの」
「それで幻覚が見えた訳か」
「うん、そうなんだ」
「ベス、どうしたの?タカシおにいちゃん、ベスのようすがおかしいの」
アルムに抱かれていたベスがグターと具合が悪そうにアルムの腕の中で半液体化してた。
「思い出しました。昔図鑑とかで見たことがありましてセフレク草、別名惑わし草って呼ばれている見たいです。スフィアちゃんの言う通り薬草なんですけどおもいきり吸い込むと幻覚を見たり、嘔吐と頭痛を起こします。そしてスライムにとってすごく猛毒らしいです」
とミリが説明してくれた。ただスライムにとって猛毒らしいまでしか知らないらしくどのような作用があるのかわからないみたいだ。
「おにいちゃんベスがドロドロしてきたよ。ベスはしんじゃうの?」
花の香りに当てられて半液体化してるベスを溢さないように頑張っているアルムが悲しい顔で見つめてくる。
「死なないさ。ただここから離れよう」
「ほんとにしなない?」
「あぁ、本当さ」
「わかったよ」
「公園から出よう」
「そうですね。いくら薬草だと言っても私達もこのまま吸いすぎると具合が悪くなりそうですし、スライムにとっても猛毒ですから早く」
「あそこがギルドか。どうやって行くか」
屋台の人が言った通り公園の右側から剣と楯のマーク入った大きな看板が見えた。
公園から行った方が早そうだが、ベスがこんな状態だから公園からのルートはダメだ。一端、来た道に戻りって別のルートから行こう。
それにしてもなんで吸いすぎると幻覚が見える危ない薬草を街中の花壇に植えているのだろう。公園を管理している貴族様は何を考えているのか疑問に思う。
確かに見た目は凄く綺麗な花だが説明を聞いてはとても危ない植物だ。いかにも綺麗な花ほど毒があるのだからこんな街の中心部に植えなくてもいいんじゃないかと思う。
鑑賞用でも安全性を考えて鉢植えごとガラスの中に入れて匂いを外に出さないようにすればいいと思う。ガラスに入れたことによりちょっとだけオシャレに見えるはずだし、当然花から出てる匂いもガラスの外にでないから安心だ。
花壇から引き返した俺達は別のルートからギルドに向かっている。
俺がギルドの位置を暗記して裏道を通ったり、一軒家の庭を通ったりしてようやく着いた。
トラブルというトラブルはミリが物陰にいた小動物に驚いて尻餅をつかないように支えたり、ドロドロに半液体化したベスを抱っこしてるアルムが段差に躓いて転んじゃって泣きじゃくるアルムを抱っこしてあやしたり、スフィアはスフィアで「あっちの方から美味しそうな臭いがする」と指差すもんだからみんなスフィアが指した方へ行こうとするものだから誘導するのに頑張った。
頑張ったが、みんなにつられてスフィアが指した方へ向かいそうになったのは俺一人の秘密である。
ギルドに向かっているあいだ数粒小さな魔石をローブ(大量の魔石を包んでいる方)から取り出してベスに与えている。
セフレク草から離れて数分ほど経ったがベスの状態は半液体のドロドロから少しずつ形になって回復している。
「少しずつ魔石を与えていれば今まで通りに戻るさ。だからそんな顔しないでよ」
心配そうにベスを抱っこしてるアルムを励ましながら頭を撫でる。
「そうですよ。アルムちゃん、きっとスラ、ベスは元気になりますよ」
魔物嫌いなミリは多少ベスに馴れたらしく近くにいるだけなら普通でいられるみたいたが、触るのはまだダメみたいだ。
でもできるだけアルムから距離をとっているところを見るとミリの魔物嫌いの克服はまだまだ道は長いようだ。
こうして見るとミリがアルムを避けているようでアルムが可愛そうに見える。スフィアはベスに対してそうでもなく普通にプニプニとつついている。
そんなにつついて、それ面白いのか?
この数分の間、小さなトラブルがいろいろあったが以外とあっさり着いたギルドは石造りの大きな建物(アシュティアの屋敷と比べると可愛そうだけど)だった。
さっそく魔石を売りに入ってみる。
西部時代みたいな扉を潜ると中はテーブルが複数置いており小汚ないバーのようなところで顔が赤い何人かが木製のジョッキを煽っている。
そのうちの数人かは俺達が入ってくると同時に品定するように観察している。
「おい、ミリここが本当にギルドなのか?」
「はい、そうです。私が知っているギルドのマークでしたし、どこのギルドもこのような感じでご飯も食べられます」
「あのひとたちがのんでいるのみものおいしそー」
「待ってアルム、あの人たちが飲んでいるのはアルムが飲むにはまだ早いから、あとアルムが十歳年を取ったら飲みに行こうよ」
「ムウ、わかった。アルムまつ。ぜったいタカシおにいちゃんといっしょにあののみもののむ」
「とりあえずカウンターの人に聞いてみたらいいんじゃない?」
酒場みたいなギルド(?)の入口で騒いでいるとお店の人と他の客に迷惑なのでスフィアの言う通り暇そうなお店の人に聞くことにした。
「おいおい、いつからギルドがクソガキどものたまり場になりやがった?俺様のお通りだ。邪魔だ、どけガキども」
「キァッ!」
入ってきた男にスフィアが蹴られた。
倒れたスフィアを立させて俺が男を睨むと。
「なんだよ。文句あんのか?!ガキがギルドに入るんじゃねぇ!」
男が俺を殴りかかろうとしたがその拳は俺に届かず顔面から2センチのところで静止している。
「クソォ、手が動かねぇ!おい、クソガキ何をしやがったぁ?」
「何っておじさんに殴られそうになったからおじさんの拳を止めただけだよ。それ以外は何もしてないよ」
「じゃあ、放せよ」
「ハイよ」
男の手を放すと懐からナイフを取り出して襲いかかってくる。
「オラァ!死ねや」
「おじさん、ワンパターンもいいけど少しは学習した方がいいんじゃない?」
「ウッセー!うぉ?動かねぇぞ!」
「うぉ?動かねぇぞ!って言っている場合じゃないでしょ?さっきと一緒でただナイフを持っただけじゃん」
「ウッセー!クソォ!放せよ」
「ハイよ」
学習しない男の手を放すと俺から少し距離をとって懐から銃を取り出して銃口を向ける。
少しは学習して距離をとってようだがナイフから銃に変わっただけだ。先程とパターンが何一つ変わらないのは俺をなめているのか、それともおじさんがすごくバカなのか。
「手を放したお前の運のつきだ。死ねぇーーーー!」
ギルド内にバァンと銃声が広がる。ただそれだけのこと。
当たり前のように銃弾は俺に届かず床に落ちている。男は驚きすぎて固まっている。
「嘘だろ!これは遺跡から出た本物だぞ。グランドベアーの腕を簡単に吹き飛ばす武器なのによぉ。こんなただのクソガキがどうこうできる白物じゃねぇーぞ」
「えっ、おじさん何かしたの?」
「惚けんな、このクソガキが!」
バンバンと全弾すべて撃ち、弾丸が無くなっても引き金をカチカチとならして「クソクソ」と呟いていた。
「おじさん、これで終わりでいいかな?」
「この化け物が!」
男は弾丸が無くなった銃を投げようとしたが俺が指をパチンとならすと男の腕が普通ではありえない方向に曲がる。
「俺様の腕がぁー!」
うるさく泣き叫ぶ男をギルド(?)の外に捨てる。
「スフィア、大丈夫か?」
「えっ?えぇ、大丈夫よ。ありがとう。タカシ、あなたって見た目と違って強いのね」
「そうでもないさ。俺より強い奴はいっぱいいるし、俺みたいな奴だって星の数ぐらいいるだろう?」
「スフィアちゃん、大丈夫ですか?」
「スフィアおねえちゃんけがない?どこもいたくない?」
ミリとアルムが心配そうにスフィアに声をかける。
スフィアに怪我がないのはわかっている。スフィアが蹴られそうになった時、念力で防いだ。男の蹴りに驚いたスフィアが倒れかかったときも念力をクッションにして支えたりして怪我の心配は絶対にない。
心配がないのだが、この件以降スフィアが俺を見る目に熱を感じるようになったのは気のせいであってほしいと願う。
しかし、あの男のお陰ですごく目立ってしまった。
出直そうとしたと思った瞬間、ギルド内に溢れんばかりの拍手と声援が鼓膜を震わせた。
「おい、ボウズ。お前スゲーな。今のどうやったんだ?」
「あれぇ、不老族の古代の武器だろぉ?オイラ、貴族様があれを使って魔物を殺すところを見たことがあるぞぉ。魔物が弾けたぞぉ」
「ボウズ。お前、俺らのパーティーに入らないか。スンゲー歓迎するぜ?」
俺の予想外のことに好印象だった。
酒臭い飲んだくれの大人たちにいろいろ質問攻めにあっているうちに誰が通報したかは知らないが先程絡んできた男は騎士の人につれていかれていった。
やはり、銃は不老族の武器のようだ。
すごい声援の中、当初の目的の魔石を売りにカウンターの人に話しかける。
「ここで魔物の素材を買い取ってくれると聞いてきたんですができますか?」
「はい、可能ですが、ちなみに何の魔物の素材ですか?」
「買い取ってもらいたいのが魔石なんです」
どんと音をたてるようにカウンターのテーブルに大量の魔石を置いた。中から数個程こぼれてギルドの床に落ちて欠片が飛び散る。
「へぇっ?」
カウンターの女の人は山のようにある魔石を見て若干引いていた。周りで盛り上がっていた大人達も魔石の量にあんぐりしていた。
「なんだよ。あの魔石の量はどれだけ魔物を狩ればあの数になるんだよ」
「まさか、あのボウズは空の魔剣士なのか」
「空の魔剣士って、夜空を自由に飛び魔物の群れを一人で蹂躙したって言うちびっ子だよな。空の魔剣士はあの子供達のどれかかよ」
「えっ?そうなのか?俺は領主様の娘様を助けたのが空の魔剣士って聞いたぜ」
「バカヤロウ。どっちもだ。簡単な話、空の魔剣士はこの街の英雄なんだよ」
一晩だけ魔物の群れを一掃だけで、次の日には街で変な噂が流れていた。
空の魔剣士ってなんなの中二病みたいで不名誉過ぎて嫌なんですけどそもそも昨夜暴れ過ぎた俺が悪いのか。よくわからん。
たぶん領主様の娘様ってアシュティアのことだよな。確かに助けたけどアシュティアは父親に何を言ったんだか気になるところだが不名誉な二つ名をつけられてしまった。
「ちょっとお待ちください」
カウンターの人はギルドの奥へ下がり、暇していた同僚達に声をかけ始めた。
そしてそれぞれメガネと虫メガネを持って戻ってきた。
一人でこの量の魔石を見るのはきついと判断したのだろう。暇していた同僚とともに数人かがりで鑑定していくみたいだ。
「お待たせしました。では鑑定の方をしていきます」
カウンターの人は奥にいた数人を引き連れて魔石を見始めた。
それから一時間程経過した。
「お待たせしました。買い取り金額は金貨52枚、銀貨6枚になります」
ドッサリと俺達の前に硬貨が入った袋が置かれる。金額を言うときカウンターの人の声が聞き取り難かったのは他の人に聞かれるのを防ぐためなんだろう。
これで俺のポケットマネーが金貨72枚、銀貨13枚、銅貨2枚になり自分でも金持ちなのかそうではないのかよくわからない。
このお金を使っておいしい物でもみんなで食べに行くかな。
それと服も買わなくちゃな。
俺達の中で一番ましな服を着ているスフィアでさえようやく服だなと認識するぐらいだ。
ミリとアルムはスフィアとそんなに変わらないが枝に引っかけて破れたみたいな切れ目がところどころ見える。
みすぼらしい俺達にはオニューの服が必要なのだ。
俺達はプルプル震えるカウンターの人としつこく俺をパーティーに勧誘する大人達に見送られてギルドから出た。
買い取りが終わる前と後で大人達の勧誘の温度差が気になる。
何を考えて勧誘していたのかわからんがあそこまで餌に群がるように勧誘されるとうざったい。あの必死さが何とも言えぬ怖さがあり、アルムがすごく怖がっていた。
あまりにもぐいぐいくるから見せしめに一人天井に叩き上げるように張り付けたら勧誘が止んだ。
張り付けた大人の人に怪我がなかったのは言うまでもない。ギルドに出るまで「イテェーイテェー」と言っていたが仲間達と笑いあっていたし、問題なく歩いていたので大丈夫だろう。
ギルドから出て真っ先にギルドのお隣の定食屋に入り肉定食を食べた。
米の代わりに見たことがない穀物を使っていたが枝豆みたいな味で美味しかった。
みんな俺と同じ物を頼んでいた。ミリとスフィアは完食したが、アルムは野菜を残していた。
アルムが残した野菜を食べて店を出た。
その後、服を買って廃虚に戻った。
今日使った金額は金貨1枚程度だったのでびっくりした。
手持ちの金額を見て「俺って今金持ちなんじゃね?」と思いながら一日が終わった。




