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異能者は異世界に来て何をする  作者: 七刀 しろ
第六章 過去へのリスタート
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閑話「ミリムの大冒険4」

 オオカミの獣顔族をやっつけて遠くの場所に捨てた後、この小屋の主であるこの子の怪我を治してあげて自分はその隣に横になった。


 ふと思うが、この子にとってこの場所は絶望の底と言えるだろう。自分の力ではこの現状を抜け出すことができず、ただ理不尽な暴力を耐えるしかない。誰も助けの手を差し伸べられることが無い。

 虐げられる日々を我慢して耐えて心を削り、そして死ぬのだろう。

 自分もこの子と似た境遇だったが、自分はそうなる前にご主人さまに買われたから運がよかった。


「この子は自分に似ている。本当にそっくり」


 この子と出会ったのは何かの運命なのだろうか?

 自分もご主人さまに救われたように自分もこの子を救うのだろうか。救うのだろうかではない。自分の意志でこの子を救うのだ。

 絶望の底で虐げられるのをただ耐える自分はもういないのだ。だから自分の意志で行動する。


 そうだ。この子の名前を聞いていなかった。明日の朝、この子が目覚めたら名前を聞こう。

 そういえばさっきやっつけた二人組が言っていたダークハーフと言うのは何のことだろう。自分を奴隷商に売ろうと考えた人達だ。ろくなことではないと思うし、今の自分とは関係ないことだから気にしない方がいいかもしれない。

 今日も仕事ができなかった。このままではご主人さまが言っていたニートだ。治癒屋として名乗っているが、王都に来てから治癒屋として仕事をしていない。


 そうなことを考えているといつの間にか寝ていた。

 またご主人さまの夢を見た。自分の頭を優しく撫でてくれたご主人さまの手のぬくもりが恋しい。早く会いたい。


 夢の途中でまた目が覚めた。

 隣で寝ている子は自分抱き着くように可愛い寝息をたてて寝ている。

 隣でこの子が寝ているのを見て自分も再び寝ようと目を閉じたが、外が騒がしいことに気づいた。

 騒がしさからただ事じゃないと思って視界を飛ばした。


 複数の男達が棒やナイフを片手に小屋を囲んでいた。


「おい!ここに高く売れそうなガキがいるのかよ?ここに住んでいるのは気色の悪いダークハーフのガキじゃなかったのか?」

「そうだよな?おでもそう思ったが、昼間ドソのところの若いのがダークハーフの両腕を折ったりして痛ぶって遊んでいたからダークハーフのガキは死んだから新しいのが住み着いたんじゃねえの?」

「そうか。あのダークハーフのガキは死んだのか。精々するぜ。ザフのアニキが言う獣人のガキを売った金で祝おうぜ」

「死んだのなら一発遊べばよかったわ」

「お前いくらガキが好きだからってよ。ダークハーフと一発やるのは流石に悪趣味すぎるだろう」


 男達がニヤニヤと気色の悪い笑みを浮かべながら話していた。

 話を聞いていると不快感で耳を塞ぎたくなった。物理的に耳を塞いでも視界で聞いているから意味がない。

 男達の話を聞いて分かったことがある。この子が怪我だらけで道端で倒れていたのはドソという人物が遊びで怪我を負わせたみたい。

 自分も遊び半分で両手を切断された。この子とはつくづく似ている。


 耐えられなかったので外に出た。ほっといても小屋の中に入ってきて自分やこの小屋の主である子を引きずり出すのだろうけど。


 ☆


「おい!ボロ屋から出て来たぞ」

「暗くてよく見えないな。誰か松明かランタンをつけろ」


 小屋の外は暗闇が広がっていた。

 王都の城壁が暗闇をさらに濃くしている。

 男達は夜目が聞かないが気配で小屋から誰かが出てきたのは感づいたようだ。一人の男が仲間にランタンを持っていた仲間につけるように言う。


「例のガキだな。袋に詰めて奴隷商に持ち込むぞ」


 ランタンに明かりをつけても周囲が暗すぎてミリムを視認できない。ランタンを掲げてもミリムの足元までしか照らせない。

 男は照らされたミリムの白い足を見てダークハーフのガキではないことに確認してミリムを物のように言った。


「って、誰だ俺様を押すのは、誰かあのガキを捕まえろ!」

「なんで集まっているんだよ。身体が動かないぞ!身体が浮いた!?」

「これは魔法か?住み始めたガキは魔法が使えるぞ!さらに高値で売れそうだ」


 ミリムの能力で一まとまりになった男達は仲間にゲンコツを落とす者、困惑の声を上げる者、奴隷商に高く売れそうだと歓喜の声を上げる者。そんな男達を念力で持ち上げた。


 ☆


 男達を念力で浮かした状態で男達ごとミリムは空を飛んだ。


「おい!ガキ俺達をどうするつもりだ!」

「ガキが無視だと、今すぐ痛い目にあわしてやる」


 ことの異常性に気づいた男がミリムに怒鳴り散らす。続けて他の男達もギャギャと騒ぎ始めた。

 ミリムは男達の怒声に耳傾けることなく。男達を捨てる場所を探していた。

 近くに捨てたらまたすぐに戻ってくるだろう。今度は報復であの子に怪我を負わせるだけじゃなく命までも奪うだろう。遠くに捨てても同じでいつかは王都に戻ってくる。

 どこで捨てればいいか迷っている。

 とミリムは見たことがある建物に目をつけた。

 その建物は自分にとって絶望の底と似ている屋敷だ。その建物を見ただけで恐怖で震えた。怖くて痛い思い出しかない絶望の底に似た屋敷を見ただけで念力の力と膀胱が一瞬緩んだ。

 だが、今の自分はタカシに救われて自力で絶望の底から抜け出してきたことを思いだした。

 タカシとの過ごした時を思い出して口を釣り上げた。

 崇拝にも近い気持ちでタカシが今頃何をしているのか気になって仕方がない。

 タカシには所有物である自分を探してほしいと思ってながらタカシを探したいという願望あったりと複雑な心境を心に宿していた。

 いつの間にか絶望の底に似た屋敷の恐怖心は消え去り、今はタカシの思い出胸が満たされていた。


 精神的恐怖で念力が緩んだせいで男が一人落下して死亡した。落下していった仲間を見た男達は自分らが騒ぐから見せしめに一人落としたと思って黙り込んだ。

 また騒げば誰かが落とされると思い、自分達を運ぶ少女の注目されないようにそして息を殺して次落とさるのは自分じゃないことを祈り、恋しくてやまない地面を見てから一緒に運ばれる仲間達の顔を見た。


 男達の心境を知らないミリムは一人落としたのを気づかずに絶望の底に似た屋敷を見下ろした。


 屋敷に男達をぶち込んだ。

 その屋敷は貴族の屋敷だった。

 屋敷の住民は男達を賊だと思い次々と殺していった。屋敷は男達の一人が持っていたランタンで屋敷の半分が火事で燃えたことで火責めの賊と屋敷の住民達は容赦なく男達を殺していったが、男達がぶち込まれた屋敷の住民達にとって迷惑はことはこれからだった。火事により屋敷の家主や従者など屋敷の住民側も焼け死、二酸化炭素中毒で死んだ。


 次の朝、屋敷には屋敷の騎士に刺し殺された男達と屋敷の住民の死体が転がる光景があった。

 衛兵達は男達が屋敷を襲った動機が分からなかったが、家主に恨みを持つ者が使い捨てに雇ったのだろうと判断した。貴族家の話では珍しい話ではない。

 政敵による役職の失脚狙い、私怨による嫌がらせと判断して、その内上から圧力がかかり、捜査は打切られると思って衛兵達はお粗末な操作しかしなかった。

 死んでいった家主は悪徳貴族で有名な貴族だったため、そういうところが衛兵達の事件の調査がお粗末だったかもしれない。


 火事で屋敷の住民が何人か死んだのは男達をぶち込んだミリムは知る由もなく。屋敷にぶち込んだ後は屋敷の人達が男達に罰を与えてくれるだろうと思っていた。


 ミリムは男達を片づけたのであの子が寝ている小屋に戻っていくのであった。

 小屋には先ほどの騒動に気づかず、大人しく眠っているその子の隣に横たわり眠りについた。


 もぞもぞと隣にいるあの子が動いたから目が覚めた。

 目を開けるとあの子は自身の身体を触れていた。

 昨日、あんなにボロボロで道端に転がっていたから怪我が治っているのを確認していたのだろう。

 心配しなくても怪我は完全に治したから。


 自身の身体を念入りに触れるあの子と目が合った。


「おはよう」


 ご主人さまは朝の挨拶は大切と言っていたから初めてあの子に言った。

 あの子は何も言わなかったがこくりと頷いた。自分がおはようって言ったからその返しだろう。

 どうしてこの子はずっとだんまりなのだろうと思ったが、自分もご主人さまに買われた時から別れるまでずっと黙ったままだったので特に喋れと強要するつもりはない。

 自分も今も知らない人の前では黙ってしまう。それをご主人さまはコミュショーと言っていた。

 この子もそうなのだろう。


 ずっと言いにくかったが、この子のことをずっとあの子とかこの子とかと呼ぶのは呼びにくい。

 名前があるなら教えてほしいと言ったが、この子は黙ったままで答えてはくれない。

 もしや、自分と同じで名前がないのではないのか。奴隷ではないのに名前を持たない子がいるとは少し驚いた。

 なんで名前がないのかと聞きたかったが、ご主人さまに人の過去を知ろうとするのはその人の心の傷を広げてしまうかもしれないからあまり聞かないように語っていた。

 それと心の傷は能力でなかなか治らないとも語ったが、その時の自分はその意味を理解できなかった。今ならわかる。

 自分が絶望の底にいた時の話を目の前にいるこの子に話すのは嫌なことを思い出して心がご主人さまと別れた時と同じくらい痛む。

 それがご主人さまが言う心の傷なのだろう。

 この子の過去を聞くのはやめておこう。


 ご主人さまが自分にミリムと名前をくれたように自分もこの子にくれてやろう。

 いざ、名前を付けようとなるとなかなか思い浮かばない物で、小屋の天井を見上げた。

 天井に名前が書いてあるわけじゃないのに考えごとをするとついやってしまう。

 と頭の中でご主人さまの声で「ミリム」と呼ぶのを思い出した。この記憶は自分がご主人さまに買われた思い出だ。

 私の中で電流が走ったようにピキーンとひらめいた。


「リム。あなたは今日からリムだよ。そして自分はミリム似ているね」


 この子にリムと名付けた。

 リムは自分を見上げて、何か言いたげな顔をしていた。


 リムを連れて今日もギルドへ仕事に行く。

 ギルドへ行く道中、朝ごはんとして能力で作り出した果物をリムと一緒に食べながら歩いていたり、路肩で倒れている人達の怪我を治してあげた。

 リムを一人で行かせるとまた怪我をして帰ってくるので今日はリムと一緒にいる。


 治癒屋としてギルドの前に居座っているが、今日も怪我人はいない。

 リムが暮らす貧民街と呼ばれている王都の端にはいっぱいいた。

 ご主人さまは怪我や病気を治すのにお金がいっぱいかかるからお金がない人達はひっそりと死んでいくしかないと言ってダンジョンの街に住むお金がない人達の怪我や病気をこっそり治していた。

 お金がない貧民街に怪我人がいっぱいいるのはわかる。それなのに綺麗な方の王都には一人もいないのはおかしいと思う。


 私達を邪魔だと言って追い払う人達がギルドから出てきたけど念力でギルドの中に戻してあげた。それでも自分やリムに手をあげる人には怪我しない程度にポイポイと念力で投げる。

 治癒屋なのに怪我をさせちゃったら、更にお客さんが来なくなる。

 昨日も思ったがまったくっていっていいほどギルドに怪我人が来ない。

 これじゃ治癒屋としてギルドの前に自分達を追い払う大人達を蹴散らしてまで居座っている意味がない。


 もしや王都は怪我人を治療する場所はギルドではなく他の場所なのではないかと考えが浮かんだ。

 怪我人を治療する場所を探す為に視界を飛ばした。

 王都の街中を縫うように怪我人を治療する場所を探す。


「タカシを、」


 どこからご主人さまの名前を口する声が聞こえた。

 怪我人を治療する場所を探すのをいったんやめてご主人さまの名前を口した人を探す。


「いた」

「?」


 ご主人さまの名前を口にした人を見つけてつい声が出てしまったからリムが不思議そうに自分を見ている。それを誤魔化すようにご主人さまを真似てリムの頭を優しく撫でる。

 視界の先には体に肌に鱗がついた少年と角が生えた人がいた。

 二人は物陰に隠れながらこそこそ話し合っている。


「ユンを探すのが優先だろう!」

「タカシに探してもらった方がいい」

「キサラギはユンが心配じゃないのか?僕達の仲間だろう。それに何から何までタカシに甘えるのはおかしいだろ!」


 鱗がついた少年は捲し立てるように角が生えた人に言い立てる。


「ユンの場所知らない。でもタカシはルルーンの街から来たって言っていたからルルーンの街に行けばタカシに会える。タカシにユンを探してもらえばいい。もしかしたらタカシと一緒にいるかもしれない」

「それはかもしれないの話だろう?」


 と言った話をしていた。

 少し揉めているように見えるが、鱗がついた少年がギャースカ騒いでいるだけで角が生えた人は落ち着いている。

 その二人組は確かにご主人さまの名前を言ったからご主人さまのことを知っているに違いない。


 自分はその二人に会う為にリムの手を引いて二人がいる路地に向かった。

 リムは自分が急に歩き始めたから戸惑っている。行動する前に一声かければよかった。


 近づいていく途中で鱗の少年は何かの気配を感じて、角の人に声をかけてその場から離れようとしていた。

 このままでは彼らはどこかに行ってしまうから転ばせたり、彼らの前に物を置いて足止めをする。


 やっと追いついた。

 無理に追いかけたからリムが息を切らしている。そんなリムをカマっていられない。


「待って!」


 二人の前に出た。


「獣人?この子達がタントが言っていた刺客か?」

「そうだ。キサラギもさっき何もない場所で足をとられただろう。それに物が勝手に動いただろう。この子の能力なんだよ」

「でもユンよりも幼いが?」


 二人は自分達を見てまた話し合い始めた。

 それよりも彼らに頼みたいことがある。


「自分をご主人さまに会わせて」


 二人に懇願した。

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