ルルーンの街まで道中
「タカシさん!馬車から降りてきましたよ?女の子?しかもこちらをにらんでませんか?」
馬車から少女二人が降りてきたのをミリが知らせてくれた。
フォスティアはメッセージを送ったらすぐに降りてきてくれたようだ。ついでにアシュティアも。
送ったメッセージはこうだ。「オレはタカシといいます。いまフォスティアたちのゴエイにからまれているでフォスティアのトモダチということでたすけてほしい。たすけたレイはかならずする」と。
俺は向こうのことを知っているが、向こうは俺のことを知らない可能性があるから最初に名乗って、用件だけを伝えた。
そしたらフォスティアは疑わしい顔をしながら俺達の方へ来た。その後ろにアシュティアが隠れている。姉なのに妹の後ろに隠れていいのかよ。ルルーンの街に迫りくる魔物の群れの中に向かっていった勇気があるのにな。
疑わしい顔をしているのは当たり前だろう。目の前にカタカナ・ひらがなの読みにくいメッセージが現れて助けを求めている。その上相手は自分のことを知っているようだ。なのに自分は相手のことを知らない。
「あなたがタカシさん?日本の方?」
「そうだよ。あっちの言葉でもこっちの言葉でも理解できるから大丈夫。逆に俺の話す言葉はみんな理解できるよ」
今さら思ったけど俺のどんな言語を理解できて、相手に伝えられる能力って完全な翻訳だよな。今まで当たり前すぎて思ってもしなかったから改めてこの能力のことを考えると凄く便利だな。
フォスティアが日本語で話しても俺は理解できるけど、どういうメカニズムかはわからないけど俺が話す言葉はすべての人が理解できる。
おそらくフォスティアは今日本語で話したのだろう。
アシュティアと護衛の騎士さんが不思議そうな顔でフォスティアを見たからそうだろう。
俺のことを知らない時点でフォスティアは未来にから来ていないことが確定した。
「そんなことはいいとして、フォスティア達に手を振っただけなのに騎士の人がうるさいんだ。なんとかしてほしい」
「そういうことですか。この子達は私の知り合いです。タカシさん達は一緒に馬車に乗っていきませんか?話が聞きたいです」
俺がフォスティアの友達ということが分かった騎士は黙った。主がこういっているから仕事上従うしかないのだろう。俺達がおかしな行動すれば排除するだろうけど。
フォスティアは今、何を考えているかわからないけど、何故か少しだけ前のフォスティアと雰囲気が違う気がした。
見知らぬ男が自分に助けを求めてきたことで少し警戒しているのだろう。まさか俺達が未来から来たことによって世界が変わってしまったことは無いだろう。
フォスティアは馬車で俺達について聞きたいと言うので同行することにした。
俺が一方的にフォスティアのことを知っているのは不公平というか、警戒を持たれる可能性があるから聞かれることは答えるし、俺がこの世界で不老族と呼ばれる存在だということも伝える。
絡んできた騎士をどうにかしてお礼もあるしな。
お礼はフォスティアに能力をあげることだ。
今までは能力を与えて嫌な思いするのではと考えていた俺は、ミリ達を死なせてしまったこともあって数少ない知り合い、友達を死なせて後悔する前に能力を与えて死なないようにする為に能力を与えることにした。
何が起きても与えた能力で切り抜けてくれるだろうという期待を込めて今の俺は友達にバンバン能力をあげていく。
あげすぎると身体に支障をきたす可能性もあるので上げる能力は一個二個ぐらいにする。もしかしたら与えた能力を変な大人達に目をつけられて戦争の道具や人体実験の被験者になるかもしれないが、それは与えた能力を使ってもらって自分で何とかしてもらおうかな。自分一人では何とかできない場合は助けを求める合図をお互いに決めて助けに行くのもいいな。
馬車に乗せてもらえるの7はありがたい。
ミリもアルムも未来から来た記憶があるが、体の方はまだ子供であり、いくら能力があるとはいえ、体力が持たないだろう。
徒歩でルルーンの街に行くまでの時間は前のぐらいかかるだろう。あの時は空気の野郎が来て、喧嘩したからな。空気のやるのことを思い出したらイライラしてきた。
俺が二人を抱えてルルーンまで飛べば早いけど、フォスティア達の誘いを断るわけにはいかない。
スフィアの身体情報は特に問題ない。今すぐルルーンの街へ行かなくても大丈夫だろう。
フォスティア達の馬車に乗せてもらい、俺達はアシュティアとフォスティアと対面の座席に座る。
がだごとと馬車が動き出して少し沈黙が支配し始めた。
耳に聞こえるのはゆったりとした馬の足音と馬車の車輪の音が馬車の中に響いている。
「あなた達は一体何者ですか?」
沈黙の支配を破ったのはフォスティアだ。
「私達は不老族です。私とアルムちゃんはシマシマの腕輪は付けてませんけど」
フォスティアの問いにミリが答える。
ミリもアルムも俺から能力をもらったから不老族と言えるのだろうか。
俺から能力をもらったからミリとアルムはずっとこのままなのだろうか?不老族は被験者で年を取らないから不老族と呼ばれるから能力を得たミリ達も被験者同様に年の取らないのかわからない。
今のミリ達はかわいいからずっとこの姿のままでもいいのにな。
「ミリお姉ちゃん、言っとくけどお兄ちゃんが付けているあの腕輪は財布と個別民票みたいなものだからすごい機能とかは付いてないよ。だけど今のアルム達なら不老族の国の役所に行けば同じ物を作ってもらえるよ。きっと」
「そうなのですか!?不老族の国に行きましょう!今すぐに。タカシさんとお揃いになりますね」
フォスティアの問いに答えたミリに対してアルムが追加情報を付け加える。
アルムは未来で数年ほど不老族の国に住んでいたようで、不老族の国についての情報を知っているからいろいろ聞きたいな。
それと不老族の国ではバーコードの腕輪は財布と個別民票として使っているのか。財布という意味は分かる。いわゆる電子マネーというヤツだ。ただ個別民票というヤツはわからない。運転免許証みたいな個人証明証みたいな物か?
俺が付いているバーコードの腕はパスという人格が付与されているだけだから普通のバーコードの腕輪ではない。それに財布みたいな機能もない。俺が付けているバーコードの腕に記録されている情報は被験者としての俺の情報のみだ。
「その前にスフィアと再会しないとな」
「そうでした。スフィアちゃんのことを忘れてました」
忘れていたのかい。スフィアも不老族スキーの仲間なんだから忘れるなよ。
「そして俺はタカシだ。一応異世界人だということは察しているだろうけど、今の段階では今から少し先の未来から人間だ。この子達もな。俺とは別の未来からきているけど」
と俺達は自己紹介を済ませた。
「タカシさんは異世界人に未来人?未来人なら私達のことを知っていたわけですね?そんな人が私達にどんな用で?」
フォスティアは自分達のことを知っている前提で話を進めるんだ。
俺はそれでいいけど、ミリとアルムはフォスティア達のことは知らないんだよな。ミリ達のそれぞれの未来ではフォスティア達と出会わなかったようだけどミリ達は権力者が苦手が節があるからこのまま話を進めるか。ミリ達も気にしてなさそうだし。もしかしたらフォスティア達と別れた時に説明を求められるかもしれないな。その時は説明してあげよう。
てか、さっきから一言も話さないアシュティアが驚いた顔でフォスティアを見ているのが気になりすぎる。
いつものフォスティアと違う感じかな?前にあった時もアシュティアや家族の前では年相応の無邪気さを振りまいていたし、フォスティアは猫を被っているのかもしれない。
「フォスティア達に用なんてなかった。馬車に乗っていたのが知り合いだったから手を振っただけで、それとなんていうか?この先に会いたくない人がいるんだ。ということで馬車に相乗りをさせてもらったわけだ。感謝しているよ」
空気の野郎がこの先にいるからな。アイツとは一生会いたくはないのは本当だけどルルーンの街までミリとアルムを歩かせるのは忍びないから馬車に乗せてもらって感謝している。
そういえば、アズサは空気のクソ野郎と旅をしていたと言っていたな。前にこの森で俺と空気のクソ野郎と喧嘩した時の怪我を治療したのはアズサだった。近くにアズサもいるのかな?
アズサはこのまま前のルートで進むのなら危険はないだろう。いや、空気のクソ野郎と旅をして何回も死にかけたと言っていたからな。アズサだけでも再会したほうがいいだろうか。でも五体満足で再会できたということは、いいやアズサの能力は欠損を含めて怪我が治せるから空気のクソ野郎との旅で怪我とか手足が失っても自分で何とかできるからな。
うーん、アズサを見かけたら念力で空気のクソ野郎から引き離そう。その方があんな意味不明なことをつぶやき続けているヤツと旅するよりかは本人も嬉しいだろう。
現在もアズサと空気のクソ野郎が森にいると仮定して、視界を森へ飛ばしてアズサを探してみよう。
ルルーンの街までアズサを見つけられなかったら、その時は諦めるけど。
「そうなんだ。その人って悪い人なの?」
と少し身構えた感じでフォスティアが聞いてきた。
「そいつは悪い奴って言うか。頭がおかしい変人。いつもうわ言をつぶやいていて不気味な奴だよ」
「あれ?お兄ちゃんが今言った人って」
「それって空気さんですね。タカシさんの大親友の」
「だから大親友じゃないって、あの野郎は俺の友達を死にかけていると言うだけでいきなり首を刎ねたんだ。頭おかしいだろう?あ、でもその友達は生きていたけど」
ミリとアルムは自分がいた未来と照らし合わせて、俺と空気の野郎は大親友と思われているな。何度も訂正しても信じてもらえずにいるのだが、あんな奴と友達だと思われるだけで不快だ。
「あの!その友達はどうして首を刎ねられても生きていたのですか?」
今まで黙って話を聞いていたアシュティアがいきなり聞いてきた。
小さな女の子がそんなことを聞かれて内心びっくりした。凄くグロい内容なのにそんなものに興味があるなんて、いや誰かが体の一部を欠損したらその欠損を治してもらおうと考えているのかもしれない。
「その子は自分の能力で生きていたんだよ。その能力って言うのは怪我や欠損を治す能力なんだ」
ミリ達の未来ではアズサとジュンが何をしていたのか気になるが、ミリ達がアズサのことを知らないなら聞けないや。
「そうですか。その方はいずこに?できれば紹介してもらいたいのですが」
「その子なら多分この森にいると思うけど?でもどうして?誰かの怪我を治したいのかな?」
森の中を視界でアズサを探しているけど一向に見つからないんだよね。しかも空気の野郎はテレポートを使えるから森での用が済んだらすぐにどこかに行ってしまうかもしれない。
「はい。私の友達が顔に怪我を負ってしまいまして、怪我の方は治癒の魔法を使える方のおかげで治りました。その友達の怪我は治りましたが目が見えなくなってしまいまして、その方が欠損を治せるのでしたら私の友達の目を治してほしいのです。お礼はお父様に頼んで出しますので紹介してもらえませんか?」
なるほどね。アシュティアの友達が怪我の後遺症で目が見えなくなったのね。それで欠損を治せる話に興味を持ったのね。
でも前に会った時はそんな話は聞かなかったな。それも俺達が過去に来たから起きたイベントなのか?それとも俺がいた未来でもアシュティアの友達は目が見えなくなっていたけど俺達に話してなかっただけなのか?
うーん、わからない。俺がいた未来とは別の未来に向かっているのは確かだけど。
「わかった。俺も欠損を治せるけど目が見えないのは治せるかわからないけど。ルルーンの街に着いたらその友達の下へ連れてってくれ。もし、その友達の目を治すのが成功したら、お願いがあるんだ」
「お願いですか?」
「そう、俺達が向かっている理由でもある俺達の仲間がいるんだが、奴隷になっているかもしれないんだ。それでその仲間を買う為に、アシュティアの家の力で何とかしてもらいたいんだ」
前は魔物の群れのどさくさに紛れてスフィアを奴隷商から連れ出せたが、今の現状で魔物の群れが起きるかわからない。俺が来た方向から魔物の群れが来たことから魔物の群れの起因が俺と空気のクソ野郎の喧嘩が原因の可能性が高い。だから空気の野郎と会う予定はないから魔物の群れが起きる可能性は低い。
それに奴隷であるスフィアを盗むわけにもいない。ルルーンの街で盗人して追われるのはごめんだ。金を払うのにもエルフの女の子の相場なんてものはわからない。手持ちの金で間に合わなければ借金をするしかない。そこでアシュティア達の家の力を借りるしかない。アシュティアの友達の目を治せればの話だけど。
「魔物が出たぞー!」
おしゃべりしていたら、アシュティア達の護衛の一人が叫んだ。
窓から外へ覗くと大猿が七匹、護衛の騎士達と対峙していた。
「馬車止まっちゃいましたね。タカシさん?あの魔物達をやっつけちゃっていいですか?」
俺と一緒に窓を覗いたミリがそんなことを言い始めた。
魔物を怖がっていたミリがそんなことを言うなんて耳を疑ったが、過去に来てミリに再会した時、熊の魔物を倒していたところを見ると魔物に対しての恐怖心がない。
別の未来から来ているからか、魔物に対する恐怖心が芽生えなかったのだろう。
「どうだろうな?アシュティアとフォスティアいいか?」
あの程度の魔物は騎士達だけで倒せるかもしれないが、騎士達に余計な労力を割くのは騎士達の主人のアシュティアとフォスティアにとって嫌なはずだ。もしかしたら魔物と戦っている内に死ぬかもしれないしな。
俺もこんなところで時間を無駄にしたくはない。
確認の為に騎士達の主人のアシュティアとフォスティアに聞くと頷いてくれた。
「いいて。ただ騎士達に当らないようにしてね」
「最初からそのつもりですよ。はい、終わりましたよ。あの魔物をギルドで売りますのでタカシさんの力で魔物を持てください」
アシュティア達の許可が下りた瞬間、魔物の首がポロリと落ちた。
ミリの能力によるものだろうけど何も知らない騎士達が目の前に現れた魔物の首が落ちて絶命したことに戸惑いが出ている。騎士達は自分達以外に誰かいるのではないかと馬車を囲むように周囲を警戒始めた。
これはアシュティア達に説明してもらった方がいいね。
それと大猿の不意の攻撃を食らったのか騎士の一人が血反吐を吐きながら倒れている。
あの騎士を一人置いていくにもかわいそうだし、治さないと進めなさそうだね。
騎士達への説明はアシュティアに任せて、俺は怪我をした騎士の治療をした。
肋骨が三本骨折していたり、内臓が損傷していたがもう治った。これもミリムと一緒に治癒しごっこで練習したおかげだ。
この騎士が怪我した理由をほかの騎士に聞いたところ大猿が投げられた人間の胴体くらいの岩が直撃したそうだ。
魔物が投げた岩に当ってその程度の怪我で済むなんてこの騎士は丈夫な人だな。
☆ ☆ ☆
とあるルルーンの街の奴隷商にて。
「タカシ達遅いな」
「おい!エルフのガキ!何か言ったか?」
「もう少し美味しいご飯が食べたいの」
「子供の奴隷なんて残飯で十分だ!うまい飯が食べたいなら自分が早く売れることを願うんだな」
スフィアは幼い子供のふりをしていた。そして店主から暴力を受けていた。
本人は子供のふりを苦痛と感じていた。
次の話は閑話にしようと思います。




