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異能者は異世界に来て何をする  作者: 七刀 しろ
第五章 ザ・バッドエンド
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継承したら、ゴミ野郎は意味不明が来た!

 ニーレの仲間達から値踏みするような視線を浴びながら俺は今夜泊まる場所を考えていた。


「そうだよ。この子が私を助けてくれたんだよ。名前はタカシって言うんだ。タカシ、こっちが私の兄でパーティーのまとめ役のオスカー。次に私の妹のレニーで、その隣が幼馴染のワット、後ろに隠れているのが」


 ニーレが勝手に仲間の紹介を始めた。

 名前を覚える気はないから聞き流すけど。

 紹介を終えた。ニーレのみんな包帯を巻いていたりと、怪我をしているようだ。逆にニーレは俺が古傷から何まで治療したから綺麗な肌をしている。その代わりに着ている服はボロボロで下は古着屋で急遽買ったスカートを履いている。もちろんノーパンだ。


「それでタカシ後ろの子は?ダンジョンから出た時はいなかったけど?」


 ニーレが獣人の少女について聞いてきた。


「さっき奴隷商で買った子だ。名前はそうだな」


 獣人の少女については別に隠すつもりはない。獣人の少女を買った奴隷商に聞けばバレることだ。軽く調べたら出てくる情報を隠しても仕方ない。


 ただこの子の名前を聞いていなかった。今この場で名前を聞くなんておかしいからなんて呼べばいいのか少し考える。

 そして頭に浮かんだ名前を口にする。


「この子の名はミリム」


 獣人の少女、改めてミリムはハッとして俺を見上げて嬉しそうに尻尾を揺らした。

 元々名前があったかもしれないが、名前を聞いても「はい」としか答えてはくれないだろう。奴隷の身に落としたから名前を勝手につけた。

 パッと浮かんだ名前がミリムか。俺って死なせてしまったミリとアルムのことを引きずっているな。


「ミリムちゃんか。可愛い名前だね。綺麗な子だね。この子綺麗だし高かったでしょ?」

「うーん。金貨10枚だったけど相場が分からないから何とも言えないや」

「は?金貨10枚?それ奴隷として安すぎだろ?たとえ子供だったとしても普通の相場は金貨50枚を超えるぞ!ましてはこんな綺麗な獣人の奴隷は金貨100枚以上するだろう」


 ニーレのお兄さんからツッコミが入った。

 金貨10枚って安いのかな。この街で飲み食いを一年ぐらいできる金額だからそれでも高いけど、この子の相場って金貨100枚だったのか。治療する前は片目も両腕もなかったからいわゆる傷物商品として相場の一割の値段で売っていたのだろうか。

 俺としては相場の一割で買えたから文句はない。通常の相場でも金をかき集めてでも俺はミリムを買っただろうけど。


「話がずれてるよ。二人とも」

「そうだった。タカシだったか?ニーレを助けてくれて礼を言う。それとニーレが受け取った大金のことなのだが、パーティーリーダーとしては見過ごせない。」

「え?なんで?地上までの案内のお礼だ。それが何の問題があるの?」

「君の気持は理解した。妹が君を騙して大金を手に入れたと疑った。我が妹ながら少し抜けていて人を騙せるとは思っていないが、逆にこれも新手の詐欺の手法でニーレが騙されているかもしれないとだな」


 なんていうか。ニーレの兄は慎重で頭が固い性格のようで、俺がニーレに魔物の死骸をギルドに売った金の半分を渡したことを新手の詐欺と思っているみたいだ。

 お金を渡すってどんな詐欺なのか誰か教えて欲しい。騙した側のメリットも教えて欲しい。


 俺はニーレの兄の話を聞いていて、話の半分くらい理解できてない。人を疑い過ぎていうか心配し過ぎだと思う。


「オスカー。確証を得ただろう。ニーレが受け取った金はコイツが渡した物だ。なんで渡した理由はなんであれ、ニーレは犯罪に巻き込まれていないし、問題も起きていない。その金はニーレの物だ。ニーレも快く受け取ったらいいじゃないか。それでもって言うならそれはそいつの気持ちを踏みにじると同じことだ」

「でもいきなり大金を渡されても困るよ。私、タカシに助けられたんだよ。助けられたのにお金をもらうのっておかしくない?」

「装備を丸々買い替えればいいじゃん。今回お姉の装備ダメになったのでしょ?余ったお金は私達に美味しいご飯奢ってよ」

「みんながそこまで言うなら受け取るよ。タカシ時間を取らせてごめんね。貸してもらった上着は洗って返すね」


 最終的にニーレは仲間達に説得されて受け取ってくれるようだ。

 ニーレやその仲間達が俺の下に来たのは渡した金のことを確認しに来ただけのようだ。

 それの確認ができたからみんなでニーレの装備を買いに行くらしい。


「話がまとまってよかった。あ、待って。話は変わるんだけど、いい宿を知らない?」


 防具屋の方へ行こうとしていたニーレを呼び止める。

 今夜泊まる宿を探していたから丁度いい。アウェーな俺が良い店を見つけられないならニーレに聞けばいい。どこかおすすめを紹介してくれるに違いない。


「宿?今夜泊まる場所がないのね。私達が止まっている宿はいいよ?低いランクの冒険者がよく泊まる宿だけど安くて料理が美味しいよ?朝の夜って宿だけど。うーんとね場所はこの通りからギルドの方へ十字路を二個ほど行ったところにあるんだ。目印にお日様のマークがあるから行けばわかると思うよ」


 と言われたので早速行くことにした。

 先に視界を飛ばして場所は確認した。端から見たら四階建ての大きな老舗の定食屋にしか見えないけど一階部分は定食屋として営業しているみたいで二階から上は宿泊できる部屋がある。

 部屋の中に惰眠を貪る冒険者風の人もいるから宿としても営業している。


「いらっしゃい!」


 入店すると給仕をしていた元気のいい店主の声が店いっぱいに響き渡る。

 うん、うるさいな。泊まるなら二階より上だな。


「このくらいで二人何日泊まれる?」


 カウンターに店員がいたのでポケットから金貨と冒険者の証を置く。


「申し訳ありませんが只今一人部屋しか空いておりません。それでよろしかったら金貨一枚ですね。食事付きで43日ほど泊まれますが、食事抜きですと56日になります」


 丁寧でにこやかに店員が答える。

 いくら何でも物価が安いとは言え、安すぎだろ。いや前に四人で泊まったところが高級過ぎただけか。これが普通で二人で金貨一枚の値段で長く泊まれるのが普通か。

 そんなに長く泊まる気はないが、金の使い道なんてほぼないから長くても別にいいだろう。サイボーグ少女あたりがその内迎えに来るだろうし。

 ただ、どう言い訳しようかな。あいつら、俺が逃げ出したって思っているだろうか?スフィアが無事なのは確認できるが向こうの状況が分からない上にこのがどの位置にあるのか分からない。ピイール王国ではないことは確かだ。

 だって通貨が違う。向こうの通貨はニヤドだったのが、硬貨のデザインが違うし、呼び方なんてわからない。向こうの文字も読めなかったけどこっちの文字も同じように読めないけど宿の看板が朝の夜と書いてあると思うけど文字数が三文字だ。漢字みたいな文字を使っていて明らかに文字も違う。

 絶対に別の国と思われる。

 俺の手にタブレットがあればよかったと思うが、ない物をどんなに望んでもないからしょうがない。


「わかった。それでいい」

「承りました。それとお客様は冒険者ですが、これからお出かけになられますか?なられないのでしたら料理の準備ができしだい夕食のお声を掛けさせていただきますので」

「出かける予定はない。疲れたからそれまで休みたいから夕食の時間まで声を掛けないでほしい」

「受けたまりました。こちらが部屋の鍵となります。部屋まで案内しますのでごゆっくり。誰か!お客様を部屋まで案内してくれ」

「わかりました」


 店員の声に反応した子供の店員が部屋まで案内されて、俺達が泊まる部屋は二階の真ん中の部屋だった。

 案内してくれた子供に聞いたところ。三階、四階の部屋は大部屋で冒険者のパーティーが泊まっているから空いていないらしい。

 部屋にいないのはダンジョンに潜っているか、出かけているかのどちらかだな。


 俺達が泊まる部屋はベッドが一つしかない、質素な部屋だ。

 一人部屋なのだから当たり前か。

 今日はいろいろあった。サイボーグ少女達と不老族の国へ連れていかれると思ったら、空気のイカレ野郎がダンジョンに強制的に連れて来られて、イカレ野郎の治療をさせられて、ダンジョンでニーレと出会い、大金を得た。

 その金でミリムを買った。


『マスター、外に』

『わかっている。気にするな』


 パスが外には6人ほど隠れて宿の出入りを監視していると知らせる前に知っていると答えた。パスが知らせなくても宿に入る前に視界で確認済みだ。宿に入らないのは俺がゴロツキを大通りで拷問したから警戒しているだろう。

 俺が目立つことを散々したから権力者に目をつけられたかもな。

 そんな人達がいても今は気にしない。来たら来たで対処するだけのこと。

 鬱陶しいけど実害が出ていないから殺しはしない。


 ミリアを抱きかかえ、一緒に横になる。

 これからミリムをどうするか考える。

 ミリ達を死なせてしまったのは俺のせいということは理解できている。能力をあげることをわかっているなら、ミリ達に能力を与えなかった俺が悪い。たとえ能力を与えて人体実験の被験者になる可能性があったとしても与えるべきだった。ミリ達に人を殺す感情を味あわせたくないという俺のエゴで殺してしまったと同義だ。

 与えていたら、この帝国の人間に弄ばれた挙句殺されることも何もできないまま人体実験の被験者になることもなかった。与えた能力で抵抗することも相手を殺すことも逃げ出すことも容易くできた。俺の下へ生きて帰ることができた。

 この後悔は自分の能力のみでミリ達を守れると過信してきた俺の報いだ。

 今度は違う。ミリアに今の俺のすべてを注ぐ。そのつもりだ。

 被験者の能力を得れば、過酷な世界でも余裕で生きていけるだろう。

 そのために使い方や気を付けることを教えなければいけない。


「ミリム、俺はこれからお前にすべてを注ぐ。これでお前は強くなれる。だから受け入れろ」


『パス、頼む』

『了解しました。調整の方は私の方でするのでマスターは血に力を込めてください』


 ベッドで抱いたままゆっくりとミリムの耳元で囁く。

 現在使える能力すべてのイメージを浮かべながら自分の血に込める。それ以外の調整等はパスがしてくれる。俺は血に力を思いを、込めるだけ。

 念力で剣を持ってきて自分の手首を深く切りつけた。血を出して、念力を使って血をミリムの口へ運ぶ。


 ミリムが血を飲み込んでいくのが分かる。

 ミリムの脳が活性化し始めた。すごい速度で脳細胞が分裂しては死んでいく。

 これは脳が創り替わっていく。能力が使えない脳から能力を使える脳へと。


 能力を得ると身体はこういう現象が起きるのか初めて知った。


 ミリムの身体を手に取るようにわかる今の俺はミリムの脳が創り替わるのが面白く思えた。

 自身の脳が創り替わる中でミリムは少し気分が悪そうに見えた。吐き気とかは感じていないはずなんだけど、自分を買った知らない男がいきなり血を飲ませてきたから精神面があれになったのだろう。

 ベッドの隣に物が置ける小棚にコップを生成してその中に水を生成して置いとく。


「水だ。好きな時に飲め。俺は隣で寝させてもらうよ」


 ミリムの頭を優しく撫でて隣に横になる。

 本当に寝るわけではない。俺達を見張る何者かの目的を探る為に視界を飛ばしてそいつらを見張るためだ。

 奴らは数時間経っても動きを見せない。


 日が暮れてきた。

 奴らは帰る素振りも見せないままその場でずっと俺達を見張るつもりなのかもしれない。

 その凄い忍耐力は称賛に価する。


 凄いなって監視をしていたら、いつの間にか奴らは死んでいた。

 そいつらの死体は綺麗な断面図で真っ二つになっていたり、三等分になっていたりと死んでいた。誰かに殺されたのはわかったが、綺麗な断面図の切り口はとても剣で切った物とは思えない。

 しかも誰にも気づかれずに全員を殺したのだ。街の住民はそいつらがいたことも死んだことも気づいていない。

 身元が分かる物から金目の物まで貧民層の住民が漁って謎の死体がそこに転がっている。

 これぞ。完全犯罪とでも言うのだろう。気が変わった。殺した奴は最低のクソ野郎だ。なんて酷いことをするのだろう。こいつは人間じゃない。

 感想を述べていたが、殺した奴が視界に映った。

 空気のゴミ野郎だ。空気のゴミ野郎は誰にも気づかれることなく俺が泊まる宿に入ってきた。


 っげ、アイツもここに泊まっているのかよ。と思いながら視界で空気のゴミ野郎の後を追うと俺達が泊まる部屋の前に立ち止まった。空気の刃で扉を破壊しやがった。


 おい。これ誰が弁償すると思ってんだよ。

 せっかくミリムが落ち着いてきて眠り始めたのに空気のゴミ野郎のせいで驚いて起きちゃったじゃないか。かわいそうに尻尾を太くして、さぞびっくりしただろうに。

 俺に訪ねてきたらノックぐらいしろよ。客として当然のことをしろつーの。空気の野郎が訪ねてきたら居留守でやり過ごすけど。


「なんだよ。ゴミ野郎、物騒な入り方だな。壊した扉店主に弁償しろよ?そしてお前の沸いた頭の中を空っぽにして帰りやがれ!ほら、窓から捨てるから怪我しないように着地しろ。っく!動かねえ」

「全知全能を見る目を潰した。礼はいらん」


 空気の野郎が入ってきてそうそう、壁に念力で叩きつけるように貼り付ける。

 やべぇ、空気のゴミ野郎を壁にたたきつけたら壁にひびが入っちまった。これも空気の野郎に弁償させよう。


 空気との言葉のキャッチボールがかみ合ってないことはいつものことだからいい。後で壊した物の弁償を請求するとしてコイツの頭はガチ目に沸いているからミリムを殺しかねん。身動きを封じたまま窓から放り捨てようとしたら、念力で動かそうとしているのに動かん。

 どういう原理で固定しているんだ?これもこいつの能力なのか。

 追い出すのを諦めたわけじゃないが、コイツが動かないのなら身動きが封じたままここに来た動機を聞こうじゃないか。


「なんで来たんだよ。その前に扉と壁の弁償として今日魔物を売った金全部置いてけ」

「掃き溜めに力強く生きる雑草には食が必要だ!」


 雑草に食が必要だ。何を意味不明なことをぬかしているんだ。こいつにとってこれが平常運転だから変わりないけど、なんとなく金が無いことが分かった。

 あんな大金を数時間のうちに何に使ったかはわからない。

 コイツが使うことはろくでもないことに決まっている。

 立て替えておくからいつか請求しよう。


「もう一度聞くなんで来た?」

「案を持ってきた」

「案?」

「案だ。時を心と能のみで遡る。数週間後にまたくる。それまでに構えろ」


 と言い残して空気の野郎がいなくなった。


「ほんとアイツ何なんだよ。意味わかんない事だけ言って逃げやがって!」


 何が時を心と能のみで遡るってなんだよ。意味がないことは喋りまくったからついにとち狂ったのか。てか数週間後にまた来るのかよ。いやだな。

 宿変えようかな。でも壁と扉がな。


「・・・」

「ごめんね。騒がしかったね。怖い奴はいなくなったから安心していいよ」


 ミリムが心配そうに俺を見上げていた。俺はミリムの頭を優しく撫でて安心させる。

 明日からはミリムは大変だ。俺が使える能力をすべて使えるようにさせないとな。

 まずは自分が怪我した時を考えて、その怪我を治せるようにさせないと。最初は治癒の能力を伝授しよう。

空気は魔物を売った金をダンジョン街の恵まれない子供達に寄付したようです。空気の「掃き溜めに力強く生きる雑草には食が必要だ!」セリフは貧民街に生きる孤児には食事がいると主人公に訴えった。空気の中ではまともなセリフなのかもしれません。主人公はきっとその意味を理解しないでしょう。

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