個人授業お願いしまーっす
というわけで、結構な大所帯でAクラス担任イズ先生のもとへやってきた。
「イズ先生ー、個人授業お願いしまーっす」
「来ましたわね……あら、え、個人授業ですけど? なんでラクト先生まで?」
「いやぁ、イズ先生が心配だったので……」
ちょっとラクト先生? それ私がイズ先生に何かすると思ってるってコト?
「というわけで付き添いが3人増えましたけど、大丈夫ですか?」
「ええ! ラクト先生ならいつでも大歓迎――こほん。カリーナさん以外はよろしくお願いしますねラクト先生」
というわけで個人授業が始まった――のだが、黒板に色々書かれているもののちんぷんかんぷん。魔法理論でポポポポーンとか言われても分からないんだけどもー。
「ペペルポイの法則ですよ。今日の授業でやったところですねお姉さん」
「おお、そういえばそんな法則あったな」
「……あの、ラクト先生? カリーナさんは優秀だと聞いていたのですけど、これは?」
「座学は苦手なようで。いやぁ代わりに教えてくれるなら助かります」
「任せてくださいましラクト先生!」
あっ。今ハートが見えた気がしたぞ?
そっか。イズ先生ってばラクト先生の事が……ほぉーん? 教師同士で……
っていうかイズ先生はラクト先生の教え子だったんだっけ。ということは元生徒と教師の恋……!
いいねいいね! 応援したくなるね!
「――ちょっと、カリーナさん? 聞いていますか?」
「……イズ先生はラクト先生とお似合いですね!」
「そ、そそそ、そんな事ありがとうございますけどぉ!?」
おっとぉ。話を聞いてなかったのをごまかすために言った一言がクリティカルヒットしたっぽい。
「カリーナ様? イズ姉様は座学だけでなく実技を交えての解説の方が良いか、と聞かれてましたよ」
「あ、ありがとうフレッタちゃん。じゃあそれでお願いします!」
「ええ。では射撃場へ行きましょうか。ラクト先生、ターゲットお願いできますか?」
「……まぁ、構いませんよ」
座学を切り上げ、射撃場の方へと移動した。
うん、私はやっぱり実技の方が得意だからね! 理論? ゴリ押しでなんとかなる!
「ではカリーナさん。ラクト先生に的を出していただくので、それに向かって全力で攻撃魔法を」
「まって。まってイズ先生。カリーナさんに全力出されると絶対マズいから待って」
「な、なんですのラクト先生?」
ラクト先生が止めてきた。
チッ! イズ先生に良いトコ見せられると思ったのに!……とは少ししか思っていない。
だって私が全力出したら明らかにマズイからね。国が滅ぶレベルだもん。
ラクト先生に先を越されてたけどディア君も止めようとしてた。
「……ですが、全力を見なければ実力を測れませんけど?」
「ではこうしましょう。カリーナさん、私が出す的を破壊できる、可能な限り最低威力の魔法を見せてください」
「うっす」
んー、破壊かぁ。じゃあ昨日の的を重ねて出すやつは使えないよねぇ。
それも最低威力の魔法……となると、エリアカッターかなっ! よし!
「どのくらい破壊できたらいいっすかね? 消滅? 粉末? 分割? 穴開け?」
「……じゃあ的部分を真っ二つにできたらいいってことで……はぁあ! アイアンターゲット!」
ぴょこん、と射撃場に鉄のターゲットが生えた。鉄、そういうのもあるのか!
まぁ私のやることは変わらないわけだけど。
「アイアンを!? 見たのは私の卒業試験の時以来ですが、それほどまでの実力を……!?」
「ではカリーナさん、お願いします」
「はーい。えい」
パチン、と指を弾いて鳴らす。ターゲットの中心から斜めにカットし、ずるっと自重で落ちるようにした。
ずる、とイズ先生の眼鏡が少しずり落ちた。こちらは私なにもしてないぞ。
「できましたー」
「え?」
「……まずはこれです。わかりましたかイズ先生?」
「な、なんですか今のは!? 一瞬ですがとてつもない瀑布がっ!?」
「うん、なにより。ではカリーナさん。次はこちらを、同じく可能な限り最低威力の魔法で。……クレイターゲット」
と、今度は土のターゲットだ。まぁやることは変わらないのだけど。
ぱちん。ずりっ。ぼと。
「できましたー」
イズ先生が口をいの字にして震えている。私の魔法に感動しちゃったカナ? なんてね。
「あの? ディーアソルト様。カリーナ様は一体何を? 私には指を鳴らしているようにしか見えなかったのですが」
「フレアタルトが見た通り、見えない魔法で的を破壊したんですよ」
「な、なるほど。カリーナ様はそのような魔法も使えるんですね……」
そしてイズ先生の眼鏡もずり落ちている。あ、チャキッと位置を直した。
美女教師がやるとサマになっててカッコいいねぇ……!
「さて。イズ先生。見ての通りです、どう思いますか?」
「わ、私に教えられる範疇ではない、と……? 鉄の的を完璧に破壊している。それも、一瞬のうちに的部分だけを……!! 真芯を正確に、一直線に……!」
「イズ先生褒めて褒めて! もっと褒めてー!」
「イズ先生。あなた私がカリーナさんになんて指示したか聞いていませんでしたか? 私は最低限の、と言ったんですよ。……それで。カリーナさんは土と鉄の的を破壊するのに全く同じ魔法を使っていませんでしたか?」
あっ。
「この通りですイズ先生。きっとカリーナさんは対象がミスリルでもヒヒイロカネでも、オリハルコンでも同じ魔法を使いますよ」
「お、オリハルコンの的も破壊できる、と!?」
「……そこでなくて。要は、カリーナさんは魔法の使い方が雑なんです。カリーナさん。『的を壊せればいい、自分の最小の技で』。と思って適当にやってませんでしたか?」
「うぐぅ!?」
「つまりカリーナさんはこれ以下の魔法が使えない、ということになりますが」
「うっ。そ、その通りですラクト先生……!」
「そうですか。ああいえ、責めているわけではありません、現状の確認をしただけです。我々は教師なので、できないことを教えるのが仕事なんですよ。やる気があるなら、大歓迎です」
「せ、先生! は、はい! 教えてくださいラクト先生! よろしくお願いします!」
ラクト先生はにっこりと頼もしい笑みを浮かべた。
「……というわけでイズ先生。個人授業をするのであれば、これよりも弱くて魔力消費の少ない魔法を教えてあげると良いと思います。最大火力は間に合っているでしょうから」
「……は、はい。ありがとうございますラクト先生」
あ、イズ先生が恋する乙女の顔でラクト先生見てる。
これ絶対好きな奴じゃんね。
「ラクト先生、お姉さんの欠点を的確に見抜くとは、さすがです」
「ははは。先生はこれが仕事ですから。……ちなみにディーアソルト君? あの魔法、オリハルコンも真っ二つにできるんですかね?」
「可能でしょうね」
「……ハハ」
あ、可能っす。五大老の皆に頼まれてちょいちょいやってます!








