表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
愛弟子に裏切られて死んだおっさん勇者、史上最強の魔王として生き返る  作者: 六志麻あさ @『死亡ルート確定の悪役貴族2』発売中!
第8章 第二次勇者侵攻戦

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

81/193

8 真の激闘の始まり

第8章後半部です。章の終わりまで3日に1話ペースで更新します。

「報告によれば、リーガルは四天聖剣(セイクリッドエッジ)と名乗る勇者たちに倒されたようですな」


 と、ゼガート。


 四天聖剣。

 最強と称される四人の勇者たちだ。


 そのうちの一人、ルドミラとは以前に戦ったことがある。

 場にライルもいたゴタゴタで、とどめを刺すには至らなかったが──。


「リーガルが敗れるほどの相手……半端な戦力を送っても、返り討ちでしょうな」


 ゼガートが顎をしゃくる。


「どうなさいますか、王よ」


 獅子の瞳には、まるで俺を試すような光が宿っていた。


「──俺が行く」


 即断した。


「ほう、王自らが」

「リーガルは魔界屈指の猛者だ。それを打ち倒すほどの相手なら、俺が出るしかないだろう」


 俺は真っ向からゼガートの視線を受け止め、言った。


「お前やジュダにはここの守りを頼みたい」

「ご武運をお祈りいたします、王よ」


 ゼガートが恭しく頭を下げた。


「がんばってね、魔王くん。まあ、君なら滅多なことはないと思うけど」


 ジュダのほうは気楽な口調だ。

 と、


「魔王様、もう一つ──強大な力を持つ勇者の気配が近づいています」


 ステラがハッと顔を上げた。

 その額に第三の瞳が開いている。


「何?」

「数は二。進路上の守備隊はことごとく一瞬で撃破された模様」

「……次々に来るな」


 俺はうなった。


 そちらも、ジレッガに現れた勇者と同レベルの相手かもしれない。


 あるいは四天聖剣の可能性もある。

 それが二手か、あるいはもっと多くのルートに分かれ、別々に進撃している──?


 だとすれば、いずれも並の魔族では相手にならないはず。


「そちらにはジュダを向かわせろ。俺はすぐにジレッガまで立つ。後の指揮はステラに任せる。ゼガート、フェリア。残りの魔軍長と連携して魔王城への敵襲に備えろ」


 俺は手早く指示を出し、場を後にした。


    ※


 四天聖剣の行軍は、まさしく快進撃だった。


 立ちはだかる魔族は、黒い奇蹟兵装(カオスフォーム)の力で瞬殺。

 相手の攻撃はすべて黒の法衣(カオスジャケット)で封殺。

 切り札である神気烈破導(オーラバースト)を使うまでもない。


 あっという間に魔界の外縁部から中心付近まで迫っていた。


「この先はどうやって進みますか? 四人で一直線に魔王城まで?」


 フィオーレがたずねた。


「それとも──」

「そろそろ二手に分かれましょう」


 ルドミラが言った。


「敵の罠なり予期せぬ強敵なりに、全員が一網打尽にされるリスクは避けたいから」

「俺も同意見だ。魔軍長はまだ六体残っている。一筋縄でいく相手ではないだろうからね」


 賛同するシオン。


「俺とリアヴェルト、ルドミラとフィオーレという組み分けでどうかな? 一緒に修業した組だし、連携も磨かれているはずだ」

「異存はありまセン」

「わたくしもです」


 フィオーレはルドミラとともに進む。


 進みながら、少しずつ嫌な予感が高まっていた。

 快進撃に次ぐ快進撃だというのに。


 いったいなぜ──。

 その疑問は、やがて解消される。


 最悪の形で。


 ──『それ』を発見したのは、山間に差しかかったところだった。


「あ」


 フィオーレの表情が凍りついた。

 口が、息を大きく吸いこんだ形で止まる。


「ひどい……」


 ルドミラがつぶやく。


 血に染まった大地に、無数の勇者たちの死体が折り重なっていた。

 フィオーレはその一点に、視線が釘付けだった。


 言葉が出てこない。


 目にした光景を、頭が否定する。

 理性が否定する。

 心が否定する。


 駄目だ。


 あり得ない。


 あってはならない。


「あああ……あ……」


 がくり、と膝から力が失せ、フィオーレはその場に崩れ落ちた。


「ああああ……ああああああ……あ……ああ……」


 絞り出すような苦鳴と悲鳴。


 彼女の視線の先にあるものは──。


 無造作に地面に転がった、愛する弟エリオの生首だった。


    ※


 シオン・メルティラートは荒野を進んでいた。

 隣にはフルプレートアーマーの騎士──リアヴェルトがいる。


「魔王城まではまだまだ遠いな」


 はるか前方にそびえる巨大な城を見つめ、シオンは嘆息した。


「これ以上の速度は出せないネ」


 と、リアヴェルト。


 二人の足元からは土煙が上がっている。

 リアヴェルトが持つ『地』の奇蹟兵装の力を使った高速移動。

 馬よりもはるかに早く移動しているものの、それでも魔王城はずっと先だ。


「随分と(はや)っているようだナ、シオン」

「逸るというか、昂ぶっているのさ。前回の侵攻戦では、俺たち四天聖剣はカヤの外だったからね。ようやく出番が来た、と言う感じだ」


 爽やかな笑顔は崩さず、それでいてシオンの胸の内には激しい炎が燃えていた。

 正義と使命感の炎が。


「我が祖先、剣聖ザイラスの名にかけて──魔王は俺が討つよ」

「家門のためカ?」

「使命さ」


 シオンが爽やかに笑う。


「生まれ落ちたときから、メルティラート家の者はその使命を負う。勇者として戦い、世界を救う。人生のすべてをその使命に捧げる」

「定められた道筋を歩む人生だナ」

「俺はそれで納得しているし、満足もしているよ」


 と、シオン。


「そうやって多くの人を守ってきた。多くの人の笑顔を。幸せを。そのことに誇りを持っている。それが俺の、生涯の使命さ」


 何よりも、充実感を。


「生涯の使命……か。随分と窮屈な生き方だね」


 前方が陽炎のようにかすみ、すらりとしたシルエットが出現する。


「お前は──」

「魔軍長の一人、極魔導(マスター)ジュダ・ルギス」


 少年にしか見えないが、魔族である以上、見た目通りの年齢とはかぎらない。

 まるで数千年か数万年以上も生きたような、荘厳な気配を漂わせていた。


 ただ者ではなさそうだ。


「ここから先は通さないよ」

「なら力ずくで、と言ったら?」


 不敵にたずねるシオン。


「私に力でかなうと思うなら、試してみればいい」


 銀髪の魔族は笑みを絶やさない。


「なら──そうさせてもらう」


 シオンとリアヴェルトは黒い奇蹟兵装を構えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↑の☆☆☆☆☆評価欄↑をポチっと押して

★★★★★にしていただけると作者への応援となります!


執筆の励みになりますので、ぜひよろしくお願いします!


▼カクヨムでの新作です! ★やフォローで応援いただけると嬉しいです~!▼

敵国で最強の黒騎士皇子に転生した僕は、美しい姉皇女に溺愛され、五種の魔眼で戦場を無双する。




▼書籍版1~3巻発売中です!

actefkba5lj1dhgeg8d7ijemih46_cnq_s1_151_p3li.jpg av1c16pwas4o9al660jjczl5gr7r_unu_rz_155_p11c.jpg rk21j0gl354hxs6el9s34yliemj_suu_c6_hs_2wdt.jpg

▼コミック1~4巻発売中です!

6q9g5gbmcmeym0ku9m648qf6eplv_drz_a7_ei_1dst.jpg
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ