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愛弟子に裏切られて死んだおっさん勇者、史上最強の魔王として生き返る  作者: 六志麻あさ @『死亡ルート確定の悪役貴族2』発売中!
第15章 平和な世界へ

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3 魔軍長たち2


「ふわ……ぁ」


 邪神官の神殿に行くと、オリヴィエがあくびをしていた。

 暇そうだ。


 かと思うと、


「うへへへへ……女の子がいっぱいだぁ……極楽極楽ぅ……」


 ヨダレを垂らしながら幸せそうに顔をにやけさせるオリヴィエ。


「……すまない。ちょっといいか、オリヴィエ」

「はわわわ、魔王様!? あ、あたし、サボってませんよ! ちゃんと百合妄想してます! ……じゃなかった、仕事してます!」


 オリヴィエが慌てたように両手を振った。


 ……絶対、妄想しかしてなかったと思う。


「いや、いいんだ。戦いが終わって、負傷者も一気に減ったからな。休めるときは休んでくれ」


 俺はオリヴィエをねぎらった。


「えへへ、実は暇になってるんですよね」


 オリヴィエが苦笑した。


「休暇を取りたいなら取ってもいいぞ。そのときはジュダに申請を出しておいてくれ」

「休暇……でも、ここに来ても仕事がなさすぎて、ほぼ休暇状態なんですよね」


 オリヴィエが笑った。


「おかげで妄想が捗ります。今、女の子同士がいちゃいちゃ萌え萌えする小説を書いているんです」

「小説……?」

「はい! 以前からやりたかったので! 時間ができて、やっと手を付けられます!」


 オリヴィエは楽しそうだ。

 目がキラキラしていた。


「そのうち魔界の有志を集めて、小説や漫画などの即売会を開きたいと思っているんです。あたしの新しい夢です……っ!」

「夢があるのはいいことだ。俺に協力できることがあったら言ってくれ」


 楽しそうな彼女を見ていると、俺まで楽しい気分になってきた。


「そうやって平和を謳歌してくれるのが一番だ」

「ちなみにネタはステラ様とフェリア様のいちゃいちゃストーリーです! どっちを受けにしようか迷ってるんですけど、魔王様はどう思いますかっ?」

「い、いや、俺は百合ジャンルには造詣が深くないから……」


 思わずタジタジになってしまった。




「研究者としての仕事に専念したいと思っております」


 ツクヨミは俺を見るなり、一礼した。


「研究者の――」

「以前から考えていたことでした。勇者や天軍との戦いにも一段落ついた様子。今こそ職を辞して我が念願を叶えるときかと……」


 さっき会いに行ったオリヴィエが自分の夢を語っていたように、こいつにも将来の目標があるということか。


「なるほど、お前がそう望むなら……もちろんお前のような有能な人材が去るのは痛いが、快く送り出そうと思う」

「ありがたきお言葉」


 ツクヨミはまた一礼した。


 お、今日はいきなり文句を浴びせられたりしないみたいだな。


「正直、ずっと面倒くさい気持ちと戦いながら、魔軍長の職についておりました」

「そうなのか……」


 正面からストレートに文句を言ってくるパターンだったか。


「ですが……それから一年余り、悪くない時間でした。なかなか面白かったですよ、魔王様」

「ツクヨミ……?」

「あなたは私が能力を発揮できるよう、常に便宜を図ってくださった。決して私の研究の邪魔をしなかった」


 ツクヨミが一礼した。


「感謝しております」

「俺の方こそ、お前には色々と助けてもらった。ありがとう」


 礼を返す俺。


「研究が一段落したら、またお力添えさせていただきたい、と」

「ああ。それはいつでも大歓迎だ」


 俺はにっこりと笑った。


 ツクヨミも――にっこりと笑った。


 初めて見る、こいつの心からの笑顔だった。

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