3 魔軍長たち2
「ふわ……ぁ」
邪神官の神殿に行くと、オリヴィエがあくびをしていた。
暇そうだ。
かと思うと、
「うへへへへ……女の子がいっぱいだぁ……極楽極楽ぅ……」
ヨダレを垂らしながら幸せそうに顔をにやけさせるオリヴィエ。
「……すまない。ちょっといいか、オリヴィエ」
「はわわわ、魔王様!? あ、あたし、サボってませんよ! ちゃんと百合妄想してます! ……じゃなかった、仕事してます!」
オリヴィエが慌てたように両手を振った。
……絶対、妄想しかしてなかったと思う。
「いや、いいんだ。戦いが終わって、負傷者も一気に減ったからな。休めるときは休んでくれ」
俺はオリヴィエをねぎらった。
「えへへ、実は暇になってるんですよね」
オリヴィエが苦笑した。
「休暇を取りたいなら取ってもいいぞ。そのときはジュダに申請を出しておいてくれ」
「休暇……でも、ここに来ても仕事がなさすぎて、ほぼ休暇状態なんですよね」
オリヴィエが笑った。
「おかげで妄想が捗ります。今、女の子同士がいちゃいちゃ萌え萌えする小説を書いているんです」
「小説……?」
「はい! 以前からやりたかったので! 時間ができて、やっと手を付けられます!」
オリヴィエは楽しそうだ。
目がキラキラしていた。
「そのうち魔界の有志を集めて、小説や漫画などの即売会を開きたいと思っているんです。あたしの新しい夢です……っ!」
「夢があるのはいいことだ。俺に協力できることがあったら言ってくれ」
楽しそうな彼女を見ていると、俺まで楽しい気分になってきた。
「そうやって平和を謳歌してくれるのが一番だ」
「ちなみにネタはステラ様とフェリア様のいちゃいちゃストーリーです! どっちを受けにしようか迷ってるんですけど、魔王様はどう思いますかっ?」
「い、いや、俺は百合ジャンルには造詣が深くないから……」
思わずタジタジになってしまった。
「研究者としての仕事に専念したいと思っております」
ツクヨミは俺を見るなり、一礼した。
「研究者の――」
「以前から考えていたことでした。勇者や天軍との戦いにも一段落ついた様子。今こそ職を辞して我が念願を叶えるときかと……」
さっき会いに行ったオリヴィエが自分の夢を語っていたように、こいつにも将来の目標があるということか。
「なるほど、お前がそう望むなら……もちろんお前のような有能な人材が去るのは痛いが、快く送り出そうと思う」
「ありがたきお言葉」
ツクヨミはまた一礼した。
お、今日はいきなり文句を浴びせられたりしないみたいだな。
「正直、ずっと面倒くさい気持ちと戦いながら、魔軍長の職についておりました」
「そうなのか……」
正面からストレートに文句を言ってくるパターンだったか。
「ですが……それから一年余り、悪くない時間でした。なかなか面白かったですよ、魔王様」
「ツクヨミ……?」
「あなたは私が能力を発揮できるよう、常に便宜を図ってくださった。決して私の研究の邪魔をしなかった」
ツクヨミが一礼した。
「感謝しております」
「俺の方こそ、お前には色々と助けてもらった。ありがとう」
礼を返す俺。
「研究が一段落したら、またお力添えさせていただきたい、と」
「ああ。それはいつでも大歓迎だ」
俺はにっこりと笑った。
ツクヨミも――にっこりと笑った。
初めて見る、こいつの心からの笑顔だった。
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