2 魔軍長たち1
俺は謁見の間に赴いた。
そこには骸骨騎士と獅子の獣人が待っていた。
「リーガル、戻りました」
「ゼガート、ここに」
魔王軍の双翼を担う魔軍長、リーガルとゼガート――。
彼らはともに、かつては俺に反乱した。
だが、その後の働きをもって、俺はその罪を不問に付し、ふたたび魔軍長として働かせている。
もちろん、次に反逆の動きを見せれば、容赦なく処刑すると言い渡しているが――。
甘い処分だという批判がある一方、王としての器の大きさだと見なしてくれる者たちもいる。
実際、俺自身もこれは『甘い処分』だという自覚はある。
だが、神を倒したとはいえ、魔界に完全な平和が訪れたわけじゃない。
勇者最強の四天聖剣のうちの三人は、未だに健在だ。
彼女たちがさらに力をつけて魔界に侵攻するかもしれない。
あるいは新たな天軍が攻めてくる可能性だってある。
そうなったとき、魔界を守るためには強い力が必要だ。
俺やジュダだけじゃなく、リーガルやゼガートは間違いなく大きな『守る力』となる。
だから、軽々に処刑することはしないし、できない。
「お前たちには引き続き魔界全土の警戒を頼みたい。勇者や天軍が攻めてくる兆候があれば、すぐ俺に知らせてくれ」
「承知」
二人は恭しくうなずく。
今はこれでいい。
彼らが油断のならない相手だとしても――。
今は、これでいい。
謁見の間を出て城内を歩いていると、一人の魔族が近づいてきた。
「あーあ、いいなぁ、ステラは」
ジト目で俺を見ているのはフェリアだ。
「な、なんだ……?」
「王妃の座は譲ったけど、側室ならあたしにもチャンスがあるかなー、って」
「そ、側室……?」
確かに、王ならそういうのもあるのか……?
いや、魔界の運営やステラとの関係などに手いっぱいで、『二人目以降』なんて考える余裕すらなかった。
「俺にはステラがいるからな」
「いいなぁ」
またフェリアがため息をついた。
それから妖しい流し目とともに、
「まあ、あたしたちの時間は長いからね。魔王様がステラよりあたしに魅力を感じるときが来るかもしれないし。ふふふ」
「おいおい、フェリア」
俺は苦笑を返した。
「ま、それはそれとして魔軍長の役割はキチンと果たすから」
「ああ、頼りにしている」
「で、仕事をがんばったご褒美に、あたしを側室に」
「いや、話題がループしてるぞ!?」
「あたし、諦めないからね……夢魔の本気、見せてあげる」
ぞくり。
なんだか背筋がゾクッときたんだが……。
「これって精神魔法か……? 誘惑効果を使ってないか?」
「うふふふふふふ」
フェリアは堪えず、嬉しそうに去っていった。
まったく、あいつも変わらないな……。
俺は苦笑のまま、だけど微笑ましく思った。
こういうやり取りをできるのも平和な証拠だろう。
願わくば、これからもそうであってほしいものだ。
……いや、誘惑はほどほどにしてほしいけどな。
俺と結婚してから、ステラは以前よりも他の女に嫉妬するようになった気がするんだよな。
気のせいだといいんだけど……。
特に今は妊娠中の大事な時期だ。
あいつに変なストレスがかからないよう、今まで以上に言動に気を付けないとな。
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