12 師弟の決着、すべての決着
「勝てる可能性がゼロだと……!?」
「今のお前は神の力を失った、ただの人間だ」
「違う!」
ライルが血走った目で俺をにらんだ。
「僕は選ばれた勇者ライル・ライア―ド! 英雄として永遠に称えられる存在だ! そうならなきゃいけないんだ!」
叫びながら頭をかきむしる。
本当はこいつにも分かっているはずだ。
もはや勝機は失せた、と。
こいつの願いは――歪んだ願望は、もう叶うことはない。
「僕は……僕はぁっ!」
「お前がそこまで名誉や賞賛に固執する人間だとは思っていなかった。見抜けなかった……俺は、ずっと一緒にいたのにな」
悲しみと寂しさが胸の内を去来した。
俺が思っていたライルという人間は、結局どこにもいなかったんだろう。
あるいは――ずっと昔にいなくなっていたんだろう。
「うるせぇぇぇぇっ!」
ライルが絶叫とともに向かってくる。
血走った目で俺をにらんでくる。
憎しみ一色に染まった剣を繰り出してくる。
俺は指一本でそれを止めた。
ぱきんっ。
奴の奇蹟兵装を易々とへし折る。
「力の差が分かっただろう」
俺は首を左右に振った。
「お前にはもう罰を与えた。終わりにしよう――」
「終わりなもんか! 僕がお前を殺すことで、やっと始まるんだ! 僕の――英雄物語が!」
「もう終わったんだよ、お前の英雄への夢は」
俺はライルを見据えた。
以前、俺はこいつに『ギルティペイン』という呪縛をかけた。
俺の正体を誰かに話したり、こいつが英雄を目指し続けることで発動し、激痛を与える呪法だ。
ただ、それはライルに神が憑依した時点で恐らく消し飛んでいるだろう。
あらためて『ギルティペイン』をかけておくか。
だが――、
「何も……変わらないんだな、お前は」
せめて、罪を悔いてほしいと以前にかけた『ギルティペイン』も、ライルにはなんの変化ももたらさなかった。
こいつにあるのは英雄という名の権力や名誉への渇望。
そして俺への憎しみ。
「それがお前の本質……か」
俺はため息交じりに背を向けた。
少し、疲れたのかもしれない。
戦場で敵に背を向けるなど、あってはならないことだと百も承知。
それでも――俺はライルに背を向けた。
空を見上げると、光の王はすでにほとんどがいなくなっていた。
ジュダを中心に撃破したんだろう。
俺も向こうの戦線に加わるか。
おそらく、労せずして全滅させられるだろう。
――と、そのときだった。
「てめぇぇぇぇぇぇっ!」
俺が背中を向けたとたん、ライルが立ち上がり、向かってくる気配があった。
やはり、そうなるか。
振り向きざま、俺は銃を奴に向ける。
かつて勇者だったころに使っていた、古い銃。
ライルはこの銃を格好いいと言っていたな。
いつか自分に欲しい、と。
そうだな、この銃弾を今、お前に――。
「さよならだ、ライル」
轟音。
俺が放った銃弾は、ライルの額を撃ち抜いた。
逃げる機会は与えた。
償うための罰も与えた。
だけど、結局ライルは最後まで俺を殺すことしか考えていなかった。
だから、俺の答えは――王としての、答えは。
もう、眠れ。
愛弟子に無言の別れを告げ、俺は歩き出す。
そして、これからは。
多くの魔族たちとともに――未来を歩き出すんだ。
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