9 魔王VS神、最終決戦4
「おおおおおおっ!」
俺は渾身の剣を振るった。
振るい続けた。
勇者時代に身に付けた正統ザイラス流剣術。
その技を尽くして神に斬りかかる。
奴はライルの肉体に憑依しているが、その体を斬りつけても血は出なかった。
代わりに光の粒子が血のように飛び散る。
「ぐううっ……」
神が苦鳴を漏らした。
効いている。
俺の斬撃は、奴に確実にダメージを与えている!
「おのれ……おのれぇぇっ……」
神がさらに後退した。
いける――。
リアヴェルト戦と同じやり方で、神にも攻撃を当てられる。
そしてダメージを与えられる!
「――などと言うと思ったか?」
「何……!?」
俺の剣が、空を切った。
今まで、当たり続けていた斬撃が――。
「神の姿が、消えた!?」
「ここだ」
背後に神が出現した。
「ちいっ……」
防御魔法は間に合わない。
神の繰り出した『断罪』の剣が、俺の背中を斬り裂いた。
「ぐっ……」
後退する俺。
「フリード様!」
ステラが悲痛な声を上げて駆け寄った。
「申し訳ありません! 私が……読み違えて……」
「いや、違う。たぶん、お前の読みは――未来視は正しかったはずだ」
俺は神を見据えた。
「だけど、未来自体が変わったとしたら……」
「えっ」
「おそらく、奴は」
未来を見ている。
ステラと同じように――。
「『黙示録の目』……その女にできることが、我にできないとでも思ったか? 未来を見て我の動きを読むのであれば、我はその未来を見て、さらに先読みするだけのこと」
なんて、奴だ。
「さあ、もう一撃行くぞ!」
ふたたび神の一撃が俺を捉えた。
「ぐああっ……」
未来を読んでも、防ぎようがない。
「そ、そんな! 動きがどんどん見えなくなる……!」
ステラが悲鳴を上げた。
ざんっ!
ざんっ!
ざぐぅぅぅぅぅっ!
全身を何度も斬り裂かれる。
「くそっ、なすすべがない……!」
さすがに今までの敵とは違う。
これが――神か。
心が押しつぶされそうな不安感と恐怖感。
胸の芯がドス黒く塗りつぶされていくような絶望感。
それらはいずれも、俺が魔王に生まれ変わってから初めて味わう感情だった。
駄目だ、勝てないのか――。
「……いや、まだだ」
俺は諦めない。
「イクシードファイア!」
火炎呪文を叩きこむ。
これだけでは倒せないだろうが、少なくとも牽制にはなる――。
「無駄だ」
神はそれを斬撃で無造作に切り裂いた。
「『断罪』の剣の前には、いかなる魔法も無力」
「ぐあっ……」
奴が続けざまに振るった剣が、俺の両足を――太ももの辺りを深々と切り裂いた。
これでは素早い動きはできない。
治癒魔法をかけたところで、『断罪』で受けた傷は簡単には治らない。
「ぐああっ」
さらに奴が振るった剣が、今度は俺の両腕を切り裂いた。
腱を裂かれたのか、力が入らなくなり、だらりと両腕が力なく垂れ下がった。
「これで四肢を潰した。終わりだ」
神が『断罪』の剣を振りかぶる。
俺は動けない。
神が、剣を振り下ろす。
ざんっ……!
俺の眼前で鮮血が散った。
「えっ……?」
呆然とその光景を見つめる。
頭がついてこない。
理解が追い付かない。
目の前で起きた出来事に。
「ステラ!?」
俺をかばって、彼女が神に斬られたのだ。
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