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愛弟子に裏切られて死んだおっさん勇者、史上最強の魔王として生き返る  作者: 六志麻あさ @『死亡ルート確定の悪役貴族2』発売中!
第14章 新たな神話へ

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8 魔王VS神、最終決戦3

 ――決戦の前、俺はステラと話していた。


 二人だけで、話していた。


「今回は、間違いなく最後に神が出てくるだろう。今までの敵とはまったくレベルが違う」


 言いながら、声が震えた。


 こんなことは魔王に生まれ変わってから一度もなかった。


 まだ人間の勇者だったころは、強大な敵に臨む際、恐怖を覚え、あるいは体が震えたこともあるが――。


 久しく忘れていた感覚だ。


 そう、これが戦いにおける本当の恐怖だ。


 俺は、怖いんだ。


 自分が死ぬかもしれない。

 自分の大切な誰かが死ぬかもしれない。


 今までは史上最強の魔王の力で、なんとでもなっていたことが――今回ばかりは通じないかもしれない、と。


「心得ております」


 ステラがうなずいた。


「私の力のすべてを懸けて、決してあなたを死なせません」


 青い瞳が涙に潤み、俺をまっすぐに見つめている。


「愛おしいあなたを――」

「ステラ……」

「どうかご無事で」

「ああ」


 俺たちは抱き合い、唇を合わせた。


 愛おしい想いを抱いているのは、俺も同じだ。


 魔王に転生して初めて知り合った魔族であり、俺にとってもっとも信頼する配下であり、常に側にいてくれた女性――。


 君とともに生きる未来を――。


 俺は必ず実現する。


 神を、討つことで。




 そして、今――俺たちの連携は、神相手にも通用している。


 ステラが共にいてくれるから、戦えるんだ。


 ばしゅんっ!


 俺が飛んだ直後、奴の攻撃がさっきまで俺がいた空間を薙ぐ。


「むっ!?」


 攻撃を避けられ、大きく体勢を崩す神。


「そこだ!」


 その隙を逃さず、俺は魔王剣と新たに生み出した魔力剣を同時に構えた。


「はあああああっ!」


 ザイラス流剣技、双凜雷閃(そうりんらいせん)

 繰り出した二刀で、X字型に奴の体を斬り裂く。


「が……はっ……!?」


 神がうめいた。


「なんだ、これは……? なぜ我の体にダメージが……」

「俺はかつて神の力を持つ勇者リアヴェルトと戦った」


 神を見据える俺。


「そして、その弱点を探り当てた。お前の力――『拒絶』の弱点を」

「なんだと……?」


『拒絶』には周期があり、その効力が途切れる瞬間がある。


 奴は何百と『拒絶』を重ねているが、それでも一つ一つの『拒絶』に無効状態の時間があるのは確かだ。


 だから、さっきまでステラにずっと『視させて』いた。


 すべての『拒絶』が途切れる瞬間を。


 すべての途切れが重なる一瞬を。


「ステラ、今の要領で攻め立てるぞ!」


 俺は彼女に言った。


「タイミングを指示してくれ!」

「はい、フリード様! 三秒後に背後へ!」


『拒絶』の途切れが重なる周期が早まっている。


 おそらく――この力を使うのは消耗が大きいんだろう。


 持久戦に持ちこみ、奴の防御が崩れ始める時間帯を待つ――。


 俺とステラで事前に立てた作戦通りの展開だ。

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