8 魔王VS神、最終決戦3
――決戦の前、俺はステラと話していた。
二人だけで、話していた。
「今回は、間違いなく最後に神が出てくるだろう。今までの敵とはまったくレベルが違う」
言いながら、声が震えた。
こんなことは魔王に生まれ変わってから一度もなかった。
まだ人間の勇者だったころは、強大な敵に臨む際、恐怖を覚え、あるいは体が震えたこともあるが――。
久しく忘れていた感覚だ。
そう、これが戦いにおける本当の恐怖だ。
俺は、怖いんだ。
自分が死ぬかもしれない。
自分の大切な誰かが死ぬかもしれない。
今までは史上最強の魔王の力で、なんとでもなっていたことが――今回ばかりは通じないかもしれない、と。
「心得ております」
ステラがうなずいた。
「私の力のすべてを懸けて、決してあなたを死なせません」
青い瞳が涙に潤み、俺をまっすぐに見つめている。
「愛おしいあなたを――」
「ステラ……」
「どうかご無事で」
「ああ」
俺たちは抱き合い、唇を合わせた。
愛おしい想いを抱いているのは、俺も同じだ。
魔王に転生して初めて知り合った魔族であり、俺にとってもっとも信頼する配下であり、常に側にいてくれた女性――。
君とともに生きる未来を――。
俺は必ず実現する。
神を、討つことで。
そして、今――俺たちの連携は、神相手にも通用している。
ステラが共にいてくれるから、戦えるんだ。
ばしゅんっ!
俺が飛んだ直後、奴の攻撃がさっきまで俺がいた空間を薙ぐ。
「むっ!?」
攻撃を避けられ、大きく体勢を崩す神。
「そこだ!」
その隙を逃さず、俺は魔王剣と新たに生み出した魔力剣を同時に構えた。
「はあああああっ!」
ザイラス流剣技、双凜雷閃。
繰り出した二刀で、X字型に奴の体を斬り裂く。
「が……はっ……!?」
神がうめいた。
「なんだ、これは……? なぜ我の体にダメージが……」
「俺はかつて神の力を持つ勇者リアヴェルトと戦った」
神を見据える俺。
「そして、その弱点を探り当てた。お前の力――『拒絶』の弱点を」
「なんだと……?」
『拒絶』には周期があり、その効力が途切れる瞬間がある。
奴は何百と『拒絶』を重ねているが、それでも一つ一つの『拒絶』に無効状態の時間があるのは確かだ。
だから、さっきまでステラにずっと『視させて』いた。
すべての『拒絶』が途切れる瞬間を。
すべての途切れが重なる一瞬を。
「ステラ、今の要領で攻め立てるぞ!」
俺は彼女に言った。
「タイミングを指示してくれ!」
「はい、フリード様! 三秒後に背後へ!」
『拒絶』の途切れが重なる周期が早まっている。
おそらく――この力を使うのは消耗が大きいんだろう。
持久戦に持ちこみ、奴の防御が崩れ始める時間帯を待つ――。
俺とステラで事前に立てた作戦通りの展開だ。
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