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愛弟子に裏切られて死んだおっさん勇者、史上最強の魔王として生き返る  作者: 六志麻あさ @『死亡ルート確定の悪役貴族2』発売中!
第14章 新たな神話へ

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1 ライルと四天聖剣

「ライルくん……!」


 ルドミラは戸惑いから警戒心へと感情が切り替わった。


 目の前の少年は、彼女が知っている優しいライルとは違う。

 まるで別人だ。


 いや、あるいは――これこそが彼の本性だったのだろうか?


「あと、罪人呼ばわりは心外だなぁ。僕は……僕こそが神に選ばれた最強の勇者だっていうのに」

「えっ……?」

「神の声を聞いたんですよ、僕は」


 ライルが笑う。


「で、あなたたちの力をもらうことにしました」


 すらり、と聖剣を抜く。


 炎の属性を持つ『レーヴァテイン』だ。


「魔王を討てるかもしれない、と思いましたが、やはり無理だったようですし……それなら、僕に力を『戻して』ください」

「……何を言っているのか分からないけど、あたしたちに敵対するなら容赦反しない」


 ルドミラは奇蹟兵装の弓を構えた。


 さすがに負けることはないだろう。


 勇者たちの頂点であるルドミラと、優秀とはいえ、一介の勇者に過ぎないライルとでは力の差がありすぎる。


 まして今のルドミラは幾度もの天使の修行を経て、人間の領域をはるかに超えている。


「四天聖剣だからって、あまり調子に乗らないで下さいよ……」


 ライルの笑みが歪んだ。


「しょせん勇者の力は神が与えたもの。そして、僕こそが神の――」


 レーヴァテインが炎を放つ。


「えっ……!?」


 視界が、赤く染まった。


 なんだ、これは……!?


 ルドミラは驚愕した。


 大地が裂け、蒸発する。

 空が裂け、焼け焦げる。


 ライルの奇蹟兵装の出力が、尋常ではなく上がっている。


 いや、これはもはや奇蹟兵装ではない。

 奇蹟兵装に、ここまでの威力は出せない。


「そう、これは奇蹟兵装ではなく」


 ライルが剣を振り下ろした。


「奇蹟そのもの――」




 ――数分後、そこには傷だらけのルドミラ、フィオーレ、シオンの三人が横たわっていた。


 まるで歯が立たなかった。


 ライルは確かに優秀な勇者だが、四天聖剣であるルドミラたちの実力には遠く及ばない。


 それが、なぜ――。


「うう、力が入らない――」


 彼は言っていた。


『僕に力を「戻して」ください』と。


 その通りのことが起きたのだ。


 ルドミラたちが必死で修行して身に着けた、最終決戦型勇者の力――。

 そのすべてがライルに奪われてしまった。


 いや、あるいは……。


 一つの、恐るべき仮説が唐突に閃く。


「最初から、人間(あたし)たちは彼に『力』を捧げるために存在した……!?」


 だとすれば、それを仕組んだのは一体誰なのか――。


 もはや、何も分からない。

 ルドミラの意識はゆっくりと薄れていった。

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