1 ライルと四天聖剣
「ライルくん……!」
ルドミラは戸惑いから警戒心へと感情が切り替わった。
目の前の少年は、彼女が知っている優しいライルとは違う。
まるで別人だ。
いや、あるいは――これこそが彼の本性だったのだろうか?
「あと、罪人呼ばわりは心外だなぁ。僕は……僕こそが神に選ばれた最強の勇者だっていうのに」
「えっ……?」
「神の声を聞いたんですよ、僕は」
ライルが笑う。
「で、あなたたちの力をもらうことにしました」
すらり、と聖剣を抜く。
炎の属性を持つ『レーヴァテイン』だ。
「魔王を討てるかもしれない、と思いましたが、やはり無理だったようですし……それなら、僕に力を『戻して』ください」
「……何を言っているのか分からないけど、あたしたちに敵対するなら容赦反しない」
ルドミラは奇蹟兵装の弓を構えた。
さすがに負けることはないだろう。
勇者たちの頂点であるルドミラと、優秀とはいえ、一介の勇者に過ぎないライルとでは力の差がありすぎる。
まして今のルドミラは幾度もの天使の修行を経て、人間の領域をはるかに超えている。
「四天聖剣だからって、あまり調子に乗らないで下さいよ……」
ライルの笑みが歪んだ。
「しょせん勇者の力は神が与えたもの。そして、僕こそが神の――」
レーヴァテインが炎を放つ。
「えっ……!?」
視界が、赤く染まった。
なんだ、これは……!?
ルドミラは驚愕した。
大地が裂け、蒸発する。
空が裂け、焼け焦げる。
ライルの奇蹟兵装の出力が、尋常ではなく上がっている。
いや、これはもはや奇蹟兵装ではない。
奇蹟兵装に、ここまでの威力は出せない。
「そう、これは奇蹟兵装ではなく」
ライルが剣を振り下ろした。
「奇蹟そのもの――」
――数分後、そこには傷だらけのルドミラ、フィオーレ、シオンの三人が横たわっていた。
まるで歯が立たなかった。
ライルは確かに優秀な勇者だが、四天聖剣であるルドミラたちの実力には遠く及ばない。
それが、なぜ――。
「うう、力が入らない――」
彼は言っていた。
『僕に力を「戻して」ください』と。
その通りのことが起きたのだ。
ルドミラたちが必死で修行して身に着けた、最終決戦型勇者の力――。
そのすべてがライルに奪われてしまった。
いや、あるいは……。
一つの、恐るべき仮説が唐突に閃く。
「最初から、人間たちは彼に『力』を捧げるために存在した……!?」
だとすれば、それを仕組んだのは一体誰なのか――。
もはや、何も分からない。
ルドミラの意識はゆっくりと薄れていった。
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