18 乱入
SIDE ルドミラ
「くっ……」
ルドミラは魔王との交戦場所から大きく後退した。
明確な敗走――。
「今回も……勝てなかった……」
屈辱に唇をかみしめる。
「魔王を撃破すれば、戦況を決定づけられると思ったのに――」
ルドミラが悔しげにこちらを見ている。
「ならば、個の力ではなく軍の力でもって制圧してみせましょう」
ルドミラを慰めるようにフィオーレが言った。
優しい口調はいつも通りながら、その瞳には狂気に似た光が宿っている。
先の第二次勇者侵攻戦で弟を失ってから、フィオーレに宿った狂気。
それは日に日に大きくなっているように思える。
ルドミラとともに修業した日々でも、そして今でも――。
「フィオーレさん……」
「大丈夫、最後に勝つのはわたくしたちですわ」
フィオーレが力を込めて告げる。
「弟の仇……魔族はすべて殺し尽くす。それが今日なのです」
瞳に宿る光が、ますます鋭さを増した。
「魔族を憎む気持ちはあたしも同じ。とはいえ、戦況を冷静に判断することも必要よ」
ルドミラがたしなめた。
フィオーレが今にも暴走しそうな危うさを感じて怖くなったのだ。
「ルドミラの言うとおりだ。冷静に。まず、ここからは集団で――」
シオンがうなずいた、そのときだった。
「なんだ、勇者の中で最強の四天聖剣といっても、案外だらしないですねぇ」
ふいに、声が響いた。
前方から誰かが歩いてくる。
「えっ……?」
ルドミラは驚いて足を止めた。
見知った相手だった。
だが、なぜここにいるのか――。
「下位の勇者は後方支援をするはずでしょう? どうしてこんな最前線に……」
ルドミラは彼を見つめる。
「どうしてなの、ライルくん――」
そう、彼は何度か一緒に戦ったことがある少年勇者だった。
「そもそも、君は罪人として裁かれたはず。勇者としての資格も、奇蹟兵装だって剥奪されたと聞いているけど……」
「ああ?」
ライルが一瞬、憤怒の表情を浮かべた。
「僕が罪人――ざっけんなよ! 僕は英雄だ! 僕は世界中から称えられるべき存在なんだ! それをあのオッサン、偉そうに師匠面しやがって! 僕にあんな呪いまでかけやがって!」
「ライルくん……?」
ルドミラは戸惑うばかりだった。
「……っと、それはもういいんだった。今は『なぜ僕がここに来たのか』を話すときですね」
ふうっと息を吐き出し、ライルはふたたび冷静な口調に戻った。
「なぜ、僕がここに来たのか? それはね――」
ニヤリ、と――。
その口元が歪んでつり上がる。
「後方支援なんてしてたら目立たないからに決まってるじゃないですか。僕はね、英雄になりたいんですよ」
【読んでくださった方へのお願い】
面白かった、続きが読みたい、と感じた方はブックマークや評価で応援いただけると嬉しいです……!
評価の10ポイントはとても大きいのでぜひお願いします……!
評価の入れ方は、ページ下部にある『ポイントを入れて作者を応援しましょう!』のところにある
☆☆☆☆☆をポチっと押すことで
★★★★★になり評価されます!
未評価の方もお気軽に、ぜひよろしくお願いします~!








