16 VS最終決戦型勇者3
いつの間にか前回から4カ月も……不定期更新ですまぬすまぬ(´・ω・`)
「じゃあ、さっそく――間合いを詰めさせてもらおうかな」
ルドミラが弓を構える。
正面から見ると星の形に見える特殊な形状の弓――奇蹟兵装『ラファエル』である。
「弓使いのお前が、みずから距離を詰めて接近戦を挑むつもりか?」
「そうね。『今の』あたしなら――」
どんっ!
空中を蹴って、ルドミラが突っこんでくる。
その左右にはフィオーレとシオンが並走していた。
全員、空中をまるで地上を駆けるように走ってくる。
神気を使ったなんらかの空中移動術なんだろう。
「はああああああああああっ!」
気合いとともに三人の勇者が加速する。
速い――!
俺は驚いた。
今までの彼女たちとは動きそのものが違う。
やはり、休戦期間に相当のパワーアップをしているようだ。
だが、剣や槍を使うフィオーレとシオンはともかく、弓使いのルドミラが距離を詰めて何をする気だろうか?
「あたしたちは『神気』を操る訓練をずっと積んできた。お前を倒すためにね」
ルドミラが告げる。
さらに、加速する。
「こいつ――?」
「勇者の力とは何か……それは奇蹟兵装を操る力」
言いながら、ルドミラが中距離で矢を放つ。
「ちいっ」
俺は魔力剣でそれを弾き返した。
今のは牽制の一撃なのだろうが、それにしても――重い。
魔力剣で防いでいなければ、大ダメージを負ったかもしれない。
以前のルドミラとは見違えるようだった。
「では、奇蹟兵装を操る力とは何か――その答えが、つまり今のあたしたち」
ルドミラはなおも説明を続けながら、俺の周囲を駆けまわる。
速度で撹乱し、隙を見て致命的な攻撃を食らわせようというのだろう。
しかも、彼女と連携してフィオーレやシオンも、それぞれ『炎』や『水』の奇蹟兵装で攻撃を仕掛けてくる。
俺の方はジュダとの連携でそれを防いでいるが、相手は三人でこちらは二人。
手数という面では、どうしても俺たちの方が不利だった。
「つまり勇者の力の根源とは――『神気』を制御する能力のこと。奇蹟兵装を操ることができるのも、その能力の延長線上の話に過ぎない」
「ご丁寧に一から解説か」
「ええ。今から放つあたしの一矢に――たっぷり絶望してもらうためにね!」
しゅううう……んっ。
周囲に充満する神気――『光の王』たちの余剰エネルギーをも集め、束ね、一本の矢が生み出された。
「これだけの神気を集めた一矢――いくらお前でも受けられる?」
まさしく最強の神気の矢を弓につがえるルドミラ。
「こいつ……っ!」
いくら俺でも神気を限りなく凝縮、増幅した一撃を受ければ、どうなるかは分からない。
少なくとも『ただでは済まない』と思わせるだけの威圧感を、ルドミラは放っていた。
かつて戦ったときには、圧倒的な力の差があったというのに。
彼女は自らの力だけでなく、周囲の力すべてを利用することで、自分の力に強さを上乗せしたのだ。
「今までの戦いで、あたしたちを取るに足りない相手だと侮っていた? いつでも勝てると? だけどね、あたしたちは――人間は。成長するのよ」
ルドミラが凛とした口調で叫んだ。
「あたしたちは最初からこの一矢だけを狙っていた。終わりよ!」
ごうっ!
輝く矢が螺旋回転しながら向かってくる――。








