9 リリムとのひととき
「最近、忙しそうにしていますね」
「ああ、色々とやることが多くてな」
「お疲れ様ですっ。あ、そうだ――」
リリムが微笑みとともに小さな箱を差し出した。
「ん、なんだ?」
「魔王様に会ったら渡そうと思って、ずっと用意していたお弁当です。忙しいとおなかが空くので!」
「俺に、か?」
「はいっ。【真空パック】という魔法がかかる特殊なお弁当箱で、作り立ての新鮮な状態を味わえますよ」
満面の笑顔で語るリリム。
「あたしにできるのは、これくらいですから……」
と、リリムがうつむく。
「魔軍長の方々みたいな圧倒的な能力もありませんし、スライム芸とかはできますけど……」
「スライム芸?」
「特に形態模写が得意ですっ。あたしの体、なんにでも変わりますから」
「まあ、スライムだしな……」
普段は人間と同じような姿をしているリリムだが、いざとなればスライム体にも変身できるのだ。
いや『変身』というより、元の姿に戻ると言った方が正しいか?
「まあ、それくらいしかできないんですけど」
今日はちょっと自虐的だな、リリム。
「そんなことはない。親衛隊長として日々立派にやってくれているだろう?」
俺は元気づけようと、彼女の肩にポンと手を置いた。
「お前たちがいてくれるだけで、俺も力が湧いてくる。仲間がいるという喜びが、俺に力を与えてくれる」
「魔王様……」
「今までの戦いで、それをはっきりと自覚したんだ。だから――」
俺は空を見上げた。
「今度の戦いでも、魔界の総力を挙げて天軍を叩く。全員の力で勝とう」
――それから二か月ほどの時間が流れる。
俺はその間、できる限りの準備をした。
魔王剣の欠片を集めたり、各種兵器や装備などの準備。
まさに戦争の準備を着々と進める。
そんなある日のこと。
――ぐごおおおおおおおおおお……んっ。
突然、魔界全土に響き渡るような轟音が聞こえた。
「なんだ……!?」
日の光がいっさい差さない暗黒の空に、まばゆい輝きが生まれる。
光の柱がまっすぐ地面まで伸び、その中から無数のシルエットが現れた。
「まさか――」
使徒、勇者、そして神造兵器の群れ。
天軍の、襲来だ――。
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