13 魔王VS四使徒2
「いくらヴェルファーやジュダ以上の魔力を持つとはいえ、僕ら四人を同時に相手にできると思うなよ!」
ノワールが叫んだ。
他の三人の使徒が散開し、四方から俺を囲む。
俺はうかつに動かず、魔力剣『収斂型・虚空の斬撃』を構えたまま静止している。
いちおう百本程度の『メテオブレード』も生み出しておいた。
奴らが相手では効果が薄いが、牽制程度にはなるかもしれない。
炎を発する剣群が俺の周囲に配置され、攻防一体の陣を敷く。
「確かに君はすさまじい魔力だ……その魔力剣や、召喚した炎の剣にも相応の魔力が宿っている……だけど、僕らは神から直接力を授かったんだ。蹴散らしてあげるよ──」
ノワールが右手を突き出す。
「さあ消し飛べ、魔族よ!」
「消し飛べ!」
「消し飛べ!」
「消し飛べ!」
他の三人も唱和し、同じく右手を突き出した。
そこから放たれる、神気の散弾。
虹色に輝く無数のエネルギー弾は、いずれも神の力が宿っているはずだ。
俺は魔力剣を掲げつつ、同時に無数の『メテオブレード』を飛ばした。
ばぢぃ、ばしゅっ……!
散弾がメテオブレードを次々に消し飛ばしていく。
「さすがに威力が高いな」
俺は魔力剣を振り回した。
片っ端から散弾を斬り伏せつつ、周囲に目を向ける。
使徒たちは数百メートルの距離を取って、俺の前後左右に位置している。
全員にまとめて攻撃魔法を食らわせるのは難しい。
そもそも、飛び道具が通用する可能性は低そうだしな。
ならば、誰をまず狙うか──。
「ふふ、どうせなら僕を狙ってくるかい?」
ノワールが余裕の笑みを浮かべた。
「自信があるのか。俺の初撃を防げる、と」
「君こそ、自信があるなら打ちこんでくるがいい」
誘うノワール。
「ただし──僕が防いだ瞬間、他の三人が君を狙い撃ちにする。初撃を防がれれば、君は死ぬ」
他の三人が両手を掲げ、頭上に巨大なエネルギーボールを作り上げた。
確かに、ノワールの言う通りかもしれない。
攻撃を行えば、その直後に『硬直状態』が訪れる。
そこを狙われると、回避も防御もかなり難しくなる。
まして他の三人が作り上げたのは『神の力』を大量に込めた神気弾だろう。
いくら俺でも無防備な状態で直撃されれば、どうなるか分からない。
「ふふ。君に、打ちこんでくる勇気があるかい?」
ノワールの笑みが深くなる。
だが──言い換えれば、奴にまともに一撃を当てられるチャンスともいえる。
挑発を無視すべきか。
あえて挑発に乗り、自分の力を信じて渾身の一撃を食らわせるべきか。
どっちが正解なんだ──。








