12 魔王VS四使徒1
「神の意思、か」
俺は彼らをにらみつけた。
「邪悪なる者はすべて滅ぼす。そして、我らが神はすべての世界に君臨する──数多いる神々の中で、唯一絶対の存在となるのさ」
黒い衣の天使、ノワールが朗々と告げた。
「神々の中で唯一の、か……」
俺のいる時代では、神は唯一の存在とされていた。
少なくとも俺が勇者だったときは、そう教わった。
『神々』という概念はないのだ、と。
だが、どうやらこの時代には複数の神が存在するようだ。
他の神は魔界に対して、どういうスタンスなんだろうか。
今、攻めてきている神と同じく魔族を敵視し、魔界を滅ぼそうとしているのか。
それとも──。
いや、考えるのは後だ。
今はまず使徒を、そして天軍や勇者軍をどう凌ぐかだけに集中するんだ。
「それは野心か? 神ともあろう者が」
俺は使徒たちを見回す。
「野心? 無礼な。力ある者はなき者を導く使命がある。我らが神はそれを率先して行おうとしているだけのこと」
ノワールが俺をにらんだ。
「その崇高なる使命の前に立ちはだかる者は、神に代わって僕らが討つ」
ヴ……ン。
鈍い音とともに、ノワールの手に輝く槍が出現した。
いや、ノワールだけじゃない。
ルージュの手に弓が、ベルデの手に斧が、ブランの手に剣が。
それぞれ出現している。
「『メテオブレード』!」
俺は炎を発する剣を五十ほど生み出した。
相手は使徒だ。
直接相まみえたことはないが、神に次ぐ存在であるなら、その戦闘能力は推して知るべしだろう。
「──行け」
一本一本の『メテオブレード』に強い魔力を込め、四人の使徒に向かってすべての剣を飛ばした。
四方八方から襲いかかる炎の剣を、
「こんな程度で!」
ノワールたちはそれぞれの武器で弾き返す。
さすがにこれくらいの魔法は凌いでくるか。
「君からはヴェルファー以上の魔力を感じる……まだ奥の手を隠しているな」
ノワールが俺を見た。
「それはお前たちも同じだろう」
俺は油断なく奴らを見返す。
使徒たちは神の力を勇者たちに『補給』する役割を担っている。
ということは、彼ら自身も神の力を受け、行使できるのではないだろうか。
ならば、彼らもまた『拒絶』の力を備えている、と見るべきか。
生半可な呪文は通じない。
ここで選択すべき呪文は──これだ。
「『収斂型・虚空の斬撃』!」
俺は魔力を収束させ、一本の剣として実体化させた。
真紅の稲妻をまとった、黒紫色の長剣である。
手持ちの攻撃魔法では最強の威力を持つ呪文。
空間すら切り裂き、すべてを滅する斬撃。
難点はリーチが短いことだった。
飛び道具としては使えず、剣が当たる間合いまで相手に接近する必要がある。
だが、どうせ飛び道具は奴らの『拒絶』に阻まれるだけだろう。
とにかく、距離を詰めなければ──。








