10 魔と天と人の死闘3
間が開いてしまいましたが、続きですm(_ _)m
戦いは、すぐには始まらなかった。
使徒と勇者の軍も、魔王軍も、ともににらみ合いつつ、じりじりと陣形を変えていく。
「今回は慎重だな、ヴェルファーも」
つぶやく俺。
「相手にどんな奥の手があるかも分かりませんし、一気に攻める気はなさそうですね」
隣で俺に寄り添うステラが、そう答えた。
「そして──攻めに出るときは、一気に戦況が動く」
「ええ」
時折、遠距離攻撃の撃ち合いが生じるが、それも散発的なもの。
後は、にらみ合いや小刻みな陣形の移動が続いていた。
血気盛んなヴェルファーが焦れなければいいが……。
「──俺たちも方針を決めておこう。遠からず戦局が激しく動く。そのときに備えて」
俺はステラ、リーガル、オリヴィエに言った。
「俺たちは連携して奴らの対処に当たる。ステラ、お前の『眼』で見て、最適な陣形を教えてくれ」
「はい、魔王様」
俺の言葉にうなずくステラ。
「敵の中心戦力は使徒です。勇者たちも『神の力』でかなり強化されているようですが、やはり使徒に比べれば数段落ちる戦力です」
「数は厄介だが、な」
リーガルがつぶやいた。
「確かに、並の魔族では相手をするのに荷が重い。リーガルには勇者たちの相手を頼みたい」
俺は髑髏の剣士に言った。
「その間に俺が使徒を叩く」
「人間どもへの憎しみはありますが、どうせなら、歯ごたえのありそうな使徒と戦いたいものですな」
と、リーガル。
「わー、リーガルさん、武人キャラですねー」
「キャラも何も、俺は武人だ」
はしゃぐオリヴィエに、リーガルは淡々とした口調で告げた。
「いや、使徒とは俺がやる。リーガルの実力は疑っていないが、空戦ではお前の実力は十分に発揮できないだろう」
「……むう」
俺は魔法で飛行できるが、リーガルに空を飛ぶ手段はないからな。
空中にいる使徒を攻撃するのは難しいはずだ。
それに──。
いくらリーガルでも、使徒が相手ではどうなるか分からない。
しかも相手は複数だ。
リーガルにはまず勇者たちの相手をしてもらった方がいいだろう。
「やむを得ませんな。魔王様のご命令通り、勇者どもを斬り捨ててくるとしましょう」
「絶対に無茶はするなよ。戦況をよく見て、退くべきときは退いてくれ」
勇者たちだって油断できる相手じゃない。
リアヴェルト級が大量にいるとしたら、さすがに厳しいだろう。
「私が、人間どもを相手に簡単に後れを取るとお思いか」
今の言葉はリーガルの矜持に触れたらしい。
「相手の戦力は不明だ。十分に気を付けてくれ、と言っている。攻撃の要であるお前を万が一にも失うわけにはいかない。失えば……戦力のバランスは一気に崩れるかもしれないからな」
「……承知いたしました」
リーガルは恭しく頭を下げた。
「では、空戦は魔王様、陸戦はリーガル魔軍長に任せ、私は戦場全体を見ながら、その都度最適な戦型をお伝えします。オリヴィエは負傷者に備えて待機。いつでも治癒能力を使えるようにしておいてくれ」
「りょーかいです、お姉さま」
オリヴィエがにっこりとうなずく。
そのとき、
「──魔王様、使徒と勇者たちが動きます」
ステラが第三の瞳を輝かせて報告した。
「いくぞ」
俺は短く宣言した。
決戦、だ。
おそらく、この時代で最大にして最後の──。
この時代の、そして未来の魔族の命運を決める決戦だ。








