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愛弟子に裏切られて死んだおっさん勇者、史上最強の魔王として生き返る  作者: 六志麻あさ @『死亡ルート確定の悪役貴族2』発売中!
第12章 運命の果て

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7 決戦への出陣

「さすがに神が直々に攻め入ってくると、気配が違うね」


 ジュダが背後から話しかけてきた。


「魔界にまで届く強烈な神気──今までの戦いとは比べ物にならないほど激しいものになりそうだ」


 その声がかすかにふるえていることに気づく。

 俺はハッと振り返った。


「……緊張しているのか。さすがのお前も」

「はは。まあ、多少はね」


 ジュダが肩をすくめる。


 常に飄々と、悠然としているこいつが、珍しく真剣な表情だ。

 そして、張り詰めた表情だ。


 ジュダは何かを悟っているんだろうか。

 もしかしたら──この戦いの結末を。


 そう、歴史上では魔王ヴェルファー率いる魔軍は、神が率いる天軍に敗北を喫する。


「ねえ、フリードくん。聞いてもいいかな」


 ジュダがたずねる。

 あいかわらず張り詰めた表情で。


「君が来た未来では……今回の戦いはどう伝えられている?」

「それは──」


 以前に『俺たちが未来から来た』と彼に看破されたとき、そのことについては聞かれなかった。

 俺も話題に出すのを避けてしまった。


 ヴェルファーが天軍との戦いの末に敗死するのを知っていたから。

 言うべきなのかを迷っているうちに……今まで言いそびれてしまった。


「未来は無数に枝分かれしている──お前はそう言っていたな」


 俺はジュダを見つめた。


「この戦いが、俺の知っている歴史通りになるとは限らない」

「だろうね。それでも知りたいのさ」


 ジュダは譲らない。


「教えてくれ」


 頑として退かない。

 ジュダのこんな態度を見るのは、初めてだ。


「……ヴェルファーは殺される。天軍兵器──『光の王』によって」

「そうか」


 ジュダは深々とため息をついた。


「なら、その結末を変えられる可能性は十分にある」


 と、口元に笑みが浮かべる。


「君がいれば、ね」


 確かに俺は元の世界で『光の王』を打ち倒しているが──。


 そう単純な話で済むだろうか。

 不安になった俺に、ジュダはかすかに首を振った。


 そうか、こいつも──いや、こいつの方がはるかに不安なんだろう。

 今のはそれを鼓舞するためのセリフなのかもしれない。


「当然だ。俺は史上最強の魔王だからな」


 だから俺はジュダの気持ちを汲んで、ニヤリと笑ってみせた。

 と、


「二人とも、そろそろ行くぞ」


 ヴェルファーがやって来た。


「行く?」

「ああ、説明がまだだったな。これから俺たちは人間界に行く」

「人間界に?」

「そこが神や天使たちとの決戦場さ」


 と、ジュダ。


「人間界なら、奴らも見境なく大規模な破壊術は使えないだろう。人間を巻きこむことになるからな。まあ、こういうやり方は好みじゃないが──ジュダがどうしてもこの作戦を推すんでな」

「私としては勝率を少しでも高めたいだけだよ」

「……本当にそれだけか」

「うん? 気になるかい?」

「いや、お前が立てた作戦なら俺は信じるだけだ」


 悪戯っぽく笑うジュダに即答するヴェルファー。


 ジュダらしくない作戦……か。

 俺は内心でつぶやいた。


 じゃあ、やはり彼はヴェルファーが殺されることを予見しているのか……?

 俺がこの時代に来たことで、その結末は覆るんだろうか。


 そして、もし覆ったとして、俺たちが元いた時代はどうなるんだろうか。


 分からない。

 だが、考えている時間はもうあまりなさそうだ。


 迷っている、時間も。




 数時間後、俺はヴェルファーたち魔王軍とともに人間界にやって来た。

 ステラ、リーガル、オリヴィエも一緒である。


 周囲には草原が広がり、その向こうには森林や険しい山脈が見える。

 人里離れた場所のようだった。


「気配が濃い……ここが出現ポイントになりそうだね」


 告げるジュダ。


 そして──。

 天空の一角に、亀裂が走る。


「来る……!」


 俺は半ば無意識にうめいた。

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挿絵(By みてみん)

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