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愛弟子に裏切られて死んだおっさん勇者、史上最強の魔王として生き返る  作者: 六志麻あさ @『死亡ルート確定の悪役貴族2』発売中!
第12章 運命の果て

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6 宴の翌朝

 宴を終え、その翌朝──。


「さ、昨晩は失礼をいたしました、フリード様」


 ステラが俺に謝りに来た。


「臣下にあるまじき態度だったと反省しています。ご不快な思いをさせてしまい、本当に申し訳ございません」

「酒の席だし、いいじゃないか。もちろん、不快な思いなんてしていない」


 俺は仮面越しに微笑んだ。


「それに臣下である前に、ステラは大切な──存在だ」


『大切な仲間だ』と言おうとして、俺は気が付けば違う言葉を継げていた。


 そう、彼女は大切な存在だ。

 魔王に生まれ変わってから、初めて会った魔族。

 今まで、誰よりも俺を助けてくれた魔族。


 そして、一番近くにいて支えてくれた女──。


「……フリード、様」


 ステラが遠慮がちに、俺の胸にしなだれかかった。

 頬を赤く染め、濡れたような瞳で俺を見上げている。


「ステラ」


 俺はそんな彼女をまっすぐに見つめ──、


「萌えます」

「っ……!?」


 間近で声がして、俺とステラは思わず離れた。


「じー」


 俺たちのすぐそばにオリヴィエがいる。

 ステラとの会話に夢中で、まったく気配を感じなかった。

 たぶん、それはステラも同じだろう。


「い、いきなり現れないでくれ……」


 俺は焦りを隠せないまま言った。


「えへへ、申し訳ないのです」


 言いながら、オリヴィエは満面の笑みを浮かべている。


「ふふふ、ステラお姉さまが乙女です。恋心全開なのです。初心なのです」


 九本の尾が、ぴょこぴょことかわいらしく動いていた。


「萌えます……はふぅ」

「か、勘違いするな。私は、その、魔王様に対しては臣下としての、そのあの」


 ステラが真っ赤な顔で抗弁した。

 クールな彼女にしては珍しく、あたふたと両手を振っている。


「しどろもどろでますます萌えます」

「だ、だから、違うんだ……お、おい、にやけるな。誤解するな」

「はふはふはふぅ」


 オリヴィエは完全に萌え状態のようだ。


「恋愛感情とやらか。あいかわらず俺には理解しがたい話をしているな」


 ざっ、ざっ、という足音とともに、髑髏の剣士が近づいてきた。

 リーガルだ。


 俺を見据える眼光は、昨日までとは少し様子が違って見えた。

 迷いを示すように揺らいでいた眼光が、今はまぶしいほどに鮮烈だ。


 まるでリーガルの心境を示すように。

 まるで──迷いが晴れたと言わんばかりに。


「私への処罰は、ことが落ち着いた段階でお願いします」


 告げるリーガル。


「吹っ切れた様子だな、リーガル」

「今はただ無心に剣を振るうのみ」

「……そうか」

「私は私にしかなれませぬ。人への憎しみも、武人としての生き様も。私は私のままで剣を振るい続ける──」


 俺はその言葉に満足した。

 もちろん、彼が謀反に加担したことは重い事実だ。

 簡単に『許す』という話にはならない。


 いや、俺個人としてならその選択もありうるが、魔王としての立場では絶対にありえないことだ。


 ただ、それはそれとして安心もしていた。

 それでこそリーガルだ、と。


「よし、全員で力を合わせて、局面局面を乗り切っていくぞ。その中で、元の時代に戻る方法も模索して──」


 俺が言いかけた瞬間。


「──!!」


 全身にすさまじい戦慄と悪寒が走り抜けた。


 感じる。

 理屈ではなく本能が、全身全霊で警告してくるような感覚。


 圧倒的にして絶大な力を持つ存在が、敵意を向けてくる。


 俺に、ステラに、オリヴィエに、リーガルに。

 そしてこの魔界すべてに──。


「魔王様、今の気配は」

「ああ」


 ステラの言葉に俺はうなずいた。


 この気配は、以前にも感じたことがある。


 そう、第二次勇者侵攻戦の際、リアヴェルトがまとっていた膨大な神気。

 その大元だ──。


「神が、動き始めた」


 いよいよ始まるらしい。


 神話に記された、神と魔王の決戦が。

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挿絵(By みてみん)

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敵国で最強の黒騎士皇子に転生した僕は、美しい姉皇女に溺愛され、五種の魔眼で戦場を無双する。




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