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愛弟子に裏切られて死んだおっさん勇者、史上最強の魔王として生き返る  作者: 六志麻あさ @『死亡ルート確定の悪役貴族2』発売中!
第12章 運命の果て

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4 始まりの魔王と不死王2

(まさか、始まりの魔王に戦いを挑まれるとは)


 以前に、自分がフリードに勝負を挑んだことを思い出す。


 しかも二度。


 一度は、フリードが王になって間もないころ。

 彼の力量を、そして器自体を見極めようと剣を交えた。


 一度は、ゼガートとともに魔界に反乱を起こしたとき。

 元人間だったフリードに対して、自分の中の憎悪を抑えられなかった。


 剣を交え、その想いは憎悪から別の何かに昇華したような感覚がある。

 その何かがなんなのかは、いまだリーガルにも分からない。


 そして──今。


(俺はみたび『魔王』と戦おうとしている……!)


 周囲の魔族たちはいずれも喝采している。

 リーガルに対しても、好意的な視線が多い。


 王に立ち向かう不遜で不敬な魔族──として見られるようなことはなさそうだ。

 みんな、純粋にこの余興を楽しんでいる。

 王として敬意を抱かれつつも、まるで友人のように周囲から親しみを受けている。


 性格や雰囲気は違えど、そんな部分はフリードに似ている気がした。


(いや、ヴェルファー様とフリード様が似ているかどうかなど関係ない。今は、勝負だけに集中するのだ)


 リーガルは意識を切り替えた。


 すべての意識を、戦闘のために。


 予感があった。

 もやもやとわだかまる今の気持ちが、この戦いで晴らせるかもしれない──と。


「ならば、全力を尽くすのみ」


 自身に言い聞かせ、闘志を高めていく。


 剣に生きる自分にとって、迷いは剣でしか晴らせない。

 これまでも、これからも。


(だから──俺は)


 武人としての誇りにかけて。


「いざ尋常に、勝負!」


 リーガルは無数の骨を組み合わせたような禍々しい剣を抜いた。

 正眼に構える。


 一方のヴェルファーはだらりと両腕を下げたまま。

 構えらしい構えを取っていないのが、逆に不気味だった。


「ほう、すさまじい闘気と瘴気だ。構えにも隙がない」


 ヴェルファーはニヤリと笑った。


「アンデッドとしても、剣士としても──超一流の能力を持っていることが伝わってくるぞ。いい部下を持っているな、フリードは」

「お褒めにあずかり恐悦至極」


 リーガルは足を擦るようにして、少しずつ間合いを詰める。


 先の戦いでは後方待機のまま戦いが終わったため、ヴェルファーの戦法の詳細は不明だ。

 強大な魔力を持ち、圧倒的なステータスを誇っていることは、情報として持っているが──。


「いきます」

「来いよ」


 促され、リーガルは地を蹴った。


 どんっ!


 同時に、大量の瘴気を後方に放出。

 その勢いを推進力に変えて突進する。


「『ハーデスブレード』!」


 瘴気を込めた斬撃を叩きつけた。

 まともに受ければ、並の魔族など跡形も残らない威力の一撃。


 この程度の攻撃すら凌げないようでは、誉れ高い『始まりの魔王』とはとてもいえない。


「挨拶代わりでこの威力を見舞うか」


 ヴェルファーは虚空から剣を召喚し、リーガルの斬撃を受けた。


「だが、俺には通じんぞ」


 片手で、平然と。


「──さすがですな」

「この程度なら『二本』で十分だな。もっと上の威力の攻撃はないのか」

「では、お望みどおりに」


 リーガルは全身の瘴気をさらに高める。

 体勢を変え、三段突きを放つ。


「ほう!? お前の剣術──この域にまで達しているのか」


 ヴェルファーの声に喜色が混じる。

 剣でリーガルの三連続刺突を凌ぎつつ、後退する始まりの魔王。


「予想以上の実力だ。ならば──」


 その全身から黒紫の魔力が立ち上った。


 ぼこっ、ぼこっ、と脇腹の辺りが蠢き、新たに二本の腕が生えてくる。

 さらに顔の横から、もう一つの顔が現れる。


 二面四腕となったヴェルファーは、虚空からさらに三本の剣を召喚した。


「こっちも一段階上げさせてもらうぞ。受け切ってみせろ、リーガル!」

「受けるつもりはありませぬ」


 繰り出された四つの斬撃をかいくぐって避け、


「私はあくまでも──攻めあるのみ!」


 ぐん、と伸びあがるように渾身の突きを見舞う。


「ちいっ……」


 ヴェルファーは大きく跳び下がった。

 避けきれない一撃が、その胸元を浅く薙ぐ。


「……手傷を負わされたか。やるな」


 ヴェルファーがニヤリと笑った。


「あるいは魔界一の剣士である雷覇騎士(アルフィナ)以上かもしれんな、お前の剣は」

「かつての自分も、魔族となった自分も──合わせて数千年、磨き続けた剣です」

「面白い」


 ヴェルファーの笑みが深まった。


「最初から全力で相手をするべきだったな。小手調べのような真似から始めてすまなかった」


 その全身から立ち上る魔力が一気に数倍──いや、数十倍にも膨れ上がる。


「っ……!」


 相対しているだけで全身が吹き飛ばされそうなほどの、魔力圧。

 そして、戦慄と威圧感。


(これが──『始まりの魔王』の本気か……!)

「ここまで全力を封印していた非礼を詫びよう、リーガル。そして償いとして、これより俺の全身全霊を持って相手をさせてもらう」


 告げて、ヴェルファーの姿が変化する。


 三つの顔と六本の腕。

 三面六臂の、真の戦闘形態へと──。


「この形態になると加減が上手くいかん。それゆえに実力者相手にしか出さないわけだが──お前なら大丈夫だろう」


 ヴェルファーの三つの顔が同時に吠える。


「さあ、存分に戦おうか!」

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