4 始まりの魔王と不死王2
(まさか、始まりの魔王に戦いを挑まれるとは)
以前に、自分がフリードに勝負を挑んだことを思い出す。
しかも二度。
一度は、フリードが王になって間もないころ。
彼の力量を、そして器自体を見極めようと剣を交えた。
一度は、ゼガートとともに魔界に反乱を起こしたとき。
元人間だったフリードに対して、自分の中の憎悪を抑えられなかった。
剣を交え、その想いは憎悪から別の何かに昇華したような感覚がある。
その何かがなんなのかは、いまだリーガルにも分からない。
そして──今。
(俺はみたび『魔王』と戦おうとしている……!)
周囲の魔族たちはいずれも喝采している。
リーガルに対しても、好意的な視線が多い。
王に立ち向かう不遜で不敬な魔族──として見られるようなことはなさそうだ。
みんな、純粋にこの余興を楽しんでいる。
王として敬意を抱かれつつも、まるで友人のように周囲から親しみを受けている。
性格や雰囲気は違えど、そんな部分はフリードに似ている気がした。
(いや、ヴェルファー様とフリード様が似ているかどうかなど関係ない。今は、勝負だけに集中するのだ)
リーガルは意識を切り替えた。
すべての意識を、戦闘のために。
予感があった。
もやもやとわだかまる今の気持ちが、この戦いで晴らせるかもしれない──と。
「ならば、全力を尽くすのみ」
自身に言い聞かせ、闘志を高めていく。
剣に生きる自分にとって、迷いは剣でしか晴らせない。
これまでも、これからも。
(だから──俺は)
武人としての誇りにかけて。
「いざ尋常に、勝負!」
リーガルは無数の骨を組み合わせたような禍々しい剣を抜いた。
正眼に構える。
一方のヴェルファーはだらりと両腕を下げたまま。
構えらしい構えを取っていないのが、逆に不気味だった。
「ほう、すさまじい闘気と瘴気だ。構えにも隙がない」
ヴェルファーはニヤリと笑った。
「アンデッドとしても、剣士としても──超一流の能力を持っていることが伝わってくるぞ。いい部下を持っているな、フリードは」
「お褒めにあずかり恐悦至極」
リーガルは足を擦るようにして、少しずつ間合いを詰める。
先の戦いでは後方待機のまま戦いが終わったため、ヴェルファーの戦法の詳細は不明だ。
強大な魔力を持ち、圧倒的なステータスを誇っていることは、情報として持っているが──。
「いきます」
「来いよ」
促され、リーガルは地を蹴った。
どんっ!
同時に、大量の瘴気を後方に放出。
その勢いを推進力に変えて突進する。
「『ハーデスブレード』!」
瘴気を込めた斬撃を叩きつけた。
まともに受ければ、並の魔族など跡形も残らない威力の一撃。
この程度の攻撃すら凌げないようでは、誉れ高い『始まりの魔王』とはとてもいえない。
「挨拶代わりでこの威力を見舞うか」
ヴェルファーは虚空から剣を召喚し、リーガルの斬撃を受けた。
「だが、俺には通じんぞ」
片手で、平然と。
「──さすがですな」
「この程度なら『二本』で十分だな。もっと上の威力の攻撃はないのか」
「では、お望みどおりに」
リーガルは全身の瘴気をさらに高める。
体勢を変え、三段突きを放つ。
「ほう!? お前の剣術──この域にまで達しているのか」
ヴェルファーの声に喜色が混じる。
剣でリーガルの三連続刺突を凌ぎつつ、後退する始まりの魔王。
「予想以上の実力だ。ならば──」
その全身から黒紫の魔力が立ち上った。
ぼこっ、ぼこっ、と脇腹の辺りが蠢き、新たに二本の腕が生えてくる。
さらに顔の横から、もう一つの顔が現れる。
二面四腕となったヴェルファーは、虚空からさらに三本の剣を召喚した。
「こっちも一段階上げさせてもらうぞ。受け切ってみせろ、リーガル!」
「受けるつもりはありませぬ」
繰り出された四つの斬撃をかいくぐって避け、
「私はあくまでも──攻めあるのみ!」
ぐん、と伸びあがるように渾身の突きを見舞う。
「ちいっ……」
ヴェルファーは大きく跳び下がった。
避けきれない一撃が、その胸元を浅く薙ぐ。
「……手傷を負わされたか。やるな」
ヴェルファーがニヤリと笑った。
「あるいは魔界一の剣士である雷覇騎士以上かもしれんな、お前の剣は」
「かつての自分も、魔族となった自分も──合わせて数千年、磨き続けた剣です」
「面白い」
ヴェルファーの笑みが深まった。
「最初から全力で相手をするべきだったな。小手調べのような真似から始めてすまなかった」
その全身から立ち上る魔力が一気に数倍──いや、数十倍にも膨れ上がる。
「っ……!」
相対しているだけで全身が吹き飛ばされそうなほどの、魔力圧。
そして、戦慄と威圧感。
(これが──『始まりの魔王』の本気か……!)
「ここまで全力を封印していた非礼を詫びよう、リーガル。そして償いとして、これより俺の全身全霊を持って相手をさせてもらう」
告げて、ヴェルファーの姿が変化する。
三つの顔と六本の腕。
三面六臂の、真の戦闘形態へと──。
「この形態になると加減が上手くいかん。それゆえに実力者相手にしか出さないわけだが──お前なら大丈夫だろう」
ヴェルファーの三つの顔が同時に吠える。
「さあ、存分に戦おうか!」
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