2 安らぎの宴
「『黙示録の眼』をふたたび使えるようになるまで、しばらく時間がかかります。再使用が可能になり次第、変化した未来をもう一度予知しますね」
ステラが言った。
「ああ、俺たちが──そしてヴェルファーたちが平和でいられる道が見つかるといいな」
俺は半ば祈るような気持ちでつぶやく。
ステラが俺の腕に寄り添い、うなずいた。
「ええ」
ぎゅうっ、と腕にしがみつかれた。
……というか、しがみつきすぎだ。
彼女の柔らかな胸が思いっきり俺の腕に押しつけられている。
「……ステラ?」
俺だっていい年だ。
うろたえて騒ぐような年齢じゃない。
とはいえ、さすがに少し照れるのも事実だった。
「あたし~、ちょっと気持ちよくなってきちゃいました」
「何?」
「フリード様ぁ、せっかくの宴ですし飲みましょう~」
「ステラ……?」
いつものクールぶりはどこへ行った?
そういえば、魔界で初めて開いた宴でも、酔った彼女はこんな感じだったかもしれない。
あのころは、俺もまだ魔王に転生したばかりで右も左も分からない状態だった。
ステラには、あのときからずっと助けられている。
そして今も──。
懐かしい記憶とともに、感慨に耽った。
「ささ、一杯どうぞ……おっとと」
「おい、ステラ。体がふらついてるぞ」
「きゃあっ」
よろけた彼女を、俺は右腕で抱き留めた。
「大丈夫か」
「フリード様ぁ」
甘えたような声で、ステラはそのまま俺の胸元にしなだれかかる。
「温かい、です……フリード様……」
「ステラ……」
俺は右腕に力を込め、彼女をより強く抱きしめる──。
※
オリヴィエは、寄り添うフリードとステラの姿を遠目に見つめていた。
「魔王様とお姉さま、いい雰囲気ですね~」
うっとりとつぶやく。
普段のクールなステラもいいが、酔って人懐っこい感じになった彼女も、またいい。
すごく、萌える。
「お姉さま、やっぱり魔王様のことを──ふふふ」
「さっきから魔王様ってなんのこと?」
アルフィナが首をかしげた。
「ヴェルファー様なら、向こうにいるんだけど……?」
「あ、違った。フリード様です」
オリヴィエは慌てて口をつぐんだ。
この時代においては、魔王はヴェルファーなのだ。
「ふふ、ちょっと酔ってるのかしら? そういうところも可愛いわ~」
アルフィナがオリヴィエにしなだれかかる。
ふうっとワインの匂いが混じった甘い息を吹きかけられ、体中がゾクゾクした。
「アルフィナ様ぁ……」
「可愛い……もふもふしたい……」
「ど、どうぞ、あたしでよければ……」
「もふもふもふもふっ」
「ひあぁぁ、くすぐったいですぅ」
「何よ、二人して~。あたしの噂でもしてたの?」
ふと気づくと、ステラがこちらを見ていた。
口元にニヤリとした笑みを浮かべている。
「ほらほら、フリード様。彼女たちも一緒に楽しく飲みましょう~」
「ステラ、少しペースを控えたらどうだ?」
フリードが苦笑しながら、ステラの後ろからやって来た。。
「うふふふ、楽しい~」
「お姉さま、酔ってますね~」
「あたしは素面よ~。あ、オリヴィエ可愛いね。もふもふしちゃお」
「お姉さま、完全にキャラ変わってますぅ。そんなところも萌えます、素敵です……きゃんっ」
「もふもふもふ~」
戸惑うオリヴィエの狐耳を、ひたすらもふもふするステラ。
「アルフィナよりもっともふもふしちゃう~」
どうやら、先ほどのやり取りを全部みられていたらしい。
「あ、お姉さま。言っておきますけど、あくまでもあたしの本命萌えはお姉さまですからっ」
オリヴィエは慌てて言った。
アルフィナも素敵な女魔族だが、やはりオリヴィエとしてはステラにもっとも萌える。
クールさと優しさ、そして酔った姿は茶目っ気すらある。
「ふーん、あたしは一番じゃないんだ」
と、ジト目のアルフィナ。
「あ、でもでもっ、アルフィナ様も美しくて素敵ですぅ。お姉さま×アルフィナ様というのもいいですね……無限に広がる魅惑の百合ワールド……うふふふふ」
オリヴィエはにっこり笑って、妄想を加速させた。
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